新作『GUZMANIA』に見る、SAKANAMONの根底にあるものを解き明かす!

SAKANAMON | 2019.08.07

 ミニアルバム『GUZMANIA』は、SAKANAMONならではの魅力を強く実感させてくれる1枚だ。一貫したテーマとして伝わってくるのは「疎外感」。誰からも理解されない自分だけの世界を全力で肯定し、ときには誰かと繋がり合えた瞬間を心から喜ぶ姿が、各曲に鮮やかに刻まれている。切実な想いを込めつつ、ウィットにも富んでいるところが、実にSAKANAMONらしい。サウンド面の新境地も切り拓かれている今作について、藤森元生(Vo/Gt)に語ってもらった。

EMTG:このミニアルバムを作るにあたって、何か考えていたことはありましたか?
藤森:毎度のことながら何もなかったです(笑)。いつものとおり、その時にいいと思ったものを集めていったので。昨年の10周年という大きなイベントを経ての「どうしようか?」というところから始まった感じですね。作りためてた曲はあったんですけど、自信を持って出せるものが年末の段階でまだできてなくて。だから、自信を持って出せるものを見つけるためにも、今年に入ってから3ヵ月連続配信やリクエストワンマンをやったんですよ。あれは実験というか調査的なところもあったので。そこから感じたことを踏まえつつ、曲を作りためました。
EMTG:リクエストワンマンの投票結果は、自信にも繋がったんじゃないですか?
藤森:はい。ちゃんと自分がいいと思ってる曲の人気が高かったりもしましたからね。
EMTG:ファンは、SAKANAMONの曲の良さをすごくわかっていますよね。音楽って、「流行ってるから」という動機で聴かれることもありますけど、このバンドの場合、こういうことを言うのもなんですが、そういう感じではないし。
藤森:そうなんですよ。地味なバンドだから。もうちょっと売れてもいいかなって思ってます(笑)。
EMTG:(笑)今作はタイトルも、すごくいいですね。『グズマニア』という音の響きもSAKANAMONにぴったりじゃないですか。
藤森:僕の地元の宮崎に熱帯ファーム的なところがあるんですけど、そこでグズマニアのことを知って、面白い名前だなと思ってメモってたんです。調べてみると「いつまでも健康で幸せ」みたいな意味があって、「10周年に入った我々のこれからのことも重ねられるな」と。
EMTG:グズマニアは、薄暗い日向を好むんですっけ?
藤森:そうですね。明るい日陰で育つらしくて、そういうところも我々とリンクするのかなと。
EMTG:SAKANAMONも、健やかなオタクみたいなところがありますからね。
藤森:そうですね(笑)。ネガティブを肯定するところも、グズマニアっぽいと思います。
EMTG:今回のミニアルバムの曲たちも、まさにそうですね。「疎外感」を様々な形で描いている作品だなと感じました。
藤森:曲は、その時の自分の気持ちと常にリンクしてるんですけど、そういうのを感じてたんでしょうね。
EMTG:SAKANAMONの一貫したテーマでもあるのでは?
藤森:理解してもらえないことが昔から基本的に多いというか。曲作りをしてる時もそうなんです。チームで話し合ってる段階でも、「俺だけズレてる?」って感じることがありますし。そうなると自信がなくなっていくんですよ。作る曲って、そういう自分を肯定するための応援ソングでもあるんですよね。
EMTG:「並行世界のすゝめ」は、まさにそういう曲ですね。理解されない自分の世界を肯定すると同時に、ほかの人の価値観を尊重する姿勢が伝わってきます。
藤森:いい感じにそれぞれを肯定し合って生きていければいいなあって思うんですよね。
EMTG:ギターソロが、かなりハジケているじゃないですか。
藤森:持ってるエフェクターをとりあえず全部繋いで弾いてる高校生みたいなイメージでした(笑)。中2心をくすぐるような感じを取り込んでます。中高生ぐらいの頃って、並行世界みたいなイメージが好きじゃないですか。僕は、昔からそういうものが好きなんですけど、そういう感じを持ってるバンドのかっこよさを再認識するようにもなってます。最近はオシャレブームと申しますか、こういうのを否定するムードもありますが、「痛かっこいい」みたいな感じをみんなに教えてあげたいんです。
EMTG:「中二病」っていう言葉が浸透するようになってから、思春期の背伸びした思考や、既成概念を疑う姿勢を低く見る人が増えましたけど、こういう考え方から生まれる面白い世界とか、発見もあるはずなんですよね。からかいたくなるのも自然ですけど、全面的に否定するのは良くないと僕も思います。
藤森:そうですよね。僕もこういうのが嫌になった時期があったんですけど、「俺ちょっと中二入ってるな」っていうのを数年前から認めるようになりました。
EMTG:この曲をライブで弾く時は、中二っぽいギターが似合いそうですね。V系のバンドが使っているような攻めたデザインのギターとか?
藤森:僕の求める痛かっこよさは、そっちじゃないんですよ。レスポールとかですかね? 文系の中二はそっちなのかなと思うので。悪魔的なイメージとかが理系っていうわけでもないんですけど(笑)。なんか僕の中でそういうのがあるんです。
EMTG:なるほど(笑)。「SECRET ROCK’N’ROLLER」も疎外感の曲ですよね? 理解者が周りにいないバンドのライブに行ったら、好きな女の子も来ていてうれしくなるこの感じ、結構みんな妄想したことがあると思います。
藤森:こういうことがあったらなと思って。まあ、実際に僕が当時に戻ってこういう体験をしたとしても、何もないんでしょうけど。こういうことがあっても突き放しただろうから。
EMTG:「君も来てたんだ? 奇遇だなあ~」って声をかけて、恋を実らせようとは思わないんですか?
藤森:うーん……昔の僕は付き合うとかいうことを考えてなかったんで。「ふしだらなお付き合いはしたくない!」って思ってたんですよ。
EMTG:清い少年だったんですね。
藤森:と言うより、自意識過剰だっただけ(笑)。「結婚以外で性行為はしちゃだめ!」「付き合うんだったら生涯でひとり!」っていう気持ちがあったので、「めちゃくちゃかわいくて、めちゃくちゃいいコだったら付き合ってあげなくもないけど」って思ってました。
EMTG:随分と上から目線の思考(笑)。
藤森:そうなんですよ(笑)。めちゃくちゃかわいくて、いいコで、積極的に話しかけてくれて、俺の心の扉を開いてくれるんだったら、可能性がありますかねえ。
EMTG:そんな都合のいい女の子が現れる可能性は、ゼロだと思います。
藤森:はい(笑)。だから昔の僕は女の子と「はい」と「いいえ」以外で話をすることはありませんでしたねえ。
EMTG:そういう時期にため込んだエネルギーが、「SECRET ROCK’N’ROLLER」で曲として開花したということですかね?
藤森:そうかも。こういうことがあったら、今だったらねえ(笑)。
EMTG:(笑)「箱人間」は、映画『SAKANAMON THE MOVIE ~サカナモンは、なぜ売れないのか~』のエンディング曲ですが、「並行世界のすゝめ」と地続きの曲だと思いました。「それぞれが並行世界で生きているなか、ふとしたきっかけで通じ合えた時に感じる喜び」を描いていますよね?
藤森:はい。それぞれが少しでも重なり合ってる空間というか、集まりを箱に喩えてるんです。
EMTG:この曲に盛り込まれている箱のイメージもそうですけど、SAKANAMONは、ワードのチョイスが面白いですね。「矢文」も、なかなか出てこないワードじゃないですか。
藤森:なんか出てきちゃったんです。
EMTG:「矢文」も疎外感ソングですよね?
藤森:そうですね。今回、たしかに疎外感寄りですね(笑)。まあ、やっぱり僕の中でずっとついて回ってるものではあるので。
EMTG:「矢文」は、アイリッシュフォークみたいなサウンドが新鮮です。
藤森:そっち系も作ってみたくなったんです。二胡奏者の方にも入ってもらってます。ライブのことを考えずに作ったので、「どうしようか?」って考えてるんですけど……。
EMTG:《御用事何》という女性の声は、どなたですか?
藤森:テスラは泣かない。の飯野桃子さんです。前作の「テヲフル」でもピアノを弾いてもらったんですけど。「矢文」でもピアノを弾いてもらってます。
EMTG:サウンド面の新しさに関しては、「YAMINABE」も今までになかった感じですね。
藤森:前々から「ラップの曲があってもいいんじゃないかな?」って思ってたので、それを形にしました。この曲も疎外感がすごく出てるかも。
EMTG:空気を読まずにつきまとう人を描いている「BAN BAN ALIEN」も、疎外感の曲ではないでしょうか?
藤森:たしかに(笑)。それぞれの曲の視点は違いますけど、やっぱり疎外感はテーマになってますね。
EMTG:このようなテーマをじっくり描きつつ、ライブ音源を4曲も収録していますし、大サービスのミニアルバムじゃないですか。
藤森:配信があったとはいえ、前作から1年8ヵ月空いてお待たせしましたから、ボリュームのあるものにしたかったんです。ライブ音源は、こっち側としては聴いてて恥ずかしいですけど(笑)。でも、喜んでもらえればうれしいです。
EMTG:この作品を聴いて僕が改めて強く感じたのは、「心地よいアクの強さ」とも言うべきSAKANAMONならではの作風です。ご自身では、どう思います?
藤森:狙ってる感じでもなくて、思いついたままにやるとこうなるんですけど。
EMTG:先ほども少し言いましたけど、出てくるワードもユニークですからね。矢文って、実際に見たことあります?
藤森:ないです。矢文を放ったらダメなんですかね?
EMTG:即逮捕かも。
藤森:なるほど(笑)。「矢文」は、漫画のモブ感というか。主役と、それを引き立てる脇役の枠にすら入らないようなやつのことを歌ってます。そういうやつだってヒロインに恋をするけど、直接告白できるわけもないから、矢文を使うしかないっていうことです。
EMTG:「直接告白できるわけもない→矢文!」という発想の飛躍が、藤森さんの独特な発想を示している気がします(笑)。
藤森:だって、メアドも知らないんですから。面と向かって言えないんだったら、矢文しかないじゃないですか。
EMTG:そういうかわいらしいクレイジーさは、SAKANAMONのかけがえのない魅力だと思います。
藤森:良かったです(笑)。
EMTG:(笑)今後、フェスの出演もあるし、9月から12月にかけては全国ツアーですね。
藤森:そうなんです。今回もライブでやるのが大変な曲をいろいろ作っちゃったんですけど、練習して臨むので、ぜひ聴きに来てほしいですね。

【取材・文:田中大】



SAKANAMON「矢文」MV

SAKANAMON mini AL『GUZMANIA』トレーラー映像

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リリース情報

GUZMANIA

GUZMANIA

2019年08月07日

TALTO

1.並行世界のすゝめ
2.SECRET ROCK’N’ROLLER
3.箱人間
4.YAMINABE
5.BAN BAN ALIEN
6.矢文
7.反照(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)
8.リーマンビートボックス(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)
9.テヲフル(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)
10.ロックバンド(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

「ミニアルバムリリースTOUR 201
“SAKANAMON ver.11-12"」

09/29(日)渋谷 eggman
10/04(金)浜松 LIVEHOUSE MESCALIN DRIVE
10/5(土)神戸 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
10/11(金)高松 TOONICE
10/13(日)福岡 INSA
10/14(月・祝)広島 BACK BEAT
10/25(金)仙台 enn 2nd
10/27(日)札幌 Crazy Monkey
11/09(土)名古屋 CLUB UPSET
11/10(日)心斎橋 Music Club JANUS
11/23(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK
12/01(日)渋谷CLUB QUATTRO



『GUZMANIA』リリース記念
弾き語りライブ&サイン会

08/08(木)タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース
08/09(金)タワーレコード名古屋パルコ店イベントスペース

LOFT HEAVEN FIRST ANNIVERSARY
DREAM MATCH 2019 〜VS SERIES〜
緊急弾き語りライブ

08/15(木)渋谷 LOFT HEAVEN
w/ 飯田瑞規(cinema staff)

ナードマグネット「だいそうさくツアー」
08/18(日)金沢 GOLD CREEK
w/ ナードマグネット

SHINJUKU LOFT KABUKI-CHO
20TH ANNIVERSARY DREAM MATCH 2019
〜VS SERIES〜

08/21(水)新宿 LOFT
w/ cinema staff

『GUZMANIA』リリース記念
アコースティックライブ&サイン会

08/24(土)タワーレコード新宿店イベントスペース

Stella Circus
08/25(日)新木場ファーストリング
w/ a flood of circle / 荒井健一郎 / SHINOBU / トランザム★ヒロシ / BBゴロー / チャンス大城 / 植野銀月 / 宮白 / 小笠原まさや / 高橋ハナ / and more

TOKYO CALLING 2019
09/16(月・祝)渋谷 ライブハウス13会場

OTODAMA SEA STUDIO 2019
supported by POCARI SWEAT
〜ROCKIN’BEACH 2019〜

09/22(日)OTODAMA SEA STUDIO 2019
w/ AIMI(ex.ステレオポニー) / Sunrise In My Attache Case / SCOOBIE DO / 東京カランコロン(アコースティックセット) / TRI4TH / bohemianvoodoo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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