嘘とカメレオン、ミニ・アルバム『ポストヒューマンNo.5』インタビュー

嘘とカメレオン | 2019.05.29

 メジャー第一弾になる1stアルバム『ヲトシアナ』を経て、嘘とカメレオンが6曲入りミニ・アルバム『ポストヒューマンNo.5』を発表。TVドラマ「絶対正義」主題歌に抜擢された「ルイユの螺旋」を聴けばわかる通り、紅一点・チャム(.△)の麗しい歌唱力、一癖も二癖もあるバンド・サウンドは輪郭が鮮やかになり、楽曲の訴求力を一段と高めたナンバーが勢揃い。常にいい意味で聴き手を裏切り続けつつ、大衆の期待に応えるポップ性に磨きをかけた今作の魅力について、メンバー5人に話を訊いた。

EMTG:今日は平成最後のインタビューになりますけど、嘘とカメレオン(以下嘘カメ)にとって「平成」はどんな時代でしたか?
チャム(.△):現体制になって5年目で、常に変わり続けているバンドだから、激動でしたね。泥臭くツアーを回り、初のワンマンをやったり、交通事故からの復帰もありましたからね。
EMTG:常に変化し続けるという意味では今作もまさにそんな内容ですね。
渡辺:そうですね。前作は(メンバー同士で)せめぎ合っていましたけど、今回はもう少し整理整頓されたかなと。全員が横並びというより、5人それぞれに持ち場を設けて、押し引きができるようになりました。
EMTG:前作はチャブ台をひっくり返すような勢いに溢れてましたからね。
渡辺:それから歌を聴かせるためにはどうするべきか、おいしいフレーズをおいしく聴かせるためにはどうするべきかを考えるようになりました。音作り、アレンジもそうですけど、このフレーズはもっとこう聴かせたいのにという気持ちは芽生えてきて。各楽器の絡み方や、音作りの方向性をエンジニアさんに相談したんですよ。なので、今回はいままでのバラエティ感とは違う鋭角さを出せたと思います。
渋江:今回は前作以上にサビ感が出たなと。イントロのクセが嘘カメ節みたいなイメージがあったけど、そこは残しつつ、サビをサビらしく聴かせられるようになりました。
青山:メロディの部分で言うと、最初に作った曲がTVドラマ「絶対正義」の主題歌になった「ルイユの螺旋」だったんですよ。デモもかっこ良かったけど、メロディが少しアングラだったから、大衆に聴いてもらえるメロディにしたくて。俺の意見を汲んでもらえたんですよね。
EMTG:「ルイユの螺旋」は今作の中でもとびきりキャッチーですよね。
渡辺:ドラマのあらすじを噛み砕いて、オケを作り込みましたからね。メロディにこだわりのある(青山)拓心とチャム(.△)で協議しながら作りましたからね。だから、1、2曲目(「パプリカはポストヒューマンの夢を見るのか」、「ルイユの螺旋」)が基盤となって、今作の方向性が定まった気はします。
EMTG:結果的にいい方向に着地したと。
渡辺:そうですね。僕はそもそも演奏を主に聴かせる音楽が好きで、(青山は)大衆性のある曲を聴いてる人間だから、そこの相違を明らかにしてみたという。
青山:そうだね。僕が思ってるメロディの理想型を伝えて、試行錯誤した結果ですね(笑)。
EMTG:今作はスタイリッシュになったし、ポップ性も一段と増したなと。
渡辺:一聴で小難しいと思われすぎるのはもったいないし。わかる人だけわかればいいというスタンスは好きじゃないから。でもわかる人だけわかればいいという音楽を聴いてきた人間なので(笑)、その葛藤はあるんですよ。ただ、ちゃんと聴いたらめっちゃ面白いことをやってるけど、表面は誰が聴いてもいいと思われるものにしたかったんですよね。それが歌メロやアレンジの押し引きに表れているかなと。
菅野:音質の面でも今回からギターテックも付いたので、出したい音の輪郭も見えてきたからこそ、歌も聴きやすくなったんじゃないかなと。
渡辺:僕と菅野の2人だけでギターの音を使っていたけど、感覚的な部分に頼ったところが大きかったですからね。テックさんは理屈で補填してくれるので、やりたいことがクリアになったんですよ。今回は音作りの面でも一番自信があります。
EMTG:何かしら参考にした音源はあります?
渡辺:各楽器の音がはっきり聴こえて、センターのヴォーカルもはっきり聴こえる。その意味ではELLEGARDEN、アジカン、僕個人が大好きなthe band apartですね。で、最初にミックスされたものを聴いたときに、これですよ!って。
EMTG:音像はすっきりしつつ、バンド感はより前面に出てますもんね。今作の表題も意味深ですけど、これにはどんな意味が?
チャム(.△):"ポスト"は次とか、いままでのものを脱却するイメージがあると思うんですけど、それとヒューマンを合わせることで、人間の限界値を超えていくみたいな。それと"5"という数字が持つ意味を調べると、五感、5大陸とか世界は5という数字でできているものが多くて。5の前にある4という数字は四角形で安定を意味しているらしく、次の5は反逆、革命を表わしているので、私たちにもぴったりだなと。正統派のヒーローじゃなく、アンチヒーロー的なところで尖っていきたいので。
EMTG:なるほど。楽曲単位で話を聞きたいんですが、「とある男の記憶」の規則的なビートは新たな試みですよね?
渡辺:ゲームを息抜きにやっていたんですよ。意外とBGMがかっこ良くて、頭に残ってしまって。あと、YouTubeで懐かしのテレビ番組の音楽集を観てて、そのビート感がこびりついていたので曲にしようと。
青山:ドラムも打ち込みっぽい音にしてますからね。初めてやったから、何の手応えもなかったけど(笑)、結果いい感じになりました。
渡辺:そういう実験も楽しかったですね。
チャム(.△):私は今回別物の作品を作ってるような感覚でした。歌詞も曲にぴったりの言葉と世界観はこれしかない!と思ってハメてますからね。
EMTG:前作は童謡に通じる古風な歌詞も多かったですが、今作はかなり削ぎ落とされたシンプルな言葉選びになってます。
チャム(.△):「ルイユの螺旋」はTVドラマの主題歌で縛りもあったから、寒色系の色だけで歌詞を書いてみてよ、と言われたようなもので。青、冷たい色の中で自分をどう表現しようかなと。その縛りの中で自分を120%出す努力をしたんですよ。だから、噛み砕いた言葉で自分の気持ちを伝えるスキルは高くなったと思います。
渡辺:歌詞に関しても話し合うんですけど、簡単な単語の組み合わせでトゲを出せたら、面白いだろうなと。その合間にエッセンスとして面白い単語が入っていたら、オッ!と思いますからね。そこも研ぎ澄まされてきたのかなと。
EMTG:前作を経て、まさに従来の型から脱却した作品になりましたね。
チャム(.△):毎日脱皮したくて・・・(笑)。私個人だけじゃなく、バンドとしても脱皮したいですからね。ただ、過去を脱ぎ捨てるというより、それも自分の色でありながら、別のものになっていくようなイメージですね。全部背負って、五次元に到達するみたいな。
EMTG:「パラダイムシフト4210」(読み:パラダイムシフト)という曲名もありますからね(笑)。
チャム(.△):その曲は特に自分の尖っているところが出てますね。常日頃思ってるヘイトが一番出ているかなと。「世界をなめてみたらまるで何味?」の歌詞には"舌で感じる"、"世界をなめてみたら"と掛けてて。自分の中でこっそり反骨精神を出しているんですよ。
渡辺:今回は時間がなくて、切羽詰まっていたから、ヘイトの矛先を求めていたところもありますね(笑)。僕の場合はそれが7曲目(「societal sanity」)に表れてます。作曲作詞まで初めてやったんですけど、僕のヘイトしか入ってないですからね。ただキレ散らかしているだけという。
EMTG:ははは。今作の中で「Upius」も好きな曲なんですよ。
渡辺:毎作品にこういう曲を入れたくて。MVだけを観ている人は激しい曲をやってるバンドという印象を持つかもしれないけど、作品を聴けば嘘カメはそういう曲だけじゃないんだ、と気づいてもらえるかなと。
チャム(.△):「キンイロノ」という曲は昔感じた懐かしさや色を感覚的に歌っていたけど、この曲の中にいる主人公は意志と思考がはっきりして歌ってるイメージなんですよ。それも以前と違うところですね。
EMTG:そうなると、歌い方も変わります?
チャム(.△):変わりますね。この曲を歌うときに南米まで届けばいいなあと思ってました。
EMTG:めちゃくちゃ具体的ですね!
チャム(.△):はははは。まっすぐな意志が歌声に反映されるようにイメージで歌いましたからね。
EMTG:「何かを動かす光は 誰かを導いてゆける」と歌詞も力強いですよね?
チャム(.△):声量どうこうじゃなく、優しいメロディだからこそ、芯のある強さを歌に宿さなきゃいけないと思って歌録りしましたからね。
EMTG:そういう意味でも、今作はバンドの可能性を押し広げた一枚になりましたね。6月から始まるレコ発ツアーはどんな内容になりそうですか?
渡辺:いままではお客さんを楽しませることに重きを置き過ぎていたのかなと。ライブの瞬間瞬間を自分たちがいかに楽しめるのか。その姿を観て、お客さんが楽しんでくれるのが答えとして正解かなと。だから、その純度を高めていきたいですね。その一つの答えをツアーで見せられたらと思ってます。
チャム(.△):肩の力を抜いて、自分たちらしいライブを突き詰めていきたいですね。

【取材・文:荒金良介】

tag一覧 J-POP ミニアルバム インタビュー 女性ボーカル 嘘とカメレオン

リリース情報

ポストヒューマンNo.5

ポストヒューマンNo.5

2019年05月29日

キングレコード

01.パプリカはポストヒューマンの夢を見るか
02.ルイユの螺旋
03.ミイラ・コード
04.とある男の記録
05.パラダイム4210
06.Upius
07.societal sanity

お知らせ

■マイ検索ワード

チャム(.△)(Vo)
アフリカの踊り
最近、定期的に観ている動画があって、"アフリカ"、"踊り"でよく検索しているんですよ。パフォーマンスに取り入れるかどうかは・・・わからないですけどね。なんか怖いことになりそうじゃないですか。ただよく見てます

渡辺壮亮(Gt/Cho)
グフカスタム
最近、謎にガンダムにハマりまして、小さい頃はよくガンプラを作っていたんですけどね。生まれて初めて作ったのがグフカスタムだったんですよ。だから、改めて検索して、アニメとかもちゃんと見て、また作りたいなと思いました

菅野悠太(Gt)
占い
昨日の夜に星座占い、誕生日占いとか占い系のものを見てました。客観的に自分はどんな人だろうと思って。最近、よくイジられることが多くなって、俺はどんな人間なのかなって。確かに当たってるなあと思いことは多いですね(笑)

渋江アサヒ(Ba)
アベンジャーズ
アメコミの映画なんですけど、アベンジャーズが好きなくせに、一度も映画を観たことがなくて。すごく興味あって、サノスという敵がめちゃくちゃ強いらしくて、そいつがどれだけ強いのかなって調べてました(笑)

青山 拓心(Dr)
ペットボトル
直で飲んだペットボトルを一日置いて飲むと、喉がすげえイガイガするんです。なぜだろうと思って調べたら、単純に雑菌がいっぱい増えるからという(笑)。24時間で90倍に雑菌が増えるみたいなんですよ



■ライブ情報

嘘とカメレオン 初の全国ワンマンツアー
「はじめてのおつかいツアー ~ひとりでできるもん!~」

6/12(水) 札幌 SPiCE
6/14(金) 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
6/22(土) 広島 BACK BEAT
6/23(日) 福岡 Queblick
6/28(金) 名古屋 ElectricLadyLand
6/29(土) 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
7/5(金) 東京 LIQUIDROOM

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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