PUSHIM、20周年にふさわしい10作目のオリジナル・アルバム『immature』

PUSHIM | 2019.03.18

 ダンスホール・レゲエというルーツを常に忘れず、広いJ-POPのフィールドで力強く羽ばたき続けたPUSHIMの20年。デビュー20周年で10作目のオリジナル・アルバム『immature』は、原点であるダンスホールを意識した踊れるサウンド、コンセプチュアルな歌詞の世界、等身大のメッセージを詰め込んだ、強く美しい作品集だ。未熟、未完成を意味するタイトル通り、未だ挑戦を続ける唯一無二のプレミアム・シンガーに、アルバムへの思いを語ってもらった。

EMTG:20周年記念アルバム。どんなプランがあったんですか。
PUSHIM:3年前のアルバム『F』を作り終わったぐらいから、次のアルバムは、フロアでかかって気持ちいようなコンセプトで作っていこうと思ってたんですよ。というのも、『F』はゆったりとしたアルバムで、そのあとカバー・アルバムの『THEノスタルジックス』みたいに、大人っぽいものを出してたんで。初心に返るじゃないですけど、フロア向けの音を意識してアルバムを作りたかったんですね。
EMTG:そこがPUSHIMの原点。
PUSHIM:基本的にダンスホールの、打ち込みの音は大好きなので。20年とひとことで言っても、自分の好みの変化もあって、ある時にはすごく生の音にこだわったアルバムを作ったり、いろんなサイクルがあったんですね。だから今回は、ちょっと好きで我慢してたものを作ったという感じです。別に背伸びはしてないですけど、大人として年相応のことをやってきた期間があった中で、少しやんちゃなところを我慢してたのを、今回出したみたいな感じかもしない。
EMTG:1曲目から最高です。クールな浮遊感たっぷりのダンスホール・チューン「DiDistance」。
PUSHIM:オケだけでも踊れますよね。トラックを作ったGACHAは10年以上ジャマイカに住んでいて、長いつきあいなんですけど、たぶんジャマイカの最先端の音を一番聴いてる日本人のトラックメイカーなんですね。GACHAとChalliでやってるのがMEDZで、まず「THE FREEDOM ROCK」を作って、去年の秋にGACHAが日本に帰ってきた時に、作ってもらったのが「DiDistance」ですね。
EMTG:MEDZとGACHAのトラックはすごい新風を吹き込んでると思います。あとはHOME GROWNや、SHIMI(BUZZER BEATS)や、お馴染みのメンバーがいい仕事をしている。
PUSHIM:SHIMIとは20年ぐらいの付き合いですけど、今回は共同プロデューサーみたいな感じですね。エンジニアの仕事もやっていて、HOME GROWNのレコーディングにもずっと携わっているし、ヒップホップもレゲエも、垣根なくいろんなものを吸収できる素晴らしいアーティストですね。長い付き合いの中で、これが出来上がったと思います。
EMTG:長いといえば、SAMI-T(MIGHTY CROWN)も長い。
PUSHIM:20年以上ですね、彼は(笑)。でも私の曲に参加してもらったのは初めてなんですよ。彼が作った「on 7th street」は、ジャマイカのミュージシャンの演奏なんですけど、彼が持っていたストックの中から、この演奏で歌いたいとすぐにピンときて、歌わせてもらいました。
EMTG:こちらも付き合いの古いRUDEBOWY FACEは、作詞家として「DiDistance」に参加してます。
PUSHIM:初の試みですね。今回12曲作っている中で、マンネリ化したくない気持ちがあったのと、刺激が欲しかったので。RUDEBWOY FACEはレゲエ・ディージェーとして大ファンなので、こういうダンスホールのオケだから、彼に歌詞を書いてもらったらどうだろう?ということでオファーしました。しかも、女子の気持ちを歌っているという。
EMTG:いい詞ですよね、すごいロマンチック。
PUSHIM:ね。彼の歌詞は大好きで、聴いてると情景が浮かぶんですよ。ああいうダンスホールで、一見いかつい音楽ですけど、歌詞がすごく大好きなので、彼に頼みたかったんですね。ずっと自分で書いてきましたけど、RUDEBWOYなら身を任せたいという感じでした。
EMTG:PUSHIMさん自身のリリックはどうですか。今回ほんとにいろんなテーマがあって、ラブソングあり、別れ歌あり、世の中に物申す曲あり、自らの人生を噛み締める曲あり。どんなモードでした?
PUSHIM:どれもこれも、楽しんで書きましたね。今回、コンセプトを立てて書いていったんですよ。10代や20代の頃は、書くことがいっぱいあったんですけど、だんだん世の中とか人生の摂理がわかってくるじゃないですか。若い頃は“これはどういうことなんだ?”っていうことを大きく叫んだり、恋をしてたらそれでいっぱいになって、フラれたらもう世界の終わりのように落ち込んで、そういうふうに歌を書けたんですけど、今年44歳で、だんだんわかってくるんですね。このつらみは、半年我慢すれば抜けていくなとか。自分さえしっかりしていれば、この試練はいつか抜けれるなとか、わかってくる中で、こういうコンセプトを立てて歌を作ると、条件ができるんで、楽しくなるんですよ。
EMTG:条件ですか。
PUSHIM:たとえば「on 7th street」だったら、自分の彼氏が、知らない女と手を繋いで歩いてたのを、道で発見してしまったみたいな、“そういう歌をこのオケに合わせたら、可愛くて面白いかも”とか。コンセプトを立てて作ることが楽しかったです。フィクションともいうと思うんですけど。
EMTG:1曲ごとにコンセプトと物語がある。
PUSHIM:それが楽しかったですね。グルーヴを崩さず、説明くさくならず、ライミングも含めてリズミカルに、歌の内容が聴いてる人にわかれば大成功と思いながら、楽しんで作ってました。
EMTG:先にシングルで出た「ナナメにキメるSTYLE」は、まさにそういう曲だなと思いますね。
PUSHIM:初めは♪ラララでフロウを付けるんですけど、♪ナナメにキメるスタイル、という言葉がバチッとハマって、これ面白いなと思って書いていきました。要は、態度がラージな感じと、物事を斜めに見てる感じで、みんな一緒じゃなくてもいいやん?みたいな、流行に流されない自分を持ってていいやん、というメッセージにしようと思ったんですね。
EMTG:コンセプトと、音の響きを合わせて楽しむみたいな。
PUSHIM:そういう楽しみを作ってます。じゃないと、もう書くことないよって思うこと、全然あるんですよ(笑)。もういろんなこと言ってきたし、みたいな。そんなことで無理やり歌を作って、歌を嫌いになるのは嫌だから、“これはこういう意味の歌にしよう”というコンセプトを立ててやるのは、すごく面白いです。
EMTG:メッセージ性の強い曲といえば「世界の何処かで」。様々な困難が起きる現実の世界だけど、“時代の変化に耐えましょう”という歌詞がすごく意味深くて。こういうこと、最近よくMCで言ってますよね。
PUSHIM:震災以降、よく言ってることでもありますね。震災とか水害とか、自然の力は一人の人間の力では止めれないことじゃないですか。今そういう環境に置かれているのであれば、何をするべきか?ということは、震災以降一貫して思うことですね。
EMTG:この曲の大衆的な優しさと、「THE FREEDOM ROCK」での権力者への強烈なプロテストは、背中合わせのような気がしてます。
PUSHIM:そうですね。めっちゃ聴いてもらってありがとうございます。「世界の何処かで」も「THE FREEDOM ROCK」もそうですけど、私が個人的に一番心配なのは、うちの子供が8歳なんですけど、50年後に果たしてどんな世界になっているのか。日本だけで言っても、少子高齢化で、子供を持つ負担がすごく大きくなる中で、どういう世界になるんだろう?と本当に思いますし。この曲のメッセージは、今の働いてる人だけじゃなくて、これからの若い子供たちのためにも、メッセージとして私はレゲエという音楽をやってるんで。こういうメッセージ・ソングを作っていかないといけない使命を、私は持ってるんで、それが届くといいですね。
EMTG:最後を締める素敵なスロー・チューン「In my village」は、去年からライブで歌ってました。
PUSHIM:これはメロディも歌詞もすぐできたんですよ、頭の中で。それをHOME GROWNにアレンジしてもらいました。聴いてくれる方は、学生さんでも会社員でも、自分に置き換えて聴いてもらえたらと思うんですけど、これは私のとても個人的な歌で、歌に対する思いとか、いつも出番前にめっちゃ緊張して“今日は最高のライブでした”とか、過去形にして何度もつぶやいたりとか(笑)。そういう自分の歌ですね。
EMTG:そしてアルバム・タイトルが『immature』。未熟、ですか。
PUSHIM:デビュー20周年で、レゲエを歌い出してからも25年ぐらいになるんですが、ここまで来て思うことは、“まだまだやな”ということなので。歌はまだヘタやし、もっとうまくなりたいし、もっとこうなりたいとか、率直にそう思ったんですよ。謙虚な印象が付くかもしれないですけど、本当にまだまだ道半ばだなという意味を込めて、『immature』。未熟とか未完成という言葉ですけど、ただこれをスペルにすると、“I’m mature”にも読めるんですよね。matureは成熟なので、未熟と成熟の間を表せる言葉になる。今の自分にふさわしいタイトルだなと思いました。
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【取材・文:宮本英夫】




<ミュージックビデオ>

PUSHIM「DiDistance」MV

PUSHIM「In my village」MV

tag一覧 J-POP アルバム インタビュー 女性ボーカル PUSHIM

リリース情報

immature

immature

2019年03月13日

徳間ジャパンコミュニケーションズ

1.immature
2.DiDistance
3.ナナメにキメるSTYLE
4.ALFEE
5.世界の何処かで
6.on 7th street
7.Girls Anthem
8.COME BACK
9.Neighbors
10.THE FREEDOM ROCK
11.AFROMATIC
12.In my village

お知らせ

■コメント動画





■ライブ情報

PUSHIM 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR “immature”
04/13(土) 埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
04/20(土) 金沢 Eight Hall
04/26(金) 広島 HIROSHIMA CLUB QUATTRO
05/10(金) 仙台 Rensa
05/18(土) 札幌 Zepp Sapporo
05/24(金) 大阪 Zepp Namba
05/31(金) 名古屋 Zepp Nagoya
06/07(金) 福岡 Zepp Fukuoka
06/21(金) 東京 Zepp DiverCity TOKYO
07/20(土) 沖縄 ミュージックタウン音市場

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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