a flood of circle、ニューアルバム『CENTER OF THE EARTH』インタビュー

a flood of circle | 2019.03.06

 世界的に言うと、いま「ロックバンド」がチャートから姿を消している。もっと言うと、ギター、ベース、ドラムでジャーンと爆音で鳴らすロックのフォーマットがクラシックになりつつある。そういう状況のなかで2019年のa flood of circleがロックバンドとして何を鳴らすのか?――という答えが、3月6日にリリースされるニューアルバム『CENTER OF THE EARTH』だ。まず、痛快なほど速い曲が多い。そして、テツのギターが、姐さん(HISAYO)のベースが、ナベちゃん(渡邊一丘)のドラムが煌めいている。これは、現在のポップカルチャーから目を背けなかったバンドが未来を見据えて鳴らすロックアルバムだ。以下のインタビューではバンドのキーマンである佐々木亮介に、今作に辿り着くまでに抱いた葛藤と逡巡を聞いた。『ちびまるこちゃん』や大坂なおみから得た気づきも交えた佐々木らしい発言のなかに宿る、「決してロックバンドを終わらせない」という彼の意地が、きっとロックを進化させていく。

EMTG:1曲目の「Flood」から駆け抜けてますね。なんと言うか、青春感がすごい(笑)。
佐々木亮介(Vo/Gt):今作はどっしりとした曲が全然ないですよね。あえて外してるんです。
EMTG:それはどうして?
佐々木:前回までのアルバムは試行錯誤することを優先して考えてたんです。だから、トラップのビートとか、打ち込みでしか表現できないビートも混ぜたデモを作ってて。自分のなかではめちゃくちゃ盛り上がってたんですけど、メンバーにポカーンとされちゃったんですよね。「何をしていいかわからない」みたいな。そこで自分としては、新しいトライをしたい気持ちもあるけど、もっとバンドが爆発してほしいなっていうのが強くなったんです。いまアメリカのチャートの音楽を聴くと、テンポも(BPM)100行くか行かないぐらいが普通なんですよ。50とか60もあるぐらい。でも、今回のアルバムは150を切る曲がほとんどないんです。そこに、青春っぽさを感じてもらえるんだと思うんですけど。そういう意味では、よく言われてる「ガラパゴス化」を思い切り引き受けちゃってる作品なんですよ、正直。でも、それでa flood of circleが輝いてるんです。
EMTG:佐々木くん自身は海外のポップシーンの面白さに惹かれちゃってるわけじゃないですか。そこの折り合いは簡単にはつけられないと思いますけど。
佐々木:そう。いまのアメリカの音楽ってギターとドラムがないんですよね。しかも、実験的だけど売れてる。でも、バンドって保守的になりやすいというか。このビートをやってれば盛り上がるとか、コール&レスポンスを入れなきゃとか、そこにジレンマがあったんですけど。いまモチベーションとして思ってるのが、この世界を通過したあとのバンドの音がある気がしてるんです。っていうか、あってほしいっていう祈りですよね。このままバンドが淘汰されて演歌になっちゃうんじゃないかっていう危惧があるんですよ……ぶっちゃけ、もう演歌に聴こえるんです。Spotifyだったら、ドラム4つ打ちでギターが鳴った瞬間にスキップしちゃうわっていう感じ。でも、バンドが好きだから、そうはなりたくないっていう自分もいて。その葛藤はめちゃめちゃあって。っていうときに、この時代を経た新しいものまで突き抜けていればいいんだと思ったんですよね。
EMTG:「この時代を経たバンドの音」って、具体的に言うと?
佐々木:そこが難しいところなんですけど、まずクリック(演奏するときにガイドとなるメトロノームの音)を聞きたくないなと思ったんですよね。ふつうみんな(クリックを)聞いて演奏してるんですよ。だから聴き手も打ち込みに慣れてるし、4つ打ちで踊りやすいのも、機械的なビートにのるのが前提になってるから。でも、俺が思うバンドのかっこよさっていうのは、そこに囚われないことじゃないかって思ったんです。
EMTG:全員がクリックを聞かずに演奏すると、テンポもズレだろうし大変ですよね。
佐々木:合理的じゃないんですよね。最初はメンバーも意味がわからないって言ってましたからね。たしかにクリックを聞けば、早いし、ラクだし、レコーディング費用もかからない。でも、実際クリックを聞いてる音楽ってわかるんですよ。そうじゃない音楽は、なんかドキドキできる、ヤバい音楽だなっていうのはわかると思う。それを実現することで、ロックバンドの演歌化しない本当の煌めきを手に入れたいっていうのがあったんです。
EMTG:なるほどね。いまの海外の状況を踏まえると、きっと佐々木くんのなかでバンドをやる意味自体を考えるだろうなとは思ってたんですよ。だから、そのうえで今回「やっぱりバンドが好きだった」っていう作品を作ってくれたのは、純粋にうれしいです。
佐々木:やっぱりバンドが好きですからね。でも、もし自分が20代で金もなかったら、なりたいのはラッパーかYouTuberだろうなと思うんですよ。ギターは練習しなきゃいけないし、運ばなきゃいけないし、金もかかるし(笑)。そう思っちゃった自分を無視して、「僕ら、無邪気にやってるので」っていうのはかなりキツいですよね。
EMTG:だから一見、初期衝動でドカンとやってるように見えるけど、今回のアルバムはそれだけじゃない。
佐々木:自分のなかでは(いまの時代っていう)フィルターがあって、ギターの音色をチョイスしてるから、ただ無邪気にやってるのは違いますね。話が逸れるけど、俺、さくらももこさんが大好きなんですよ。で、亡くなったときにエッセイを読み返したら、「誰でも書けそうなことを書かなきゃダメだ」って書いてあったんです。「これだな」と思って。パっと見は誰でも書けそうだと思うけど、いざ書いてみたら、絶対に書けない。『ちびまるこちゃん』っていうのは、実際に小学3年生のまるこが書いてるわけじゃないから。その後の人生経験を経たから書けるものだって。だから、一見シンプルなのに奥深さがあるんですよね。そのほうが間口も広がるし、伝わるって書いてあったんです。
EMTG:たしかに、間口の広がりはすごく感じました。「光の歌」とか「Center Of The Earth」に関しては、もうJ-POPじゃんって。
佐々木:そう、今回「Center Of The Earth」をリードにしたんですけど、最初はそんなつもりはなかったんですよ。最後にミックスが終わったときに、テツがこの曲を聴いて泣いてたんですよね。「良い曲っすね」みたいな。それが衝撃だったんです。いろんなメンバーがいたけど泣いたやつは初めてだったから。それを見たときに「あ、これは伝わるな」って思ったんです。テツは、まだ(正式メンバーになって)1年だから、客観的にバンドを見てるところはあるんですけど。これが、何かが堪らなかったんだなと思って、リード曲にしたんです。
EMTG:どうしてテツくんが泣いたのかって……聞くのは野暮ですかね?
佐々木:ああ……言ってたのは、「苦労してがんばったから涙が出たんじゃなくて、ふつうに良い曲だなと思いました」って。それ、超成功じゃんと思いましたよね。
EMTG:あとは「Youth」あたりもビックリしました。ツービートの青春パンクで……。
佐々木:《頑張れ》って歌ってますからね。俺的にナベちゃんとテツが輝く、イコール、ドラムとギターをうるさくするためにはどうすればいいかと思ったときに、ボリュームをゼロからマックスにすればいいと思ったんです。だから、ふたりの前座として、弾き語りで歌ってるんですけど(笑)。アルバムを作ってて、ナベちゃんのドラムがドカーンじゃなくて、テツのギターが引っ込んでるa flood of circleのイメージが湧かなかったんですよ。彼らがそうじゃない音楽を聴くのも知ってるけど、実際にそれをやらせるのは違う。そこで、a flood of circleっていうバンドの大事さが身に沁みました。「あ、やっぱり俺はそこを取るんだな」って。だから、ジレンマはあるけど、(ロックバンドをやる)勇気を持てたのは、メンバーのおかげだし、a flood of circleをやるならそこで勝たないと意味がないんですよね。
EMTG:歌詞については、「Backstreet Runners」が気になりました。いままでもバンドとして「何クソ!」っていう這い上がる気持ちは歌ってるけど、すごく具体的じゃないですか。
佐々木:まんま書いてもいいのかなって思ったんですよね。これを書くまで悩んでたのが、やっぱりラップって喋り口調のままいけるから伝わりやすいんですよ。でも、ロックバンドの歌詞って、メロディを減らすほど想像の余地が増えるし、抽象的なほうが深い意味が出てくる。そういうことを考えながら、ラップのテンションでメロディを歌ってるのが、「Backstreet Runners」なんです。《グリットをはみ出してく トラップをくぐり抜ける》っていうのは、トラップミュージックを潜り抜けたあとのバンドをイメージそのままですよね。で、《猿ぐつわビニテガムテ 噛み千切って声をあげる》っていうのは、ロックバンドっていうのは、いま流行ってる音楽にハメなきゃって身動きとれなくなってるラクな文化のような気がして、それが嫌だなってことを書いてるんです。
EMTG:いまはラップのほうが歌詞も面白いと感じてますか?
佐々木:うん……いまはそうかな。もちろんメロディが好きな音楽もあるんだけど、ラップのほうが自由度が高かったり、固有名詞も入れやすいんですよね。「Youth」のなかで《グッチもナイキも》とか《グレッチもアップルも》とか、「Center Of The Earth」で《さんざん汚したコンバース》とか書いてるけど、これ、THE BLUE HEARTSだったら書かないと思うんですよ。もっと詩的に表現してる。でも、俺はラップ後の世界を生きてるはずだよねっていうことなんです。逆に「スノードームの夜」は詩的なほうに振り切れてますけどね。
EMTG:メロディとラップのどちらかを選ぶんじゃなくて、どっちもやってるんですね。
佐々木:それで、わかりにくくするつもりはないけど、いままででの歴史のなかでやってきたことがフレッシュに聞こえてほしいと思ってますね。
EMTG:そう言えば、前作アルバム『a flood of circle』のときは、けっこうメンバー全員の意見を吸い上げて作ったって言ってましたけど、今回も?
佐々木:「ハイテンションソング」のタイトルをナベちゃんが決めた、とかはあるんですけど……あんまりみんなの意見を聞きすぎると決まらないっていうこともわかったので(笑)。俺がケツもって決めたほうが、みんながやりやすいんだなって思うところはありましたね。それに関して言うとしたら、今回、初回限定盤のCDにテツと作った新曲が入るんですよ。ドラムとかホーンが入った実験的な曲になんですけど、リードボーカルはテツなんです。これをやることによって、テツにもa flood of circleの曲を書くことに挑戦してもらいたくて。やっぱり後から入ったからやりにくいんだろうなっていうのはあるんですよね。年下だし。サテツのテーマは「ロックンロールリバイバル・リバイバル」なんですよ。
EMTG:ははは、まだ誰もやってない(笑)。
佐々木:ストロークスが出てきて、10年ぐらい経ったから、リバイバルしていいんじゃない? って。まあ、そういう意味で、いまのa flood of circleは風通しもいいし、まだ進化できるっていうことを楽しんでるんだと思います。
EMTG:途中経過も含めて、バンドの現在進行形をどんどん見せちゃってますよね。
佐々木:「3年寝かします」じゃないですからね。3年後には、また絶対に良いアルバムができるに決まってるから、それは心配しないでいいので。最近、そのまんまが大事だなと思うんですよ。大坂なおみを見てて(笑)。その瞬間の感情を全部爆発させて、負けた試合後の感想は、「自分をコントロールできなかった」って言ってる。それも全部見せて、悔しくて恥をかいてることにも意味ある。それをハタチの女子から学んでますね。
EMTG:いままでa flood of circleってメンバーチェンジも多くて、バンドの先のことをあんまり考えられないバンドだったじゃないですか。
佐々木:ああ、まさに。
EMTG:いまだからこそ途中経過も見せながら、未来を語れるんだと思うんですよね。
佐々木:本当におっしゃるとおりですね。「これが実験の経過です」って言えなかったんですよね。いつもキツキツな状況で、未来が見えるかどうかわからないから、ここまでの全部を出し切ろうと思ってやってましたから。その時期も大事だったけど、いまはそう思うのがバカバカしいぐらい未来があって、目標があるんです。バンドとして、一応、暫定死ぬまでこのメンバーですよねって言えるから先のことを考える余裕もあるし。この先も一緒にやっていくから失敗が怖くないですよ。それはライブに来てくれるファンの人に対してもですね。前までは刹那的なものを見せて、それを面白がってくれてる人もいたけど、a flood of circleのストーリーを一緒に楽しんでほしいなって思うんです。だから、今回はJ-POP的で明るい作品なのかもしれない。みんなが認める価値観に近いんですよ。訳わかわからないものが面白いでしょ? っていうよりは、ちゃんと側にいこうとしてるのかもしれなくて。うん。だから、いまはそれを大事にしたいですね。

【取材・文:秦理絵】

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リリース情報

CENTER OF THE EARTH

CENTER OF THE EARTH

2019年03月06日

Imperial Records

01. Flood
02. Vampire Kila
03. 光の歌
04. Backstreet Runners
05. Youth
06. ベイビーそれじゃまた
07. 美しい悪夢
08. ハイテンションソング
09. Drive All Night
10. スノードームの夜
11. 夏の砂漠
12. Center Of The Earth

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

Tour CENTER OF THE EARTH
〜アーユーハイテンション?〜

06/09(日)千葉LOOK
06/13(木)高松DIME
06/14(金)大阪梅田TRAD
06/16(日)福岡CB
06/21(金)名古屋CLUB QUATTRO
06/23(日)大分club SPOT
06/25(火)岡山PEPPERLAND
06/28(金)札幌cube garden
06/30(日)仙台CLUB JUNK BOX
07/06(土)長野J
07/07(日)水戸LIGHT HOUSE
07/13(土)東京マイナビBLITZ赤坂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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