結成5周年を迎えた感覚ピエロのニューシングル『ありあまるフィクション』

感覚ピエロ | 2018.10.24

 二度目の47都道府県ツアーを成功させて、結成5周年を迎えた感覚ピエロが3,000枚限定生産のニューシングル『ありあまるフィクション』をリリースした。初のライブDVD付きとなった今作には、47都道府県のファイナルを飾ったなんばHatchで初お披露目された新曲「ありあまるフェイク」に加えて、CD未収録だったタイアップ2曲を収録。なかでも艶やかなピアノから幕を開け、《「てめぇで考えろボケ」》と挑発的なワードで締めくくる「ありあまるフェイク」は、これまで自分たちの足でバンドの未来を切り拓いてきた彼らが、「5周年」というタイミングだからこそ込めたいメッセージが詰まっている。来年の秋には、バンド史上最大規模のキャパとなる幕張メッセでのワンマンライブも発表。いまはそこに向かって、とにかく全力で駆け抜けていくだけと意気込む4人に話を訊いた。

EMTG:以前、「シングルを出すのが苦手」って言ってたこともあったけど、それでも出したいぐらい、今回は意味のあるシングルなんじゃないかなと思いますが。
秋月琢登(Gt):初めての試みとして、ライブDVDが付くっていうところにも意味がある作品ですね。もちろんCDに入れている新曲の3曲も大事ですけど。あんまり僕らはYouTubeなどでライブ映像を出さないので、このタイミングで「こういうライブをしてるんですよ」っていうのを知ってもらえればと思うんです。47都道府県ツアーのファイナルになった7月28日の(大阪なんば)Hatchって、本当にいちばん仕上がったライブでもあったので。
EMTG:いままでは意図的にYouTubeでライブ映像を出してなかったんですか?
秋月:そうですね。「感覚ピエロ ライブ」で検索しても、ほとんど出てこないと思います。ある程度の規模感まではミュージックビデオで見てもらったほうがいいというか。ようやく俺らもHatchとかZeppの規模感でライブをやれるようになって、ちゃんとしたライブ映像作品にできるようになったから、それなら出してもいいかなと思ったんです。
EMTG:Hatchのツアーファイナルは本当に素晴らしかったし、ようやく自分たちでもライブを作品化できる自信もついてきたんでしょうね。
秋月:それこそ2013年の頃の映像も残ってますけど、出せたものじゃないから(笑)。
滝口大樹(Ba):最近、みんなで当時の映像を見たんですけど……。
秋月:そやな。あ、俺たちはちゃんと成長してるなって実感できましたね。その映像もありつつ、今回は「ありあまるフェイク」が新曲ですし、タイアップの2曲も音源化はしてなかったものになるので。かなり豪華な1枚になったんじゃないかなと思います。
EMTG:1曲目の「ありあまるフェイク」は、艶やかなピアノのイントロに新しさを感じましたけど、アグレッシブなバンド感、横山くんのラップから、締めで《「てめぇで考えろボケ」》って締めるオチまで、感エロらしさを全部詰め込んだ曲だなと思いました。
秋月:正解です! はい、次(笑)。
EMTG:いやいや(笑)。
秋月:まあ、たしかに今回のシングルはいままでの感覚ピエロをギュッとして、「エロだけ抜いた」みたいなところはありますね。
EMTG:それこそHatchのエンディングで、「来年の秋に幕張メッセでワンマンを開催する」って発表したときに流したのが初お披露目でしたよね。
秋月:サプライズにしたかったというか。ツアーファイナルでもあったし、5周年でもあったから、何かお客さんに渡したいなと思って用意したんですよ。それで、初めて横ちゃん(横山直弘/Vo・Gt)と歌詞を共作して、僕のなかでは「次のステージに向けて」っていう気持ちも込めた曲なんですよね。自分たちに向けても書いたところがあって。
西尾健太(Dr):最初の聴いたときは、「また変なん作ってきたな」と思いましたけどね。1曲なんですけど、3~4曲聴いてるような感じなんですよ。
秋月:ボリューミーですよね。
横山:僕はよく「ジェットコースターに乗ってる気分で聴いてください」って言うんですけど、本当にそういうイメージの曲だと思います。頭からケツまで何が起こるかわからない、気づいたら終わってる、みたいな。これまでも俺らって、こういうアプローチをやりがちじゃないですか。曲のなかで展開が変わって、二度と戻ってこない。最後のワンフレーズは、いままで出てこないものをやる、とか。それを奇を衒ってやるんじゃなくて、かっこいい曲っていう前提でやり切ったらどうなるんだろう? っていうのを試してみたんです。
EMTG:さっき歌詞は「自分たちに向けて」って言ってましたけど、未来に向かっているようで、それを「フェイク」=嘘って言ってしまうあたりは、どういう意図があるんですか?
秋月:ムズいんですけど、この曲が嘘っていう言い方よりは、「みんなが信じてるものって、案外嘘なんちゃうかな?」っていう投げかけなんですよね。語弊があったらアレなんですけど、たとえば「感覚ピエロを好き」って言ってくれてる人がいたとして、そこにも、たぶんその人なりの感覚ピエロの理想像があると思うんですよね。「いやいや、ほんまにそんなんないよ……」みたいな。だから、ちゃんと「自分で考えなね」っていうことなんです。
横山:それを5年目の感覚ピエロが幕張を発表したタイミングで聴いてもらいたかったんです。僕らが伝えたいメッセージっていうのは、ずっと固まってはいるんですよ。「もっと俺たちを見てくれ」「自分のことを信じていけよ」っていうことなんですけど。それを、どういう伝え方をしたらいいか? って考えたときに、最後に《「てめぇで考えろボケ」》って言ってしまう。それを自分たちに対しても歌うことで、いま俺らの周りにいろいろな言葉が飛び交ってるけど、自分たちでこの5年間を振り返ってみたときに、ちゃんと自分たちのやりたいことをやれてるか? とか、そういうことを自分にも問いかけたかったんです。「自分で考えるしかねえじゃん、お前の人生だろ?」っていうことですよね。
EMTG:感覚ピエロって、最初に登場したときから一筋縄ではいかないバンドだったけど、そういうバンドだからこその5年目のメッセージの伝え方なんでしょうね。
秋月:歌詞は横ちゃんの仮歌詞をもとに書き直してるんですけど、「てめぇで考えろボケ」のところは最初から入ってたから、本当に伝えたいことだったんだと思いますね。
EMTG:2曲目の「一瞬も一生もすべて私なんだ」。これは4月クールで放送されていたドラマ『いつまでも白い羽根』主題歌でしたね。
秋月:これはドラマありきで作った曲です。原作の小説を読んで、主人公に合わせながら、感覚ピエロの曲を好きな人に対してのメッセージをのせたっていうのが強いんですけど。
EMTG:ある意味、ロックテイストの「ありあまるフェイク」とは対照的で、感覚ピエロのキャッチーサイドの曲なんですよね。
秋月:そうかもしれないです。ドラマが始まったあと、スタジオでこの曲を練習してたら、(西尾が)「ドラマの曲や!」って言ってましたからね。自分らの曲なのに。
西尾:ドラマが好きなので、ずっと見てたんですよ。そしたら演奏してても、そのドラマのシーンが浮かんできて、泣きそうになるんです。
滝口:横山に「お前、本物やな」って言ってましたからね。「ドラマの歌ってる人や」って。
秋月:あんたのバンドや! あんたも本物の一部やないか(笑)。
全員:あはははは!
EMTG:こういう曲を聴くと、やっぱり感エロの曲のなかでも、秋月くんが作曲した曲は、バンドをお茶の間に広げるのに大切な要素だなあと思います。2年前にドラマ『ゆとりですかなにか』の主題歌として、「拝啓、いつかの君へ」が流れたときもそうでしたけど。
秋月:あれは大きかったですからね。でも、やっぱり俺らはライブが主軸なので、あんまり「世間に」っていうようなことを意識していないですけどね。そこに刺さる曲がほしいねっていうよりは、単純に「いい曲を作りたい」っていうだけなので。
EMTG:狙って書いてるわけではない?
秋月:僕は爽やかでキャッチーな曲が好きでもあるんですよね。聴くのはゴリゴリでアングラな曲も多いんですけど。作るとなると、メロディが良くないと嫌なんですよ。だから、わりと好きなように好きなものを作ってたら、こういう感じの曲になるんです。
EMTG:そうなんですね。今回のシングルって、「ありあまるフェイク」のほうは、感エロが初期から得意とするカオス感が凝縮された曲なんだけど、「一瞬も一生もすべて私なんだ」のほうは、「拝啓、いつかの君へ」以降で獲得した力強いエールソングになってる。5周年のシングルとして、すごくバランスの良い両軸になってるなと思います。
横山:良いこと言うじゃん!
秋月:それは横ちゃんが言ったことにしといてください(笑)。
EMTG:(笑)。3曲目は「夜のスピード」。ポストロックっぽい、きれいな世界観を持つ曲ですけども。感覚ピエロの新機軸じゃないですか?
横山:これは映画『パンク侍、斬られて候』のエンディングテーマとして書き下ろしたんですけど、「幻想的なものを」っていうオーダーがあったんです。
EMTG:「幻想的」って、あんまり感覚ピエロの楽曲のイメージにはないですよね。
秋月:そうですね、だから悩みましたよ(笑)。
横山:ただ、チャレンジとしてやってみたいっていうのはあったんです。もともと映画のバージョンはアコースティックだけで、バンドは入ってないんですけど。音源として収録するなら、やっぱり感覚ピエロはバンドだし、このままでほっておくよりもバンドのかたちで完成させたいっていうのがあったんですよね。それで、海外でありそうなインダストリアルな雰囲気だったり、ビートの刻み方を入れたり、途中でエモいギターのサウンドを入れていったりして。ようやくこの曲が完成した気がするので、満足してます。
滝口:ちゃんと映画のときのアコースティックなイメージは崩せたなっていうのはありますね。入れてるフレーズ自体はベタな感じだし、シンプルではあるんですけど。
秋月:この曲で鍵盤を入れてみたら、「意外と鍵盤もありだな」と思うようになったんですよね。これがなかったら、「ありあまるフェイク」にピアノは入ってなかったと思う。そこはすごく意味があったから、何でもやってみるもんやねって思いました。
西尾:僕、この曲のギターソロが好きなんですよ。それありきの曲だと思ってて。ライブでもやるんですけど、「あのギターソロ、なんであいつ(秋月)が弾いてるねん」って思う。
全員:あはははは!
秋月:ジェラシーなんや(笑)。
西尾:顔だけでも、ギターを弾いてる雰囲気でドラムを叩いてます(笑)。
EMTG:あはは、ライブを楽しみにしてます(笑)。このシングルのタイトルが、『ありあまるフィクション』になったのは、やはり「ありあまるフェイク」から派生したんですか?
横山:と言うよりは、3曲全部で表題曲っていう認識なので、特に「ありあまるフェイク」をピックアップしたっていう意思ではないんですよ。
秋月:CDの3曲とライブ映像の両方を楽しんでもらって、「ちゃんと5年経ったよ」っていうことが伝わる1枚になればいいかなと思ってます。
EMTG:いま、バンドを結成したときに思い描いていた5周年を迎えられてると思いますか?
横山:それは「ありあまるフェイク」で、“描いてた未来図なんてさ/きっと誰にもわらないけど/このままでいいから 迷いはしないで”って歌ってることが答えですね。5年前に描いてたものになってるかはわからないけど、この先も進み続けるしかないし、やりしかないよねっていうことだと思いますね。
秋月:うまくまとまったな(笑)。

【取材・文:秦理絵】





<ミュージックビデオ>

感覚ピエロ『ありあまるフェイク』Official Music Video

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リリース情報

ありあまるフィクション

ありあまるフィクション

2018年10月24日

JIJI INC.

[DISC 1 - CD -]
1.ありあまるフェイク
2.一瞬も一生もすべて私なんだ
3.夜のスピード(original ver.)

[DISC 2 - DVD -]
2018年7月28日 at 大阪 なんばHatch
IROIROTOIRO release 47都道府県TOUR FINAL

1.疑問疑答
2.さよなら人色
3.変幻
4.O・P・P・A・I
5.ハルカミライ
6.拝啓、いつかの君へ

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

感覚ピエロ2018秋冬ツアー『ありあまるフィクション TOUR』
10/26(金) Zepp Tokyo
10/28(日) 高松 DIME
11/03(土) 神戸ART HOUSE
11/04(日) 松阪 M’AXA
11/16(金) Zepp Nagoya
11/17(土) 長野 ライブハウスJ
11/24(土) Zepp Osaka Bayside
12/07(金) Zepp DiverCity Tokyo
12/09(日) Zepp Sapporo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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