BLUE ENCOUNT、“病み”つきになるミニアルバム『SICK(S)』インタビュー

BLUE ENCOUNT | 2019.06.12

 みなさんのお手元にはもう届いていらっしゃいますでしょうか? ……なんてお伺いを立てるまでもなく絶賛ヘヴィロテ中に違いないと確信しております、最強のミニアルバム『SICK(S)』。BLUE ENCOUNTが満を持して放った今作は彼らにとって原点に立ち返った初期衝動的1枚でありつつ、日々逡巡と紆余曲折とを繰り返しながら絶えず進化を続けてきた4人の現在進行形を生々しく体感できる作品とも言えるでしょう。これを聴けば彼らが彼らである所以、この4人で音楽を紡ぎ続けている理由が見えてくるかもしれません。アルバムタイトルの由来についてはオフィシャルサイトなどですでに本人の言葉で語られているのでここでは割愛しますが、たしかに“病み”つき間違いなしの6曲です。それではリリースを迎えた4人の言葉をどうぞ。

EMTG:リリース日は、どんな気持ちで迎えられました?
田邊駿一:う~ん、いつも通りというか……(一同爆笑)。
辻村勇太:めちゃくちゃ身構えてる感じではなかったです(笑)。
田邊:もちろん改めて気合いの入る日ではありますけど、アルバム自体が今年の2~3月には出来上がっていたので「やっとだな」っていう想いのほうが強いんですよ。僕らの中ではもう今年の頭ぐらいには決着がすべてついていたというか、この『SICK(S)』のいい状態のまま、今日までを過ごしている感じがあって。そういう意味では昨日は満を持した感がすごくありましたね。
EMTG:ニュースサイトやオフィシャルサイトで田邊さんが今作について“この6曲を作るために、バンドをやってきたんだと思います”とコメントされていましたが、それだけ思い入れの深い作品になったのには何か理由などがあるんでしょうか。
田邊:今回はアートワークも含めて自分たちのやりたいままにやらせてもらうというスタイルで、わりとバック・トゥ・インディーズな概念で動いていたわけなんですけど……結論から言うと、僕ら自身がこの作品に救われた感がすごくあって。昨年1年を振り返ってみると、楽しいこともたくさんあれど、上手くいかないことというか、なかなかメンバー4人のウマが合わないってことがわりと多かったんですよ。それを乗り越えてからのこの『SICK(S)』で改めて4人が集結したなっていう、そんな感じがしているんですね。
EMTG:4人のウマが合わない、というのは?
田邊:取り立てて何かがあったわけではないんだよね。
高村佳秀:うん、ない。
辻村:だから喧嘩もしないんですよ。ただ、一緒にいるのが当たり前すぎて、ここ何年間かは特に実のある話をあんまりできてなかったんです。それでどんどんお互いの距離が離れていくというか……正直、空気が悪いときもありましたしね。でもこのアルバムを制作する前に田邊から「4人で一回、飲もう」って誘われて、それこそ「最近どうよ」っていう話から始まって(笑)。
田邊:そうそう、「調子どう?」って(笑)。
EMTG:各自なんとなくモヤモヤした空気は感じていたんです?
高村:誰かが言い出すかな、みたいな気持ちはどこかにありましたね。俺から言うか、とか変な探り合いもあったと思うんですよ。
田邊:それもあるし、僕の場合は自分がなんとかしないといけないんじゃないかって思い込んでたところも大きくて。もう32歳だし、人の力なんて借りたくないやい、みたいに思ってたというか。なんだかんだで結成15年だし、メジャーデビューして5年なので、誰かに“ちょっとわからないです”って相談するのは恥ずかしいんじゃないかって、自分のプライドみたいなものもあったし。でも改めて4人で話したときに「ここで行き詰まっているから、それに対してアドバイスが欲しい」って素直に言ったんです。そうすることで3人もそれぞれ自分の腹の中に埋もれさせてたものをちゃんと出せたと思うんですよ。もしその日に話してなかったら、このアルバムを作ろうってことにはならなかったかもしれない。それぐらい実は大事な日で。僕らの記念日ですね。
江口雄也:いつだったっけ?(笑)
高村:えっとね、今年1月の……。
田邊:たしか末頃だよね、って記念日とか言っといて覚えてないのかよって(笑)。
江口:記念日っていうほど大げさなものじゃないんだよ、ボタンを一個掛け違えていたのを戻した、ぐらいの感覚だったから。でも、その作業が改めて必要な時期だったんだなとは思いますね。よかったもん、その“1月末日”があって(笑)。
田邊:1月末日(笑)。
EMTG:そこから今作の制作に入られた、と。
田邊:はい。その飲み会の最後くらいにアルバムを作ろうっていう話になりまして。とはいえ、その時点で制作に割ける日数がほぼ1ヵ月くらいしかなかったんですよ。
EMTG:めちゃくちゃタイト!
田邊:なので、まずは6曲入りを目指そう、と。フルアルバムは絶対無理だけど6曲だったら2日間でレコーディング終えられるし、って。それでもかなりの強行軍なんですけど(笑)。でも、だからこそすごく建設的というか、ムダがほとんどない状態でやれたんですよ。ホント無垢に自分たちの伝えたいものを乗せて、どの曲も一切の疑問符がないように作りましょうって4人の意思が統一したところで進んでいけたので。
EMTG:その勢いを感じるからか、なんだか音が若返ったような気がします。
田邊:ホントですか?嬉しい!音のアンチエイジング!(一同爆笑)
EMTG:ここにきて溢れ出した初期衝動感と一方で結成15年で培ってきたスキルや経験が相互作用した結果、ものすごくフレッシュに響いてきたというか。変に手慣れた感じもなかったですし。
田邊:まさにおっしゃる通り!今回のテーマが「手慣れ感と手癖感なしでいこう」でしたからね。
EMTG:今回、いちばん最初にできた曲というと?
田邊:歌詞まで全部書き上げたのは「アンコール」です。これがいちばん最初に決着つけた曲で。でも最初は「アンコール」を入れるつもりはなくて、バラードの予定だったんですよ。ブルエンってミニアルバムには必ずバラードを入れてるので、今回もそうしようかってことで候補曲もありましたし。ただ、そこで意見が半々に分かれたんです、バラード入れる派と最後までアップテンポで行こう派に。で、僕は後者だったんですよ。だったらそれに付随する曲が必要だなと思って、これを作ったんです。
EMTG:バラードどころか、ブルエン史上最速の曲に。
田邊:でも会議ではバラードで行くってことになっていて、当然レコード会社も事務所もそのつもりでいたわけですよ。なのにプリプロでいきなりツービートをやりだしたもんだから、関係者全員が「どうした!?」って(笑)。納得してもらうために、その場で歌詞を書いて仮歌を聴いてもらったら「これ以外ないね」って言っていただけたんです。
EMTG:わかります、その感じ。ちなみにこの6曲の中でみなさんにとって肝となった曲はどれになりますか。
高村:僕は「ワンダーラスト」。出来上がった音からはあんまりわからないかもしれないけど、めちゃくちゃ音量を小さく叩いてるんですよ、これ。すごく小さい音量で自然に鳴らしたものにコンプをかけるとこうなるんです。知ってはいたけど、なかなかできなかったんですよね、今まで。そういう録り方に合う曲がなかったのもあるし、自分の力量的にも難しくて。でも今回チャレンジしたら上手いことできたし曲にもハマったので、またひとつ新しい技を得られたなって。それが僕としては大きかったです。
江口:そういう意味では僕は「#YOLO」ですかね。イントロのフレーズとか、ピックで弾きながら指で弾く、チキンピッキングっていう奏法で弾いてるんですけど、これまでは苦手なので避けてきてたんですよ。でも苦手な中から見えてくる新しい何かを掴みたいなと思って、あえて取り入れてみたんです。弾けるようになるまでは結構時間がかかりましたけど、トライしたことによって「俺、こんなパターンのフレーズを持ってたんだ」って垣間見ることができて。また違う扉を開いたという意味でこの曲は印象に残ってますね。
田邊:これ、タイトルはみんなでLINE上で決めたんだよね。
辻村:“You Only Live Once”、人生は一度きりっていう意味のスラングなんですよ。
田邊:でもアメリカではちょっともうダセぇみたいになってるのがまたいいなと思って。カッコつけてハッシュタグとか付けてるのにもうダサい曲、みたいな(笑)。“YOLO”自体はすごくいい意味の言葉なのにハッシュタグを付けることによってダサくなるっていう、その感じがいいんですよね。きっと数年後には「なんでハッシュタグ付けてたんだっけ?」ってなると思うんですよ(笑)。その感じをまさに投影した楽曲なんです。
EMTG:そういうシニカルさも新鮮でした。じゃあ、辻村さん。
辻村:僕は「幻聴」かな。今回のアルバムは僕、これまででいちばん引き算をしたんですよ。前までは自分のエゴと曲の兼ね合いで言うと、エゴのほうが勝ってたかもしれなくて……例えば僕が「これはハマる」と思ったフレーズで自分を出した結果、歌詞が聴こえなくなったり、サウンドのバランスが崩れる、みたいな。でも、今回はすべてのパートを聴いた上で、自分がどの位置にいるのがいいか、そこでどれだけ優しくみんなの音を包み込めるかっていうことに徹したんです。そういう部分で「幻聴」はいちばんベースらしいことができた気がするんですよね。4人が4人とも新しいことに挑戦したら新しすぎて逆にまとまり切らなくなるじゃないですか。だから僕は自分が土台になることにすごくこだわろうって。
田邊:僕も「幻聴」。曲のアプローチ的にもBLUE ENCOUNTの初期のめちゃくちゃギターロックな感じがあるし、歌詞もこれがいちばん好き。自分の闇の部分をしっかりと出せた気がするというか、もちろん応援歌のひとつではあるんですけど、いちばん暗い応援歌だと思っていて。“暁光に向けて 僕らは歩き出した”っていう最後の1行を書くのにいちばん時間がかかりましたけどね。それまでずっと暗かったものを、たったひと言のポジティブで締めたかったんですよ。サビで“派手に生きてやれ”とか“希望でそっと抱いてやれ”とか言ってますけど、それって実は自分の中では闇雲にパンチを打ってる感覚だったりしてて。
EMTG:そう思うしかないじゃん、みたいな?
田邊:そう、すがるような想いというか、誰かを諭すというより自分に言い聞かせてるんですよね。だからこそ最後の1行には温かさを込めたかった。そのあとには「アンコール」という絶大に抱きしめる曲が控えてますしね。そういう意味でも「アンコール」をいちばん最初に書いたのはよかったかもしれない。「アンコール」があるからもう何を書いてもいいよねって思えたので。
EMTG:それにしても赤裸々すぎるくらい正直に書かれていませんか。
田邊:今回はもう「ここで正直にならないといつなるんだろう?」っていう気持ちで、自分の抱えている闇とかいろんなことを全部書けた気がしてます。今までは、それこそ元気印な感じでいかなきゃダメなのかなって思ってたりしたんですよ。
EMTG:パブリックイメージに自ら添いに行く、みたいな?
田邊:うん。わかりやすくいなければいけないし、わかりやすいものこそがみんなの取っつきやすいもの。そうあるべきなんだろうなって。でも最近になって、自分の気持ちを正しくアウトプットできるのがアーティストっていう職業なんじゃないかと考えられるようになってきて。なので今回は自分の闇に抗うことなく、むしろその闇をみんなに見てもらって、その様を光と捉えるのか、さらに深い闇と捉えるのかは委ねよう、と。聴いてもらって、誰が誰に言ってるのかを読み解いてほしい。そういうアプローチの曲が作れたのもわりと初めてなんじゃないかな。
EMTG:イントロから壮大な幕開けを感じさせる1曲目の「PREDATOR」も、王道感溢れる「ハウリングダイバー」も、今のBLUE ENCOUNTだからこその熱量がひしひし伝わってくるパワーチューンで。まさに最初におっしゃっていた“この『SICK(S)』のいい状態のまま、今日までを過ごしている感じがある”という言葉の通りだな、と。しばらくはこの感覚のまま進めそうですか。
田邊:そうですね。そうあってくれと願うしかないですけど、消えたら消えたでまた1月末日に飲みに……。
江口:恒例行事?(笑)
辻村:「今年もモヤモヤ来たね!」って。
高村:ははははは!
田邊:そればっかりはわからないですからね。意外に気分屋なので、僕ら。でも今回、いい体験をいっぱいできたから、その感覚はなるべくなくさないようにしなきゃなって。
辻村:別に今回みたいなことが初めてではないしね。今後またあったとしても、ちゃんとみんなが寄り添えばなんとかなるんじゃないかな。むしろ、より新しいものが見えてくるだろうし、それが俺らの強みだと思えればいいんじゃないかな。
EMTG:このインタビューが載る頃には初のホールツアーもスタートしていますし、ここからまた始まる感じにワクワクします。
田邊:どんどん始まりますよ。今月末にはまたいろいろ発表もありますので。
EMTG:もちろん未来を感じさせてもらえる発表なんですよね?
田邊:もうド未来です!(一同爆笑)

【取材・文:本間夕子】

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リリース情報

SICK(S)

SICK(S)

2019年06月05日

Ki/oon Music

01. PREDATOR
02. ワンダーラスト
03. ハウリングダイバー
04. #YOLO
05. 幻聴
06. アンコール

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

『HALL TOUR 2019 apartment of SICK(S)』
06/09(日)市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
06/21(金)中野サンプラザホール
06/28(金)大阪オリックス劇場
07/15(月・祝)名古屋市公会堂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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