大橋ちっぽけ、ポピュラー音楽の中心を狙いゆく最新作『ポピュラーの在り処』

大橋ちっぽけ | 2019.03.13

 大橋ちっぽけは日本の男性シンガーソングライター(以下:SSW)。ライブはギター1本での弾き語りも多いが、まずはそれを思い浮かべ今作を聴いて欲しい。絶対に驚くはずだからーー。もともと歌世界とその歌声には定評のあった彼が、まさに覚醒したメジャー1stアルバム『ポピュラーの在り処』が届けられた。これまでのアコギを中心としたバンドサウンドによる味付けから豹変。打ち込みや海外のトレンドミュージック等も多分に加味され、曲毎での多彩でフレキシブルなサウンドアプローチと楽曲が擁する歌世界、そして各曲特有の世界観が堪能できる1枚に仕上がった。世にJ-POPの天辺を目指すアーティストは多い。しかし、彼が志向するのはそこではなく、むしろ中心部。スタンダードで不変的、街のあちこちで耳にし、至るところで歌われ、気づいたら口ずさんでいたり、後々にまで歌い継がれていく希代の名曲たちと同等の土俵だ。そしてそのポテンシャルは充分にある。サブスクでもYouTubeでもいい。まずは彼の歌に触れて欲しい。そう、大橋ちっぽけは今作と共に本気で日本のポピュラー音楽の中心を狙いゆく!

EMTG:世の男性SSWの作る1stアルバムとは完全に一線を画す内容とクオリティには、とにかく驚かされました。
大橋:ありがたいお言葉です。前作を出して、より新しいことに挑戦したくなったのが大きな理由で。前作を出した直後から、「次に出す作品は、もっとカラフルでバラエティに富んだものにしたい」との意識が芽生えてきたんです。その中で自分が好きな音楽や自分が作っていて、「これ、いいな」と感じたもの。でも、これじゃ今までとは曲調やジャンルも違うしな…って曲も躊躇せず形にして世に出してみたんです。
EMTG:こんなにも化けるんだ?! というのが正直な感想です。
大橋:おかげさまで、自分で築いていた自分の壁みたいなものは今作で壊せたとは感じています。
EMTG:通例の男性SSWの1stアルバムだと、ギターを始め自身の楽器と歌を中心に、そこにバンドサウンドを融合する程度のバリエーションがほとんどですが、大橋さんの場合は海外のトレンドミュージックの要素も惜しみなく導入してますもんね。
大橋:正直僕自身、いわゆる日本の男性SSWの方を聴いて育ったとかではないんです。逆に前作を出してから今作までの間は海外の音楽ばかり聴いていて。それもあり自身の中ではこのようなサウンドになるのは自然でした。確かに一般的な男性SSWの作品っぽくはないかもしれません。
EMTG:逆を言うと自分はそこに捉われたくないって気持ちもありましたか?
大橋:無きにしもあらずですね。特に前作は、まずはアコギ1本の曲として作り、それをバンドアレンジにしていったり、肉付けしていくパターンでした。対して今回は、制作の最初の段階から「この曲はバンドサウンドで」「この曲は打ち込みで」等、サウンドの音像も思い浮かべながら作っていったんです。それはこれまでとは逆で。最初からサウンドも同時に尊重して作っていったんです。いわゆるキチンとしたサウンドが基にあり、その弾き語りバージョンとして各楽曲を作っていった感じで。
EMTG:では今作は最初から各楽曲のサウンドの音像も明確に大橋さんの頭の中にはあったと。
大橋:ありました。いわゆるもう弾き語りの作品を作るつもりはないとの気概でした。それこそデモの作り方からしてこれまでとは違ってました。
EMTG:それはどのように?
大橋:前作以上に打ち込みで曲が作れる環境になったので、自分の思い描いているサウンドをある程度は自分で最初から具現化してみたんです。自分でドラムを打ち込み、ベースを打ち込んでシンセサイザーを入れてとか。それでデモを作り、各曲のアレンジャーさんも交え形にしていったんです。
EMTG:では自分でDAW(音楽制作ソフト)を駆使して?
大橋:そうですね。実は以前コンテストで優勝した際に賞金として、TSUTAYAのTポイントを100万円分もらったんです。それで高価なMac Book Proを買って(笑)。それこそ今回はそれを駆使してデモを作りました。
EMTG:今回そこに至ったというのは、前作が自分の中ではどこか物足りなさがあったからとか?
大橋:いや、そんなこともなくて。前のCDは前のCDで、その当時までの自分のベスト盤が作れた自負があって。拙さも含め自分の10代を収められた作品だったなって。でも、そこから好きな音楽の変化も生じてくる中で、それをしっかりと取り入れた上で、自分の曲ももっと進化させたい。そんな思いがありました。その中で打ち込みを更に使えるようになり、デモも更に作り込めるようになったので。そしてそれらが反映されたのが今作だったりするんです。
EMTG:それは音楽を始めた当初からやりたかったことだったりしたんですか?
大橋:昔から弾き語りアーティストへのこだわりは一切なくて。むしろ中学生時代はボカロの曲を好んで聴いてましたから。その頃から打ち込みサウンドにも慣れ親しんでいたし、抵抗も全くありませんでした。当時から自分もそのような曲を作りたいな…と思いつつ、高校生の頃とかは、どうやったらそれが出来るのかも知らなかったんです。となると、どうしても手軽なアコギありきの曲たちになっちゃって。おかげさまで今は環境も変わり、出来ることも増え、やりたいことがある程度実現できるようになりました。
EMTG:今作からは成長や進化どころじゃなく、それこそ覚醒や化けるぐらいのレベルアップを感じました。
大橋:前作とは全く違ったジャンルの曲もありますからね。
EMTG:その変貌によるデメリットの懸念はありませんでしたか?
大橋:「これが今まで聴いてくれてた人にもウケるかな?」「自分のこれまでのイメージとは違う曲が出来ちゃったけど大丈夫かな」っていう考えはとりあえず他に置いて制作しました。それよりも「好きだな」「いいな」と思えるものを素直に作っていったんです。
EMTG:それこそSSWというよりかは、どちらかといえばクリエーターやボカロPに近い考えですよね?
大橋:今はあえてどっちつかずな場所に居ます。ライブは未だアコギで演ることも多いし。SSWの肩書きだとどうしても限定的になっちゃいますから、そこから脱したい想いは今作の制作時にはありました。
EMTG:前作は歌とメロディと歌内容で勝負みたいな内容でしたが、今回は完全に楽曲全体の世界観で勝負してますもんね。
大橋:僕、「歌声がいい」と評してもらえることが多くて。それはそれで嬉しいんですが、一方で歌を聴かせる以外の方法論で楽曲を伝えることもしたいとは常々考えていて。歌声の映えもですが曲全体の良さも感じて欲しいというか。「声がいいよね」「歌が上手いよね」だけでなく、曲全体が発する光景や景色も含めて。
EMTG:あと驚いたのは、この多種多様で多彩なアレンジや世界観に対して、キチンとどの曲でも歌がコミット出来ている部分でした。この対応力や順応力は凄いです。
大橋:そもそもの歌声もこの期間に変わった部分があるのかもしれませんが、歌い方には凄く気を使いました。声というよりかは歌の表情づけの面というか。そうそう、今作の「夢の中で」のボーカル部分は、実は自宅で録ったデモをそのまま採用してるんです。おかげさまで自宅で録ったが故の独特の力の抜け具合やリラックスした雰囲気、それからより密接感は出せたかなと。
EMTG:歌詞の面での変化も見受けられました。例えば「テイクイットイージー」でのメッセージ性や、「アイラブユーにはアイラブユー」では共有感みたいなものも現れて。前作がほぼ個で完結していた楽曲ばかりだったのに対して、今作ではキチンと相手や歌う対象が伺える楽曲が現れた印象があります。
大橋:その辺りは自分でも感じます。前作は全体のテーマとして「青」があって。憂いや10代ならではの若さも含めて。そんな前作以降、人に聴いてもらう意識がより芽生えたのが大きいです。それまではどこか自分で作った自分だけの音楽みたいなものがあったのに対して、以後、色々な人に聴いてもらえる機会が増えたり、環境が変わったり、リアクションがあったりして。それにより、「自分の歌が届く」との実感が湧き出したんです。そこから人に聴いてもらう意識が芽生え始めて。でも、逆に「テイクイットイージー」は自分がつまずいたり、悩んだり、不安等で前に進めない時に周りからかけてもらいたい言葉や欲しい言葉だったりもするんです。とは言えその先には「しっかりと聴き手もこのような言葉を欲しているんじゃないか?」があってのことですけど。
EMTG:対して「マツヤマ」や「ふみの日」はそれらとは対照的に凄くプライベート感があります。
大橋:これらの曲に関しては、かなりパーソナルですよね(笑)。「自分の話です」感がむっちゃ出ていて。これはやはり自分の原点でもあるアコースティックな面も大事にしたく入れました。いわゆる弾き語りならではの、打ち込みでは出せないしっぽりとした雰囲気。その辺りもやはり僕の作品の中では未だ重要な要素の一つなので。中盤であえてこれらノスタルジックな曲たちを入れることで、また違ったアクセントがつけられました。いわゆる前作とは通ずる部分はありつつ、それとは違った面やアプローチはこれらでもしっかり出せてると自負があります。
EMTG:タイトルの『ポピュラーの在り処』もバシッと言い切っている感じですが。
大橋:一部の音楽好きに届けたり、そういった層に受け入れられるのももちろんいいんですが、今回のアルバムや各楽曲はそういった層じゃない人たちにもというか…。逆に一般的な層にまでキチンと届いて欲しいし、受け入れられて欲しいし、受け入れてくれるんじゃないかなっていう想いが自分の中ではあって。日本のポピュラー音楽の中心に是非この作品が届いて欲しい、そんな願いも込めてつけました。
EMTG:いわゆる、これが日本のポピュラーミュージックの中心だ、みたいな?
大橋:そこまでは謳いませんが(笑)。でも今作を機に大橋ちっぽけが世に広く知ってもらえるキッカケにはなって欲しいです。自分の音楽が日本の流行りの音楽と同等に街で流れ、みんなが知っている。それが理想です。
EMTG:今後も興味のあるものを積極的に獲り入れ、それを昇華させた楽曲を発表していく感じですね?
大橋:これまでは割と洋楽ばかりを聴いてきたので、逆に「J-POPとは何か?」をもっと研究していったり、つき進めていくかもしれません。反面海外のトレンドを積極的に取り入れることも引き続きしたいし。これからも、「好きだな」と思えるものにどんどん挑戦し、今はあえて自分のイメージを決めつけたり、固執したりせず、自分がいいと思ったものを自分なりに表現していきたいです。
EMTG:是非大橋さんにはSSWを自称し続けてもらい、日本の男性SSWのイメージを変えて欲しいです。
大橋:そうですね。全く新しいジャンルってわけじゃないけど、確かにあまり見受けられないでしょうから。そんなふうに思われる存在になりたいです。で、そのような曲をこれからも書き続けなくちゃなと今改めて感じてます。

【取材・文:池田スカオ和宏】




大橋ちっぽけ「テイクイットイージー」Music Video

tag一覧 J-POP アルバム インタビュー 男性ボーカル 大橋ちっぽけ

リリース情報

ポピュラーの在り処

ポピュラーの在り処

2019年03月13日

日本コロムビア

01.ルビー
02.テイクイットイージー
03.アージ
04.ダイバー
05.夢の中で
06.マツヤマ
07.ふみの日
08.Life
09.アイラブユーにはアイラブユー
10.楽園

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

J-WAVE SONAR MUSIC presents 大橋ちっぽけ Special Live「ちっぽけな住み処」
03/17(日)Live & Bar shibuya 7th Floor

SANUKI ROCK COLOSSEUM 2019-MONSTER baSH×I♡RADIO 786
03/23(土)SUMUS cafe

ZIP SPRING SQUAE from TSURUMA KOEN OHANAMI STASION
03/30(土) 鶴舞公園

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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