湯木慧 メジャーセカンドシングル「一匹狼」

湯木慧 | 2019.08.07

 今年6月にシングル「誕生~バースデイ~」でメジャーデビューを果たした湯木慧が、早くも2ndシングル「一匹狼」をリリースする。湯木慧の作品にはいつも明確なコンセプトがあり、鮮やかに張り巡らされた伏線や奇跡的な繋がりのもとで次なる景色が生まれてくるのだが、今回もまた彼女らしい視点で咀嚼/構築された3曲を収録。2つの孤独、真っ赤な嘘など、興味深いキーワードが導く本作についてじっくりと語ってもらった。

EMTG:湯木さんの誕生日であり、メジャーデビューの日であり、1stシングル「誕生~バースデイ~」のリリース記念ワンマンライブが行われたのが6月5日。あれから約2ヶ月経ちますが、慌ただしくも充実の日々が続いているようですね。
湯木慧:はい。怒涛のスケジュールではありますが、追われているような感覚ではなく、すごく充実してるなって思います。
EMTG:レポートもさせていただきましたが、あの日のライブはいかがでしたか?
湯木慧:自分の原点でもある四谷天窓でやって本当に良かったなって、改めて思いました。私は自分のためにあの場所を選んだんですが、終わった後に店長さんから「ライブハウスをやっていくにあたって迷うことや自分がやっていることに対しての不安とかもあったけど、こういう大事な日に湯木ちゃんがこの場所を選んでくれて、自分は間違ってなかったんだと思えた」っていうような話を聞いて。メジャーデビューとかワンマンとか自分のことで精一杯だったけど、そんな風に思ってくれた人がいたんだと思うと、本当に良かったなって思えたんですよね。
EMTG:あの日のライブの映像は、いよいよリリースされる2ndシングル「一匹狼」の初回限定盤でも見ることができるんですよね。
湯木慧:そうなんです。映像もすごく良い感じだし、私がどういう決心を持ってスタートしたのかも伝わるような内容になっているので、ぜひ見ていただきたいです。今回の楽曲にも繋がるものなので。
EMTG:では改めて今回の「一匹狼」についてですが、去年リリースしたアルバム「蘇生」からメジャー1stシングルである「誕生~バースデイ~」が繋がっていたように、「誕生~バースデイ~」からこの「一匹狼」も繋がっているんですよね。
湯木慧:はい。お母さんとお父さんがいなきゃ私という細胞は誕生していなくて、お母さんがお腹の中で育ててくれなきゃ大きくなれなかったし、取り上げてくれる人やへその緒を切ってくれる人など色んな人がいないと私は生まれてくることもできなかった。1人で生きることはできないとよく言いますが、そういうことではなくて、生まれてくる瞬間というのは本当の意味で1人では絶対にできないと思うんです。でも、何人もの人がいて私という存在が生まれてきたはずなのに、へその緒が切られた瞬間から<個>になる。へその緒が繋がっていた時の感覚ーー眩しいなとか痛いなとか暑いなっとかっていう感覚はきっと細胞的にお母さんと繋がっていて、でもそれが切れた瞬間から、肉体だけでなく、意識とか感覚の面でも個になる。誕生の瞬間って、1人じゃないっていうのとひとりぼっちっていうものがくっついて繋がっているんだと思ったので、「誕生~バースデイ~」の次の作品はこの「一匹狼」にしようと思ったんです。
EMTG:なるほど。
湯木慧:ひとりぼっちってすごく寂しいとか悲しいみたいなイメージがあるし、実際そうだったりもすると思うんですけど、よくよく考えるとそれって自分だけではないんですよね。みんな、一匹狼。だからこそ1人ではないって思えるんだと思うんです。そういう、1人であることの寂しさや悲しい部分だけではなくて、1人だからこその強さの部分も表現したのがこの「一匹狼」なんです。
EMTG:「一匹狼」という言葉、もしくはそういう存在は以前から意識していたものなんですか?
湯木慧:子供の頃から、自分自身がそうだなって思うことがすごく多かったんです。なじめない部分が多い人生というか、小さい頃から孤独を感じることが多くて、クラスの中とか集会の時、今だと渋谷のスクランブル交差点とか、人が多く集まるところですごく1人を感じる人間だったんです。みんなが当たり前のようにしていること、例えば移動教室の時に必ず誰かと一緒に行動するとか、誰かと一緒にトイレに行くとか、そういうことがなかなか理解できなくて、割と1人で行動してたんです。それが仇となって傷ついたこともたくさんあって、だんだん周りに合わせられるようにもなったけど、根本的にはやっぱり孤立しているような感覚が昔から強かったんですよね。「一匹狼」は、そういう自分自身を表す1つの言葉としてずっと意識の中にあったものでもあるんです。
EMTG:でも、一匹狼は自分だけじゃなかったと。
湯木慧:そう、みんな一匹狼だったんですよね。結婚して夫婦になっても、親子でも姉妹でも、理解しあえないところは絶対にあるはずだから。だから(HPにも掲載されている楽曲についてのコメントとして)<何をどうやっても私は私しか生きれないし、あなたはあなたしか生きれない。僕は僕のままで君は君のままでいいから、同じ今を、違う僕らで生き合いたい>と書いたんですが、それがこの曲で伝えたいことでもあります。
EMTG:実際に歌詞にしていくにあたってはどうでしたか?
湯木慧:一匹狼って”孤高の”とか”かっこいい”みたいなイメージもあると思うけど、ここで歌われているのは、1人でいることがまだどこか寂しいと感じている一匹狼。それってきっとみんなの中にもあって、私にもある。みんなそういう一匹狼なんじゃないかなって思いながら書いていきました。1人でいるから1人を感じる孤独と、大勢の中で自分だけが違うと感じる孤独。そういう2つの孤独を歌っています。
EMTG:だけどその孤独は、嘆き悲しむものではない。
湯木慧:どの曲を作る時もそうですが、“影”のほうだけで終わりたくないんです。この曲でも、私が生きている中で感じる孤独を描いた上で、孤独という暗闇の中にある“光”を最終的には歌いたいと思って。ここではそれを“音楽”と書いていますが、立ち上がるためや立ち向かうために掲げるものは人それぞれ違うと思うし、まだ見つけられていないのかもしれないけどきっと誰にでもそれはあると思うんですよね。そういう“光”を持って生きていきたい、歌い続けたいという思いも込めました。
EMTG:曲として書き上げた後、客観的に何か感じたものはありましたか?
湯木慧:それはたぶんこれからだと思います。この曲もまだ答えが出ていないんですよ。「僕はただ唄うのだろう」「君も今、唄うのだろう」って言っているように、今は音楽を光として掲げているけど、歌い続けた先で他にもまた何か見つかるかもしれませんよね。そして、この曲の答えも。そこに願いも込めています。歌い続ける先に、1人ではない、たくさんの出会いを求めているから。
EMTG:その辺りのニュアンスが、MVにも反映されていますね。目隠しをしたまま、自分の足で森の中を進んでいきます。
湯木慧:先が見えないのに足を踏み出さなきゃいけない不安。怖さ。実際の撮影の時も「右だよ!」「もっと左!」って声をかけてくれるその人のことは信じているんだけど、その言葉は全く信じられなくて、前に進めなくなる感じがあったんです。その感覚は、すごく孤独と似ているなと思いました。でも言葉じゃなくて、何か音を鳴らしてくれるとそれは信じられたんですよ。そこで音が鳴っているという事実は信じられたけど、人の言葉は信じられなかった。このMVを撮ってみて気づいたことなんですが、音って本当に光なんですよね。そしてやっぱり、言葉は不確か。暗闇の中で音を追いかけながらMVを撮ってみて、改めてこれから自分はどういう言葉を紡いでいこうかって考えるきっかけにもなりました。
EMTG:一方の「金魚」では、子供の声が入っていたり朗読が取り入れられたりして、人間の声や言葉というものが生々しく使われています。
湯木慧:従姉妹が美大に通っているんですが、そのお姉ちゃんの卒業制作で作った「うそつき。」という作品を見た時に感化されて書きました。嘘をつくって、たぶん人間しかしないですよね。なんかすごく人間くさいなと思って、人の声でその生々しさを表現してみたんです。よく真っ赤な嘘って言いますけど、金魚の色や形も実は作られたものだったりしますよね。赤い餌をまだ食べてない声と食べたあとの声、子供の声の色と大人の声の色、クラシックの方の声の色など、いろんな比較になればと思って入れてみました。歌詞カードにもそういう表現を取り入れているので、ぜひ見てみてもらいたいなと思います。
EMTG:最後になりますが、1曲めのタイトル「33.123806, 131.294222」についても聞かせてください。
湯木慧:これは、私が去年“蘇生”した場所であり、アーティスト写真を撮影した場所でもある大分県・阿蘇野の座標なんです。聴こえてくるのはその森で鳴っていたサイレンと野良犬の声なんですが、人間が生み出した音に対して、この犬達は仲間だと思って吠えてるんですよね。そこに犬の純粋さとか、不気味なんだけど感じる美しさがあるなと思ったりしながら、滞在していた2週間毎日それを聴いていたんです。この「一匹狼」というものが生まれる前にたまたま録音していたものだったんですが、「誕生~バースデイ~」の時の1曲めもそうだったように、偶然だけどすごい繋がりが生まれていたんだなと思って、今回入れることにしました。
EMTG:8月に行われる東阪ワンマンライブ「繋がりの心実」も楽しみにしています。
湯木慧:今回はバンドセットなんです。いろんな人と音楽をしていく中で、本当に出会えてよかったなと思えるメンバーとやらせてもらっているのがすごく嬉しくて。へその緒が切れた瞬間から個になるというお話をしましたが、みんな1人なんだけど1人じゃないんだっていうことを、いろんな角度から表現できるライブになればなと思っています。

【取材・文:山田邦子】

tag一覧 J-POP シングル インタビュー 女性ボーカル 湯木慧

リリース情報

一匹狼

一匹狼

2019年08月07日

ビクターエンタテインメント

1. 33.123806, 131.294222
2. 一匹狼
3. 金魚

お知らせ

■ライブ情報

東阪ワンマンライブ『繋がりの心実』
08/18(日)大阪 Shangri-La
08/24(土)東京 キネマ倶楽部

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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