挫・人間、エンタテインメント性に富んだニューアルバム『OSジャンクション』

挫・人間 | 2018.10.25

 挫・人間のニューアルバム『OSジャンクション』を聴き、「今作は従来の作品とは違った制作方法が用いられている」と直感した。明るさやバラエティさ、分かりやすさや伝わりやすさ、よりバンド感の増したアレンジに加え、どこかコミュニケーションを欲していたり…様々なものが明らかにこれまでと違って響いたのだ。結果は正解だった。ボーカル&ギターで楽曲の素地作りを担当する下川リヲ制作の基曲を、メンバーが辿り作品化していた従来の制作方法から、今作はよりバンドのメンバーに委ねられ、預けられて制作されたという。それは様々なアイデアや間口、共創が故の楽しさやライブで活きる楽曲たちの誕生へと結びつかせた。何故、今作はそのような手法に至ったのか? 下川自身に問った。

EMTG:今作はわりと一からバンドのメンバーも交え一緒に作り上げた作品だったのではないですか?
下川リヲ(Vo): おおっ! 鋭い!! まさにそうです。基は変わらず僕が部屋で作りつつも、それをあえてあまり作り込まずにスタジオに持ち込みメンバー全員で完成させていったんです。基曲を細かい説明なしでバンドに放りこんでみた感じで。それこそサポートドラマーの菅大智さんも交えて4人で練り上げたものばかりなんです。
EMTG:今回はその「菅さんも一緒に」というのが大きなポイントのようにも感じます。
下川:そうなんですよ。「菅さんにこういったものを叩いてもらったら面白いかも」的なアイデアや意見も色々と出ましたからね。菅さんは上手くて面白いので、その菅さんの息のあるうちに色々と無理難題を録ってしまおうと(笑)。
EMTG:実際の菅さんとのレコーディングはいかがでしたか?
下川:やはりドラムを前提に曲を作れたのは大きかったです。しかも基本何でも可能なドラマーですから。例えば新要素として今作で入ってるシャッフルのリズムやラグタイムといった、これまでテクニックや再現的に諦めていたものも入れられたり。菅さんのみならず、みんな自分の得意分野を交えると面白いものが生まれる、そこは新たな確信になりました。
EMTG:なぜ今回はこのような制作方法に?
下川:もちろん最近のライブでの楽しさや挑み方の意識の変化もありますが、突然思いついたというのが正直なところで(笑)。自分一人で作り上げるよりも頼ったりアイデアを出し合った方が面白いし楽ですから (笑)。結果、自分では想像もつかないアイデアもポンポン出てきたし。そこから楽曲も明るくなり出しましたからね。
EMTG:確かにこれまで以上の明るさや健全なポップさを感じます。
下川:一人で作り込むと、どうしても性格が悪いんで暗くなっちゃう(笑)。
EMTG:いくら繕っても分母自体は変えられませんからね(笑)。
下川:でも逆に客観性が芽生えたんです。僕にしても他のメンバーの意見に対して客観的に対峙出来るようになって。“あっ、気がつかなかったけど、こう見えていたんだ”、“実はこの路線の方が面白かったんだ”等、おかげさまで自分ひとりでは見出せなかった発見や気づきも今回は沢山入れられました。
EMTG:頼れるメンバーですね。
下川:実はそうなんです。僕よりも全然アイデアや引き出しを持ってるし。安心して任せられるところは任せました。
EMTG:ちなみにこれまでの作り方は?
下川:自分で作ってきたものをメンバーに擬音や抽象的な支持をして仕上げてもらってました(笑)。対して今回はスタジオにホワイトボードを持ち込んで、そこにメンバー共有で可視化できるアイデアや着地点、構成等を書き出し、それを基に作っていったりしたんです。全曲ではないですが多くの曲がそのような作り方でした。
EMTG:その方が他のメンバーもイキイキしてたのでは? アイデアが活発に出ていた光景が思い浮かびます。
下川:会話やディスカッションは増えましたね。これまでにないぐらい楽しいレコーディングで。むちゃぶりも含めパッと出たアイデアをとりあえず試してみたりしたんですが、その時は「そんなの出来ないよ~」なんて避けていても、翌日にはキチンと出来るように準備や練習をしてきたり。これまではメールやラインでの会話が中心でしたが、顔を見合わせてやると「こんなにもスムーズなのか!」と驚きました(笑)。
EMTG:それが一般ですから(笑)。でも、そこが今作のバラエティさに結びついた感はあります。あとは凄く開かれた作品印象もあるのですが、その辺りはやはりご自身でもより開けたい願望があったり?
下川:ありましたね。僕らもそもそもそ引きこもりなんで、これまで通り引きこもりは何も言わずついて来てくれる自信はあったんです。だけどそこ以外のもっと広い層へのコミットも求めていて。その為にも今までないフレッシュなものを色々と取り込みたい欲求も出てきたんです。どんどん心を開いていくことが大事だとの結論に至ったので、どんどん心を開いていく努力をしました。とは言え、その「心を開いていく」行為自体がけっこう難しくて。
EMTG:容易ではないでしょうね。
下川:照れちゃったり、余計なかっこつけ等をしちゃうんです。今回の「笑いあうために」も、まさかこんな言葉を使う時がくるなんてって感じで。
EMTG:それに限らず今回は歌詞もかなりストレートです。君を抱きしめたいとか。それらも含め、作品全体として、相手を想定して曲を作ったり歌ったりしている感が凄くあって。
下川:それは嬉しい感想ですね。ひねくれた変化球を投げるのが得意で、未だど真ん中のストレートを投げるのは怖いんですが、頑張って投げ続けてみました。とは言え元々の握りや投げ方がおかしいんで、真っすぐ投げているつもりでも、どうしても妙な変化球になっちゃうんですが(笑)。
EMTG:基本、下川さんはいい曲を書くと思います。どれもスイートというか。
下川:シティボーイズ具合が自然と滲み出ちゃうんでしょう。それをこれまでは照れて隠したり、ごまかしたりして、わざと変にしていましたが、やはりスイートなものはスイートのままの方がいいんじゃないかと。
EMTG:あとはこれまで以上に一体感や共有感を欲している印象を受けました。
下川:例えサマにならなくてもいいから、とにかく一体感や共有観はもっと欲しいですね。あれってなんか特殊じゃないですか。こんなにストリーミングやサブスクリプションな世の中なのに、逆にライブでしかあの感覚は味わえない。せっかく僕らのライブに来てくれたからにはエンタテインメントを楽しんでもらいたいですから。
EMTG:リリックにも変化が伺えました。聴く対照の人に向けて音楽を発信し出しているというか…。
下川:その辺りはより一層強くなってるかも。聴いている人の顔やどんな人が聴いているかを具体的に思い浮かべながら歌詞は書きましたから。
EMTG:それには何か理由でも?
下川:ライブやインストアイベント等で人と触れ合う機会も増えたんで、それも関係してます。あとライブの後にもらう手紙とか。そうそう、ライブ後に言葉をかけてもらうことも断然増えて。それらが大きく関与してます。
EMTG:例えばもらう手紙はどのような内容のものが多いんですか?
下川:「挫・人間の歌と出会えてよかった」等ですね。やはりこういった機会(CDを出したりライブを行ったり)が無かったら全く人生で繋がらなかったであろう人から、そのような言葉をもらえた際には、その方々に何かをしたり、向けて歌を届けたくなってくるんですよね。
EMTG:では、オーディエンスやリスナー、ファンが意識を変えてくれたと。
下川:でしょう。今までは単なる殺戮マシーンでしたから(笑)。まさにシザーハンズ。寄ってくる彼、彼女に何か施したいけど、手がハサミなので不用意にもつい相手を傷つけてしまう。だけど本来、この手は人を温めたり、抱きしめたりするため存在するわけで。で、結局は自分の言葉で伝えないと意味がない。ホント、ここ最近ですよ、ようやくコミュニケーションの取り方の手段や方法が分かって、且つ向こうも理解してくれるような相互性を築けるようになったのは。それを経ての作品でもあるんです今作は。
EMTG:より頼もしくなったし、今作を機についてくる方も増えそうですね。
下川:ホントばか売れしたいです。こんなバンド他にはいませんから。若手だと特に。僕が死んだらホント終わりですから。みんなで僕たちを守って下さい!(笑)。
EMTG:絶滅危惧種の保護みたいに(笑)?
下川:能みたいに無形文化財として国で保護して欲しい(笑)。エンタテインメントとしてもどんどんお面白くなっていくだろうし、売れれば売れるほど面白いバンドになれる自負があるので、自分たちは。笑いもするし泣けもする。これって一番いいエンタテインメントですからね。覚悟も含め絶対に他のバンドはマネが出来ない。こんなに好き勝手にやってもお客さんがキチンとついてきてくれるなんてある種の奇跡ですから(笑)。これをもっと美しく素晴らしく今後も昇華していきたいんです。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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リリース情報

OSジャンクション

OSジャンクション

2018年11月07日

redrec / sputniklab inc.

01.webザコ 
02.卑屈人間 踊ってみた 
03.恋の奴隷 
04.笑いあうために
05.バラバラBABY 
06.カルマポリスII 
07.JKコンピューター 
08.まちむすめ 
09.約束の青 
10.〆切を守れない~無力~
11.ダンス・スタンス・レボリューション

お知らせ

■ライブ情報

挫・人間 TOUR 2018/19 〜厨二病?いや、チューしよう〜
11/14(水)新宿red cloth
11/20(火)仙台enn3rd
11/21(水)盛岡the five morioka
11/23(金)札幌SPIRITUAL LOUNGE
11/25(日)新潟GOLDENPIGS BLACK STAGE
11/30(金)金沢VAN VAN V4
12/01(土)岡山ペパーランド
12/02(日)京都MOJO
12/09(日)茨城club SONIC mito
12/15(土)広島4.14
12/16(日)福岡Utero
12/22(土)浜松FORCE
12/23(日)高松TOONICE
[2019]
01/12(土)仙台FLYING SON
01/19(土)梅田Shangri-La
01/20(日)名古屋APPOLO BASE
01/25(金)渋谷CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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