THE PINBALLS、物語性を帯びたニューアルバム『時の肋骨』で新境地魅せる

THE PINBALLS | 2018.11.14

 THE PINBALLSのニューアルバム『時の肋骨』は、タイトルが全容を伝えているかのような逸品だ。「時」は1日24時間を指し、人間の「肋骨」の本数は12本。すなわちそれは収録12曲の一本一本の骨子を指す。「12」にまつわる数奇な全体像が伺える今作は、制作前から事前に練られたコンセプトアルバム。内容もこれまで以上の成長と進化が伺える1枚だ。各曲「激しさ」を根底に持ちながらも、定石通りの激しさから秘めた激しさ、ジワジワとくる激しさまでそのバリエーションも様々。中でもラストを飾る「銀河の風」は、彼らを次のステージへと導くべくエポックな秀曲につき是非多くの方に聴いてもらいたい。そんな今作についてを中心にボーカルの古川貴之に話を訊いた。

EMTG:”Leap with Lightnings tour”ファイナルのTSUTAYA O-WESTは、これまで以上にみなさんがライブにおける楽しさに目覚めた印象を持ちました。
古川貴之(以下、古川):振り返るとかなり過密なスケジュールのツアーでした(笑)。体力的にも、かなり限界ギリギリまでいきました。
EMTG:そうだったんですね。その辺り全く感じませんでした。
古川:でもそれを乗り切った先に待っていた何かを手に入れられた実感もあって。
EMTG:限界を超えた先に?
古川:そうそう。例えば前日に熱を出してそれを押してステージに上がった時も、気づけばそんなものどこかに飛んでいたり。あと観に来て下さった東京のファイナルは、実は喉の調子が万全ではなかったんです。だけどあの日は、お客さんのテンションも凄かったですからね。それに乗せられて、自分も「もう、気にしてられねぇ!」「関係ねぇ!」と挑んだら凄く楽しめたり。なんか限界を超えた際に訪れた楽しさを手に入れた感じがしたんです。いわゆる“歌を超えた瞬間”というか。
EMTG:その“歌を超えた瞬間”っていいですね。
古川:歌を上手に歌うのはマストでしょうが、やはりそれよりも大事なものが存在するんだなって。歌を「届ける」というよりも、むしろ「魂を喰らわす」であり、「きれいに歌う」よりも「自由に歌う」みたいな。気づけばそんな気概で挑んでました。それに乗化して自分も楽しんでた、まさにそんなステージでしたね。
EMTG:あの日はみなさん頼もしかったです。
古川:より自分が解放された、自由にできた気はしています。ステージに上がる直前までは不安で加湿の蒸気を「今日、俺大丈夫かな?」と心配しながら吸ってましたけど(笑)。
EMTG:ちなみに前回のツアー中、最もキツかったのは?
古川:京都でしたね。先程も話しましたが、前日に高熱が出て、当日は下がりましたが万全な状態ではなかったんです。「いつもより皆に良い声を聞かせられないかもしれない」と思っていたら、健常時よりもとても声が出て。それが凄く印象深くて。直前までコンディションが最高でもステージに上がると「あれ?」って時もあるし。不思議ですよね。
EMTG:ステージの魔物のせいでしょう(笑)。では、次回からはライブ直前には毎度体調が悪くなった方がいいのでは?(笑)
古川:わざと風邪をひいたり? しないですよ、そんなこと(笑)。都度万全で全力で臨みたいです。
EMTG:ここからはメジャー1stフルアルバム『時の肋骨』の話に。今作はみなさんのお客さんに向けての歌の届け方の配慮を感じました。
古川:そう感じますよね。嬉しいですけど、自分としてはあまりライブと音源で差が出ないように作っているし、それを使い分け出来るほど賢いバンドではないので(笑)。“ただ一生懸命にやる”それだけでした。
EMTG:今回はボーカルの伝え方に気を使っている印象を受けたんですが。
古川:フルアルバムなので色々な面があります。丁寧に歌う箇所もあれば、ガ~ッと歌う箇所もあったり。でも完成したものを聴き返して改めて「自分って凄いな」とは感じました(笑)。凄くいい作品が作れたなって。中でも今回は「激しさ」を意識して作っていきましたから。
EMTG:分かります。様々なタイプの激しく感じる曲が収まっています。
古川:激しいにも様々なタイプやニュアンスがありますからね。いわゆる騒々しいだけじゃない。
EMTG:その辺り、ラスト収録の「銀河の風」に感じました。この曲では静かなるエモさとでも言うか…。どれも熱さを秘めたり前に出したりとタイプも様々ですが、確かにどの曲も激しさを擁しています。
古川:凄く力を抜いて歌えた時も含めてどれも楽しく歌えたんですよね。歌っていて「楽しいな」と。「やはり歌は表現なんだ」と実感できましたし。
EMTG:その辺りをもう少し詳しく。
古川:臭いこと言っちゃうと、その歌の主人公になり切って歌ったりしたから色々なタイプの曲を収められたのかなって。
EMTG:各曲毎に違ったキャラが表れてますもんね。先ほどの「今回は激しさを出そう」というのはどの辺りから?
古川:正直そこまで狙ってやっていたわけでもないんですが、今回制作スケジュールがかなりタイトで。ライブを演りながらのレコ―ディングだったりもしたので、喉がダメージを受けて歌えない日もあったり。それが逆にフルパワーで挑めた要因だったのかなって。
EMTG:時間があまり無かったからこそ集中力や本気度をギュッと凝縮できたと?
古川:ですね。ボーカル録りにしても、張った声しか歌えそうにない日は、そのような曲しか歌わなかったし、声の調子が良い時は多少違ったタイプの曲を歌ったり。常にその日その日のコンディションで最適な歌をうたったんです。そのぶん余計なことを考えずに歌を入れられた気がして。楽曲ともマッチしたんでしょう。
EMTG:分かります。以前はミディアムな曲調でもボーカルだけはわざと荒っぽく、やさぐれた感じで歌ってましたもんね。これが今回の「BEAUTIFUL DAY」のように優しく柔らかく歌っている楽曲も現れて。
古川:今回は各曲かなり考えながら歌いました。その曲たちの最もベストな歌い方を探り、それに基づいて歌ったんです。「BEAUTIFUL DAY」に関してはまさにそれでした。
EMTG:あと今作は、そのような優しく響く歌が表立ったぶん古川さんのソングライティングセンスやメロディメイカーっぷりも改めて実感できました。
古川:自画自賛ですが俺も実感してます(笑)。あと今作はキチンとコンセプトや内容を熟考してから臨んだんです。一見、粗っぽそうですが設計図通りに作っていって。いわゆる全体像や各曲のイメージや流れを考えて作っていったんです。
EMTG:意外です。ちなみにそのコンセプトとは?
古川:一日の始まりから終わりまでを各曲時間軸で表現してみました。夜中で始まって夜中で終わる。1、2曲目が深夜、3曲目が暁で、朝焼けになっていき、お昼を経て午後が来て、夕焼けになって、また夜になる流れで。それを各曲2時間刻みの設定で作り、並べたんです。いわゆるアルバム1枚を聴き終えると作品の中で24時間が経っていた、みたいな。その辺りは収録曲も多く入れられるアルバムならではでしたね。俺、基本、楽曲を数字で表すのが好きなんです。図形にも通じるところがあります。
EMTG:そのシンメトリー性が?
古川:まさしくそれです。実はこの各曲はシンメトリーになっていて。1~6と7~12がちょうど12時間の対照的な時間設定になってるんです。
EMTG:その対称性には気づきませんでした…。
古川:実は前回インディーズの頃に出したフルアルバムも12曲入りでしたが、あの時は1月から12月まで毎月を各曲で表していて。干支、一日、一年……俺、12って数字は人間にとって時間にまつわる大切な数字だと思っていて。
EMTG:今回のこの仕掛けはファンやリスナーも喜びます。
古川:聴いている人に少しでも喜んでもらえたり、ちょっとでもとっておきな作品になってもらいですからね。ただ楽曲を収めただけだとつまらない。せっかくだから何かしら仕掛けや秘密を入れておきたいなと。でも、なかなかそれを気づいてもらえないんですよね。だからついこのようなインタビューで自分から種を明かしちゃう(笑)。それが俺のダメなところなんだよなぁ。嬉しくってついつい喋っちゃうタイプなんですよね(笑)。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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リリース情報

時の肋骨

時の肋骨

2018年11月14日

日本コロムビア

01. アダムの肋骨
02. 水兵と黒い犬
03. DAWN
04. 失われた宇宙
05. BEAUTIFUL DAY
06. CRACK
07. ヤンシュヴァイクマイエルの午後
08. 風見鶏の髪飾り
09. 回転する宇宙の卵
10. DUSK
11. COME ON
12. 銀河の風

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■マイ検索ワード

ハプスブルク家
人物のことを調べるのが好きで、マリーアントワネットを調べた流れで検索しました。貴族っていうのは政略結婚で領土を拡大していったんだなと。ハプスブルク家には家訓があって、『戦争は他のものにまかせておくがいい 幸いなるかな オーストリアよ 汝は 結婚すべし』って言うんですけど、貴族ってブランドを作って支配させていて、かっこいいなと。ちなみに、一族は「ハプスブルク家の顎」という特徴で知られていたようです。


■ライブ情報

THE PINBALLS unplugged
12/01(土)月見ル君想フ 《完全招待制》

みそフェス2019 supported by ZIP-FM FIND OUT
01/05(土)名古屋・新栄エリア6会場

Outside dandy 2nd E.Pリリースツアー「ROCK’N’ROLL MUSIC SHOW 東京編」
01/18(金)渋谷TSUTAYA O-Crest

end of the days tour
02/17(日)千葉LOOK
02/23(土)長野LIVE HOUSE J
02/28(木)仙台LIVE HOUSE enn 2nd
03/02(土)札幌DUCE
03/07(木)福岡Voodoo Lounge
03/09(土)高松TOONICE
03/10(日)梅田CLUB QUATTRO
03/16(土)岡山PEPPERLAND
03/17(日)名古屋CLUB QUATTRO
03/22(金)恵比寿LIQUIDROOM

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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