吉澤嘉代子 女性をテーマに性(せい)と性(さが)を描いたニューアルバム

吉澤嘉代子 | 2018.11.08

 前作「屋根裏獣」から約1年8ヶ月ぶりとなる吉澤嘉代子のニューアルバムが完成した。タイトルは『女優姉妹』。ジャケットには、1stシングル「月曜日戦争」が主題歌となったドラマ「架空 OL 日記」に出演していた佐藤 玲、メディアでも大きく取り上げられ話題となった2ndシングル「残ってる」のMVに登場したモトーラ世理奈、3rdシングル「ミューズ」のジャケットやMVでコラボレートした安達祐実、そして今作に収められた新曲「女優」のMVで主人公を演じる小川紗良という、吉澤の作品とゆかりのある女優たちが顔を揃えている。「女性」をテーマに、主人公の性(せい)と性(さが)を書き切れたらという思いで作られた本作。完成までの経緯を聞いた。

EMTG:ニューアルバム『女優姉妹』が完成しました。
吉澤:これまでリリースしてきたものが、少女時代から始まり(※「箒星図鑑)、音楽を始めて世に出た時の社会との衝突だったり(※「東京絶景」)、自分のずっと大事にしている物語だったり(※「屋根裏獣」)、内省的なものをテーマにアルバムを作ってきたんですね。この3枚のアルバムについてはデビューする前に考えていたものだったので、自然と、自分の音楽制作の根源にあるものをテーマとしていたのかなって今となっては思うんです。今回の『女優姉妹』は女性というものをテーマにしているんですが、これはデビューしてから考えたものなのでちょっとモードが違うと思います。今までの作り方は内にこもる感じだったんですが、今回は積極的に外の世界と繋がろうとしているというか。制作のことでいうと、外で歌詞を書いたりもしたんです
EMTG:あら、意外ですね!
吉澤:今まで部屋でしか書けなかったんですけど、ファミレスとかで友人と一緒にダラダラしながら書いたり(笑)。女性っていう、自分ではない他者としての個人を描くことによって、対象は自分の外にあるから、モードもすごく外に向かっていて。今までの産みの苦しみみたいなものとは種類が違う感じがしました
EMTG:「屋根裏獣」の時はちょっと苦しくて、途中お休みをしていたっていうお話もありましたね。完璧な作品を作りたいという強い思いがあったからと。
吉澤:そうですね。やっぱり自分が制作をする上での大事なもの、つまり生きる上で大事なテーマというものをアルバムに落とし込もうとしていたので、なかなか完璧なものっていうのができなくて。その差ですごく苦しかったんです。でも今回は自分の理想とするものが、自分が想像できていないところにあったので、どちらかというと楽しくできたのかなっていうのはありました
EMTG:女性というテーマに目を向けたのはどうしてだったんですか?
吉澤:私は子供の頃から自分の性について考えることが多くて。自分が言われたりされたりしたこともそうだし、自分が思わず言ってしまったことしてしまったこともそうだし、世の中に出ているニュースや社会の流れみたいなものに対してふと感じる違和感とか嫌悪感みたいなものも時々あったりするんです。もともとは、「女性」ではなく「性」についてをテーマにしようと思っていたんですね。この先生きる上で、絶対に誰しもが通るテーマみたいなものをおいていきたいなと思った時に、性というのはどうしても避けられないと思ったから。だけど、曲を集めたり削いだりしている中で、性に限定して作るのは難しいなと思い、女性というテーマに枠を広げたんです
EMTG:その難しさってどういうことだったんでしょう。
吉澤:結構、人を選ぶようなアルバムになってしまうかなと思って。すごくセクシャルなテーマの曲とかはカットしたりしました。入れたい曲はいっぱいあったんですけどね。ちょっと難しかったです
EMTG:それはそれで、どんな曲なのかめちゃくちゃ気になります(笑)。
吉澤:(笑)。これまで大人の主人公もいたんですけど、特に「箒星図鑑」とかは、ほのかな恋心みたいなものはあってもキスはしないみたいな関係性に止めたんです。そのあとの「東京絶景」は、キスまではOKみたいな(笑)。出す順番はすごく考えるほうだから少しずつ自分の中の線引きを解禁していくような感じだったんですけど、今回は朝帰りから始まって、もう全部OKみたいな感じで(笑)
EMTG:(笑)。その朝帰りの場面から始まる「残ってる」は大きな話題を呼び、現在もロングセールスを続けています。
吉澤:私の中ではすごく「よく書けた」と思ってたんです。(リリースの)2年前に書いた曲だったんですけど、満を持していい季節に出したいということで、アルバムにも入れず、そもそもシングルの話もなかったけど「シングルに入れるぞ」っていう心意気で取っておいたんですね。もともとそんな派手な曲じゃないし、発売当初はそこまでの反応じゃなかったけど、年が明けてからテレビで取り上げられて、今もじわじわと聴いてもらえてる。すごくホッとしています。自分のいいと思う感覚が世間に受け入れられて良かった、まだやっていけるんだって感じがして
EMTG:今回のアルバムのジャケットには、「残ってる」のMVに出演されたモトーラ世理奈さん、「ミューズ」の安達祐実さんなどゆかりのある女優さんが起用されています。この四姉妹の感じもすごく雰囲気がありますね。
吉澤:「姉妹」っていうのは、ジャケットのアートワークのイメージに引っ張られたんです。最初は「四人姉妹」とか、映画とかドラマとか物語っていうものもあったから「銀幕姉妹」とか考えていて。でも『女優姉妹』は女という漢字が3つ入ってるから女だらけでいいなと思ったんです(笑)。1曲目に入っている「鏡」は横山裕章さんにアレンジとプロデュースをお願いしたんですが、このジャケット写真を送って「こういう感じです」とお伝えしたら「わかった」と。言葉よりも伝わりましたと言ってくださって、このジャケットの印象を曲に落とし込むことができたんです。ビジュアルの印象って、音楽にもすごく反映されますよね
EMTG:「洋梨」もビジュアルからのご縁ですね。
吉澤:はい。「月曜日戦争」のジャケットを書いてくださったたなかみさきさんと一緒にテーマから作って、2人で歌いました。歌が上手な人はたくさんいるけど、たなかさんは歌を仕事にしてる人じゃないのにすごく自分の歌っていうものがあるなって思ったんです
EMTG:そういう作り方は珍しいですよね。
吉澤:珍しいです。ここまで共有できることってないですね。作詞って聖域というかすごく大事にしている領域なので、最初は不安もあったんです。でも、自分が気後れするくらいいいと思うものをたくさん出してくれて。閃きの人ですね。私は形式とか揃えるということにすごくこだわるので、そこから外れると「あ~~っ!!」ってなっていちいち止まっちゃうんですけど(笑)、たなかさんはとめどなく、いいと思ったものを出してくる。自分が曲を作り始めた頃を思い出したりもしました。しがらみが少なかった頃というか(笑)。刺激になったし、また一緒に何かやりたいなと思いました
EMTG:ちなみにこの曲、男性側の感想って何か聞かれました?
吉澤:ベースのハマくん(ハマ・オカモト/OKAMOTO’S)のレコーディングの日に歌の録りがあって、最後の最後まで歌詞を直してたんだけど、どう思ってたのかな? 気持ち悪いとか思ってたかな(笑)? この「熟れた果実を齧るなら 黒い種ごとのみこんでね アナタの腹から発芽する子供たちが 根を張る夢みてる」は自分の中ですごく気に入ってる2行なんですが、この「子供たちが」というところを最後まで直してたんです。最初は「恋の果実が」だったんですけど、なんか気持ち悪さが足りないと思って。本来身ごもるはずの女性がその役割を男性に担わせた途端に気持ち悪くなる、おぞましい感じが出るのがすごく不思議だなと思って書き直しました
EMTG:あと今回は、アルバムの前半で鏡という言葉が共通して使われていますね。
吉澤:鏡はまさにこの『女優姉妹』のいちばんのアイテムというか、モチーフなんです。今回の選曲の軸になったものが、自分の大切なものを誰かに任せない、自分との対峙というものに着地させるような曲を入れたいと思っていたんですね。となると、鏡というものが対峙や自分を映すものとしてすごく象徴しているなと思ったんです。志賀直哉の「剃刀」という小説にも鏡がよく出てくるんですが、ちょっとストーリーテラーの目線というか、俯瞰してみているような鏡の目線を感じたりして。鏡って、視線みたいなものでもあるかなって思いますね
EMTG:今回の曲順に関してはいかがですか? 勝手に「残ってる」で終わると予想していたので、ブラスセクションがゴージャスに響く「最終回」は度肝を抜かれました。
吉澤:たぶん「残ってる」で美しく終わる感じを期待されてるのかなとも思ったけど(笑)、今回のアルバムを通してやってみたかったこととして、あの手この手を使って、明日を生きるための術みたいなものを探すっていうこともあったので、「最終回」で美しく丁寧に紡いでいったつもりのものをひっくり返して終わりたいなと思ったんです。化けの皮をはがすような感じで
EMTG:ということは、吉澤さんの中では剥がしちゃったあとのことまでもうイメージできてるということなんでしょうね。
吉澤:そうですね、いつも3作分は頭にあるので(笑)。自分の作った曲は自分を保っている宝物というか、自分として生まれてよかったと思えるたったひとつのかけがえのないもの。曲が報われる方法で出せるように、責任を持っていつも準備してます
EMTG:では最後に、今後のツアーについても聞かせてください。
吉澤:まず12月の「みつあみクインテットツアー」は、今まで出した楽曲をいろんなアレンジでお届けしたいと思っています。来年の「女優ツアー2019」は、どんな風にやるのがいちばんいいのか、今すごく考えてるところ。どちらも大好きな方たちと一緒に演奏できるので、とても楽しみにしています

【取材・文:山田邦子】




吉澤嘉代子「女優姉妹」60秒SPOT

吉澤嘉代子「女優」MUSIC VIDEO

吉澤嘉代子「残ってる」MUSIC VIDEO

吉澤嘉代子「ミューズ」MUSIC VIDEO

吉澤嘉代子「月曜日戦争」MUSIC VIDEO

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リリース情報

女優姉妹

女優姉妹

2018年11月07日

e-stretch RECORDS

1. 鏡
2. 月曜日戦争
3. 怪盗メタモルフォーゼ
4. 女優
5. ミューズ
6. 洋梨
7. 恥ずかしい(新録)
8. よるの向日葵
9. 残ってる
10. 最終回

お知らせ

■ライブ情報

吉澤嘉代子4th ALBUM「女優姉妹」発売記念イベント(サイン会&抽選会)
11/10(土) 15:00〜
タワーレコード名古屋パルコ店
店内イベントスペース

11/11(日) 14:00〜
タワーレコード梅田大阪マルビル店
店内特設スペース

11/11(日) 19:30〜
ヴィレッジヴァンガード下北沢店
店内イベントスペース
 ※ゲスト:たなかみさき

※各イベントの詳細はこちら
http://www.crownrecord.co.jp/artist/yoshizawa/whats.html

吉澤嘉代子
「みつあみクインテットツアー」

12/04(火)[大阪]ザ・フェニックスホール 大阪
12/07(金)[愛知] 名古屋 ボトムライン
12/14(金)[東京]銀座 ヤマハホール
12/15(土)[東京]銀座 ヤマハホール

吉澤嘉代子
「女優ツアー2019」

02/10(日)[福岡] 都久志会館
02/15(金)[大阪] NHK大阪ホール
02/17(日)[広島] BLUE LIVE 広島
03/03(日)[宮城] チームスマイル・仙台PIT
03/06(水)[愛知] 名古屋市芸術創造センター
03/10(日)[北海道] Zepp札幌
03/17(日)[東京] 昭和女子大学人見記念講堂

※全国プレイガイド先行受付実施中
※12月1日〜一般チケット発売

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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