湯木慧 メジャーファーストシングル「誕生~バースデイ~」

湯木慧 | 2019.06.04

 昨年秋に四谷のアートコンプレックスホールで行われた、自身の創作作品の展示とライブを融合させたワンマン個展ライブ「残骸の呼吸」東京公演で、メジャーデビューが決定したことを発表した湯木慧。その記念すべきメジャー第1弾シングル「誕生~バースデイ~」が、彼女の誕生日でもある6月5日にリリースされることとなった。葛藤の中で作り上げたという前作「蘇生」から今作に至った経緯、そして、すでに先行配信されているリード曲「バースデイ」に込めた想いとはーー。

EMTG:メジャー1stシングル「誕生~バースデイ~」が完成しました。発売日の6月5日は21歳の誕生日なんですよね。
湯木慧:はい。その日はシングルをリリースして、発売記念のワンマンも行うんですが、この大事なタイミングを自分の誕生日に迎えられるなんて。私にとってはメジャーデビューという新しい環境が生まれる日であり、誕生日という”自分が生まれる日”でもあって、今年は色んなことが重なる6月5日になります。
EMTG:時代も変わったし、またひとつスタートを切るような気分?
湯木慧:そうですね。実は今、新しい作業部屋も探しているんです。これから先の創作物は心機一転、新しい環境で作りたいなって思っていて。
EMTG:グッと前に進むというか、踏み出してるというか、前作「蘇生」を作り始めた時のモードとは全然違いますね。
湯木慧:やっと、です。ずっと動きたかったけど、動けなかったんですよね。「水中花」(2018年3月に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで行ったワンマンライブ)の頃から、水の中みたいに足が重くて。今は動こうと思えば動けるし、気持ちもどんどん前に行ってる。でも「蘇生」の時は何をすればいいのかわからなくて、逃げるように、助けを求めるように大分県に行ったんです(※「蘇生」インタビュー参照)。何かを生み出すためには環境を変え続けなきゃいけない人間なんだっていうのは気づいていたんだけど、足が動かなかった。でも周りの人が変えてくれたんです。創作する湯木慧の心持ちを。
EMTG:湯木さんは初期の頃から、次に繋がる伏線を張りながら作品を世に送り出してきました。今回の「誕生~バースデイ~」に至った経緯を少し振り返ってみたいと思うのですが。
湯木慧:やっぱり前作の「蘇生」があったから生まれた作品です。これは今だから言えることですが、誕生するために蘇生したんですよね。
EMTG:メジャーデビューということも視野に入っていたから。
湯木慧:はい。高校を卒業して環境が変わって、かなり長い間すごくモヤモヤしていて、でもこのままスタートするのはダメだなって自分に対して強く思ったので、蘇生という分岐点を置いて一度自分自身と向き合い、それから誕生を迎えようと思ったんです。
EMTG:今回のリード曲の「バースデイ」は、20歳の誕生日に作ったそうですね。
湯木慧:「蘇生」をリリースする前でした。自分の中ではまだモヤモヤが続いていて、やばいなあって思っていた時期で。しかも10代から20代になるって、自分にとっては結構大きかったんです。その違いが。そんな中で、じゃあ誕生日とは?命とは?って、自分の持っている知識の中で考えて作ったのがこの曲なんです。
EMTG:その1年ほど前に身近で起きた、とある交通事故も誕生日について考えるきっかけになったとか。
湯木慧:目の前でお母さんを亡くした男の子は、その翌日が誕生日だったんです。誕生日といっても決して”ハッピー”バースデイばかりじゃないんですよね。
EMTG:なるほど。
湯木慧:私は20歳を迎えて、またひとつ歳を重ねて、月日も過ぎていくけど、20回目の誕生日に自分は何を思うのだろう?誰に何を伝えたいんだろう?そういう事故に触れて、誕生日の価値観が変わって…。自分の誕生日と同時にお母さんの命日も思い出すとか、お母さんの笑顔はずっと変わらないまま、自分だけはどんどん変化していくことを思い知らされる、そんな風に誕生日を迎える人もいるのかもしれないと気づいたんです。そういう人に向けて、そして、ひょっとしたらその立場になるかもしれない自分に向けて、今何を伝えたいのか。そう考えながら作りました。
EMTG:それが「ただ、真っ直ぐ前を向いて生きて行けよ」ということだったんですね。
湯木慧:私も落っこちた時には何もできなくなる。本当に絶望した時って、何も言えないし何も聞こえないんですよね。だけどそれでも、ほんの少し雲の切れ間ができた時に、光じゃなくてもいいんです。匂いとか気配とか空気とかになって、そういう気持ちになっている人たちに何か伝えられるようなものになりたいし、自分に向けても言っているんです。「前を向いて行けよ」って。今までも過去の自分の曲に助けられることって不思議とあったりしたんですが、「バースデイ」もそんな曲になればいいなと思っているんですよね。
EMTG:MVでも、鏡の中の自分と向き合っていましたね。
湯木慧:はい。それぞれいろんな人がいて、私もその中のひとり。皆さんに向けても歌ってはいるんだけど、でもまずは誰かにとか画面にとかじゃなく、自分自身に歌っているんだよっていうことを伝えたくてああいう演出にさせていただきました。
EMTG:食べるというのも、生きているからこそですね。
湯木慧:月日が流れるとか成長するっていう中で、いろんな感情や物事を知っていきますよね。そういうことを視覚的に表せたらと考えた時に、私の中では食べ物っていうのがすごく大きかったんです。食べるって行為はずっと続けていることだけど、だんだんとその形は変わっていく。与えられている時もあれば、自分で選ぶようになる時もありますからね。 MVではそのあたりも表現しています。今回もすごくいいMVに仕上がっているので、最後の最後まで、ぜひじっくり見てみてください。
EMTG:今作には、その「バースデイ」を含む4曲が収録されていますが、1曲目の「98/06/05 11:40」は、湯木さん自身が生まれた時の産声が使われているそうですね。
湯木慧:ハミングしているのは今の私の声なんですが、あの産声は本当に私が生まれる瞬間のものだし、後ろで流れているのも実際に分娩室で流れていた音なんです。蘇生の次に来る誕生というものを考えていた時に、命や産声といったキーワードが浮かんできたので、まずは自分が誕生した時のことを知りたいなと思ってお母さんに出してきてもらいました。
EMTG:生まれたのは大分の病院だったんですよね。「蘇生」の時のモヤモヤが解消されてまさしく蘇生できたのも大分だったと考えると、湯木さんはまたそこで”生まれた”んだろうなって思います。ちゃんと繋がってるんですね。
湯木慧:これは不思議とかでもなんでもなくて、やっぱり繋がってるんですよ。すごくそう思います。今はまだ詳しくお話できないんですが、そういったこれまでの出会いとか繋がりがなかったら、今回のビジュアルのアイデアも生まれませんでしたからね。さっき伏線を張ってるっていう話もありましたけど、私の中では全部が繋がっていて、すごく大きな作品を、時間をかけて作っているような感覚なんです。
EMTG:物作りに対して、湯木さんは以前からそう言ってましたね。
湯木慧:だからこそ、ひとつひとつを大切に作らなきゃいけないなと思う。今回も、例えば2曲めの「産声」だけ聴いて「いいな」と思ってくれた人が、もう一歩入ってきた時に「これだけじゃないんだ」とか「めちゃめちゃ深いな」って思ってもらえるような作品になっていると思うけど、それすらもでっかい全貌の一部というか。そう思わせられたらいいなと思うし、これからもそういう動きをしていけたらなって思ってます。
EMTG:この作品から、また新たな出会いとか繋がりも生まれそうですね。
湯木慧:みんなのためになれば、そしてみんなにワクワクしてほしいという気持ちと同じくらい、私は未来の自分のために書いているし、歌っているし、創作してるんですね。メジャーデビューを機に初めて湯木慧を知ってくださるって方も増えると思うし、ある意味、ひとり歩きしてしまう部分も出てくるんだろうなとは思うけど、私が作るのはもともと答えを提示するような楽曲ではないし、むしろみんなはどんな解釈をするのかなって、そこに面白みも感じているんです。もちろん共感してくれたらそれは本望だけど、違った意見が出てきたり、ひとり歩きする部分があっても全然いいと思っていて。
EMTG:その根本的な考え方は以前から変わらない部分だと思いますが、今回オフィシャルHPでも<命に向き合ってない人になんか響かなくていい>というコピーが使われていますよね。湯木さんらしさもあるし、そのひとり歩きに対する覚悟のようにも響く言葉だなと思いました。
湯木慧:これには、<ただ命に向き合ってる人には必ず響くものでありたいし、響くものでなければならない>っていう続きがあるんです。これはその一部を切り取ったものではあるんですが、極論を言えばそのとおりだし、ひとり歩きをし始めた時にも、この言葉があれば私の楽曲は守られるだろうなって思ったんですよね。まだ自分自身が歩き始めてもない状態だけど、きっと楽曲と一緒にこの言葉を掲げて持っていれば、どこまでも歩いていけるんじゃないかなっていう気がしています。湯木慧は湯木慧として。

【取材・文:山田邦子】

tag一覧 J-POP シングル インタビュー 女性ボーカル 湯木慧

リリース情報

誕生~バースデイ~

誕生~バースデイ~

2019年06月05日

ビクターエンタテインメント

1. 98/06/05 11:40
2. 産声
3. バースデイ
4. 極彩

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ピアス 落ち着かない

平成最後の日に、自分でピアスの穴を開けたんです。高校卒業から3年近く迷ってたけど、幼なじみがピアッサーをプレゼントしてくれて。心機一転、新しい時代を迎えるぞって意気込みだったんですが、全然安定しないのでいつ落ち着くんだろうと思って検索しました(笑)。ちなみに穴を開ける時の動画も撮ったんですが、怖くてまだ見てません(笑)。



■ライブ情報

メジャーファーストシングルリリース記念ワンマンライブ「誕生~始まりの心実~」
6/5(水) 四谷 天窓

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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