ゴスペラーズの大人の魅力が凝縮。真夏の熱帯夜を思わせる濃密なラブソング

ゴスペラーズ | 2018.07.04

 「永遠(とわ)に」でタッグを組んだ世界的プロデューサー・ブライアン・マイケル・コックスとパトリック"J.Que"スミスと、前作「ヒカリ」で邂逅を果たし、秋にリリースされるアルバムに向けても共にガッツリと作業を続けていたゴスペラーズ。夏のソウルの祭典『SOUL POWER』を目前に、そこからニュー・シングル「In This Room」を届けてくれた。正統派ラブソング「ヒカリ」が表なら、こちらは裏の顔。あえての隙間と重低音が耳にまとわりつく大人サウンドがめちゃくちゃ色っぽい。ということで、作詩を手がけた安岡 優とボーカル面で主軸を担う黒沢 薫に今作を語ってもらった。

EMTG:まず、今回のレコーディングのプロセスについて聞かせてください。
黒沢:「ヒカリ」で再タッグを組んだブライアンとJ.Queからは、他にもたくさんの曲のプレゼンを受けていまして、実は来日したふたりとアルバムを見据えたプリプロ作業をずっとしてたんですが、「In This Room」はJ.Queがゴスペラーズに合うんじゃないかって、薦めてくれた曲です。
EMTG:それをシングルにすると決めたのは?
黒沢:こういったちょっとセクシーな曲に挑戦できるのは、定番的ラブバラード「ヒカリ」を出した後のこのタイミングだろうということになりました。ゴスペラーズにとって大きな夏のイベントである『SOUL POWER』もありますし。
EMTG:毎年チャレンジングな新曲をステージに上げていますよね。
黒沢:そうなんです。取り組んでいた一連の曲の中で一番『SOUL POWER』に相応しいということで、メンバーもスタッフも一致しました。英語のデモのときからあった≪ワーオワーオワッ!≫がめちゃくちゃキャッチーですしね。ゴスペラーズのことを薄くしか知らない人は「ぽくない」と思うかもしれないけど、濃いファンは「むしろゴスペラーズっぽい」と思うんじゃないかなと。
EMTG:まさに! 安岡さんは曲の雰囲気をどうすくい取って言葉にしていきましたか?
安岡:タイトルはもともとのままですね。それが曲の持っているリズム感を表現しているなと感じられたから。「In This Room」=密室感。息苦しいほどの閉塞感の中で繰り広げられる濃密なラブソングを描きたいと思いました。エッジーなサウンドなので、その尖った部分をどう日本語化するかが課題でした。ある意味R&Bの定石である「ほとんど何も言ってない」世界なので(笑)、ひとりで歌うにはツラいものがあるんですけど。
EMTG:ゴスペラーズには5人での歌い継ぎがありますもんね。
安岡:そう。イメージの羅列みたいなところがあっても、口が変わると場面も変わる。それによって、スピード感が落ちがちという日本語の悩みを解消することができました。「ヒカリ」がどこまでもスイートだったので、「In This Room」はどこまでもセクシーに、スキャンダラスにしたいとも思いましたね。僕らが90年代にやっていた「熱帯夜」や「パスワード」に近いんじゃないかな。
EMTG:スキャンダラスという言葉がぴったりですね。歳を重ねて、こういった曲への対し方が何か変わりましたか?
黒沢:「熱帯夜」、「パスワード」当時は、やっぱり頑張ってましたよね。当時はまだ、ああいったセクシーな曲をやる人が少なかったので、自分たちで切り開くという思いが強かった。
安岡:「ゴスペラーズが不良になった」と言われました(笑)。
黒沢:海外のR&Bのちょい悪なセクシーさの直訳という部分がありましたからね。でも、やってみてわかったんですけど、かなり直情的な言葉でも、5人で歌うといい意味で薄まるんですよ。
安岡:ひとりで歌うと、セクシーさをその人のキャラクターとして聴き手が受け止めざるを得なくなりますからね。さっき「ひとりだとツラい」と言ったのはそういう意味もあって。
EMTG:なるほど!
黒沢:もう今はさすがにテレとか力みはないので、余裕のあるセクシーさが出せたと思います。メロディと詩とトラックだけで十分セクシーなので、歌はむしろやりすぎないほうがいい。思いきり口説くというより、相手を泳がす感じですね(笑)。
EMTG:≪ワーオワーオワッ≫はどなたがやっているんですか?
黒沢:1番、3番が僕で2番が安岡。僕のほうがより過剰な感じになってます。
EMTG:サビもその振り分けで、黒沢さんと安岡さんが担当してますね。安岡さんは歌ではどんなアプローチをしましたか?
安岡:強く歌った次の瞬間に吐息交じりになると、耳をヒュッと惹きつけることができると思うんですね。力押しだけじゃなく、引きで出るセクシーさもあるなんてことは、20代の頃には思いもつかなかった。当時はR&Bが人種も越えて世界のチャートを席巻していて、日本でR&Bをやること自体、リアルタイムで世界にチャレンジすることだと意気込んでましたから。
EMTG:その時代の経験が、今、生きているんですね。
安岡:R&Bの世界観を自分なりに必死で想像して日本語化してましたよね。ヒットという結果も出す中、物語を書く上での押し引きのバランスが出来ていったと思います。もちろん、口に出して歌うときも、当時の経験は生きてると思います。
EMTG:個人的に面白いなと思ったのは、マイナー・コードでも貫けるサビに、メジャーの響きが混じっているところなんです。
安岡:それがこの曲をいい意味でポップスにしてますよね。
黒沢:J.Queが作る和声の積みが、やっぱり独特なんですよ。音的にダメなんじゃないかというギリギリのところを攻めてくる。あのメジャーの響きがこの曲の浮遊感につながってますね。
安岡:美味しい瞬間がどのパートにも潜んでいるので、ぜひ耳を澄ませてみてほしいですね。
EMTG:SOUL POWERではどんな見せ方を?
黒沢:ちょうどMVが公開されたところです。コリオグラファーは三浦大知でお馴染みのSHOTAくん。見どころはダンスというより手振りですね。K-POP的と言えるかも。
安岡:今までとはテイストが違うので、ライブが楽しみです。
EMTG:さて、「Seven Seas Journey」は映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』の主題歌。作詩、作曲は安岡さんですね。
安岡:壮絶な母子関係が描かれた作品なのですが、歌川たいじさんの原作を読み、映画のラッシュを見るうち、愛された記憶という意味でのララバイと愛する気持ちを伝えるという意味でのセレナーデ、その両方を合わせ持つ曲にしたいと思いました。そのときふと、「七つの海」という言葉とメロディが同時に浮かんできたんです。
EMTG:そのインスピレーションを信じてカタチにしていったと?
安岡:そうですね。セレナーデといえば「ロミオとジュリエット」。ふたりの逃避先はどこ? けっして暗い場所じゃない。あ、海だ。海といえば舟、舟といえば揺りかご。ララバイにつながる。そんな連想で、映画の物語に必要な曲を書いていきました。最初は全編アカペラで作っていたんですが、映画制作サイドからのリクエストもあって、ストリングスで広がっていくクラシカルな仕上がりになりました。
EMTG:この曲では黒沢さんがリードを担ってます。
黒沢:メロディやアレンジも含めてスタンダードなイメージがあったので、後期のフランク・シナトラやトニー・ベネットを意識して、深めのビブラートで丁寧に、余計なことはせず朗々と歌いました。曲をしっかり受け止めきれた歌い方ができたと思います。
EMTG:初回生産限定盤特典映像「私がゴスペラーズじゃなかったら」には、満を持して安岡さんが登場。
安岡:長い時間準備してきた壮大な企画となってます。ゴスペラーズには100%役立ちませんが(笑)、ぜひご覧ください!

【取材・文:藤井美保】

tag一覧 J-POP シングル インタビュー 男性ボーカル ゴスペラーズ

リリース情報

In This Room

In This Room

2018年07月04日

Ki/oon Music

1.In This Room
2.Seven Seas Journey

お知らせ

■マイ検索ワード

安岡 優
ワンダーボーイ
最近人名が出てこないことがしばしば(苦笑)。今回は、1998年のW杯でワンダーボーイと呼ばれたイングランドのフォワードが思い出せませんでした。 一晩置いたけどダメだったんで、今朝検索。答えはマイケル・オーウェン。サッカーファンでなくとも知ってるその名前が出てこないなんて……以上です!

黒沢 薫
miyearnZZ
RHYMESTER宇多丸さんのラジオの書き起こしなどをやっている人。というのも、『万引き家族』を観たあとで、映画評論家の町山智浩さんがラジオで語ったという感想を読みたかったから。僕自身の知識は特撮映画に特化されているので、それ以外の映画を観たときは複数の感想と照らし合わせて自分の定点を探しています。


■ライブ情報

ゴスペラーズ坂ツアー2018〜2019 “What The World Needs Now”
[2018]
10/19(金)神奈川・カルッツかわさきホール
10/21(日)山梨・コラニー文化ホール
10/24(水)東京・パルテノン多摩 大ホール
10/27(土)栃木・宇都宮市文化会館
10/28(日)群馬・太田市民会館
11/02(金)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
11/04(日)北海道・苫小牧市民会館
11/10(土)鳥取・米子市公会堂
11/11(日)岡山市民会館
11/14(水)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
11/16(金)徳島・鳴門市文化会館
11/18(日)高知県立県民文化ホール オレンジホール
11/22(木)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
11/24(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
11/25(日)和歌山市民会館 大ホール
11/28(水)千葉県文化会館 大ホール
12/02(日)青森・五所川原市ふるさと交流圏民センター オルテンシア
12/04(火)秋田・大仙市大曲市民会館
12/08(土)長野・大町市文化会館
12/09(日)新潟・長岡市立劇場
12/14(金)福井・鯖江市文化センター
12/16(日)岐阜・長良川国際会議場 メインホール
12/21(金)宮城・仙台サンプラザホール
12/24(月・祝)東京国際フォーラム ホールA
12/25(火)東京国際フォーラム ホールA

[2019]
01/12(土)静岡・沼津市民文化センター
01/14(月・祝)愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
01/15(火)愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
01/18(金)神奈川・鎌倉芸術館
01/19(土)静岡・アクトシティ浜松 大ホール
01/26(土)熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
01/27(日)佐賀市文化会館 大ホール
02/02(土)福岡サンパレス ホテル&ホール
02/03(日)大分・日田市民文化会館 パトリア日田 大ホール
02/09(土)山口・周南市文化会館
02/10(日)広島・上野学園ホール
02/15(金)大阪・フェスティバルホール
02/16(土)大阪・フェスティバルホール
02/22(金)新潟・苗場プリンスホテル ブリザーディウム
02/23(土)新潟・苗場プリンスホテル ブリザーディウム

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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