odol、約2年半ぶりのニューアルバム『往来するもの』に込められた意味

odol | 2018.10.26

 2015年にセルフタイトルのアルバムをリリースして以降、鍵盤のメンバーを擁し、ギターロックと一括りにできないアーティスティックな音楽性で、知る人ぞ知るバンドだったodol。昨年のEP『視線』以降はフィジカル・パッケージにこだわらず、その都度一番新しいバンド像を単曲の配信リリースという形で世に送り出してきた。また同時に今年は「O/g」(Overthinking & great Ideas)と題した自主企画イベントも実施。King Gnu、向井太一、LILI LIMIT、LUCKY TAPES、集団行動、iri、mol-74、世武裕子という多彩なゲストを迎えた。さらに7月には「FUJI ROCKFESTIVAL ‘18」にも出演。国内外のオリジナリティあふれる音楽家の中で遜色ないバンド像を証明。ロック、シューゲイザー、オルタナティヴ、エレクトロなどが6人のメンバーのフィルターを通して表現された音楽は、よりジャンルから自由で同時に明快な言葉を伴ってリスナーの日常に寄り添い、時に揺さぶる。今後、バンドの名刺がわりになりそうな快作『往来するもの』について、全曲の作曲を手掛ける森山公稀(P/Syn)と作詞を手掛けるミゾベリョウ(Vo/Gt)にこれまでの経緯を含め、新作について聞く。

EMTG:EMTG MUSIC初登場なので、“そもそもodolとは”という話もお聞きしたいと思います。まず森山さんとミゾベさんが出会ったのは?
森山公稀(P/Syn):僕たちは中学二年生の頃にクラスメートとして出会い、高校生から一緒にバンドを始めて、いろいろなバンドを転々として、大学のタイミングで東京に出てきて。僕は1年遅れて出てきたんですけど、そのタイミングで始めたのがodolというバンドですね。
EMTG:今も森山さんは東京藝大在学中ですが、そもそも藝大に入学しようと思ったのは何故なんですか?
森山:高校3年生ぐらいの時に決めたんですけど、大学に行く時に「一生やりたいことはないかな?」と思ってて、ま、音楽かと普通に思って。
EMTG:器楽系ではないんですよね。
森山:はい。作曲をやろうと思って。バンドでも曲を作っていて、それもあってって感じですね。
EMTG:ちなみに森山さんには演奏スタイルや作曲のルーツがあるんですよね。
森山:YMOですか(笑)。まぁキーボーディスト、ピアニストという意味では坂本龍一だし、音楽だったらYMOですね。あ、でも作曲でも坂本龍一が3人の中だったら影響は大きいです。
EMTG:ミゾベさんは自分で言葉を紡いで歌う人になろうと思った瞬間はあったんですか?
ミゾベリョウ(Vo/Gt):瞬間はないですけど、あまり疑いもなくこのバンドをやって、音楽が好きで歌うのが好きでやってきて。前回の『視線』という作品を作るまでは、あまり何も考えずに作ってこられたんですけど、『視線』のタイミングでなんで自分がこれをやっているのかってことを考えないと、先に進めないなと思って。そこですかね、強いていうなら。
EMTG:『視線』以降、今回のアルバムにたどり着くまで、すごく丁寧な活動でしたね。配信シングルや自主企画の「O/g」とか。簡単にフルアルバムを出さなかった理由はありますか?
森山:配信で3曲とか出したりしたのは、とにかくできたものをすぐ出したかったっていうのもあって。あと自主企画のライブを始めたのも3rdアルバムがあったからっていうよりは、ライブに関してちゃんと向き合いたい時期がちょうど重なったからだし。もったいぶったというより、その時々でなるべくできることをすぐ出して行って、今やっとアルバムが完成したって感じですね。
EMTG:活動自体、すごく意欲的だと思うんですよね。
森山:そうなって良かったなと思いますね。それこそ『視線』以前は、「odolって活動してんの?」みたいな状況が割とあって。リリースした前後は「あ、odol出したんだ」ってなるけど、そっからいなくなって(笑)、また次のリリースがきてみたいな、極端にいうとそういう印象もあったみたいで。ライブもかなり少なかったし、そういうところから脱せたのは良かったです。
EMTG:今回のアルバムにも『視線』で大きな意味を持った「GREEN」をまた収録したのは?
ミゾベ:「GREEN」は入れるしかないだろうという感じで。
森山:『視線』を作った時に、「GREEN」ができて、その当時から次アルバムを出したらそこにも収録しようって気持ちでいたんです。他の収録曲たちも、特にodolを総括しようというよりも、当時のその時のodolっていうのをそれぞれ出して行ったので、最新形を1曲1曲重ねて行ったアルバムだなとは思いますね。
EMTG:全体が見えててというより?
森山:そうですね。全然、全体は見えなくて、出揃ってからもアルバムタイトルとか、コンセプトもないしなぁみたいなことで悩んだりして。自分たちでも噛み砕くのに結構、時間がかかった。
EMTG:ラストに収録されている「声」という曲は、ミゾベさんの歌詞が「なぜ自分は歌っているのか?」という理由が解き明かされるような内容ですね。
ミゾベ:この曲はもう時間をすごくかけて、メンバー全員が同じ空間にいて、「この音足してみたらどうか」とかいうのをずっとやった曲で。それまでは音ができたタイミングに森山がどんなことを思っていたかとか、自分がどんなことを思っていたかっていうのを、解釈して、それで作って行ったんです。「なぜこの音がここにあるのか?」みたいなところから。でも「声」は単純に音楽として作って行ったんで、そこの音の中に意味合いみたいなものが、『視線』の時より薄くて。そこで何を歌えばいいのか? っていうのを考えると、他のメンバーと僕の違いっていうのは、唯一言葉を音楽に乗せられることだと思って。「どうして歌うのか」ってところを考えた結果出てきたのかなと思います。
EMTG:「声」の歌詞ってボーカリストとしての自覚というか、なんで歌ってるかが綴られてるけど、変に決意みたいに聴こえないんですよね。
ミゾベ:確かに。歌い方かもしれないですね。説得する感じじゃないから。でも歌に関しては、一番大事なのはエモーショナルさだと思っているので、エモーショナルさを無くそうとは思ったことなくて。ただ、曲ごとにどんな歌がいいのかっていうのは常に考えていて。僕の歌い方はこれだっていうのを決めて、どの曲でもその歌い方で歌うのではなくて、歌とか言葉に一番寄り添った歌い方をしたいっていうのが一番の目標なんで、この曲はこの歌い方だったのかなっていう気がします。
EMTG:森山さんの作曲法についてもお聞きします。もともとどういう美意識があって、今回より研ぎ澄まされたところがあるとしたらなんでしょうね?
森山:美意識の部分は、前にやったことをやらないっていうのが一番大きくて。具体的な話でいうと、作曲の時、DAWを使うんですけど、普通は早く作るためにはよく使う音源とか、よく使う音っていうのをテンプレートとして、立ち上げたりするんですね。でもそれをしないようにしてて、ゼロの状態、何もない状態から、「今回はピアノで作り始めてみよう」とか、「ドラムから作ってみよう」とか、その都度作り方を変えて、いつもの感じっていうのを作らないようにしてるのが一つあって。今作はそれをより意識していたかもしれません。やっぱりこう、おんなじようなオケでも、歌詞が違ったりメロディが違うだけで違う曲に聴こえるんですけど、そうはしたくなくて。歌がなくても「この曲」ってわかるような音楽を作ろうっていうのは日頃思っていて。自分ではそれが研ぎ澄まされてきてるのかなとは思いますね。
EMTG:曲を量産しないといけない人はすごく大変でしょうね。
森山:僕はたくさん作ることはいいことだと思っていなくて。商業的な意味でいうとたくさん作った方がいい部分もありますけど、たくさん作れば作るほど、賞味期限が短くなっちゃうというか。
EMTG:自分のある時期の似たような曲になる?
森山:そうですね。自分自身もだし聴く人もだし、同じような曲が次から次へ来るとやっぱり「新しい方でいいじゃん」ってなっちゃうし。そうなるのはやだなっていう思いもあるので、曲自身のアイデンティティを一つ一つくっきりさせて、作って行くことが、たくさん作ることの何倍も僕の中では大事ですね。
EMTG:書道みたいですね。真っ白な紙を前にしてゼロから。
森山:そうじゃないと逆に作れないっていうのもあるのかもしれないですね。新しいやり方の中からインスピレーションもらったり。
EMTG:今作の制作期間に森山さんにインスピレーションを与えたものというと?
森山:えっと、期間が長い分たくさんあるんですけど(笑)、特にこのアルバムでわかりやすいのかなと思うのは、バスドラムの使い方、ビートの使い方だと思います。よく「four eyes」のこと聞かれたりするんですけど、僕、以前までクラブに行ったことがなくて。「four eyes」作るちょっと前ぐらいに、マネージャーに渋谷のクラブに連れて行ってもらって、そこで初めてその感じを目撃して。頭では単純なビートにフィジカルがつられて踊り出したくなるってわかってたけど、その場に行かないと、実際の体験としては体ではわかってなくて。それに気づけたことというか、そこを得たことで、「four eyes」だったり、「人の海で」もそうかもしれないけど、単純なビートのフィジカルさみたいなところは、新たにこの1年ぐらいのうちに入ってきた大きなところだと思います。
EMTG:面白いですね。それってハウスのイベントだったんですか?
森山:ミニマルだったんですけど、すごい深いイベントで、ガチの人しかいなくて(笑)、しかも全然多くないんです。30人ぐらいの人がそれぞれ一人で踊りまくってて。爆音だし低音しか鳴ってなくて。でも踊り出したくなる気持ちはわかる。そんな中で僕自身は踊り出すかと言われると、踊り出さなくて、冷静に色々考えて俯瞰で見て分析しちゃうみたいな。そういうのが嫌だったりして「four eyes」ができたんですけど(笑)。そういう自分へのフラストレーションみたいなのがあったりもして、そういう経験が1曲1曲にありますね。
EMTG:どんどんいろんな蓋が開いていってる感じはします。「人の海で」もミニマルな感じですけど歌詞は具体的というか。
ミゾベ:ああ、確かに。
EMTG:これも「声」に通じる具体性があるなと。「人の海で」は時間の経過を感じます。ミゾベさんの歌詞はすべからく時間はついてくるのかなと思うけど。
ミゾベ:思うのは、このアルバムの中で一番、辻褄を合わせようとか狙って書いてない曲が、「声」と「人の海で」で。
EMTG:意外です。一番考えて書いてる歌詞に見える。
ミゾベ:「人の海で」は森山からメロディをもらってから5日ぐらいで歌録りで。最初に文章ができてからは半日ぐらいで全部書き上げて。普段感じていることだったり、思っていることが一番素直に出てる曲なのかなと思っています。「人の海で」と「声」は、深く思っていることが素直に出ている楽曲だから、通じるものを感じられるかもしれない。
EMTG:ある種、odolの音楽性って「人」というか、主にはミゾベさんが象徴してるというか。ミゾベさんを見てると好きなものだけを着るし好きなものだけを周りに置いてる感じがするんですね。これが流行ってるから取り入れるとかじゃない。
森山:それはあるかもしれない。それはodolにも滲み出てるのかもしれないですね。
ミゾベ:「これ流行ってるからやろうぜ」みたいなメンバーだったら、多分元からみんな集まってないと思うし、自分の好きな物事に対する信念がある人たちが、他の人の信念も認められるなと思って集まってると思うので。森山も作曲にだいぶ出ている感じはします。
EMTG:そしてアルバム冒頭の「光の中へ」は何かが始まる感じがしますね。
森山:デモを作ってる途中ぐらいで「リードトラックだな」「1曲目だな」っていうのは思い始めてて、逆にそういう方向に最後の方は持って行ったっていうのもあるかもしれないですけど。
EMTG:というのは開かれた感じとかに?
森山:これまでのodolの中で最も開いたものに仕上げようというのも途中からはあったし。最初は純粋にこの「朝が来て光がさす」に部分以降のメロディが別の曲であって。でもその曲は納得いかなかったんで、このメロディを生かす曲を作ろうと思って取り掛かったのが「光の中へ」で。最初は純粋にそのメロディを一番美しく聴かせるように作っていこうと思って作ってたんですけど、途中からこれはかなりいい曲ができたと思いました。
EMTG:今のodolが100%表現されたアルバムがリリースされるという実感はありますか?
森山:そうですね。『往来するのもの』っていうタイトルは全部ができて、この形になってから考えたんです。それは一つには僕自身だったりodolがいろんな音楽ジャンルだったりを往き来して、マーチングだったりクラブ寄りのものだったり、そういうのを色々聴いて来た中で、1曲1曲作ったっていうのがあって。もう一つは歌詞がーーさっきが時間がどんな表現にも付いてくるっていうのをおっしゃってましたけど、その通りで、大人になった今と、これからより社会的な大人になっていく未来と、子供だった過去の時間軸を往き来しながらいろんな視点で歌詞が書かれているなっていうのがあって。それも「往来」という言葉に集約できるなと思って、『往来するもの』っていう言葉をタイトルにしたんですね。このアルバムを出して以降も、そういうことを多分、odolは続けて行くだろうし、いろんなところに音を行き交わせながら音楽を作って行くんだろうなと思えた作品になりましたね。

【取材・文:石角友香】




<ミュージック・ビデオ>

odol「four eyes」MV

odol - 光の中へ (Official Music Video)

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リリース情報

往来するもの

往来するもの

2018年10月24日

UK.PROJECT

1.光の中へ
2.大人になって
3.four eyes
4.GREEN
5.人の海で
6.発熱
7.時間と距離と僕らの旅
8.憧れ
9.声

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

NEWTOWN 2018
11/11(日) 東京・デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ

『往来するもの』発売記念インストアイベント
11/26(月) 東京・タワーレコード新宿店

odol TOUR 2018 "往来"
12/01(土) 福岡・INSA
12/02(日) 大阪・CONPASS
12/16(日) 東京・渋谷WWW

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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