ユアネス、『Ctrl+Z』の続編でもある新作EP『Shift』に隠されたメッセージ

ユアネス | 2018.11.19

 初の全国流通盤ミニアルバム『Ctrl+Z』のリリースから半年。初のワンマンライブや多くのフェス/サーキット出演を経て、ユアネスが新作EP『Shift』を11月21日にリリースする。前作に続き、パソコンのキーボードを連想させるタイトルが表すとおり、今作は『Ctrl+Z』の続編であり、2枚でひとつの作品になるように位置づけられている。「Ctrl+Z」に「Shift」が加わることで、元に戻した行動を「やり直す」という意味。ポストロックやシューゲイザーの作法を取り入れた複雑なバンドアンサンブルを貫きながら、より“歌もの”としてのスタンスを強く打ち出した今作には、「ユアネス」にしか表現できない世界が描かれている。作品の随所に隠された言葉遊び、いかようにも解釈できる歌詞の物語性。それを生み出すバンドのブレーン的存在=古閑翔平(Gt)を中心に、メンバー全員に話を訊いた。
EMTG:前作『Ctrl+Z』をリリースしてから、東京に上京してきたそうですね。
田中雄大(Ba):東京ワンマンの前に引っ越してきました。
EMTG:音楽をやる上で、変化はありますか?
田中:こっちに出てくると、地元でやっていたときよりも、音楽への本気度が高い人が多いので。いままでよりも一生懸命やらなきゃいけないなって思います。良い意味の焦りというか、「目の前のことをやらなきゃ!」っていうのはありますね。
黒川侑司(Gt/Vo):いままでの僕らはスローペースだったんですよ。作品を作るときは作る。ライブをするときはするっていう感じでわけてたんですけど。いまは全部が同時進行で、音楽一筋の生活を送れている感じがして、とても楽しい日々ですね。
古閑翔平(Gt):スタジオに入る回数が増えたので、音楽に向き合える時間が増えたんです。自分たちの音楽をより良くするための時間が増えたから、それは良いことだと思ってます。
小野:完全に音楽だけの生活を送れてるので、あっと言う間に年末っていう感じですよね……まだ年末じゃないですけど(笑)。
黒川:うん(笑)。
EMTG:先日も代官山ユニットの対バンを見させてもらいましたけど、いままで以上にバンドの一体感が増した、良いライブをするようになりましたね。
黒川:あ、嬉しいです。
EMTG:前作以降、出演してきたライブとかイベントで印象に残ってるものはあります?
黒川:夏フェスとかサーキットで言うと、去年も出ていたイベントに今年も呼んでいただけるのがうれしかったですね。ロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)とか。
田中:去年は出られるっていうことが、ある意味ゴールだったんです。でも、今年以降の夏フェスとかサーキットでは、「やったー!」だけじゃダメなのがわかったし、そこで何をお客さんの心に残せるかっていうのが課題だったんですよ。
小野:出られるだけで満足しちゃいけないって思いましたね。
EMTG:そういう経験も積んでいるなかでリリースされるのが『Shift』になります。『Ctrl+Z』の続編だそうですけど、最初から繋がる作品にしたいと思っていたんですか?
古閑:思ってましたね。『Ctrl+Z』を作ったときから、ボタンの連携で『Shift』もあったら面白いなっていう発想があったので。次に出すときは、EPのサイズにして、2枚で1枚のフルアルバムみたいな感じで聴けたら面白いかなと思ってました。Ctrl+ZにShiftボタンを足すことで、元に戻した行動を「やり直す」っていう意味になるので。前作よりも「前を向けるように」っていうメッセージを込めたいなと思いました。
EMTG:古閑くんが考えるコンセプトはメンバーとも早い段階で共有していたんですか?
古閑:いや、全然言わないです。
黒川:前作を作ってるときは知らなかった……。
田中:こういうインタビューをしてるときにわかることも多いんです。
古閑:「うわ、マジか!?」みたいな(笑)。
黒川:よくあります。
EMTG:そうなんですね(笑)。自分たちでは、今回どんな作品になったと思いますか?
小野:全体的に“歌もの”の曲が多いと思うんですよね。ボーカルを生かした曲が多いから、うちのボーカルの本領発揮かなと思います。
田中:さっきの話にも通じますけど、僕らは、あんまりやりたいことをお互いに共有しないバンドなんですね。仲は良いけど、一致団結っていうより、それぞれが察しながら音楽を作っていくやり方なんですけど。その中でいちばん大事にしてるのが歌なんです。
EMTG:“歌もの”でありたいっていうのは、前作『Ctrl+Z』のインタビューでも話してましたけど、「より歌を大事にする」というのは、具体的にはどういうことだったんですか? 歌のために楽器の音数を減らすようなことはしていないと思うんですよ。
田中:そうですね。「凩」では、最初よりギターのリフはだいぶ付け足したりしてるし。空間をあけて歌に譲るっていうよりは、どう一緒に補強していくかっていう感じなのかな。
小野:引き算の方法が変わったのかもしれないですね。
黒川:今回は最初に歌が決まっていて、そこで弾く、弾かないっていう取捨選択をやってるんです。いままではオケを作ってから歌うっていう順番だったんですけど。
古閑:すべて歌が基盤ですよね。スタジオで黒川が歌って、俺たちが演奏して、「あれ? 出過ぎとる」みたいな感じで削ったり、追加したりして。ギリギリを見極めていったんです。
EMTG:同じように“歌もの”を目指した作品でも、前作とは成り立ちが違うと。
黒川:だから、僕は最初に歌うだけで終わりました(笑)。
古閑:メンバーには、いろいろな我が侭を聞いてもらったなと思いますね。
EMTG:古閑くんの我が侭というのは?
小野:ボーカルは大変だったんじゃない?
古閑:いや、ドラム、ベースも大変だったと思いますよ。
田中:ドラムは大変だったよね。(小野は)難しいことも叩けるんですけど。(古閑は)「腕3本いるよね、これ」みたいなデモを作ってくるんですよ。「足3本いるよね」とか。それをどうにか叩こうしてるのを横で見て、「怖ぇ……」って思ってました(笑)。
小野:ベースもけっこうヤバかったもんね。
田中:「俺、もう1本腕を生やしてこないとできないぞ」っていう。
EMTG:(笑)。
古閑:基本、ドラムとベースは演奏できるレベルが高いので、作ったものが何か寂しいなと思ったとき、ふたりに無茶振りにするんですよ。
田中:それは嬉しいよね。「頼られてるな」と思うし。
小野:自分のパワーアップになるしね。
黒川:僕はそれを黙って見守ってました。「すごい……それ、頼むんだあ」(引き気味)って。
全員:あはははは!
EMTG:特に「少年少女をやめてから」は相当難しいことをやってるから……。
古閑:いちばんキツかったでしょうね。「もっとスラップ入れてよ」とか言ったので。
田中:あれは本当に大変でしたね(笑)。
EMTG:ボーカルに関しても、古閑くんの我が侭が発揮された部分はありましたか(笑)?
古閑:RECで難しい部分があって。
黒川:「夜中に」とか「日々、月を見る」っていう曲は、ボーカルが細かいところまで聴こえてきちゃうんですよ。息遣いというか。だから(古閑に)「もっと悲しそうな感じを出して」とか言われるんですけど、歌ってる身としては、正直あんまりわからないんです。心では悲しく思ってても、聞く側には伝わってないこともあるので。その期待にどれだけ応えられるかっていうのはありました。我が侭だとは思わないけど、手こずりましたね。
EMTG:それが「あ、できた」と思えたきっかけはあったんですか?
黒川:ありました。最初のころ、自分としてはピッチも正しくて、「かっこよく歌えた」と思っても、(古閑に)「もうちょっといけるだろ?」って言われ続けたんですよ。で、ずーっと何が悪いのかわからなくて、全然歌えなくなったりもして。それで、家で宅録した過去の音源を聴いてみたら、あんまり何も考えずに歌ってるほうが歌の表情が出てたんです。そこから気持ちをリセットして、あんまり考えないで歌ったら、「いいよ」って言われたんですよ。考えすぎてダメになっちゃうタイプなんですよね。それがわかってから、ライブでも表情を出せるようになったので、結果的に良いレコーディングだったんだと思います。
古閑:たぶん、きれいに歌おうとしてたんですよね。それは楽器も同じで。それをいったん捨てましょう、っていうことだったんですよね。
EMTG:リード曲の「凩」は、結成当時からある曲だそうですね。
古閑:小野ちゃん加入前ですよね。
黒川:いちばん最初にできたボーカル入りの曲なんですよ。
EMTG:ユアネスにとっては転換点になった曲?
古閑:そうですね。自主制作でCDを出していたときに、一回レコーディングをしたこともあったんですけど、なかなか納得のいくものにならなくて。ようやく自分でも「できる」って思えたし、いまの季節感的にも合ってるからリリースすることにしたんです。
EMTG:「凩」は歌い出しが、“「変わんないね」”というセリフなのが印象的でした。1曲目には「変化に気づかない」っていうポエトリーリーディングもあって。時間の流れのなかで、変わる、変わらないというのが、ひとつ作品のテーマのように思いましたが。
黒川:そうですね。今回のEPは「前を向く」っていうテーマがあったから、果たして振り返るのをやめて、前を向いたことで、私はどう変わっているのか、変わっていないのか。または端から見たときに、変化に気づかれないのは、私が変化していないのか、あなたが自分の変化に気づいていないのか。いろいろなことを感じてもらえたらと思ったんです。
EMTG:4曲目「T0YUE9」はインスト曲で、これは「かわんないよ」と読むそうですけど。
古閑:MacBookで、この文字の羅列で叩くと、「かわんないよ」になるんですよ。
EMTG:ローマ字入力じゃなくて、かな入力で考えるんですね。たとえがアレですけど……『名探偵コナン』のダイイングメッセージにあるような(笑)。
全員:あはあはは!
田中:あるある(笑)。
古閑:もともと「夜中に」のSEを作りたいっていうのがあったんです。「少年少女をやめてから」と「夜中に」のあいだでバシッとサウンドが変わっちゃうので、夜のシーンに変わる音を作りたかったんです。『Ctrl+Z』と『Shift』っていう作品だから、キーボードで何か面白いタイトルにしたいなと思ったときに、「これ、いけるやん!」ってなったんですよね。
小野:まあ、僕は最初「とゆえないん」って読んでましけど。
田中:「とゆえきゅー」とかね(笑)。
古閑:ふたつ目はO(オー)じゃない、0(ゼロ)だからね。
EMTG:今作で、他にそういう言葉遊びを入れたところはありますか?
古閑:最後の「日々、月を見る」っていうタイトルには、「明日」っていう漢字が入ってるんです。明日って「日、月、日」で成り立っている漢字ですよね。日々の隙間にこぼしてしまって、月が見えなくなったら、「明日が見えなくなる」っていう意味になるかなあって。
EMTG:ああ、なるほど!
黒川:これも言葉遊びだよね。
EMTG:「T0YUE9」といい、「日々、月を見る」といい、古閑くんの言葉遊びの感性は、何に影響されたものなんですか?
古閑:何に影響!?……ゲームかなあ(笑)。
黒川:伏線が入ってるゲームとかは好きだよね。
田中:隠し要素とか。
黒川:それが楽しかったから、自分でもやってみたいんだと思います。
EMTG:2枚目の作品を作り終えて、ユアネスというバンドにどんな可能性を感じていますか?
小野:歌を大事にしたいけど、いろいろなことをやれるバンドだなと思いますね。
古閑:どこを向いても正解を出せそうなバンドだなと思います。
黒川:これから先も古閑がいろいろなところから知識を吸収することで、また違うアプローチの仕方でバンドが広がっているんだろうなっていうのはありますね。それを僕らも楽しみにしてるところがあるので。(古閑に)期待して待ってます。
EMTG:ちなみに『Shift』のあと、さらに続編もあるのかな? と予想してるんですけど。
古閑:いやいや、それは言えませんよ(笑)。

【取材・文:秦理絵】




<ミュージックビデオ>

ユアネス「凩」MV 

ユアネス「Shift」Trailer Movie

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リリース情報

Shift

Shift

2018年11月21日

HIP LAND MUSIC

01.変化に気づかない
02.凩
03.少年少女をやめてから
04.T0YUE9
05.夜中に
06.日々、月を見る

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

Moving Monthly Style presents 「ユアネスを愛でる!トーク&ライブ」(*応募抽選)
2018年11月26(月)FM FUKUOKA本社1階 AIGスタジオ

rockin’on presents JAPAN’S NEXT 渋谷JACK 2018 WINTER
12/09(日)
TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WEST / TSUTAYA O-Crest / TSUTAYA O-nest / duo MUSIC EXCHANGE / 渋谷7th FLOOR / clubasia

大ナナイトvol.120
12/15(土)HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1

MERRY ROCK PARADE 2018
12/22(土)・23(日)・24(月・祝)
愛知 ポートメッセなごや1〜3号館

COUNTDOWN JAPAN 18/19
12/28(金)・29(土)・30(日)・31(月)
幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール

Shift Tour 2019
01/05(土)福岡 INSA
01/13(日)渋谷 WWW
01/19(土)名古屋 APOLLO BASE
01/20(日)大阪 RUIDO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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