椎名慶治、“自分の背中を押す”ソロアルバム『-ing』をリリース!

椎名慶治 | 2018.06.15

 アーティスト活動20周年という節目に、てんこ盛りの話題を振りまいている椎名慶治。今年はSURFACEの復活に、2年5ヶ月ぶりとなる椎名名義のソロアルバム『-ing』(6月16日発売)のリリースなど、これまで以上に精力的な活動を続けている。ここでは、SURFACE復活への思いも込めたアルバム『-ing』にスポットをあて、彼自身にたっぶり語ってもらった。アルバムには、重ねた年齢と経験ゆえに生まれた楽曲達がビッシリ詰め込まれているが、果たして現在進行形の椎名が感じている思いとはどんなものなのだろうか――? 

EMTG:相変わらずネタ満載ですが、今回は4枚目のソロアルバム『-ing』についてうかがいます。なんと、ソロアルバムは2年5ヶ月ぶりなんですね!
椎名慶治:その間にJET SET BOYSでアルバムを2枚出してますから。2年5ヶ月ぶりと言われても……ね(苦笑)。
EMTG:しかも、このタイミングがアーティスト活動20周年。今回の『-ing』には、その時間の流れをじんわり感じるんですよ。
椎名慶治:あ、そうですか(苦笑)。あまり意識して曲を作ったわけではないので……だから、逆に人からどう聴いてもらえるのかソワソワしてます。
EMTG:いやいや、聴く人に共感を抱かせる椎名節は健在ですが、何か今一度、自分自身にムチ打っているというか、“体力はキツいけど、まだまだ進むぜ!”みたいな決意を感じる曲が多かったなと。
椎名慶治:確かに。自分でも完成したアルバムをじっくり聴いてみると、随分自分の背中を押したがっているなって感じますね。でも、最初からそういう曲を書こうなんて全く意識してなかったし、その前にアルバムを作ることもあやふやだったんですよ。キッカケは去年の11月に「凹凸」っていうシングルを出したこと。それも、シングルというより、何かアイテムを出して欲しいってスタッフから言われてただけなんですよね。その頃には2018年にSURFACEが復活することも決まってましたし、JET SET BOYSもひと区切りついたところだから、“シングルだったら作れるかな”っていう感じで作ったのが「凹凸」だったんです。アルバムを作ることになったのは、その流れでしたね。そこで、アルバムは意識せず、曲を作り始めたんですよ。そんな中で「20th century boy」のデモが出来て“あ、アルバム作るのもアリだな”って思えて。だから、全然計算高く作っていたわけじゃないんです。
EMTG:「20th century boy」には、特に背中を押されるメッセージもあるし、アルバムを象徴する1曲になったように感じます。
 
椎名慶治:この曲を作った時に答えが見えた気がしたんですよね。無意識のうちに、この曲を軸にしたアルバムになったと思います。しかもね、“生きる” “死ぬ”みたいな言葉がすごく多いアルバムなんですよ。SURFACEの再始動もありますけど、たぶん、過去のSURFACEにすがるんじゃなく、新しく生まれ変わって進まなきゃいけない……そういう言葉がたくさん入ったんだろうなって。今にして思えばね。
EMTG:1曲目の「R U ready 2 jump wiz me?」も、英語詞ではありますが、しきりに“Never ever looking back”って歌ってますし。
椎名慶治:そうですね。“振り返らずに行け!”って歌ってます。
EMTG:その1曲目から「20th century boy」「咲き誇れ」までは、ひたすら突き進む歌になりましたね。
椎名慶治:これ、全然ウソついてないですよね(苦笑)。「咲き誇れ」は完全にSURFACEのことじゃないかな。SURFACEは1回終わっているんだけど“もう1回、また頑張れよ、自分”……っていうのは出てると思います。
EMTG:前半はパワフルな歌が続くんですけど、椎名慶治の引き出しはそれだけではないわけですよ。4曲目の「天国で会いましょう」は、今はこの世にいない誰かを歌っている内容なので、すごく気になります。
椎名慶治:アレンジをしてくれたイトヲカシの宮田’レフティ’リョウは「僕はこれ、オードリー・ヘプバーンですね」って言ってました。でも、僕の中で対象となる人物像はいなくて。たまたまなんですけど、37歳で亡くなった友人の橋口靖正っていうミュージシャンがいて、一周忌を迎えたところで、彼の誕生日に仲間で集まってライブをやったんですよ。橋口はいないけど、それでも彼の名前を掲げてライブがやれる。そう思った時に、死んだ後ミュージシャンが残せるものってあるんだなと。だから、この曲の中で言いたいことは、ミュージシャンとして、死んだ後もみんなの記憶に残るものが遺せたらいいなっていうことなんです。でも、それをそのまま書くと説明っぽくなっちゃうから、妄想の今は亡き女性をモチーフにしました。
EMTG:そうだったんですね。その一方では、しっかりエロティックな曲も入っているので安心しました(笑)。「SLIT」はちょっとドキドキする内容ですね。
椎名慶治:昔みたいに、あっけらかんとしたエロさではなく、もっと深くなっているというか。何でしょうね、“スリット”って。思うんですけど、スカートの隙間じゃなくて、心の隙間なんでしょうね。ホントは見せたくないのに隙間を見せてしまった女性がいて。そして、そこにつけ込むイヤな男がいると。これは20代じゃ書けなかった歌詞ですね。
EMTG:そんなオトナっぽい曲のあとに心温まる「凹凸」がくるという。アルバムの中に入ると、シングル曲も別な表情になりますね。中盤ではしっとり聴かせる流れですが、次の「RUNNING-MAN」でまた走り始めるという展開で(笑)。そして、この「RUNNING-MAN」が、かなりSURFACEっぽいんですよね。
椎名慶治:だと思います。調子こくな、自惚れるなっていうワードはありますが、まぁ、そんなことがあったからこそ、今の自分があるっていうね。ファンの人が聴いたらホッとする曲かもしれないですね。
EMTG:どんどんいきます。次の「君の叫びは僕に届く」は、聴いてくれる人のことを考えた曲ですね。
椎名慶治:僕は昔から自分のことを鼓舞する歌が多いんですけど、ハッキリと聴いてくれているリスナーに対して書いた歌詞は珍しいんですよ。キッカケは単純で、最近若い子達と会話がないなと思ってまして。そう思って分析しちゃうと、みんな携帯しか見てないなって気づいたんですよ。目を見て話してないんだなって。だから、たまにはそういう人達に歌詞を書いてみようかと。
EMTG:そんなリアルな思いを吐き出したあとに「あんたがいなけりゃよかったのに」って(苦笑)。
椎名慶治:宮田’レフティ’リョウの家で作業しようと思って歩いている時に浮かんだのが“あんたがいなけりゃよかったのに”っていうメロディーと歌詞! そこからふくらませて、作詞は盟友の野口(圭)に手伝ってもらって作りました。ホントに誰のことなんでしょうね、これは(笑)。
EMTG:しかも女目線ですし。
椎名慶治:そうなんです。これは男も女もバカな歌なんですよ。で、ここに女性ボーカルが欲しいなと思ってLUV K RAFT(4人組の男女混合バンド)のKARENとMishuに手伝ってもらって、ラップのリリックは彼女達に自由に書いてもらいました。
EMTG:こういうのって、今までになかったパターンですね。
椎名慶治:洋楽チックで今っぽいから、若者達にはしっくりくるかもね。特に歌詞は共感を覚えるんじゃないかな。
EMTG:これは10代から20~30代、40代に至るまで、多くの女性に響きそうですね。
椎名慶治:何でしょうね、ちょっといい女に限ってダメ男にいってしまうという(苦笑)。
EMTG:そのあとの「点 -roots-」は一転して究極のラブソングですが、この振り幅がすごいですね。
椎名慶治:「点 -roots-」は、磯貝サイモンが曲を作ってくれたんですけど、最初はこじんまりとした歌詞を書いたんです。ぱっと目が覚めた時に隣に君がいてくれれば幸せ……みたいな。そうしたらサイモンからダメ出しされまして。“僕はこんな小さい愛じゃなくて、もっと大きい愛にして欲しいんだ”ってね。で、そこから“地球の誕生”にまで及ぶデカい内容になりました(笑)。
EMTG:そして! このあと、ズバリ「5月27日」という曲がくるわけです。
椎名慶治:これはですね、去年の9月に「凹凸」のデモテープを作っている時に生まれた曲なんです。その時からデータの曲タイトルが「5月27日」になっていて。“狙ったでしょ?”って言われたら“はい”っていうしかないわけですよ。
EMTG:実際、5月27日に豊洲PITでのSURFACE復活のライブもありましたしね。
椎名慶治:でもね、ただ5月27日を祝うだけの曲にはしたくなくて。もとはと言えば、その日って、俺にはまったく何でもない日だったわけですよ。勝手にオトナが決めたデビュー日だったんで。それがいつの間にか大事な日になって。正直、みんなを泣かせる曲にするにはどうしようか……ってなった時に、野口とあざとい歌詞にしようって決めて、そのあざとい歌詞に対してあざといアレンジができるのは……永谷喬夫しかいない!ってなったんです。そこを口説くのに時間がかかりましたけど、そんなこんなで永谷が“椎名くん、僕ソロアルバムを作るんだけど、1曲歌詞を書いてくれない?”って言ってきまして。“あ、全然やるよ! じゃあさ……”って流れで(笑)。
EMTG:なるほど(笑)。
椎名慶治:ここはあざといと思いながら聴いてくれても、泣いてもらってもいいかな。ただ、ソロになってから僕を知ってくれた人にとっては「5月27日」なんて、ホントに普通の日なのかもしれないですけどね。
EMTG:うまいと思ったのは、ここで終わりではなく、「メッセージ」で、これからの椎名慶治の宣言でしめるところですね。
椎名慶治:実は他の曲の仮タイトルに「メッセージ」っていうのがあったんですよ。結局、別のタイトルになったんですけど、マネージャーが“「メッセージ」っていうタイトル、よかったですよね”って言ってきたんですよ。じゃあと思って、逆に“メッセージ”をテーマに曲を作ったんです。それもファンクラブの温泉旅行に行った時の空き時間にね。
EMTG:ちゃんとネクストを出しているところがいいですよね。
椎名慶治:次はSURFACEとして作品を出したいかなって。そのあとはまたソロにつながっていくだろうとは思いますけど。
EMTG:活動が止まらないですね(笑)。6月末からは『-ing』を掲げたソロツアーもありますし。多忙過ぎます!
椎名慶治:まさに進行形ですね(笑)。ライブは来てくれた人達が次の日からまたちょっとでも仕事をがんばる気持ちになってくれれば……と思ってます。うん、そこはずっと変わってないところかな(笑)。

【取材・文:海江敦士】

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リリース情報

【椎名慶治】-ing

【椎名慶治】-ing

2018年06月16日

ハイウィンドプロダクション

01.R U ready 2 jump wiz me?
02.20th century boy
03.咲き誇れ
04.天国で会いましょう
05.SLIT
06.凹凸
07.RUNNING-MAN
08.君の叫びは僕に届く
09.あんたがいなけりゃよかったのに
10.点 -roots-
11.5月27日
12.メッセージ

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

[SURFACE]
OTODAMA SEA STUDIO
「summer triangle」

08/25(土)OTODAMA SEA STUDIO

Yoshiharu Shiina 20th Anniversary TOUR
「jump-ing」
06/30(土)福岡・DRUM Be-1
07/07(土)福島・郡山Hip Shot Japan
07/08(日)埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
07/14(土)大阪・心斎橋JANUS
07/15(日)大阪・梅田Zeela ※男性限定ライブ
07/21(土)北海道・DUCE 
07/28(土)愛知・名古屋CLUB QUATTRO 
08/05(日)東京・渋谷WWW X 

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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