THE ORAL CIGARETTESがさらなる高みを目指すために――今、初のベスト盤を出すということ

THE ORAL CIGARETTES | 2019.08.29

 THE ORAL CIGARETTESが初のベストアルバム『Before It’s Too Late』(8月28日発売)をリリースすると聞いて、思いは人それぞれだと思う。しかし、1stシングル「起死回生STORY」を発表してからは5年が経ち、ワンマン公演の会場も着実にグレードアップ。今年3月には横浜アリーナをソールドアウトさせ、来る9月14日、15日には泉大津フェニックスで、「PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~」の開催も決定(DAY1ではONE MAN SHOW、DAY2のOMNIBUS SHOWでは、お互いを高め合って来た盟友バンドを呼び、対バン形式での公演)。押しも押されもせぬビッグアーティストに成長した。音楽チャートにランクインする楽曲も増えてきたわけで、ベストを出すタイミングがやってきたのも当然と言えば当然だろう。ベスト盤のタイトルも“手遅れになる前に”という意味を持たせており、“まさに今でしょ!”(ちょっと懐かしい言い回しだが……)というのは間違いない。



 加えて、発表された内容もメンバーセレクトによる2CD・39曲というボリュームだ。CDの内訳もDISC1はシングルカットされた楽曲が中心で、正真正銘のキラーチューン祭りである。一方のDISC2には、オーラルのダークサイド的な部分が前面に出た、これまたバンドには欠かせないダークキラーチューンがちりばめられている。個人的に感じることだが、この闇深さなくして、彼らの快進撃はなかったように思う……という話は、あとでじっくり検証させていただきたい。

 さて、話をベスト盤に戻そう。2CDでもお腹がいっぱいになりそうだが、初回盤バージョンには横浜アリーナの映像がディレクターズカットで全曲収められており、こちらもお得な内容となっている。フェスやイベントで彼らのパフォーマンスを見てファンになった人には、バンドの世界観が炸裂した横浜アリーナの映像が堪能できる映像付きをオススメしたい。もちろん、キラーチューンを聴きまくりたい、もしくは入門編として手に入れたいという人にとっては通常盤でも十分に楽しめるはずだ。

 というわけで、『Before It’s Too Late』は、出るべくして世に出ることとなったアイテムなのだ。だが、個人的にはオーラルのベストがリリースされると聞いて、えらくビックリしてしまった次第である。いやいや、出すのがマズイというわけではない。これまでに発表したアルバムは、毎回ベストと言ってもいいくらい濃いものだったので、もしベスト盤を出すタイミングがあるとすれば、もっと先のような気がしていたのだ。とはいえ、すでに彼らも山あり谷ありの経験を積み重ね、十分なヒストリーがある。ズラリと並んだ収録曲を見ていたら、そんな歴史が浮かび上がってきた。

 そこで、先にチラッと言及した“闇”である。「起死回生STORY」をリリースする前後、彼らは多くのイベントに出演し、着実にファンを増やしていった。各地のライブハウスでたまたまオーラルのライブを見た人の中には“すごいバンドを見つけてしまった!”と、衝撃を受け、そこからフォロワーになったファンも多いに違いない。初期の頃からプレイしていた「mist...」がDISC1の1曲目に収録されているのは、グッとくるポイントだと思う。
 「嫌い」や「カンタンナコト」など、アグレッシブなサウンドに闇全開の歌詞をぶつけてくる山中拓也(Vo/Gt)の歌は大いに衝撃だった。この時期は、彼らがライブハウスやフェスでリアルにファンをわしづかみにしていったフェーズである。バンドがネガティブな感情をパワーに変えていくところに、ジワジワとハマっていく人が増殖していった。



 その後、彼らの曲はライブ以外のキッカケで耳にすることが増えていく。大型フェスへの参加も増えた彼らは、多くのオーディエンスを圧倒。さらには音楽以外のカルチャーを通して、ファン層のすそ野を飛躍的に広げていく。「狂乱 Hey Kids!!」「トナリアウ」「BLACK MEMORY」など、映画やアニメなどの主題歌になった楽曲たちは、新しいファンにも浸透していった。だが、タイアップはあくまでキッカケであって、リスナーの多くは山中の描く光と闇の世界に魅了されていったと思う。そして、音源以上にライブで放たれる存在感にも強烈に引き付けられたのだろう。



 アルバム『UNOFFICIAL』(2017年2月リリース)によって、さらにバンドは大きな成長を遂げることになる。もともとキャッチーなメロディーを持っていた彼らだが、それをひとひねりする個性も持ち合わせていた(今でもそれは武器である)。しかし、この『UNOFFICIAL』では、敢えて王道のアレンジも取り入れ、勝負をかけてきた。“より多くの人に届かなければ、歌の持つメッセージの意味がない”とばかりに、したたかさを身につけた1枚だと思う。このアルバムからの曲がDISC1とDISC2にバランスよく配置されているのも納得だ。その後、東日本大震災の被災地を訪れたことをきっかけに作曲された「ReI」を配信限定(2018年2月リリース)で発表するなど、聴き手に対して正面を向いたのもこの時期なのだ。「ReI」もDISC1に収録されているので、改めて耳を傾けるいい機会だと思う。オーラルは、闇だけではなく、その先にある光、さらに毒をも克服するタフさ――そんなポジティブな一面も手に入れてしまったのだ。



 しかし、どれだけ完璧なサウンドを生み出しても、それだけでバンドが化けることはない。付加要素としては、サウンドを作り出す人間力も重要になってくる。そこも忘れてはならない要素だ。このバンド、4人のバランスが絶妙である。まず、楽曲の屋台骨を支えているドラムの“まさやん”こと、中西雅哉(Dr)。ライブのアンコールでは、グッズ紹介のコーナーを担当し、愛されキャラで空気をなごませている中西だが、変化球の多い楽曲のリズムを刻み、揺るがない安定感をキープしているツワモノだ。

 ベースのあきらかにあきら(Ba/Cho)は、ストラップを右肩にかけてプレイするという独特のスタイルが特徴。運動量の多いパフォーマンスで目を引く。最近は、得意とする複雑なフレーズのみならず、シンプルなベースラインでもセンスを発揮し、バンドに華やかさを与えている。

 ギターの“シゲ”こと鈴木重伸(Gt)は、普段は物静かで穏やかなのだが、ステージではなりふり構わず、一心不乱に熱いギターでライブを盛り上げる。個性的なフレーズも印象的で、彼のギターはオーラルのサウンドには欠かせない。

 そして、バンドのマスターマインドとも言えそうなのが、ボーカル&ギターの山中拓也だ。オーラルの楽曲全ての作詞作曲、バンドの進むべき道の舵取り役でもある。時に、“なぜここまで悩むのか?”と思うほどだが、その感性なくしてオーラルは語れない。考えすぎて悩み、苦しんでいる部分も彼の大きな魅力なのだと思う。

 以上の4人で構成されるTHE ORAL CIGARETTES。彼らがさらなる高みを目指し、まだ自分達の音楽が届いていない人たちに、どうやって伝えていくのか……。ここで一度、自らの歴史を振り返るのも必要な時間なのだと思う。そのための『Before It’s Too Late』だったのではないだろうか。

 個人的には、今後、『Before It’s Too Late』に詰め込まれたキラーチューンを超える最新作が届くのを待ちたいところであるが、彼らは必ず予想以上のものを持ってくるはずだ。それまではスーパーキラーチューン祭りの『Before It’s Too Late』を聴いて、純粋にオーラルの歴史を楽しみたいと思う。どの曲も、バンドとファンが“自分たちが信じて見つけて大事にしてきた財産”なのだから。

【文:海江敦士】

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リリース情報

Before It’s Too Late

Before It’s Too Late

2019年08月28日

A-Sketch

■DISC1
01.mist...
02.Mr.ファントム
03.起死回生STORY
04.嫌い
05.STARGET
06.エイミー
07.カンタンナコト
08.狂乱 Hey Kids!!
09.気づけよBaby
10.A-E-U-I
11.DIP-BAP
12.CATCH ME
13.5150
14.リコリス
15.Shala La
16.トナリアウ
17.ONE’S AGAIN
18.BLACK MEMORY
19.ReI
20.容姿端麗な嘘
■DISC2
01.接触
02.GET BACK
03.モンスターエフェクト
04.See the lights
05.WARWARWAR
06.僕は夢を見る
07.LIPS
08.Uh...Man
09.出会い街
10.ミステイル
11.N.I.R.A
12.透明な雨宿り
13.LOVE
14.マナーモード
15.ハロウィンの余韻
16.Flower
17.エンドロール
18.不透明な雪化粧
19.Everything

お知らせ

■配信情報

↓『Before It’s Too Late』配信ダウンロードはこちら
https://THE-ORAL-CIGARETTES.lnk.to/BeforeItsTooLate_0828



■ライブ情報

SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2019
08/30(金)山梨県山中湖交流プラザ きらら

音楽と髭達2019-最後の花火-
08/31(土)HARD OFF ECO スタジアム新潟

BKW!! Premium Party ~BLOOD~
09/02(月)金沢EIGHT HALL

「PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~」DAY1 ONE MAN SHOW
09/14(土)泉大津フェニックス

「PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~」DAY2 OMNIBUS SHOW
09/15(日)泉大津フェニックス

THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019
10/06(日)桜島多目的広場 & 溶岩グラウンド

BKW!! Premium Party ~BLOOD~
10/08(火)CRAZYMAMA KINGDOM

テレビ朝日開局60周年記念 テレビ朝日ドリームフェスティバル2019
10/14(月・祝)
幕張メッセ 国際展示場9・10・11ホール

ROTTENGRAFFTY「20th Anniversary Beginning of the Story ~We are ROTTENGRAFFTY~」
10/19(土)Zeep Fukuoka

BKW!! Premium Party ~BLOOD~
10/23(水)CLUB CITTA’

COUPLING TOUR BKW!! STRIKES BACK 2019
11/11(月)Zepp Tokyo

COUPLING TOUR BKW!! STRIKES BACK 2019
11/13(水)Zepp Sapporo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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