レビュー

そらる | 2019.07.17

 選んだ道が正解だったか、そうでなかったか――それは、振り返る時に初めて知ることができるもの。10年の軌跡を辿り、やっと答えを導き出したのは、2008年から動画投稿サイトに“歌ってみた”動画などを投稿し人気を集め、昨今では、新たなフェーズへと大きく舵を切っている、シンガーソングライター・そらる。昨年11月28日にリリースしたソロ活動として初のシングル「銀の祈誓」がTVアニメ『ゴブリンスレイヤー』のEDテーマに起用されると、今年3月6日にリリースしたシングル「ユーリカ」が、MBS/TBSドラマイズム『ゆうべはお楽しみでしたね』OPテーマに起用されるなど、メディア展開も本格化。その矢先に飛び込んできたのが、10周年を締めくくるのに相応しい3rdアルバム『ワンダー』のリリースだ。

 『ワンダー』を手に取ると、収録曲の大方の作詞・作曲を手がけているのは、そらる自身であることに気付く。これまでのアルバムが基本的に豪華作家人による書き下ろし曲やカバー曲中心の構成だった故に、等身大のそらるを描きたいという新たな意気込みが感じられる。その力強い地声と柔らかなファルセットが奏でるハーモニーに付随して、瞼の裏に色鮮やかな映像を浮かび上がらせるほどのドラマティックなストーリー性を有しているのが、そらるの楽曲の魅力だ。例えば、「海中の月を掬う」も、沈んだ心情を深海の月になぞらえ、まるで、深海に潜り込んでいるような心地へとリスナーをいざなう。そこには、感覚の細かな描写や、巧みな比喩、幻想的な物語が欠かせない。とりわけ、ビビットな映像が浮かんできたのは、〈溢れる光 歓声 咲く笑顔/まだ鳴りやまない 無限に続くアンコール〉というサビの歌詞が、さながらライブ会場に居るような臨場感を体感させてくれる「アンサー」。リスナーの笑顔を咲かせているのは、そらるだが、そらるに希望を繋いだのは、“君”だった。そのような現実を前にして、いつかの“君”のように、自分もリスナーに歌で希望を繋いでいきたいという答えをここに導き出したのだろう。流れるようなピアノの旋律、疾走感のあるバンドサウンドが、そらるの気持ちを後押しするように放たれていく様も、夜空に煌めく流れ星のように輝かしい。同様に、そらるの心情を語った数々の楽曲のほか、気持ちの届かない相手を想い続けるミディアムロックバラード「それは永遠のような」や、空想的な世界に溶け込んだ「教えて神様」、鋭利に尖った感情が剥き出しになるロックナンバー「アイフェイクミー」など、色彩豊かな世界観を持ち合わせた楽曲も健在。“実は、素敵な未来が待ち受けていたんだ”という、そらるの驚きを歌にして詰め込んだ『ワンダー』が、リスナーにとっても、新たな発見をするような一枚となってほしい。

【文:小町碧音】

リリース情報

ワンダー

ワンダー

発売日: 2019年07月17日

価格: ¥ 2,000(本体)+税

レーベル: ユニバーサルミュージック

収録曲

1.銀の祈誓
2.アイフェイクミー
3.幻日
4.アイソレイト
5.海中の月を掬う
6.ユーリカ
7.ありふれた魔法
8.アンサー
9.教えて神様
10.それは永遠のような
11. オレンジの約束
12.10
13.ワンダー

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