Anly 前作とはガラリとサウンドが変化したニューアルバム『LOOP』を紐解く

Anly | 2018.07.31

 1stアルバム『anly one』から1年3ヵ月でリリースされるAnlyの2ndアルバム『LOOP』は、新しいサウンド、新しいジャンル、新しい歌い方にチャレンジした曲ばかりが収められた、かなり驚きの内容だ。デビュー曲「太陽に笑え」や「EMERGENCY」のようなバンドサウンドのロック曲はここにはなく、ラテン、R&B、UKっぽいビートなどを取り込んで、Anlyはシンガーとしてもソングライターとしても著しい進化を示している。前作から現在に至る間に何があって、Anlyの音楽はこのように大きく変化と進化を遂げたのか。彼女に話を聞いた。

EMTG:ものすごく強力なアルバムになりましたね。1stアルバムからガラリとサウンドが変わり、その著しい飛躍ぶりにちょっと衝撃を受けました。相当手応えがあるのでは?
Anly: はい。自分で言うのもなんですけど、何度もループして聴いちゃいますね。1曲1曲、中身の濃い曲ばかりだし、メッセージ性の強い曲が揃ったなと思います。等身大の私を切り取ることができました。
EMTG:等身大でありながらも、かなり“攻めてる”アルバムだなと思うんですよ。
Anly: ああ、サウンド面は確かに攻めてますね。それに関しては今回サウンドプロデュースをしてくれたJuan Arizaの存在が大きいんです。Arizaとは「Distance」をきっかけに知り合いました。Jeff Miyaharaさん(「Venus」「Beautiful」などをプロデュース)がメイジー・ケイ(ロンドン生まれで現在はL.A.を拠点に活動する女性シンガー・ソングライター)の作品をプロデュースしているときに、「日本人とコラボレーションするセクションが欲しいんだけど、Anlyちゃん、一緒にやらない?」と言ってくださって、「ぜひやりたいです」と言って作ったのが「Distance」で。そのあとメイジーが来日してライブ(昨年12月5日に渋谷CONTACTで行われた日本お披露目ショーケースライブ)をやって、「Distance」では私も出て一緒に歌ったんですけど、そのときにギターを弾いていたのがArizaなんです。
EMTG: ああ、あのときの! 自分もそのショーケースライブを観てましたが、いいギタリストだなと気になっていたんですよ。
Anly: あのときはアコギでしたけど、すごく上手かったですよね。それであのライブのあとに話をして仲良くなって、アレンジもできるというから、「じゃあ、いつかお願いするかも」って話をしたら、意外と早くに実現することになって。
EMTG:彼はどこ出身のミュージシャンなんですか?
Anly: コロンビア出身で、今はL.A.で活動しています。アメリカのスタバのCMソングとかを手掛けていて、いろんな楽器を全部ひとりでやれる。才能が豊かな上に、すごくいい人なんですよ。それで今回2ndアルバムを作ることが決まったとき、誰にアレンジを頼もうかと考えて真っ先に浮かんだのがArizaだったんです。で、初めに「Moonlight」を送ったんですけど、彼がアレンジしたデモが返ってきて聴いたときに衝撃を受けて。「なんだこれ、かっこいい!!!」ってなって、そのままArizaに仕上げてもらい、それから「COFFEE」も「ENEMY」もやってもらったんです。
EMTG:日本とL.A.で曲のデータをやりとりして作っていったんですか?
Anly: しばらくはファイルのやりとりで作っていたんですけど、途中から細かいニュアンスがうまく伝わらないところがあったので、急遽L.A.に行くことになりまして。けっこうダンガンでしたね。「行くしかない!」ってなって、その3日後に行きましたから(笑)。ファイルのやりとりの段階でもある程度はいい感じになっていたんですけど、一緒に微調整して詰めていって。彼はすごく作業が早いので、3曲ともわりとすぐにかっこよく仕上がって、時間があまったんですよ。それでそのときあった別の曲のデモも聴いてもらって、「ここですぐに作れそうだから、これをやろう」ってなってできたのが「DREAM ON」。Arizaが自分でベースもピアノも弾いて、打ち込みもやって、わずか半日でこの形になったんです。
EMTG:すごい人と知り合いましたね(笑)
Anly: うん、本当に。天才じゃんって思って。
EMTG:そもそもAnlyさんとしては、前作『anly one』を作ったときから次のアルバムはまったく違うものにしたいと考えていたんですか?
Anly: うすうすはそうなるだろうなと感じていました。というのも、実は1stアルバムを作っているときに「MANUAL」の音源はできていたんですよ。だからそのときにもう「次はもっと攻めていきたい」「もっと先に行けるはずだ」と思っていて。それからループペダルを中心にしたLoop Nightをやるようになって、そこで演奏してみんながいいって言ってくれていた「Moonlight」とか「ENEMY」を入れたいと思うようになったんです。
EMTG:『anly one』は高校生のときに書いた曲がほとんどでしたよね。つまりAnlyさんにとっての原点であると同時に、曲を作り始めたときから2017年初頭までの歩みの集大成でもあった。そういう1枚目を作れたからこそ、今回は思いきって新しいところに踏み出すことができたわけですね。
Anly: はい。『anly one』で自分の根っこを見てもらえたのはすごくよかったと思うんです。でも人間は誰でも背が伸びるように成長して進化するものだし、音楽自体も進化していくべきだと思う。そのためには“自分はこうだ”って決めつけないほうがいいと思っていて。変わっていくのは自然なことなんだから、って思っていましたね。
EMTG:「変わりたい!」「変わろう!」と思ったというよりも……。
Anly: というよりも、本当に自然に新しいタイプの曲ができていったし、新しいサウンドとも出会えたんですよ。「変わろう!」と思って変わったわけではなく、すごく自然だったんです。
EMTG:ループペダルを駆使したライブを何度か重ねたことで自信がついたというのも大きかったんじゃないですか。あれによって自分の個性とスタイルを再発見・再確認することができ、もっと自由にいろんなサウンドにも挑戦したくなったというような。
Anly: それも大きいですね。人生は一度だし、面白いと思うことはジャンルレスになんでもやってみようと思うようになった。“私はこういうジャンルの音楽を突き詰めます”と決めないで、面白いことには貪欲に飛びついていこうと。だから、次のアルバムでやりたいことも、もういろいろあるんですよ。
EMTG:本当に今作は楽しんで作っていたのだろうことがよくわかります。それに、Anlyさんがリスナーとして普段聴いている音楽とやっている音楽との間に差がなくなっているようにも感じました。
Anly: そうですね。最近はトラックが面白い音楽をよく聴くので。そうやって耳で聴いている音楽の影響がけっこう出てるところもありますね。
EMTG: では曲についての話を。まず「DREAM ON」ですが、この1曲目にかなり衝撃を受けました。こんなふうに浮遊感のあるモダンなビートで、アンニュイな歌い方をしているAnlyさんは初めてだったので。
Anly: 曲を書いたときはこういう感じじゃなかったんですけど、Arizaに渡したらフワフワしたカッコイイ音を入れてくれて、“コインランドリー 冷える指先”ってところではチャリンって音も入っていて。何も言ってないのに歌詞の雰囲気を感じ取って入れてくれたんです。このサウンドを私はとても気に入ってますね。あと、歌に関してはけっこう軽く歌ってます。誰かに喋ってる雰囲気。若いふたりがタオルケットをかぶって歌っているみたいな(笑)、そんな近い距離感を表現できればと。因みにこれ、スタジオには入ってなくて、Arizaのアパートの作業部屋で完成させたんです。
EMTG: 2曲目「COFFEE」ですが、これはどんな思いで作ったんですか?
Anly: サラリーマンの応援歌にしたいなと思って作りました。私のライブは会社帰りにスーツ姿で観に来るサラリーマンの方がけっこう多いんですよ。だから、そういう方たちに「今日も一日、お疲れさまです」って言えるような歌にしようと。で、ピアノをいじっていたらいいリフが浮かんで、ラップっぽく歌っていったら面白いかもと思って作ったんです。
EMTG:今回のアルバムではラップをやっている曲がいくつかありますけど、最近はそういうモードなんですか?
Anly: 最近というか、韻を踏むことは前から意識しているんですよ。この曲みたいに遊び心のある歌詞は、そんなに苦労しないで書けますね。
EMTG:3曲目は「Moonlight」。これもJuan Arizaのアレンジがとてもいいですね。ラテンフレイバーとモダンなサウンドが絶妙に混ざっている。
Anly: これ、大好きです。Arizaが途中で弾くギターがかっこいいんですよ。
EMTG:歌詞は今までになく大人っぽくて色っぽい。“Kiss me in the car”なんて今までなら歌えなかったでしょ?
Anly: 確かに今までの私にない大人な曲ですね。でもライブで歌っていたら好評で。“クラクラクラクラ”ってところとか、歌っていても気持ちいいんですよ(笑)
EMTG:1stアルバムは高校生らしい爽やかな曲がいくつかありましたけど、そこから比べると今作はだいぶ大人っぽさの表れた歌詞が多いような。
Anly: そうですね。夜の曲が多いですし。この「Moonlight」も夜だし、「DREAM ON」も夕方から夜にかけての時間帯っぽいし、「COFFEE」は真夜中だし、「エトランゼ」も夜に踊っている感じだし……。真昼間の感じがする曲は「OKINAWA SUMMER STYLE」くらいかな。
EMTG:4曲目の「エトランゼ」はラテンですね。
Anly: ちょっと民族音楽的な感じにしたかったんですよ。だから笛とかも入れて、異国っぽくして。沖縄出身の私としては、こういう熱い曲は好きですね。
EMTG:5曲目「MANUAL」。これがリード曲ですよね。
Anly: はい。一番メッセージ性の強い曲です。人はありのままの姿で美しいんだよってことを伝えたかった。作ったきっかけを話すと、私は日本とアメリカのクオーターなんですね。だから光があたると髪の色が茶色く見えたりする。で、高校では入学したら地毛申請を受けなくちゃいけなくて。ちっちゃい頃の写真を提出して、“私は最初から地毛が茶色ですよ”って証明する必要があったんです。それで済むのかと思ったら、毎月1回、地毛点検というのがあって。先生に“染めてないですよ”って髪を見せてスタンプを押してもらうっていう。私はそれがすごく嫌で、なんで悪いこともしていないのに毎月生徒指導室に行って、怒ったような口調で「はい、見せて!」って言われなきゃいけないんだろうって思っていたんです。それであるとき担任の先生に、「私はもう行きたくないです」って言ったんですけど、「ルールだから」と。そのルールって正しいのかなって、ずっと思ってましたね。
EMTG:それでこの曲を書いた。
Anly: 高校のときにこの曲を書いて歌っていたんです。で、去年、大阪の高校で髪を黒く染めることを強要されて不登校になった女子生徒が精神的苦痛で学校側を訴えたじゃないですか。そういう問題があって、世の中にブラック校則という言葉がいっぱい聞かれるようになった。そのときに、私ひとりじゃないんだよな、今こそこの歌をうたうべきだなってすごく思って。
EMTG:続いて(以前、配信のみで発表されていた)「Distance」。「MANUAL」が激しい曲だけに、そのあとピアノの和風のイントロで始まるこの美しいバラードへと続くのが、ホッと落ち着ける感じで、とてもいいですね。
Anly: 私もそう思います。メイジー・ケイの歌声がまた妖精のようで、私とは違う空気感があって、いいんですよね。空気が震えるような声というか。
EMTG:そして「Venus」へと続き、8曲目は「OKINAWA SUMMER STYLE」。真夏!って感じですね。
Anly: そういえば今まで夏の曲がなかったなと思って作りました。沖縄でパーティーソングとして流れるといいなあと思って。だから“ハイヤ・ハイヤ”とか、そういう掛け声もポップに入れてみようと。
EMTG:9曲目の「ENEMY」では、がっつりラップを入れてますね。
Anly: はい。ラップは沖縄で書きました。自分のなかにいるENEMYに向き合いながら。
EMTG:「冷めてるやつとかタイプじゃないし」というフレーズが歌詞にあります。
Anly: 冷めてる人はホント、タイプじゃないんですよ。男の人でも女の人でも絶対熱い人のほうがいいですね。冷めてる人と喋ってると、こっちがヘンみたいになっちゃうじゃないですか。私が夢を熱く語っているのに、冷めた感じで「ふーん」なんて言われると、なんかもう話す気がなくなっちゃう。
EMTG:それから「この闇を照らす光のように(“LOOP”Ver.)」。スキマスイッチと共作したバラードが大きく改変されて、テンポ感のあるループ・ヴァージョンに生まれ変わってます。
Anly: ループペダルで回せるようにとアレンジしたら、ずいぶん変わりましたね。歌詞もだいぶ足しました。バラードのバージョンだと部屋の暗いところにうずくまってるイメージなんですけど、こっちのバージョンは平気な顔して外を歩いているけど実は悩みを抱えているというような人たちの気持ちに寄り添えたらと思って書いたんです。
EMTG:そして11曲目に「Beautiful」がきて、12曲目が「北斗七星」。シングル曲が続いて終わります。
Anly: この2曲は順番的に絶対ここしかないと決めてました。特に「北斗七星」で終わりたいという気持ちはハッキリとあって。この曲は(亡くなった)お兄ちゃんのことを歌ったものだと前にお話しましたけど、アルバムのマスタリングが終わった日がちょうどそのお兄ちゃんの誕生日だったんですよ。それが重なったのも偶然とは思えなくて、なんか「Anlyがやっていることは間違いじゃないんだよ」って言ってくれてる気がした。“ああ、いつも空の上から見ててくれているんだな、守ってくれているんだな”って思えて嬉しかったですね。
EMTG:聴く人にとって、このアルバムがどういうものになってほしいと思いますか?
Anly: 何度聴いても聴き足りなくて何度もループしちゃう、そういうアルバムだと言ってもらえるものになったらいいですね。アルバムタイトルを『LOOP』とつけたのも、そういう意味があるのと、あと、このアルバムをきっかけにしてもっと輪が広がったらいいなという思いがあって。今回は何人かのプロデューサー、アレンジャーと一緒に作りましたけど、これからもっといろんなジャンルのミュージシャンと出会ったりして、輪を広げていきたいんです。

【取材・文:内本順一】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル Anly

リリース情報

LOOP

LOOP

2018年07月25日

ソニー・ミュージックレコーズ

1. DREAM ON
2. COFFEE
3. Moonlight
4. エトランゼ
5. MANUAL
6. Distance
7. Venus
8. OKINAWA SUMMER STYLE
9. ENEMY
10. この闇を照らす光のむこうに(“LOOP” Ver.)
11. Beautiful
12. 北斗七星

このアルバムを購入

お知らせ

■マイ検索ワード

リーテ・ラトバリタ・ウルス アリアロス・バル・ネトリール
Tシャツを作るのにハマっていて、Tシャツにプリントするいい言葉がないかなと思って友達に聞いた時にいわれた言葉です。スタジオジブリの『天空の城ラピュタ』に出てくるおまじないの言葉なんですが、これはTシャツにはできなかったです(笑)



■ライブ情報

Anly “LOOP” Around the World ~Track 1~
【LOOP PEDAL SET(SOLO)】
08/31(金) 新宿LOFT
09/02(日) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
09/06(木) 神戸VARIT.
09/07(金) 広島 BACK BEAT
09/09(日) 福岡 DRUM SON
09/14(金) 千葉 LOOK
09/16(日) HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
09/17(月・祝) 水戸LIGHT HOUSE
09/21(金) 浜松FORCE
09/22(土) 横浜BAYSIS
09/24(月・祝) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
09/27(木) 京都 someno kyoto
10/05(金) 新潟GOLDEN PIGS YELLOW STAGE
10/06(土) 高崎TRUST55
10/12(金) 桜坂セントラル

【BAND SET】
09/28(金) 梅田CLUB QUATTRO
09/30(日) 名古屋CLUB QUATTRO
10/08日(月・祝) 渋谷CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る