FIVE NEW OLDが、混ざり合わないものを「乳化」し新しいものへ導く メジャー2ndアルバム『Emulsification』

FIVE NEW OLD | 2019.09.11

 混ざり合うのではなく、あくまでも乳化……。乳化とは、お互いの特性や個性を尊重し、引き出し合いながら、同居したり共存し合い一つのものが生成されていく現象のこと。元々融合が困難な二者を同居/共存させる為、当然ながらそこには何かしらの媒介物や媒質も必要となってくる。「Emulsification」=乳化とタイトルされたFIVE NEW OLD(以下:FINO)のニューアルバム。サウンドや演奏、歌やリリック、それを包み彩るアートワークまで、徹底的な「乳化」をコンセプトに作り上げられた傑作だ。そして今作に於ける、その乳化の媒介物や媒質こそがFINO自身であったりする。楽曲のタイプや幅、構築された作品性、自身以外の楽器やメソッドの惜しみない導入等々、多方面でこれまで以上のフレキシブルさを感じた今作。彼らを媒介に様々な個性が同居し、共存し、結果これまでになかった新しい彼らへと出会わせてくれたのも興味深い。そんなFINOのニューアルバム『Emulsification』について、各楽曲の骨子、そしてリリックを一手に担うボーカル・ギターのHIROSHIがそのメカニズムを解いてくれた。

EMTG:今作は惜しみなく自分たち以外の楽器を取り入れたり、作品の構築感もより高く、各曲のタイプも更に幅広くなり、全体的にこれまで以上にフレキシブルな作品内容になった印象を受けました。
HIROSHI:元々今作は「FINOとしての集大成的なアルバムを作ろう」との構想から始まったんです。それは別にここで終わる等ではなく、今までバンドをやってきて、ここに至るまでの全てのストーリーだったり、自分たちが音楽的にやってきたことを今一度精査し、一つの作品として落とし込めたらいいな……との考えが当初はあって。プラスこれまで魅せてこなかった一面や、チルだけどお客さんと一緒に作り上げられる曲を欲したり。その結果ですね。
EMTG:そのこれまでのことを精査した結果、新しいところに行き着いたのも興味深いです。
HIROSHI:これまでも我々は、Emulsification=(イコール)乳化をずっと試みてきたので、それらを振り返りながら作り始めていきました。僕ら自体、NEWとOLDという相反するものをバンド名につけている時点で、その乳化をこれまでも図ってきた自負があるし、それは「これからも変わらずにいるよ」、そんな記念碑みたいなものが今作では成立出来たかなって。
EMTG:FINOは常に前を向き進化を続けてきたバンドとの印象が強いので、ここにきて“また改めて自分自身の本質を……”との振り返った行為が、ある意味不思議に感じます。
HIROSHI:次の新しい場所に行くためにも一度そのプロセスが必要になったんです。より新しいステップへと踏み出す為に、まず自分たちはどこまで広がってきたか?その辺りを自分たちでも再確認をして、それを今一度形にする。その中で現れるであろう、まだ魅せていなかった一面等もこのアルバムには期待していて。そこではきっとまた次の新しい景色が、聴いてくれた方とも見れる確信もあったので。
EMTG:そんな中、今作のタイトルやコンセプトとも言える「Emulsification」=「乳化」に至ったプロセスも気になります。
HIROSHI:タイトルにしてもこれまでは、だいたいの曲が仕上がり揃った時点で、「今回はこういった作品になったな……」とそれに見合う言葉をつけてきたんです。しかし今回は先にこの「Emulsification」という言葉が浮かんできて。そこから、「そこに向けて、そのような作品を作ろう」と。そういった点では、これまでとそのプロセスは逆ですね。
EMTG:凄く今作を言い得ているタイトルであり、コンセプトであると改めて感じます。
HIROSHI:なので集大成ではあるけど、今後柔軟に進化をしていくためにも、「液体的に音楽をやっていきます!!」との改めての宣言や予告でもあるというか。言い換えると、「今後も進化していきますよ!!」と改めて言っているアルバムでもあるんです。
EMTG:そう考えるとなおさら、結果どれも新しいタイプや次のフェーズ感のある曲たちが収まったのもユニークですね。
HIROSHI:その辺りの矛盾が今作の面白いところでもあって。Emulsificationって、ようするに「自分の中で、その矛盾に対して何かしらの回答を見出す」、そんな手段でもあると捉えていて。常に乳化をさせ、それを繰り返していく。その作業の先に今作のようなものが現れるであろう確信もあって進めていきました。
EMTG:中でも特に他楽器のフィーチャーや、その前面への出具合、導入の割合の増加も気になりました。
HIROSHI:結局それを演奏するのは自分たちですから。自分たちの手がそこに加わることで、自身のものになっていくことをこれまでの経験から得ていたので、「その辺りはもっとウェイトを高く持ってもいいんじゃないか?」との考えからです。どんなに自分たち以外の楽器類や音が加わり、その割合が増えようが、自分たちでコントロールが出来る自信がより表れてきたというか。その上、確実に音楽的な広がりや豊潤さを持たせられるというのも分かってきたし。そこはあまり臆することなく進めました。その辺りは、改めて「もっとウェイトを大きくしようぜ」的な話をしたわけでも無いのに、結果この割合に落ち着いたのも面白かったし、メンバーの考えも疎通していたのも頼もしかったです。
EMTG:楽曲のタイプの豊富さやフレキシブルさも今作では耳を惹きました。
HIROSHI:最近はメンバーにアレンジを任せるウェイトが増えたので、そこが一番大きいです。これまでは大枠は自分とWATARU(Gt, Key, Cho)で作っていましたが、最近はメロディのたたきだけを自分が作って、SHUNくん(Ba, Cho)も含め、それを他のメンバーに渡し、任せられるようになって。その分、自分は歌詞に対してどう作品との乳化作業を行えるか?タイトルに合わせてどんなことが自分は楽曲に落とし込めるか?その辺りにより注力できるようになりました。そういった点では、更に精神性の部分でもアルバムに取り組めたかなと。
EMTG:分かります。アートワークやリリック、歌表現等々が、より細部にわたり、その本来交わるべきではないもの同士の同居や共存を感じました。
HIROSHI:まさにそこなんです! おかげさまで歌詞やアートワークの隅々にまでフォーカスすることが出来て。言い換えると、今回は、より想いやそのようなものに対してのウェイトを大きく入れられて。且つ、それが必然的に音楽的なアレンジの幅とかにも結びついていきましたから。
EMTG:では、これまで以上に各メンバーの趣向やパーソナルな部分も現れたが故のバラエティさやフレキシブルさに至ったと。
HIROSHI:そうですね。日常に花を添える為の音楽を、例えそれはバックミュージック的なものであってもいいと思いつつ、その中にどれだけちゃんと純度の高い想いを居合わせられるかどうか。その辺りに重きを置けました。結果それが今作に音楽的な幅をもたらすことができた気がします。
EMTG:対して歌詞は、より考えさせられたり、気づかされるものになりましたもんね。
HIROSHI:その辺りも預けることに前向きになれたことにも関係しています。いい意味で楽になったのが大きくプラスに働いた、そんな気がして。以前までは自分の思い描いていたビジョンに対してもっと誇示してました。抱えて離さない、みたいな。でも、それにも飽きてきて(笑)。自分が指針を決め、あとはメンバーを信頼し任せれば、ちゃんと転がっていく。そんな確信もあって。結果、より4人でやっている意味合いが大きく、そして強くなったかなって。
EMTG:その歌詞の面ですが、今作は、よりサウンドやメロディと、歌や歌詞の乳化にも耳が惹かれました。
HIROSHI:その辺りは、「より自分の想いや考えていることを出してみよう」との考えに至れたのが大きいです。是非CDを手にしていただいたら和訳も読んでいただきたいんですが、その和訳にしても歌詞をそのまま綺麗に訳したものではなく、もっと物語性をそこに閉じ込めていたり、日本語ならではの歌詞として記していますから。先程のこと以外では、いつもと歌っている根本はそう変わってはいませんが、まずは生活に溶け込ませて楽しんでもらって、2周目は是非歌詞を見ながら聴いてもらえたら嬉しいです。
EMTG:私が特に印象的だったのは、M-9の「Set Me Free」でした。ここまでのバラードはこれまでのFINOの中でも無く。今回は「ここまでやっちゃうんだ」感が非常にありました。
HIROSHI:実はこの曲は当初、特にこのアルバム用に書いていた曲ではなかったんです。制作をするにあたり、時には目標をどこに定めたり、向かっていくのかが分からなくなる瞬間がある。その時のことを正直に言葉にして、デモを作成して、それをメンバーに、「こんな曲もあるよ」と軽い気持ちで渡したんです。ある種、凄くパーソナルなものを作ってしまったとの自戒もあったので。ところがメンバーからは、「この曲、面白い」や「こういった曲がライブにあると場面も変わるよね」的な感想を得たんです。その際に、「弱っている状態や自分が今どんな気持ちでいるのかをわりと赤裸々に綴ることで、逆にここまで人に残るんだ」と、その新発見にもなりました。
EMTG:ここまで感情移入された歌い方もこれまで無かった気がします。従来はこのような歌にしても、サラッと粋(いき)に伝えるのがFINOらしさと捉えていたので、初聴はかなり驚きました。
HIROSHI:この歌は仮歌の段階から「俺を自由にしてくれ」「放っておいてくれ」とずっと歌ってましたから。自分でも、「ここまでやっていいんだ」と思えたことが、曲に対しても歌詞に対しても、今後、より描ける決意に至った曲にもなりました。リリックと曲調が早い段階で統一されて生まれてきたのも珍しかったし。
EMTG:幾つかの曲でホーンがフィーチャーされていたのも印象深いです。
HIROSHI:その辺りは、この2月~3月にLUCKY TAPESと一緒にツアーを回ったのが大きいです。そこで一緒になったホーンズの方々と交流が生まれて。生のホーン隊が彼らの楽曲をよりふくよかにしている、その心地良さに憧れて。あの辺りは取り入れたいな……と体感的にその時から直感していました。あとは交流も生まれたことにより、より「一緒に何かやってみよう」的な気持ちも強く芽生えて。音楽的にもですが絆の部分も含め。いや、逆にそっちの方が大きかったです。もう各種ソロもお任せで。でも実はあれ、生で吹いてもらってはいますが、その後、エディットで切り貼りをして全く違ったものにしたものもあったし。あえてプログラミングに差し替えたものもあるんです。
EMTG:その作品性や構築性もこれまで以上に凝られてますもんね?
HIROSHI:その辺りにも時間をかけました。あえて生で録ったものをリミックスし直したり。逆に当初は打ち込みで行く予定だったドラムも、途中から他の音色や構成の変化に合わせてHAYATO(Dr, Cho)のドラムに差し替えたりした曲もあったり。
EMTG:他にも今回は、かなり景色感にこだわったようにも映ります。
HIROSHI:自分が曲に対して、「取り組もう!!」と思える一番最初のポイントとして、「風景が浮かぶか?否か?」はとても大事にしていて。風景が浮かばないと結局は物語にもならないし……。特に今作ではそれがどの曲にも生まれやすかった点はあります。自分が凄くラフなメロディとコードだけで作ったものをメンバーに渡し、そこに彼らなりのアレンジが施されて返って来た際に、そこで景色や風景がパッと広がる。そこが各曲、より大きくなり、ハッキリとはなりました。
EMTG:景色感と言えば、「Pinball」でのギターソロはむちゃくちゃ情景観があります。あとどこか80年代往年のファンキー性も擁していて。
HIROSHI:実はあの曲のギターソロはWATARUではなく、是永(巧一:ギタリスト)さんだったりするんです。あの曲はそれも含め、その時代を知る方にはたまらないギターなんじゃないかな。“えっ、そことやりますか!?”って映るかもしれませんが、それもある種の乳化ですから(笑)。「Magic」もKai(Takahashi)君(LUCKY TAPES)と仕上げているんですが、そこでもKai君の色がFINOに乳化しているし、この作品の重要なキーの一つでもある「Keep On Marching」は、日本語と英語の乳化がもたらされたり、それもあえて日本語の古めかしい言葉を使ったりと、そんな乳化や言葉遊びも是非楽しんで欲しいですね。
EMTG:まさにそれらの乳化も今回は余白や行間がある分、お客さんとの間でそれらを埋めて完成させていくべく作品のようにも映りました。となるとある種、最終的には聴き手やお客さんとの乳化も目論見的にはありそうですが?
HIROSHI:逆にそれが第一かもしれません。いわゆるお客さんとこの曲たちとが共に乳化していく。グラデーションって人為的には作れないじゃないですか。偶然性や瞬間性、その場その時の環境やシチュエーションによっても違うし変わってくる。そういった意味では是非聴き手やお客さんと各曲毎にその瞬間瞬間のマーブル模様を作っていくのが理想なんです。

【取材・文:池田スカオ和宏】





「Keep On Marching」Official Music Video

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リリース情報

Emulsification

Emulsification

2019年09月11日

TWILIGHT RECORDS

01.Fast Car
02.Keep On Marching
03.Magic
04.What’s Gonna Be?
05.In/Out
06.Last Goodbye
07.Pinball
08.Same Old Thing
09.Set Me Free
10.Gotta Find A Light
11.Always On My Mind
12.Please Please Please
13.Bad Behavior

お知らせ

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■ライブ情報

FIVE NEW OLD "Emulsification”Tour
09/22 (日) 兵庫・太陽と虎 ※SOLD OUT
10/05(土) 新潟・CLUB RIVERST
10/06(日) 石川・AZ
10/14(月・祝) 北海道・cube garden
10/18(金) 神奈川・BAYSIS ※SOLD OUT
10/20(日) 宮城・MACANA
10/24(木) 広島・Cave-Be
10/26(土) 香川・DIME
10/27(日) 愛知・BOTTOM LINE
11/09(土) 大阪・味園ユニバース
11/22(金) 福岡・DRUM Be-1
11/23(土・祝) 熊本・DRUM Be-9 V2
11/24(日) 山口・LIVE rise Shunan
11/29(金) 東京・EX THEATER ROPPONGI

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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