SHE’Sが丁寧に育んできた、バンドの原点と真っすぐに向き合った最新シングル

SHE’S | 2018.11.13

 SHE’Sが吹っ切れたーーそんなバンドの開放的なムードを如実に伝えるニューシングル「The Everglow」が完成した。海外のトレンドを貪欲に取り入れた前作シングル「歓びの陽」から一転して、今回の表題曲「The Everglow」は、ピアノを軸にした透明感のあるサウンド、美しくもエモーショナルなアレンジから、過去を大切に抱きしめる歌詞のテーマまで、これまでSHE’Sが丁寧に育んできたバンドの原点と真っ直ぐに向き合う1枚だ。「The Everglow」は、ボーカル・井上竜馬がもっとも影響を受けたエモ・ピアノバンドMae(メイ)の代表作からつけたもの。さらに、カップリングの「Come Back」も、バンドを始めるきっかけになったELLEGARDENへの愛を表現した曲になっている。以下のインタビューでは、SHE’Sの原点が詰まった今回のシングル誕生の経緯を訊いたが、その話のなかではメジャーデビュー以降に抱えていた葛藤やプレッシャーも明かしてくれた。その偽りのない言葉から、「音楽を楽しめている」という、バンドのいまを感じてもらえたらと思う。

EMTG:ついにMaeの曲をタイトルに掲げるときがきましたね。
井上竜馬(Vo):目標でもあったんですよね。Maeの「Everglow」を聴いてから、この言葉に魅力を感じてて。自分は「永遠」っていうものを、つくづく信じてないからこそ、いつか見つけたら書きたいなと思ってたんです。ようやく26歳になった現状の「永遠に輝いてるもの」が見つかったというか。腑に落ちた瞬間があったから書き始めました。
服部栞汰(Gt):ずっとこのタイトルの曲を書きたいって言ってたもんな。
EMTG:色褪せない、消えない想いっていうものがこの曲のテーマですけど。どうして、それを見つけられたんでしょう?
井上:1stフルアルバム『プルーストと花束』を作ったときに、過去を振り返ることに見切りをつけたところがあったんですよね。「もう、これでいいかな」と思ったから、それ以降の『Wandering』とか『Awakening』では、「いま」の自分と向き合いながら、先のことを書いてきた感覚だったんです。(前作の)「歓びの陽」もしかり。でも、やっぱり自分は過去を振り返るのが大好きなんですよ。それが恥ずかしいことというか、現実逃避をして縛られてるみたいなイメージやったんですけど、自分がしんどいときには、過去の思い出とか何気ない出来事を思い出して救われてきたのも事実なんです。過去を振り返ることで、現実とか未来と向き合っていく作業が多かったなあって。
EMTG:ええ。
井上:それで、もう1回過去を思い返していくなかで、鮮明に覚えていたことが、修学旅行で見た流星群だったんですよね。いまも、あの頃の友だちとは会うけど、そういうときって、昔話をするだけじゃなくて、いまとか先の話もする。そうすると、俺たちは全然(過去に)囚われてはいないけれど、変わってない部分があることに気づくんですよ。それが永遠に輝くものというか。大人になったら忘れてしまう感覚ですよね。最近、バンドを始めたときの気持ちって、なくした感覚が強かったんですけど。そうじゃなくて、ただ単に忘れてただけやった。なくしたもんは1個もないんやなあと思って、この曲を書いたんです。
EMTG:最近はバンドを始めたときの気持ちを忘れかけていたんですか?
井上:そうですね……。自分の気持ちが抑えられんくて、「曲を書いてみたい!」っていう気持ちでスタートした音楽が仕事になって。それは悲しいことではないんですけど、でも1個の側面しか持ってなかった最初の頃と比べたら、違う感覚が入ってるぶん、そのときの気持ちは多少忘れてるんだろうなって思ったんですよね。
EMTG:それはいまも?
井上:いや、最近まだバンドが楽しいんですよ。作曲で「うー…」って悩むことがなくて。
EMTG:竜馬くんって、たぶんSHE’Sの曲を楽しみにして待ってくれてる人の気持ちもあるから、「いまは曲を書くのがしんどい」っていうのが、現在進行形のときは絶対に言わないじゃないですか。
井上:そうですね。
EMTG:でも、前作のカップリング曲「Monologue」ではその気持ちも書いたし、「いまは楽しい」と思えてるとしたら、そのあたりの気持ちの変化を少し話してもらえますか?
井上:言ってしまえば……売れることに対して、縛られてたというか、不安があったんです。(バンドを)選んでくれたとはいえ、俺がメンバーを誘ったし。3人とも大学を卒業したのに、そのうえで社会人じゃなくて、バンドを選んでくれたんですよ。だから「売れたい」って、すっごい思うんです。そのほとんどがソングライターである自分の曲にかかってるっていう重圧がある。でも、売れることを意識することがメインになってしまったら、それは作品でも、音楽でもなくなってしまうっていう葛藤があったし。自分が結成していたときに思い描いていたSHE’Sのサウンド像は崩したくないなって思ってるからこそ、苦しい面はあって。でも、それが最近なくなった……なくなってはないけど、ちょっと肩のちからが抜けたんですよね。先の不安を気にしながら、バンド活動をしてる時間がもったいないっていうか。4人で音を出している時間が大事なわけやし。音楽を楽しまないと、続けられないし。辞めるときに「やり切ったな!」って言いながら、4人で辞めたいと思ってるんですよね。そのためにも肩のちからを抜いて楽しもうって思うようになったんです。
EMTG:そのムードは今回のシングルに全部出てると思います。
井上:嘘はつけないですね(笑)。だから、今回の「The Everglow」は、もっとポップスに寄せた作り方もできたし、歌を全面に出してバンド感がなくなる聴かせ方もできたけど、ちゃんとSHE’Sが作り上げてきた音のバランスで、絶妙なロックバンド感を出したかった。それができたから、このタイトルをつけたっていうのもあるんです。
EMTG:そうなんですね。
井上:ちょっと泣きそうになってもうた(笑)。
EMTG:目が潤んできてたから、「ああ、辛いんだな」と思って聞いてました。
広瀬臣吾(Ba):カウンセリングみたいやな。
井上:こういう話をメンバーの前でするのは初めてかも。
EMTG:いまの話、メンバーはどう思いました?
木村雅人(Dr):組んだ当初から、竜馬は「俺がなんとかする!」って言ってましたね。
広瀬:言ってた。
木村:でも、このバンドを続ける以上、誰かに責任があるわけじゃなくて、みんなでSHE’Sっていうものを抱えてると思うんですよ。
広瀬:その誘いに対して、「入る」って言ったのは、俺らやしな。
服部:言ってしまえば、途中で辞めることもできたことやし。もちろん竜馬が引っ張ってくれてる気持ちもあるけど、俺らは完全についていってるだけじゃないし。どっちかと言えば、一緒にやってる気持ちやし。
広瀬:竜馬が崩れてもバンド終わりやけど、服部が崩れてもバンドは終わりやから。
井上:せやな……。
広瀬:そこは誰が崩れても一緒なわけやん。
井上:SHE’Sはそうやなあ。
広瀬:それがバンドのロマンや!
井上:せやなあ(笑)。
服部:SHE’Sはちゃんと助け合って4人でやってると思いますよ。上がってくる曲から、どんどん竜馬が成長してるのもわかるし。毎回、前作を更新してくれるから、やってて楽しいんですよ。……これがプレッシャーになったら、アレなんですけど(笑)。
EMTG:竜馬くんが思ってるほど、メンバーは誘われたこととか、責任がどうかなんか考えてないし。もっと信頼してあげないと。
井上:うん。メンバーがそう思ってくれるのは支えやけど……。俺が3人にもたれかかって甘えたら終わりやとも思うんです。だから、「俺の曲にSHE’Sがかかってるぞ」っていう危機感は持っていこうと思いますね。けっこう体育会系の脳なのかもしれないです(笑)。
EMTG:(笑)。そうやって、いろいろ整理できたタイミングだからこそ、「The Everglow」はmaeだし、2曲目「Come Back」はエルレのオマージュなんだろうし。
木村:いままでの竜馬は、ジャンルというか、「こういうのに寄せてたほうがいいかな?」っていろいろ考えてたと思うんですけど。今回の3曲は、竜馬の内から出たものというか。どれも竜馬らしい曲なんですよ。出てきたものをそのまま書いたっていうことですよね。
EMTG:それが今回のシングルを出す意味なんだと思います。それにしても、「Come Back」はエルレ愛がダダ洩れですね(笑)。
井上:まさに。「エルレ、おかえり」の曲ですね。
広瀬:井上竜馬サービスコーナーです(笑)。
井上:2番のサビ、〈I’m on your side〉は、エルレの歌詞ですからね。
EMTG:復活に寄せて、書かずにはいられなかった?
井上:もはや使命感です(笑)。
広瀬:誰しもが、竜馬のエルレみたいなアーティストがいると思うんですよね。
EMTG:音楽によって、自分を変えられるような衝撃的な体験というか。
広瀬:そう。この曲は、竜馬の個人的なエルレに対する気持ちかもしれんけど、みんなに通じる曲だと思うんです。
服部:僕ら自身も誰かのそういう存在になりたいっていうところもあるし。
井上:たしかになあ。今回はもうエルレっぽく仕上がればいいなと思って作ったんですよ。ギターはストレオで壁っぽくして、ちょっと歌は小っちゃめ。エルレを中学生ぐらいで聴いたとき、「楽器が爆音すぎて、歌詞が聞きとられへん」って思ってたんですよね。それがかっこよかった。この曲、エンジニアさんはミックスで歌が聴こえるようにしてくれてたんですよ、それはSHE’Sだから。でも、「楽器を上げて、ボーカルを下げてください」って言ったんです。歌詞も英語やし、メッセージというより、これは愛やから。
EMTG:自分の愛をぶちまけるだけの曲をシングルに入れちゃえ!って踏み切れるのも、ちょっと前の竜馬くんだったらNGだったでしょうね。
井上:それこそ肩のちからが抜けてたからいいんじゃないですかね。
EMTG:3曲目の「月は美しく」はジャズっぽい要素も取り入れたミディアムバラード。
井上:この曲は気に入ってますね。ビリー・ジョエルとか、ああいう時代の音にしたいなって思ったんです。ちょうどベン・フォールズ・ファイブが、自分のなかで再燃してたのも重なって。あと、片思いの歌を書いたことないなと思ったんですよね。失恋は歌ってきたけど。お客さんから「片思いの曲を聴きたい」って言われて書いたのが、「C.K.C.S.」やったから。
EMTG:片思いの相手が犬だった(笑)。
井上:結局、人やないっていう。でも、こんなふうに〈あなたに会いたい〉とかも、昔の自分は歌ってなかったでしょうね。
服部:うん、そういうのは書きたくないって言ってたような記憶がありますね。
EMTG:ストレートすぎるから?
井上:そう。恋愛の曲で「愛してる」とか「好きだよ」っていうのは抵抗があるんです。
EMTG:じゃあ、「月が美しいのです」という言葉を使ったのは、夏目漱石の引用ですか?
井上:いや、違います。
広瀬:夏目漱石って何か言ってるんですか?
EMTG:「I LOVE YOU」という言葉を日本語で訳すときに、夏目漱石は「月がきれいですね」って表現したっていう逸話があるんですよ。
広瀬:それ、めっちゃオシャレやん! 正味、アイラブユー的な気持ちやけど、恥ずかしいから、〈月は美しい〉って歌ってるわけで。
木村:ええなあ。
服部:(竜馬は)夏目漱石と同じ考えってことや。
井上:思いついてもうたなあ。
全員:あはははは!
井上:まあ、これは単純に、会いたいのに、会えないときに、ベランダで月を見たら、すごく真ん丸できれいだったんですよね。その完璧な真ん丸が痛いというか。美しいものとか、きれいなものを見ると、妙に自分の不甲斐なさに胸が痛むっていうことを表現したんですけど。……でも、(夏目漱石と)同じ感覚を持ってるんですかねえ(笑)。
EMTG:SHE’Sって日本語のタイトルをつけるとき、少し文学的になりますよね。
井上:日本語のタイトルって緊張するんですよね。
服部:いろいろ想像できちゃうから。
井上:もう少しベールがある感じがいいんですよ。それが、俺がSHE’Sっていうバンドに対して抱いてるイメージでもあって。
EMTG:もっと淡いものであってほしい。
井上:極端に言ったら……「君を愛してる」っていうタイトルは絶対につけないと思うんですよ。もっと奥ゆかしさがほしいから。
広瀬:「君を愛してる」は、なかなかタイトルとしてないと思うけどな。
服部:他の人もつけないよね(笑)。
EMTG:キムくん、この曲のサウンドに関しては、どんなふうに取り組みましたか?
木村:最初に作るとき、ジャジーにって言われたんですけど……。
井上:そうや! ほんまにキム、すごかったんですよ。最初に俺が作ったデモに、打ち込みのドラムで返してくるんですけど。俺は、「ジャズっぽいミニマムな感じでやってくれへん?」って送ったのに、めちゃくちゃいつもどおりのが返ってきた。
広瀬・服部:あははははは!
井上:「うそやろ!?」って、すぐ連絡しました。「俺の説明、聞いてたか!? 何してくれてんねんっ(怒)!」って。
広瀬:あれはスゴかった(笑)。
井上:あと、この曲はギターソロがいちばんいい。
服部:いつも僕は新しい音というより、いまっぽくないことを意識してやってるんですけど、さらに昔っぽい音にしてますね。古臭い音にするために、4本ぐらいギターを変えて、エフェクターを変えて、「これやな!」っていうところを探しました。
広瀬:ちょいちょい溜めて弾いてるのが面白いよな。
井上:こんなギターを弾くやつ、マジで同世代におらんと思うわ。
EMTG:それも「誰が欠けてもSHE’Sじゃない」っていう、前半の話にも通じますよね。
井上:うん、そうだと思います。
EMTG:最後に、秋から春にかけて全国ワンマンツアーが控えてるということで。秋は小さめのライブハウス中心ですね。ファイナルはメジャーデビューを発表した渋谷クアトロで。
井上:クアトロのワンマンはメジャーデビュー以来ですね。ホールとかを経験してきたぶん、そこで得たものも含めて、いまのSHE’Sの大きさみたいなものをライブハウスで出せたらなっていうのはありますね。あの日、「変わらずに変わっていく」っていう言葉を発した、あの日の約束を体現できるライブにしたいです。
EMTG:春ツアーのファイナルでは、いよいよ東京はZepp Tokyoが決まりましたね。バンドにとって最大規模のキャパシティに挑戦するわけですが。
井上:実は前回のツアーでも、EX(THEATER)じゃなくて、Zeppをやってもよかったんですけど、俺らは一歩一歩ちゃんとやっていきたいっていうのがあったんです。だから、去年もやった、(大阪)なんばHatchと(名古屋の)ダイヤモンドホールは数枚売れきれなかったから、来年もう1回やる。そこをきっちり埋めていくっていう、ライブハウスで育ってきたからこその感覚みたいなものは大事にしたいなっていうのもあるんです。
EMTG:3人もライブへの意気込みをお願いします。
服部:秋のライブハウスツアーは「ひとつになる」っていう意味で、「The One」っていうタイトルなんですけど、年明けのツアーもキャパはデカくなるけど、秋ツアーで掲げる「ひとつになる」っていう気持ちを継続したままやれたらいいなと思います。
木村:秋のツアーでは、僕たちは「ライブバンド」だっていうのを見てもらって。その熱量を春のツアーにも持っていきたいです。
広瀬:クアトロって、僕らにとっていちばん良いサイズ感なんですよね。それが楽しみすぎて、来年が怖くならないか心配だけど(笑)。両方ともワンマンで、来年は、今年行けなかった場所にも行くので、楽しみにしてほしいと思います。

【取材・文:秦 理絵】

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リリース情報

The Everglow

The Everglow

2018年11月14日

ユニバーサルミュージック

01. The Everglow
02. Come Back
03. 月は美しく
04. The Everglow (Instrumental Version)
05. The Everglow (Backing Track Version)

お知らせ

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■ライブ情報

SHE’S Autumn Tour 2018 “The One”
11/16(金)福岡 DRUM Be-1
11/18(日)広島 CLUB QUATTRO
11/21(水)札幌 KRAPS HALL
11/24(土)名古屋 CLUB QUATTRO
11/25(日)大阪 CLUB QUATTRO
11/28(水)仙台 darwin
11/29(木)渋谷 CLUB QUATTRO

SHE’S Tour 2019
02/16(土) 郡山 HIPSHOT JAPAN
02/23(土) KYOTO MUSE
02/24(日) 高松 DIME
03/01(金) 浜松 Live House 窓枠
03/15(金) 札幌 PENNY LANE24
03/17(日) 仙台 Rensa
03/20(水) YEBISU YA PRO
03/21(木・祝) 福岡DRUM Logos
03/23(土) HIROSHIMA CLUB QUATTRO
03/24(日) 名古屋 DIAMOND HALL
04/06(土) 松本 ALECX
04/07(日) 金沢 EIGHT HALL
04/13(土) なんばHatch
04/20(土) ZeppTokyo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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