3rdミニアルバム『禁じられてはいない遊び』にみる、ポしなの本質を2人に問う!

ポップしなないで | 2019.08.01

 幼女も妖女も、激情も儚さも、どこか2次元的なキャラクターを演じ分けるかめがい(Key/Vo)と、バンドの世界観を決める作詞作曲を手がけるかわむら(Dr)からなる、バンドとしては最小編成のポップしなないで。時としてアイドルがロックバンドよりラジカルな表現を見せる2019年にあって、そうした比較とまた別次元で若い世代にとってのリアルを物語音楽的に表現するこのふたりはいったい何者なのか。3rdミニアルバム『禁じられてはいない遊び』のリリースを機に、その成り立ちから探っていく。

EMTG:かわむらさんがそもそも一緒に組みたいと思ったんですか?
かわむら:そうですね。かめがいさんとはもともと知り合いで音楽友達で。大学時代に一緒にコピーをやったり、そういうところで繋がりはあったんですが、そこからしばらく別々の活動をしていて、自分はバンド、かめがいさんは弾き語りをしてたんですね。それでかめがいさんの弾き語りを観に行った時、声が特徴的だし、この人とだったらいわゆるポップな音楽を作っていけるかな?と思って誘ったのが始まりですね。
EMTG:かわむらさんの中には2ピースでかっこいいことをやろうっていうビジョンがあったんですか?
かわむら:バンドの良さは、バンドをやっててよく知ってるので、ふたりでバンドに勝つみたいなことはハナから考えてはいないというか。それよりもっと尖った武器で――例えば単純に声が聞こえたり、人数が少ないとか、見え方だと思ったんですね。それでこの人とかっこいいことをしたいなぁってところで組んだんです。
EMTG:影響源として挙げられているBEASTIE BOYSと矢野顕子さんと椎名林檎さん、それぞれのどんな部分に影響を受けたんですか?
かわむら:もちろん音楽性は前提として好きなんですけど、活動形態とか表現方法とか、長く活動していくにあたって自由なところがあると思って。「この人たちは何をやるんだろう……面白いな」というところが一番の魅力だし、そういう意味で共通してるかなと思います。
EMTG:なるほど。ポップしなないでは生のドラムのスタイルが面白いですね。
かわむら:今のバンドミュージックって、打ち込みの音がめちゃくちゃ強力で、破壊力もあるし応用力もあるし、正直、生のドラムで勝つっていうのが難しい時代だと思うんです。でも僕は生のドラムが好きで、空気の振動とか、音の大小をコントロールする時も、録音してもライブでも、生のドラムにぐっと心を掴まれるところがある。あと、うちの場合、歌とすごく親和性があるなと思っているので、そういった意味で生のドラムでやってます。僕がポチッと押してね?かめがいさんが歌っても成り立たないことはない音楽性だと思うんですけど、やっぱ生のドラムっていうのはひとつ、芯にある部分なのかなと我々は思っております。
EMTG:たしかに。そもそもかわむらさんが書くような歌詞の世界観は、共感というか、かめがいさんの中にもあるものなんですか?
かめがい:私はポップしなないでを始めてから、かわむらくんが書く詞を初めて見たんですけど、いろんな言葉を知ってるし、書く言葉がすごい好きで。でもその感覚は、自分の中にもあるっていうより、私がかわむらくんの作った世界に飛び込んでるっていうイメージのほうが強くて。だから今作の曲も、その世界に自分が入って、そこの住人になるってことのほうがしっくりきてる感じですね。
EMTG:お芝居もやってらっしゃるんですよね。アウトプットの仕方は違いますか?
かめがい:本来同じようなところもたくさんあると思います。歌詞を自分で書いてないんで、いわゆる台本をもらってそれを咀嚼して、自分がアウトプットするという部分ではすごく似てるし、演者と演出家じゃないけど、作演出の人がいて、舞台に上がるような意味では似てる部分もありますね。
EMTG:個人的に、女性シンガーソングライターで、「私はこんなにしんどいんだ、生きづらいんだ」みたいなことを自分で書いてるのを聴くと、ちょっと「うっ」てなってしまう――でもポップしなないでは、ハナからそれを除外してる感じがするんです。
かめがい:たしかに。私もひとりでやってる時に、例えば書いたことないけど「愛してる」って言葉を書いたとして、恥ずかしくて歌えないと思うんですね。でも、かわむらくんの書いた歌詞にもし「愛してる」って入ってたとしても、歌えると思うんですね。人の書いたものだから私はなんでも歌えるのかもしれないですね。
EMTG:かめがいさんのトゥーマッチな歌の表現も、この歌詞だから聴けるというか。
かわむら:トゥーマッチな表現って、すごいピンときますね。ベタな自分の怒りとか、やるせなさみたいなものをやるタイプではないんですけど、もし僕がそういうものをやってほしいって、やっちゃったら、ほんとにのめり込む人しか聴けないものっていうか。僕らの精神性はそうじゃなくって、もっと前向きでいたいタイプなんで。ほんとに自分が歌う歌詞じゃなくて、「これやってみてよ」って言われたことだから、ふざけてたりだとか、言葉遊びをふんだんに使ったとしても、それをしっかり演じてくれることでスッキリ消化される部分はあるし、それがかめがいさんのトゥーマッチな表現方法であればあるほど噛み合うというか、それを前提で作るからうまくバランスが取れてるのかなとは思ってますね。
EMTG:前作「CDはもう売れない」はタイトルも話題になりましたが、あれも「誰も言わないなら言おう」みたいな印象を受けて。
かわむら:タイトルを決める時にいろいろ考えたんですよ。自分たちで言うのもあれなんですけど、初めてプロモーションビデオがたくさん再生されたりして、初めてちょっと外向きになってた時に我々の良くない部分が出てね?悪い部分を1個言ってやろうと。どうせこれぐらいだったら怒られねえだろうっていうね(笑)。というので、その時のアティチュードとぴったりハマった言葉ではありましたね。
EMTG:そこがちょっとパンク魂というか、出ちゃうとこなんでしょうか。
かわむら:そこはちょっと見せたい部分で。ちょっと、ま、ワルにはなりたいよね?
かめがい:BEASTIE BOYSだから(笑)。
かわむら:BEASTIE BOYSはワルじゃないんだけど。
かめがい:なんで?ヒップホップはワルなんでしょ?
EMTG:ワルというか、シリアスなことを言うがためにすごくバカなことやってる感じ?
かわむら:そう、それっす!
かめがい:(拍手)それはすごいいいこと!
EMTG:音楽的にも、かわむらさんのビートの構築の仕方にヒップホップは影響してるんじゃないですか?
かわむら:そうですね。ポップスなんですけど、やっぱり部分部分でトラック感は出そうと思ってはいて、奥行きのある音というより、そこに歌が乗ったり乗らなかったりするって考えると、トラック的な考え方をしがちで。特に我々はインストゥルメンタルにすごいこだわりがあるわけではないので、好きなものが出ちゃってる感じはありますね。
EMTG:かわむらさんのビート感とかめがいさんのラップ的な歌で成立してるところがかなりあると思います。
かめがい:うれしい!
EMTG:なんであのラップができるのか不思議なんですけど(笑)。
かわむら:たぶんなんですけど、ラップ部分と歌部分の声質が違うようで一緒だから成り立ってるのかな?って。僕らがバキバキのヒップホップをやり始めたら、きっといろんな部分で難しいところが出てくると思うんですけど、喋ったりラップしたりするのが歌の一部みたいになってるっていうのは、我々もやっててそんなに違和感はなく、ヒップホップの文脈をお借りしても成り立ってるんじゃないかなと個人的には思ってます……個人的には(笑)。
EMTG:かめがいさんの滑舌の良さからくる限りなくラップに近い早口、なんですかね?
かめがい:私、滑舌、めっちゃ悪いんですよ。滑舌がいいんじゃなくて、普段からただ早口で。歌とラップみたいな部分をあんまり自分の中で分けてないからじゃないですかね? あと、歌も喋ってるのとほぼ変わらない印象が自分の中ではありますね。
かわむら:早く歌えるっていうね。滑舌よく思ってもらえるんならうれしいよね。
かめがい:歌詞がいいと思うので、言葉が聞こえることがいちばん大事だと思うんです。だからそれはうれしい。
EMTG:かめがいさんの中には、ポップしなないでで今やっているような歌以外にボーカリストとしての欲求はあったんですか?
かめがい:「歌に癖がある」ってよく言われるんですーー今はわかってるんですけど、でも最初は癖があるということすらわかってなくて(笑)。言われて「そうなんだ?」みたいな。私は普通に歌ってるつもりだったけど、たぶん、まっすぐではないみたいな。今は単純にいっぱいいろんな歌を歌ってきた結果があると思うんですね。好きなアーティストさんとか、歌で影響受けたなって人は何人かいるんですけど、でもそういう人を目指してはいないですし、むしろ新しい曲ができて歌っていくに連れて、もっと自分の新しい表現が見つかるほうが面白いなって思ってますね。なんか「こういうのがしてみたい」っていうよりも、「あ、もっとこういうことしてみたいな」というところから生まれてることのほうが多いって感じですね。
EMTG:癖というよりキャラクターがたくさんいるのかも。
かめがい:そっちのほうが近いかも。私の中のイメージだと、癖というか、感情がいっぱいあるみたいな感じですかね。
かわむら:そう考えると、昔はもっと淡々としてたかもしれない。今はのびのびと、感情が出たら癖が出てきたという感じなのかなと思います。
EMTG:かめがいさんは、それだけ歌詞に入り込める?
かめがい:入り込めるっていうか、単純にかわむらくんが書く詞が好きで、「うーん、微妙」ってなったことが少なくとも今までないんです。「素晴らしい!」「100点満点!」(拍手)みたいにいつも思っていて。だから私がいちばんファンみたいな感じだし、歌えることがうれしいし。歌詞に感動して歌ってるじゃないですけど、そういうのがすごい強いと思います。
かわむら:いつもお世話になってます。
かめがい:こちらこそ~。
EMTG:いい関係じゃないですか(笑)。今回はこれまで以上にドラムもピアノも生な感じのサウンド・プロダクションですね。
かわむら:僕らはそんなこと思ってなかったんですけど、前作は音源がパッケージングされてるよねって結構言われて。それはそれで僕は狙ってたところでもあるんですけど、今は自分たちのフィジカルの中で何をやれるか?っていうところに注目してるところだったので、そこの魅力が出ないっていうのはもったいないかなと思って。試行錯誤したうえで、そう思ってもらえるんならすごくうれしいです。
EMTG:具体的に曲のことを伺うと、ビートのかっこいい「Creation」で始まりますが、この曲の主人公はスクールカーストの最下位にいて、個人的な怨嗟を叩きつけてる感じがしました。
かわむら:我々の性根である根暗さが出てるのでね。すごく充実した気持ちを常に抱えてきたタイプの人間ではなく、もちろんコンプレックスでガチガチなタイプでもないんですけれども。こういう表現をしながら生きているなかでいろいろ蓄積されていくものだとかを前向きに捉えるために、吐き出して肯定するみたいなことができたらいいなって思った曲ですよね?
かめがい:そのとおりです!
EMTG:そういう曲のタイトルが「Creation」ってところが、かわむらさんがおっしゃった前向きってところですね。
かわむら:そうですね。そこはいわゆる、ナルシスティックな方向には行きたくなかったので。タイトルを付けた時はちょっとシンプルかな?抽象的かな?とも思ったんですけど、いろいろ考えてハマってきたので気に入っております。
EMTG:そして、プロモーションビデオが公開されている「丑三キャットウォーク」。ビデオの話をすると、結局U-zhaanさんは何をしたのだろうか?と(笑)。
かわむら:U-zhaanさんが撮影の中で手紙を書くシーンがあってですね、「実際に書くの?」って聞いたら、監督が「書いてください」って言って、「何書きゃいいんだよ」って言いながら書いてて。空き時間に「これあげるよ」ってくれたので、見たらお母さんへの手紙だったんですけど、「米が足りません。 P.S. 僕は今、わけのわからない撮影に参加させられています」って(笑)。「ああ、やっぱそうだよね」と思いました。
EMTG:U-zhaanさんがいるという違和感がすごいです(笑)。
かわむら:ふたりなのも違和感あるし、ドラムとピアノで違和感があるので、「これやんないの?これ足りないよ」って、自分たちでも説明のつかない部分をずっと探してるところではあるんですけど。あのビデオに関しては、ただほんとにU-zhaanさんのことが好きなので、今、我々がもっとも無駄遣いできる敬意みたいなところがこのミュージックビデオに込められてたんじゃないかなと思っております。
EMTG:「ノストラ」はちょっと世代感が出てますね。
かわむら:いちばん多感というか、怖がる時期だったから、ノストラダムスという言葉がずっと頭に残るじゃないですか。みんなノストラダムスをたぶん消化しきれてないと思うんですよ。「なんだったの、あれ?」って。僕も別にこれで消化したわけじゃないんですけど、それでなんかちょっと「ノストラいいじゃん」と。
EMTG:1999年以降のことを予定してなかったっていうか。そんな先のことまで考えてなかったよ!っていうのを、この曲ではロマンチックに表現していて。
かわむら:たしかにこの曲は自分たちの現実の延長線上であるロマンとか憧れみたいなもの、きれいなものって言うのはこの曲に込められてるんじゃないかなと。
EMTG:しかもノストラダムスの大予言が消化されてない感じは今の時代にハマりますし。
かわむら:うん。知らないうちに令和になって、なったらなった感覚もないし、気づいたらオリンピックだし。いつの間にか『AKIRA』(の時代)みたいな、現実感のなさを感じますね。
EMTG:そして「バンジー!」って距離のこと?と思いながら聴いてたんですが。
かわむら:スタッフが、前のCD出す時に目標を達成できなかったらバンジーだなとか言ってて、そこから言葉遊びの勢いでできて。ただ、勢いで作ったにしては結構気に入ってる曲ですね。
EMTG:深読みできる曲ですよ、これ(笑)。
かわむら:僕は高いとことかダメなんでバンジーは絶対ダメなんです。バンジーを飛ぶって神聖な領域だと思ってるんで。バンジーへの畏れがここに現れてますわ。
かめがい:畏怖がね。
EMTG:人間関係の曲かな?と深読みしちゃう部分もあります。
かわむら:あ、でもこのアルバム全体が<――言い方に語弊がありますけど、人間なんてくだらないよねみたいな。自分がまず第一で、いろんなことはくだらないからちゃんと前向いて生きようねってとこは、バンド名もそうですけど、前向きなところではあるので。「バンジー!」はいちばん投げやりに作ったから、逆にそういう部分がスッキリ出てるのかもしれない。
EMTG:ああ、なるほど。それにしてもおふたりのバランスが最強だと思います。
かわむら:これでバランスが悪かったらおしまいですからね(笑)。かめがいさんがすごい重いことを考え始めたら、僕がメンタルケアをしようと思うんで。「かめがいさん、君はできる子やで」って(笑)。
かめがい:超うれしい(笑)。落ち込んで「私はダメだ」と思っても、今までレコーディングした曲を聴いて、「大丈夫、私はこんないい歌を歌える」と思って頑張んないと。
EMTG:なんて好循環(笑)。
かわむら:ずっと自己完結できますね(笑)。
かめがい:やる気がなくなったら自分たちの曲を聴けばいいっていう(笑)。

【取材・文:石角友香】





ポップしなないで「Creation」(OFFICIAL VIDEO)


ポップしなないで「丑三キャットウォーク」(OFFICIAL VIDEO)

tag一覧 J-POP ミニアルバム インタビュー 女性ボーカル ポップしなないで

リリース情報

禁じられてはいない遊び

禁じられてはいない遊び

2019年08月07日

KINGAN RECORDS

01.Creation
02.丑三キャットウォーク
03.ラムネ日記
04.ノストラ
05.暗いね、ナハトムジーク
06.バンジー!

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

『禁じられてはいない遊び』レコ発ツアー
“ヨルネコアルク”

09/07(土) 名古屋ell.size
w)め組、新しい学校のリーダーズ

09/08(日) 大阪club vijon
w)コレサワ

09/16(月・祝) 仙台FLYING SON
w)ONIGAWARA / 集団行動

09/22(日) 東京WWW
※ワンマン



電影と少年CQ企画「東京の合唱vol2」
08/12(月・祝) 下北沢ERA
w)電影と少年CQ

宇宙団Pre.「かかってきなサマー!2019」
08/20(火) 下北沢BASEMENT BAR、THREE
w)宇宙団 / 奮酉 / sympathy / UlulU / 春ねむり / Bakyun the everyday and more…

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る