FINLANDSが切り拓く新章EPが遂に誕生! 「UTOPIA」インタビュー

FINLANDS | 2019.03.06

 サウンドは淡々とスタイリッシュでありながらキャッチーなメロディライン。歌詞に散りばめられているのは乾いたエロティシズムと、どうにも埋められず、けれど凛とした孤独だ――。前作アルバム『BI』から約8ヵ月、FINLANDSにとっては初のEPとなる「UTOPIA」が3月6日にリリースされる。心地好く身を委ねていたらうっかり深いところを抉られてしまうFINLANDSらしいのっぴきならなさはそのままに、より突き抜けた軽やかさをもたたえたこの4曲入りEPは彼女たちの新章開幕宣言とも取れるだろう。ソングライティングを一手に担う塩入冬湖(Vo/Gt)に、彼女が今回初めて向き合ったという孤独感や今作にまつわるあれこれをじっくりと聞いてみた。

EMTG:前回からわずか8ヵ月で新たな作品が聴けるとは思っていませんでした。しかもFINLANDSでは初のEPですよね。
塩入冬湖(以下、塩入):前作の『BI』もそうですけど、ここ数年、夏にリリースするっていうルーティーンでやってきてたんですよ。毎年1枚、CDをリリースするって我々にとってすごく大切なことで。ただ、ずっと同じ季節が続いていたので、ちょっと変えてみたくなったんです。そしたら「じゃあ今まで出したことのないEPっていう形態で出してみれば?」とご提案をいただいて。そこから作り始めたんです。
EMTG:ルーティーンを崩すことで別の何かが生まれるかも、みたいな興味があったとか?
塩入:どうだろう? 単純に崩してみたかったっていうだけなんですけど……でも、たしかにちょっとワクワクした気持ちはあったかもしれないです。
EMTG:作るにあたってイメージしていたことや、テーマみたいなものはありましたか。
塩入:そもそもEPというものを理解できてなかったんですよ。ミニアルバムでもシングルでもない、EPって普段よく口にするけど本当のところはなんなのか、全然理解してなかったことに作る段階になって気がついて。そこからEPについて調べたんです。何の略なのか、何分以上何分以内とか、そういう定義みたいな部分も含めていろいろ調べて、やっと「ああ、EPってこういうものだったんだな」ってわかったんですけど、そう理解できるまでは全然作れなくて。曲はできるんですけど、作品の全体像が見えてないから、それをレコーディングすることにすごく違和感を覚えたんですよね。でも私の性分なんだと思うんですけど、EPとは何かが理解できたら作りたいものがきちんと見えてきたんです。ただ、『BI』のときみたいな明確なイメージは正直なくて。漠然とした孤独感とか、そういうものを歌いたかったんだなって今になって思うんですけど。
EMTG:まず枠組みからちゃんと理解できないと、曲があってもレコーディングしたくないって、すごく塩入さんっぽいかも(笑)。
塩入:自分でも面倒だなと思うんですけどね(笑)。やっぱり理解していたいという気持ちが強いんですよ。作ったあとに気づくことも絶対あると思うんですけど、作っているそのときはそのときとしていちばんの理解をしていたいんです。少しでも不透明なところがあると迷いが生じてしまったりもするので。
EMTG:「UTOPIA」は相当すっきりした気持ちで臨めたわけですね。
塩入:はい。すごいすっきりしてました(笑)。
EMTG:ちなみに今回収録の4曲ですが、このラインナップになった理由も知りたいです。
塩入:最初に「call end」という曲ができて、それをまず入れたかったんですよ。で、EPというものを理解してからパッとできあがったのが「UTOPIA」で。「UTOPIA」に歌詞をつけていく過程でぼんやりと孤独感みたいなことを考えていたんですよね。孤独を感じるっていうのは誰かといたいと思ってる証拠なのかな、とか、そういうことを。それは「call end」にも紐づいているし、残りの2曲……「衛星」と「天涯」は既存曲なんですけど、「衛星」もすごく孤独感が滲んでいるなと思って。
EMTG:「衛星」は昨年、アイリッシュ・ウイスキー“ジェムソン”とのコラボで作られた曲ですよね。では「天涯」は?
塩入:作ったのは7年前ぐらいかな? 私、新しくCDを作るときに昔作った曲を聴き直すことがたまにあって。「天涯」も久しぶりに聴いたんですけど、曲調は全然違うのに他の3曲に似てる何かを感じたんですよね。同時に、今の私だったらこういう曲は作れないよなって、すごく新鮮だったんです。なんだろう、こんなに暗い歌詞にこんな暗いメロディをつけるんだ!と思って(笑)。しかも無意識にやってるんですよ。なんにも考えずに“暗い+暗い”で泥沼のような暗さを作ってたんだなって、ちょっとびっくりして。なので、この4曲でリリースしよう、と。
EMTG:塩入さんご自身は常に孤独を感じていらっしゃるんですか。
塩入:今まではあまり感じてなかったんですよ。ひとりでいるのが好きですし、寂しいとかもあまりなくて。今、28歳なんですけど、この作品で初めてきちんと孤独感というものと向き合った気がしてるんです。やっと孤独の片鱗が少し見えたというか。それまで「曲を作る人は孤独だから」って言われても、あんまりピンときてなかったのが「あ、こういうもののことを言ってたのかな」って思ったり。
EMTG:何か具体的なきっかけが?
塩入:昔より人に怒らなくなったんです、恋人だったり、自分の近くにいる人に対して。例えば自分が賛同できないような意見を誰かが言ったとするじゃないですか。その場合、一緒にいたいとか、この先の未来を共有していきたいって思う人には「それは違うと思うよ」って自分の意見も伝えて、お互いの気持ちを着地させる努力をしようとすると思うんですよね。たとえぶつかり合ったとしても。そういうことを昔はもっといろんな人にしてた気がするんですね。若さゆえに尖ってただけかもしれないですけど(笑)。でも今は「そうだね」って愛想笑いで頷いてしまうことが多くなった気がして。恋人に対してもそうしてしまうということは、私はこの人とずっと一緒にいたいわけじゃないんだなって……どこかでそう気づいた瞬間に、すごく自分勝手だけど「孤独だな」って感じてしまって。好きっていう気持ちはもちろんあるけど、それは今だけのもので、長い目では見てない自分を俯瞰している感覚というか。寂しいなとふと思ったんですよね。
EMTG:その感じはものすごく「UTOPIA」に表われてますね。刹那的であり、ある種の達観もあり。でも、そのことに対して悲観的ではないですよね。
塩入:そうですね、悲観はしてないです。100%しないわけじゃないし、自分がそうなってしまったことに気づいて軽くショックを受けたりはしてますけど、そんなに悲しんだりはしてない。
EMTG:そうした淡々とドライな印象がある一方で、でも歌詞はすごくエロティックだったりしますよね。例えば“陰極線管”とかもそう。普通に“ブラウン管”と書くのではなく、この言葉をチョイスすることでグッと艶っぽくなるというか。
塩入:そのへんは意図しました、「UTOPIA」では官能的な歌詞を書きたかったので。“ブラウン管”だとどうしてもかわいい印象になるじゃないですか。全体を通して見たときに、ちょっとでもそういうかわいいものが出てきてしまうと、この曲は成り立たないなと思ったんですよね。なので“陰極線管”も然り、“遊び場”とか“実情”みたいな言葉の並びになったんです。
EMTG:官能的な歌詞を書きたいと思ったのはなぜでしょう。
塩入:よく行く喫茶店で、あるとき1人掛けの席の隣にサラリーマンの方が座ってたんですよ。当然、まったく知らない人だったんですけど、その方の仕草がすごく素敵だったんですよね。そのときに、もしかしたら人は誰でも生きているだけで官能的な何かを発しているんじゃないかなと思ったんです。ただ、それを感知する他者がいないと成立しない。そこにある機微って孤独の中では絶対に味わえないものなんですよね。そこから官能と孤独って表裏一体なものじゃないかなって思い始めて……官能的とか一人ぼっちとか、今回はちょっと題材が混在しちゃってるんですけど、それを上手く重ね合わせられたらって思った結果が「UTOPIA」なんです。
EMTG:すごく想像をかき立てられました。のっけから「難しい口づけ」ってなんだろう? みたいな。“口づけ”の形容詞に“難しい”ってなかなか使わないですし。
塩入:サビのこの1行は最初からありましたね。すごく好きな人とキスをするほうが難しいと思うんですよ。極論、どうでもいい人とのキスは、どうでもいいじゃないですか。たとえまったく知らない人にいきなりキスをされたとしても別になんとも思わないというか。
EMTG:それはどうだろう?(笑) 
塩入:あくまで極論ですけど(笑)。よく“一夜限り”とか言うじゃないですか。キスにしても、肉体関係にしても、そのほうが簡単なんじゃないかなって。でも、そこに気持ちが付随してしまうと難しい。すごく好きな人ともしそうなってしまったら、自分はもう元に戻ることができないと思うんですよね。なので《難しい口づけをしたなら/戻れないわ》っていう表現をしてるんですけど。
EMTG:そうなってしまうのは怖いです? 例えば相手の存在が自分の人生そのものみたいになってしまったりとか。
塩入:怖くはないです。そういう意味ではフィクション的ですね、この歌詞は。むしろ、そうなれたら幸せだなって思いますね。ただ、若い頃は私にもそういうことがあったように思うんですけど、そのときだって全部を捧げるのは無理だって結論に至りましたから、未来をすべて好きな人だけで埋めて生きていくのは無理って(笑)。だから今、そういう経験をしたら自分がどういう反応をするのか、普通に興味がありますね(笑)。
EMTG:「call end」は一転してハイテンポかつ赤裸々な1曲。
塩入:これは自分が歌い終わったあとにツラいなって思うような曲をやりたくて作ったんですよ。私ももうちょっと無理をしたほうがいいんじゃないかなって思って(笑)。で、メンバーと形にしていくうちに最終的にむちゃくちゃテンポが上がって心地好く、無理できる曲に仕上がりました。そのおかげで歌詞も赤裸々というか、自分の思っていることがそのまま書けたんですよ。普段使わない言葉でもそれをイヤだと感じないような、速度のおかげで言葉が活かされる曲になってすごくよかったなって。
EMTG:素直に感情を剥き出してますよね。このEPの中でいちばん生身を感じる曲だと思います。
塩入:たしかに生々しいですよね。でもホント「UTOPIA」も「call end」も『BI』を作ったから作れた曲だなって思います。『BI』の“ストレートな言葉で表現する”っていうところは「call end」が引き継いでますし、そういうことが多少できるようになったからこそ、ワケのわからないことを歌おうと思ったのが「UTOPIA」なんです。「UTOPIA」はさらに解き放たれたというか、もうちょっと好き勝手に文章を書いてもいいんだと思って作ったので。
EMTG:新章スタート、みたいな気分もあるのでは?
塩入:ありますね。それは作り終えたあとにすごく感じました。作ってる最中はやっぱりいっぱいいっぱいなので、これからのこととか考える余裕もなかったんですけど。でも出来上がったものを聴いたら“変わりたいな”“変化がほしいな”と思ってたことも、意識しないうちにそうなってたなって。そういう意味でも新章スタートなのかもしれないです。
EMTG:今作を携えてのツーマンツアーも控えていますね。
塩入:私たちが出演していただきたいなと思ったバンドの方にお願いしたら運良くみなさん快諾してくださって。ツーマンってワンマンとは違う熱量があると思うんですよ。仲はいいけど一騎打ち感みたいな、そういう緊張感から生まれる相乗効果はきっとあるので。そういう瞬間を味わっていただきたいですし、各公演、素晴らしいアーティストをお招きしているので、ぜひ観ていただきたいです。

【取材・文:本間夕子】


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リリース情報

UTOPIA

UTOPIA

2019年03月06日

LD&K

01.UTOPIA
02.call end
03.衛星
04.天涯

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生霊

友達が話してたんですけど、生霊ってわりと簡単に飛ばせるらしいんですよ。気づいてないうちに飛ばしてることもあるらしくて、具合が悪いとか、なぜか疲れが取れないとか、いっぱい寝ちゃうってときは自分の半分がどこかに飛んでいってる可能性があるって。あと、これはホントかどうかわからないんですけど、生霊には除霊方法がなくて、話し合いでしか解決しないらしいんですよ。私はそれ、いいなと思ったんですけど。私もちょっと飛ばしてみたいなと思ったので検索してみました(笑)。


■ライブ情報

UTOPIA TOUR
03/15(金)福岡 Queblick
03/19(火)大阪 JANUS
03/21(木・祝)名古屋 JAMMIN
03/30(土)仙台 HooK SENDAI
04/10(水)渋谷 CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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