キュウソの本質が醸し出されたニューアルバム

キュウソネコカミ | 2018.12.03

 最新アルバム『ギリ平成』は、キュウソネコカミの本質にあるものが自ずと醸し出されているアルバムと言っていいのではないだろうか。ユニークな切り口の歌詞や工夫を凝らした全力投球のライブパフォーマンスに注目が集まることが非常に多い彼らだが、実はとてもエモーショナルでスリリングなサウンドを奏でていて、リスナーの涙腺を刺激するメロディや温かいメッセージ性に満ちたバンドでもあることが、今作に収録されている曲に耳を傾けると、とてもよくわかる。このアルバムに関するエピソード、キュウソネコカミの活動の根本にある姿勢についてメンバーたちに語ってもらった。

EMTG:キュウソネコカミって「面白い」っていう部分が先行して認識されがちですけど、実はすごくグッとくる音楽を作っているバンドですよね?
ヤマサキ セイヤ(Vo・G):僕らは表向きは「踊れる」「面白い」っていうようなワイワイバンドなんですけど、ブルースを含んだ音楽を作ってますからね。
オカザワ カズマ(G):最初、マネージャーがつけた「キュウソネコカミとはこういうバンド」っていうの、なんやったっけ?
ヨコタ シンノスケ(Key・Vo):「全方位対応型ネガティブディスコパンクバンド」?
オカザワ:それだ!
ヤマサキ:そういう受け止められ方ではあるんですけど、ブルースの要素はずっとあったんですよ。
EMTG:「面白い」だけでは、ここまで支持されながら活動が続くことはなかったと思いますよ。
ヤマサキ:「面白い」としてだけ見ると、僕たちはそんなに面白くないですからね。
EMTG:いや。すごく面白いのはたしかです。
ヤマサキ:でも、俺ら、笑かそうとはしてないですから。
EMTG:言い換えると、辿り着きたいゴールが「笑える」ではないということですよね?
ヤマサキ:そうです。「笑ってくれた方が嬉しい」というのはあります。それは関西に住んでる身として持ってるものなんでしょうけど。
EMTG:キュウソネコカミが、面白いだけでのバンドではないというのは、ライブに来てくれるような人たちには伝わっているんじゃないですか?
ヨコタ:そうだと思います。こっちが自虐めいたことを言っても、「そんな風に思ったことありません!」って言ってくれますから。
ヤマサキ:でも、そう言われると「思ったって言えや!」ってなるんですけど(笑)。
EMTG:(笑)あと、僕からもうひとつ強調しておきたいのは、みなさんがすごく真剣に音楽をやっていて、いいプレイ、メロディを連発しているという点です。「かっこいいロックバンド」って言い切れると思うんですけど。
ヤマサキ:ライブに来てみたら「泣けるやん!」とか「真面目やん!」っていうのも発見してもらえるのかもしれないですね。
EMTG:ライブでも各々の楽器の見せ場があるじゃないですか。
ヨコタ:たしかに「ここでソロがほしいよね?」っていうところでやってくれますからね。
オカザワ:今回のアルバムも音がすごくいい感じで録れてますし、聴き応えのあるものになってると思います。
EMTG:ソゴウさんも、ドラムヒーローとしての自負はあるのでは?
ソゴウ タイスケ(Dr):ドラムヒーローとしての自負は……ないです!
ヤマサキ:この人、ほんとにそういうのないんですよ。「ヒーローになれ!」っていう時間を与えてもならないので。
ヨコタ:「ドラムヒーロー」じゃなければ何なの?
ソゴウ:……そういう自分は何なの?
ヨコタ:俺、ヒーローだから(笑)。お前もこの前、NHKホールではじけてたじゃないか。
ソゴウ:まあ、和太鼓は叩きましたしね。
EMTG:ライブでカワクボさんに憧れの眼差しを注ぐベース少年もいるでしょうね。今回のアルバムでも、レッド・ホット・チリペッパーズのフリーみたいなかっこいいベースプレイをしているじゃないですか。
ヨコタ:「KENKO不KENKO」ですね。あれはミクスチャーへのオマージュたっぷりのベースですから。
カワクボ タクロウ(B):まあ、こういうのは好きなんです(笑)。
EMTG:あと、キュウソネコカミの泣けるメロディを際立たせる上で、シンノスケさんのキーボードが果たしている役割は大きいと、今作を聴いて思いました。
ヨコタ:そこは今回、かなり意識しました。レコーディングの時にエンジニアさんと「これだ!」って盛り上がりつつ、「これだ!」がなんでなのかよくわかってないこともあったんですけど。でも、そういうなんとなくのものが、いい感じになっていったんですよね。
EMTG:音楽面の深みも含めて、わかりやすく伝わるのが今作だと思います。改めて訊くのも変ですけど、なんで今までそういう部分がなかなか一般層に伝わらなかったんですかね?
ヤマサキ:僕ら自身が宣伝が下手なんですよ。
ヨコタ:そこを自分たちでアピールした時点で、何かがちょっとズレちゃう感じもありますし。
EMTG:そこをみなさんに代わってアピールするのが、こういう記事の役割?
ヨコタ:誰かが言ってくれないと(笑)。
EMTG:(笑)4月にリリースしたシングルに収録されていた「The band」と「越えていけ」も、すごくいい音楽をやっているバンドであることを示していたと思いますけどね。
オカザワ:「The band」は、他のバンドの人からも「いい曲だね」って言ってもらえてました。
ヤマサキ:僕自身もこの曲を作りながら、なんとなくクるものがありました(笑)。
オカザワ:「越えていけ」は、家族とか知り合いからの反応が大きかったです。
EMTG:この2曲が、今回のアルバムの主要な柱になっている印象です。
ヨコタ:この2曲は、たしかに重要でした。アルバムを作る中で「あの2曲があるから大丈夫」っていうような話をみんなでしてましたから。
EMTG:こういうグッとクる曲の根本にあるものって、やはり反骨精神?
ヤマサキ:そうですね。反骨精神は、あった方がいいと思ってますので。これがなくならないようにはしたいんですけど、なくなるくらい売れたいとも思ってます(笑)。
EMTG:スーパースターになってランボルギーニとかに乗るようになったら、キュウソネコカミは変わってしまうんでしょうか?
ヤマサキ:ランボルギーニ乗りまわせんやろなあ。
ソゴウ:想像することが全然できない……。
オカザワ:乗ってる自分を俯瞰して見ちゃうとちょっと……。
ヤマサキ:「それを買うんやったら、もっといろんなことできるやろ!」っていうケチな脳が働くんでしょうね(笑)。あるいは、オカザワにランボルギーニを買わせて、その様子をカメラで撮るかも。
オカザワ:この人(ヤマサキ)、他の人に無理やり物を買わせるの、好きなんですよ(笑)。
EMTG:(笑)反骨精神がすごく根本にあるし、自虐はするけど、卑屈で暗い方向に行かないところも、今作を聴いて再確認させられたキュウソネコカミです。
ヤマサキ:俺たち、仮に自慢したとしたら腹立つでしょうね。華やかなことを言える顔面ではないんで。それよりも自虐の方が性に合ってるし、むしろそっちの方が俺らのリアルだし、実際、そういう生活なんですよ。まあとにかく、自虐が好きっていうよりも、そっちの方が面白いっていうのもあります。
ヨコタ:手放しで「かっこいい!」って褒めると、キュウソネコカミじゃない感じになるのも、そういうことと関係あるんでしょうね。俺らも「すごくいいアルバムができたよ」までは言えるけど「聴いた全員の人生を変えるアルバムです!」っていうところまでは言えないですし。
EMTG:例えば「遊泳」は、すごくいい曲ですよ。追い詰められてもネガティブな方向に自分を持って行かない姿勢が出ているこの曲、キュウソネコカミの窮鼠としてのプライドを感じます。これを聴いて泣くお客さんがいるんじゃないでしょうか。 
ヨコタ:曲を聴いて泣いてるお客さんは、実際、ライブでいますからね。「俺らなんかで泣くなよ」っていうスタンスで茶化すことはやめたんです。そういうことも思わないくらい、俺らも「誰かの心をざわつかせているはずだ」という自信があるし、俺らもお客さんの感情が動いてるのを見ると嬉しいんですよ。
EMTG:でも、こういう部分を全開で自分たちからアピールするバンドではないというわけですね?
ヨコタ:はい。だから突き抜けにくいところはあるんです。今、すごく応援してくれてる人たちが「聴いてて良かった」って思うのは、10年後とかなのかも。その頃にフェスとかワンマンで盛り上がってる中で「キュウソはもともとすごいバンドだったよ」って思ってもらえるのかなと想像してます。
カワクボ:「今頃キュウソのすごさに気づいたの?」ってなってもらえたら嬉しいですよ。 
EMTG:今作は、そういう未来を作るための意義ある一歩なんでしょうね。アルバムタイトルが『ギリ平成』で、「ギリ昭和」という曲も作った経緯は何だったんですか?
ヨコタ:「ギリ昭和」を作るきっかけになったのは、go!go!vanillasとの広島での対バンです。彼らに「平成ペイン」という曲があって、俺らは全員昭和生まれなので「ギリ昭和」を作ったんです。アルバムのタイトルの『ギリ平成』は、なんとなく(笑)。年明けに回るツアーが終わるのが4月だし、ギリギリ平成なので、このタイトルは収まりが良かったんです。
EMTG:「ゆとり」とか「バブル世代」とか言い合って世代間は争いがちですけど、異なる価値観同士の《唱和》を示すこの「ギリ昭和」、素敵なメッセージソングだと思いました。
ヤマサキ:世代間でぶつかるのって、日本だけなんですかね? 敬語があるからいけないのかも。
EMTG:斬新な説です(笑)。
ヨコタ:「平成の次の新しい元号になったら、みんな準新作になって同じラインに並ぶんだよ」っていうくらいのメッセージなのが、この曲のいいところだと思います。「それぞれの立場で行きましょう」っていう感じなので。
EMTG:誰も悪者にしていない、すごくラブ&ピースの曲ですよね。
ヨコタ:そうですね。すごく平和に終わってます。
EMTG:次の元号が「窮鼠」になったら、すごく平和な世の中になるのかも。
ヤマサキ:「追い詰められたネズミ」っていう意味の元号はヤバいですよ!
オカザワ:「日本、大丈夫か!?」ってなる(笑)。
EMTG:(笑)あと、今作を語る上で「米」というモチーフも、非常に重要ですよね。「炊き上がれ召し上がれ」と「米米米米」という名曲が誕生しましたから。
ヤマサキ:株式会社クボタさんの『クボタ LOVE米プロジェクト』というのに参加させていただくことになって、「米米米米」を作ったんです。この曲が、一番作るのに苦労しました。米に関して明るくポップに歌ってる某バンドの曲が既に世の中に出てますし。
ヨコタ:打首獄門同好会の「日本の米は世界一」のことです(笑)。この前、対バンもしました。
ヤマサキ:彼らとは違うアプローチを考えて、「米米米米」はラブソングにしました。僕、米がめっちゃ好きなんですよ。
EMTG:「米米米米」と書いて「ベイマイベイベー」と読ませるのが粋じゃないですか。
ヨコタ:このタイトルをつけた時は、みんなが「おおっー!」ってなってました。
EMTG:「炊き上がれ召し上がれ」も見事です。炊きたてのご飯の美味しさという壮大なロマン、炊き上がる過程の熱いドラマを実感させてくれる曲ですよ。
ヤマサキ:炊飯器、どこのメーカー使ってます?
EMTG:僕、土鍋で炊いています。
ヤマサキ:土鍋かあ(笑)。僕、象印なんですよ。「炊き上がれ召し上がれ」の最初の部分の音は、象印の炊飯器の電子音のメロディをキーボードで弾きました。今度、電気屋さんで象印の炊飯器を試して電子音を聴いてください。
EMTG:はい(笑)。「推しのいる生活」「馬乗りマウンティング」「KENKO不KENKO」「ピクピク」「真面目に」とかも、斬新な切り口であると同時にウィットに富んでいますし、今回もすごく冴えていますね。
ヤマサキ:ありがとうございます。何かを感じた時にメモることが大事なんです。何かが起こっても、感情的になるより相手の悪いところを引き出していった方が、後々のためになるんですよ。
EMTG:「ただしイケメンに限らない」も、イケメンに対する羨望と嫉妬の歌かと思いきや、すごく公平な姿勢が根底にあるじゃないですか。
ヤマサキ:こういうのは、歌詞をちゃんと書かないと攻撃的過ぎるなと思ってたんです。
カワクボ:僕、この曲を聴いて、「モテるってなんだろう?」って考えました。
ヤマサキ:モテる人って、顔面以外の自信がある人なんだと思いますけどね。
EMTG:各曲の歌詞に関しては、友人同士で語り合っても非常に楽しそうです。
ヨコタ:「お前、こういうところあるよな」って言って喧嘩に発展する可能性もありますが。
ヤマサキ:少なくともレジャー感はない。
オカザワ:海に行く時に車の中でかける感じではないと思います(笑)。
EMTG:(笑)歌詞に反映されている鋭い観察眼から察するに、セイヤさんって実はすごく冷静に物事を分析するところがある人ですよね?
ヤマサキ:まあ、ほんとは何事にもひたすらのめり込みたいんですけど、すぐ考え事をしちゃうんです。ライブ中も、ふと考え事をして歌詞を飛ばすことがよくありますし。セトリとか「やらなあかん」ってこともよく飛ばしてメンバーに迷惑かけてます。ステージ袖に戻ってきたら「筋斗雲乗るって言ってたやん!」って言われて「あっ!」ってなったりもしてますからね。
EMTG:年明けから始まるツアーは、大丈夫でしょうか?
ヤマサキ:どうでしょう?(笑)。いろんな演出があるライブの日は頭を冷やしてやって、飛ばさんようにいつもしてますけど、ライブハウスの日は「パアッ!」って何かが飛ぶ可能性があるんですよね。
ヨコタ:でも、ツアーだとそういうのを楽しめるところがありますね。毎回同じことはしたくないですから。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

ギリ平成

ギリ平成

2018年12月05日

ビクターエンタテインメント

1. 推しのいる生活
2. The band
3. ただしイケメンに限らない
4. 馬乗りマウンティング
5. 遊泳
6. 真面目に
7. KENKO不KENKO
8. ピクピク
9. 炊き上がれ召し上がれ
10. 米米米米
11. 越えていけ
12. ギリ昭和

お知らせ

■マイ検索ワード

ヤマサキ セイヤ(Vo/Gt)
「犬 砂場 暴れる」
ツイッターで犬が無我夢中で砂場で穴を掘ってて、ふと我に返って動きが止まったりもする動画が流れてきたんです。「ウチの犬も昔やってた!」って思って調べたんですけど、その動画しか出てこなかったので、砂場で暴れて穴を掘るのは、ウチの犬とその動画の犬だけなのかもしれないです。

オカザワ カズマ(Gt)
「篠山 ライブハウス」
他のメンバーは地元で凱旋的なライブをやってるんですけど、僕の地元の篠山市にはライブハウスがなくて、そういうのをやったことがないんです。「ほんまにライブハウスないんかな?」って思って調べました。隣の市にもなかったです(笑)。

カワクボ タクロウ(Ba)
「魔性の女 特徴」
ふと気になって画像検索してみたんですけど、「なるほど。女性が嫌いそうな顔だな」って思いました(笑)。

ヨコタ シンノスケ(Key/Vo)
「オデッセイ シンセサイザー」
オデッセイ(ARP ODYSSEY)はKORGのシンセサイザーの機種です。俺はNOVATIONのシンセを使ってるんですけど、新しいのがほしいなと思ってて。調べたんですけど、「俺なんかが使うのはもったいない」って思うくらいのシンセでした。

ソゴウ タイスケ(Dr)
「カープ 登場曲」
広島カープにキュウソの曲で登場する選手がいるという噂を聞いて調べたんです。曽根海成選手が「越えていけ」を登場曲にしてくれてました。



■ライブ情報

DMCC REAL ONEMAN TOUR 2019 -Despair Makes Cowards Courageous- ~ギリ平成~
01/22(火)千葉LOOK
01/23(水)Zepp diver city 東京
01/26(土)高松olive hall
01/27(日)松山WstudioRED
01/31(木)F.A.D YOKOHAMA
02/01(金)北浦和KYARA
02/03(日)山梨CONVICTION
02/06(水)広島CLUB QUATTRO
02/08(金)福岡DRUM LOGOS
02/09(土)長崎DRUM Be-7
02/11(祝月)宮崎SR BOX
02/14(木)神戸 太陽と虎
02/15(金)Zepp Osaka Bayside
02/17(日)京都磔磔
02/18(月)和歌山GATE
02/20(水)出雲APOLLO
02/21(木)岡山YEBISU YA PRO
02/26(火)清水SOUND SHOWER ark
02/28(木)Zepp Nagoya
03/01(金)三重ROOTS
03/06(水)札幌PENNY LANE 24
03/07(木)旭川CASINO DRIVE
03/09(土)釧路NAVANA STUDIO
03/11(月)苫小牧ELL CUBE
03/19(火)仙台RENSA
03/21(祝木)秋田club SWINDLE
03/22(金)青森Quarter
03/24(日)石巻BLUE RESISTANCE
03/25(月)水戸LIGHTHOUSE
04/01(月)長野CLUB JUNK BOX
04/03(水)富山MAIRO
04/04(木)福井CHOP
04/13(土)桜坂セントラル

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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