SHE’S 変化を恐れず、いま自分がやりたいこと、感じたことを詰め込んだ最新作

SHE’S | 2018.08.07

 昨年末にリリースしたアルバム『Wandering』以降、憧れの先輩バンドを迎えた対バンツアーや、ストリングス&ホーンを迎えた企画ライブなど、ライブ中心の日々を過ごしてきたSHE’Sが、2018年第一弾となるニューシングル「歓びの陽」を8月8日にリリースする。今作はバンドの新たなチャレンジを詰め込んだ意欲作だ。エレクトロな音を取り入れた洋楽志向のサウンドにのせて新たな決意を綴った「歓びの陽」をはじめ、絶えず進化し続けるバンドの現在地がくっきりと映し出されている。たとえば、コールドプレイやレディオヘッドといった海外のバンドが、貪欲な探求心と純粋さゆえにアルバムごとにガラリと作風を変えていたように、SHE’Sもまた変化を恐れないバンドだ。その過程で軋む成長痛すら聞こえてくるような今回のシングルは、これまでにないほど生々しい作品でもあると思う。

EMTG:表題曲の「歓びの陽」は、いわゆる海外のポップミュージックのトレンドになってる音を取り入れた曲で、SHE’Sの新機軸ですね。
井上竜馬(Vo):前々からこういうミックス感の曲はやりたいなあと思ってたんですよね。最近、こういう界隈のポップスをよく聴いてたので。俺のデモの段階では、まだバンド感が残る感じだったんですけど、プロデュースを百田(留衣)さんにやってもらって。イントロの機械っぽいところとか、サビで開けるところのシンセの雰囲気を出してもらいました。
EMTG:今作に通じるようなところだと、どんな音楽を聴いてたんですか?
井上:ザ・チェインスモーカーズとか。こないだキムとふたりでライブを見に行ったたんですよ。最近はEDMじゃなくて、ポップスでもこういう打ち込みが多いじゃないですか。ジャスティン・ビーバーとか。それをSHE’Sにも取り入れてみようと思ったんです。
EMTG:このアプローチに関して、他のメンバーはどう思いました?
広瀬臣吾(Ba):いちばん最初、この曲のデモを聴いたときに、なんの抵抗もないと言ったら、嘘になるんですよ。まだ『Wandering』ができた直後だったし、あれはバンド感が強めのアルバムだったから。そのあとにエレクトロっぽいのを出すのは……と思って。
井上:たしかに臣吾がいちばん難色を示してたな。
広瀬:僕のなかで『Wandering』を引きずってたんですよね。
井上:でも、俺は逆やったんです。アルバムはバンド感が強かったからこそ、振り切りたかった。いままで出してきたPVもバラードを出したあとは、ロックを出してたし。「White」を出したあとは、「Flare」を出したい。そこが俺は捻くれてるんですよね(笑)。
服部栞汰(Gt):新しいサウンドではあるけれど、最近、竜馬がこういうのを好きで聴いているのも知ってたから、SHE’Sでやったらどうなるか楽しみだなと思いました。
EMTG:これまでもSHE’Sって、曲のなかに自分たちのルーツである“洋楽っぽさ”を入れていきたいっていう話はしてたじゃないですか。その想いは強くなっているんですか?
井上:今回はだいぶ強いですね。シングルだから余計かな。序盤から英語をふんだんに使ってますし。やっぱり4人とも洋楽で育ってきたから、そこを大事にしたいんですよ。もちろん邦楽も好きやし、根付いてるけど、そこにピアノが入るだけだと、ほんまによくある音楽だから。そうじゃない方向に行きたい、その想いが強くなってるんです。
EMTG:メジャーで2年やってきて、少しずつ幅広い層にSHE’Sの音楽が届いてきた。このタイミングで、さらに新境地を拓いて、洋楽感で攻めたいと思うのは?
井上:やっぱりバンドをやるなら、辞める瞬間まで満足いく音楽を生み続けたい思うんです。いま僕らが邦楽にゴリゴリに寄せた曲をリリースしたら、辞めたときに絶対に後悔すると思うから。結果がどうであれ、現状に満足して何かを表現していきたいんです。売れるためだけで音楽をやりたくないし、そもそもそれを狙って書けるような器用なソングライターでもない。ありのまま出てきたもののなかで、良いなと思うものを届けていけたらと思ってるんです。
EMTG:なるほどね。一見、竜馬くんって器用なソングライターに見られがちではあるけど。
井上:メロディの普遍性ではメジャーどころが好きなだけですからね。いままで作ってきた曲も、全然(売れ線を)狙ってやってないんです。
EMTG:わかります。で、その新しい洋楽感を取り入れながら、最終的にSHE’Sらしいスケール感のあるロックに持っていったのが、この曲のポイントかなと。
井上:そう、それができなかったら出してないんですよ。
広瀬:めちゃくちゃ良いバランスになりましたよね。
EMTG:後半からは、栞汰くんがハードロックなギターソロを弾き倒してますからね(笑)。
服部:1番のサビ前までギターが出てこないっていうのは、いままでやったことがない挑戦でしたね。ギターソロは、百田さんがイメージを送ってくれてたんですけど、ここは俺がもっと出たほうがSHE’Sらしさを出せるかなって、思い切って弾いたんですよ。
井上:大変やったよな、却下されたりして。
服部:僕が持っていったのは(ギターが)出過ぎるっていうのでね(笑)。
井上:こういう新しい要素を取り入れるときって、そのジャンル対しての理解とかリスペクトがないと、自分らとノリだけを混ぜてしまったら、美しくない作品になってしまうから。そこが栞汰の苦戦したところでしたね。やっぱりギターのフレーズは、フィールド(ジャンル)の違いがいちばん大きく出るところなので。
EMTG:結果として、最新のポップス×SHE’Sっていう絶妙なところにいけたと思いますよ。
広瀬:単なるパクりになりたくないですからね。
EMTG:歌詞のほうは、「モンストグランプリ 2018」の大会イメージソングというところも意識してるみたいですけど。
井上:《ここまで来るのに 一人じゃなかったんだ》っていうのが歌いたかったことですね。大会はチームで勝ち上がっていくものだから、そこを自分の心境にも絡められたと思います。最近、ほんまにそういうことを実感するんですよ。どんどん一緒にやっていく人が増えていくから。自分の推進力になるのは、やっぱり周りの人やなと思うんです。それを、いままでは、“一緒に遠くまで共に行こう”って言ってたんですけど。
EMTG:ええ、「遠くまで」(『She’ll be fine』に収録)を大事に歌い続けてますもんね。
井上:でも、今回はどこまでも連れて行くよって、自分から先導して言えるように、頼もしくなりたいなって、心変わりしてるなと思いますね。お客さんにとって頼りがいのある音楽家になりたいんですよ。「SHE’Sを好きで良かった」って誇れるバンドになりたいなって。
EMTG:いまはまだそういうバンドになれてないですか?
井上:それはわからないですね(笑)。お客さんが決めるものやと思うし。でも、なれてないんじゃないかなあ、まだまだ。たぶん一生正解が見つからんと思う。ただ、なれるためにできることはいっぱいあると思うし、そういう気持ちがあることは伝えたいんですよね。
EMTG:タイトルを「歓びの陽」にしたのは?
井上:ああ、なんでだろうなあ……。YUKIさんの「歓びの種」が好きで、そこからイメージしたのが、「パレードが終わる頃」(『プルーストと花束』に収録)っていう曲だったんです。この「歓び」の字が好きなんですよね。「たのしい」っていう漢字も、ラクの「楽しい」よりも、愉快の「愉しい」って書くほうが好きで。あれって、苦しいこととか、辛いこともひっくるめて、「たのしい」を感じられるような気がするんです。「歓び」も同じ。《僕の哀しみは消えないでいい》とか《傷跡は癒えないでいい》って歌ってるんですけど。それがあるから、「愉しい」ほうを向けたり、「嬉しい」を探したいっていう生き方ができると思うので。だから、この字をよく使うんでしょうね。
EMTG:2曲目の「Upside Down」は、どこかオリエンタルな感じがするというか。闘争心を掻き立てるような曲調ですね。
井上:民族的なイメージですね。(タイアップになっているTVアニメ『アンゴルモア元寇合戦記』の)原作に添いたかったので。漫画を読んでから作り始めたんですけど。ワン・ダイレクションの「Story of My Life」みたいにしたかったんですよね。そうはならなかったけど(笑)、マムフォード(・アンド・サンズ)とか。
EMTG:アコギがジャカジャカ鳴ってる牧歌的な洋楽の感じですよね。
井上:いま、俺のなかで第二次マムフォードブームが来てるんです。
EMTG:わかりやすい(笑)。そのなかで、「Upside Down」は、キムくんのドラムを、歌の次に目立たせて、準主役みたいにしてるのが特徴かなと。
木村雅人(Dr):僕にとっては挑戦でしたね。ドラムで演奏するというより、ティンパニみたいというか。土台じゃなくて、味付けのほうの役回りをしてるのかなと思って。
EMTG:パーカッション的な。
木村:そう、この壮大な戦感をどう表現していくかっていうテーマにありました。
EMTG:歌詞も戦っている感じがしますね。「Upside Down」は「ひっくり返す」の意味?
井上:「覆してやろう」っていうことですね。スポーツ選手に元気をもらって書き始めた曲やったんです。《限界なんて幻想だろう》っていうマインドは、たとえスポーツ選手じゃなくても、僕らもそうだし。それが原作のストーリーにも合うかなと思ったんです。
EMTG:最後に3曲目の「Monologue」についても聞かせてください。ピアノと声だけを多重録音して進んでいく曲ですね。
井上:これはアルバムでやりたかったことなんですよね。でも、自分のなかで良いなと思うメロディができたから入れてもいいかなって。これを書いたころは病んでましたね(笑)。
EMTG:歌詞が暗い。
井上:原形はもっと暗かったので、修正したんです。「歓びの陽」も「Upside Down」も、どこへでも連れて行くよとか、覆してやろうぜとか、戦いをテーマにしてるから、そういうシングルを作ろうかなと思ったんですけど。いかんせん、いま生々しく素直にできた曲で、いちばん良かったのがこれなんですよね。
EMTG:聞き逃せなかったのが、《期待と責任に 後ろ指さされ 約束だけ大きく 膨らんでゆくけど》のところ。ソングライターとしてプレッシャーがあるんだろうな、と。
井上:プレッシャーばっかりです。やっぱり期待に答えたいけど、答えきれてないことが多くて、悔しいなと思っちゃうんですよね。
EMTG:いちばん大きいのは良い曲を書かなきゃっていうプレッシャーですか? 良いライブをしなきゃ、動員を上げなきゃ、CDを売らなきゃとか、あるだろうけど。
井上:全部ですね。全部。それが必要なのはわかってるから。やっぱり音楽を始めたときって、それが目的じゃなかったんですよ。純粋にバンドを組んで、ライブをするのが楽しくて始めたものが、いまはもう俺ら4人だけでやってるわけじゃないから。もちろんCDも売らなあかんし、もっと上手くならなあかん、とか。どこどこでライブやろうぜとか、こういうことをしようぜっていう約束は増えてきますけど、そこに気持ちが追い付かなくなったりする瞬間もある。そういうときに書いたんでしょうね。
EMTG:竜馬くんが、そういう感情を曲のなかで吐き出すのは珍しい。
井上:ここまで生々しく表現したことがないから、好奇心で書いてみたところもあるんです。最初は、自殺のメタファーも入れてたから、ディレクターに「変えられる?」って言われて、「あ、バレてるやん(笑)」と思いました。自分としてはバレてない感覚でいたから。
EMTG:そのなかにも、“あなたが意味をくれた”っていう言葉が出てくるのが救いですね。
井上:ただただ自分が鬱な感じの曲っていうのは好みではないのでね。最終的にはちゃんと着地する場所が見えていたくて、光は提示したかったんです。
EMTG:「Monologue」を聴いて、今回のシングルって、新しい挑戦であると同時に、初めてSHE’Sが自分たちのかたちを崩したシングルだなと思ったんですよね。
井上:ああ、なるほど。
EMTG:いままでは作品として3曲の美しい流れを大事にしてたけど、今回はサウンド的にも、歌詞的にも、いま自分がやりたいこと、感じたことが優先じゃないですか。
井上:うん。シングルに対して、考え方が変わったかもしれないです。これからもアルバムではストーリーを大事に作りたいなと思いますけど。シングル、EP、ミニアルバムでは、やりたい挑戦を詰め込んだほうがいいんちゃうかなと思うようになってて。どんどん新しい挑戦を提示したほうが、リスナーも楽しんでもらえるかなって思ってます。
EMTG:わかりました。今作を携えた全国ツアーは、タイトルが「The One」。ライブハウス中心のツアーですが、どういう意味合いのものになりますか?
井上:よりステップアップした規模感での大きいツアーは、来年の春にやりたいなと思っていて。その前にもう一度ライブハウスをまわるツアーになりますね。メジャー発表をしたツアーでまわったハコも行くし、そこで初心に返って。ライブハウスの近い距離で熱を渡し合えたらっていうので、「ひとつになろうぜ」っていう意味の「The One」ですね。
広瀬:どんな規模感でも、「楽しいぜ」っていうところを見せたいです。
服部:小さいライブのハウスに「ただいま」っていう気持ちで行くので、「おかえり」で迎え入れてもらえたらと思います。
EMTG:今回のスケジュールには、何ヵ所かクアトロ公演もありますけど。SHE’Sってクアトロのとき、いつも以上に良いライブをしますよね。
井上:なんか神聖なんですよね。大阪のバンドやから、なんばhatchも、BIGCATも憧れのステージだったけど、梅田のクアトロは特別なんですよ。
広瀬:ふつうのライブハウスから、次のステージの第一関門な感じなんちゃう?
井上:うん、クアトロがな。
EMTG:バンドの登竜門でもありますよね。
井上:目標としては、次は泣かないようにする、ぐらいですね。
EMTG:渋谷クアトロではメジャー発表では泣いてましたからね
井上:そうなんですよね(笑)。

【取材・文:秦 理絵】

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リリース情報

歓びの陽

歓びの陽

2018年08月08日

ユニバーサルミュージック

1.歓びの陽
2.Upside Down
3.Monologue
4.歓びの陽(Instrumental Version)
5.歓びの陽(Backing Track Version)

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

SHE’S Autumn Tour 2018 “The One"
11/16(金)福岡 DRUM Be-1
11/18(日)広島 CLUB QUATTRO
11/21(水)札幌 KRAPS HALL
11/24(土)名古屋 CLUB QUATTRO
11/25(日)大阪 CLUB QUATTRO
11/28(水)仙台 darwin
11/29(木)渋谷 CLUB QUATTRO


FanClubイベント「SHE"Zoo"サファリ」
10/3(水)大阪 MUSE OSAKA
10/4(木)東京 Shibuya eggman

SHE’S 学園祭ツアー2018
10/6(土)自治医科大学"薬師祭"
10/7(日)To be announced…
10/13(土)To be announced…
10/27(日)To be announced…
10/28(土)To be announced…
11/1(木)上智大学 “ソフィア祭2018"
11/3(土)同志社大学 京田辺校地 “同志社クローバー祭"
11/4(日)To be announced…

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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