KREVA、 9ヶ月連続リリース・第 10 弾となるアルバム『AFTERMIXTAPE』

KREVA | 2019.09.16

 ソロデビュー15周年を迎えた今年、9ヶ月連続リリースを繰り広げてきたKREVAが、連続リリース企画・第 10 弾となるアルバム『AFTERMIXTAPE』を完成させた。タイトルにも表れている通り、今作の根底にあるのはミックステープ的なイメージだ。本人の表現を借りるならば「心のままに」という姿勢で作り上げた12曲は、多彩な刺激で満ち溢れている。KREVAというアーティストの独自性と独創性が、自然な形で反映されている1枚と言うこともできるだろう。この最新作について語ってもらった。

EMTG:「ミックステープ的な感覚でアルバムを作る」と決めたことによって、曲が作りやすくなったという旨の話を聞いているのですが。
KREVA:はい。最初に「9ヶ月連続リリース」っていう案が出た時、「最後の9ヶ月目は、何か新曲で」みたいな話になったんですよね。でも、「まとまったものは作りたいけど、アルバムじゃないな」と。そこで、「じゃあ、ミックステープは?」って思いついたら、心のままに楽しくやれて、バンバン曲ができたんです。ピンポイントでディスっていく「アイソレーター」みたいな曲も、ミックステープだからこそですよ。
EMTG:「アイソレーター」は、昔だったら『くレーベルコンピ』でリリースしたタイプの曲じゃないですか?
KREVA:ほんとそう。『くレーベルコンピ』も、ミックステープみたいな感じだったから。そういうのを今回、1人でやって、クオリティを高くしたという感じなんですかね。出てくるものに抗わず、「心のままに」というのを残すためにも、ボーカルは最初に録ったテイクをそのまま使ってるのが多いです。
EMTG:音に関しては、リリースする云々といったことは抜きにして、楽しく作れる人ですよね?
KREVA:はい。
EMTG:つまり、「心のままに」という感じでやるのがなかなか難しくて、エネルギーが必要となってくるのは、言葉に関する部分?
KREVA:そうですね。ここ最近、2011年以降はそうなんですよ。ファンの顔がすごく見えるようになってきて、「あんまり変なこと言えないな」と思うようになってきたというのもあるし。
EMTG:それは、ここ数年のKREVAさんに関して大きな部分ですよね。例えば15年前の『新人クレバ』の時は、「モテたい」というモチベーションで、言葉をじゃんじゃん書くことができたわけですから。
KREVA:「モテたい」「知ってほしい」っていう承認欲求の塊でしたね。
EMTG:そこにさらに付け加えるならば「売れたい」?
KREVA:完全に言い表してる(笑)。まあ、「認めさせたい」っていうことですよね。あと、今話しながら気づいたんですけど、『新人クレバ』の頃は「クラブミュージック」だったんですよ。実際、クラブを主戦場にしていたし、DJもレギュラーでやっていたから、クラブミュージックの延長線上にいたんです。
EMTG:そういう時期を経て、「J-POP」の人になったっていうことですかね?
KREVA:そうなんですかね? 「そうなってやるぜ!」っていうつもりではいたけど、「実際にそこに入っていった」っていう感じなのかも。「ここの層の人だけわかればいい」っていうのは、俺にはないですから。
EMTG:今回のアルバムも、そういう作品ですね。
KREVA:今回、やっぱり大きいのは「心のままに」っていうことなのかな。機材から出てくるものとか、「この音色だったらこのフレーズ」みたいなものにとにかく従って、気持ちいいままに作ったから。「君の愛 Bring Me To Life」とかもノリですぐできましたし。
EMTG:「敵がいない国」が、ものすごくかっこいいです。こういうベースがバリバリに鳴っている曲は、初期のKREVAさんにはなかったですよね? 先日の武道館公演のMCでもおっしゃっていましたが、昔はベースの魅力に気づいていなかったわけですから。
KREVA:ベースを入れてなかったのは、時代を先取りし過ぎてたんだよな(笑)。
EMTG:(笑)。あと、すごく思ったのは、《敵がいない国》って、いい響きの言葉だなということです。
KREVA:この言葉自体は、すごい前に思いついてて、それがこのトラックに音的にもフレーズ的にもハマるなと。
EMTG:ライブ空間のことを表現していますよね?
KREVA:はい。まあ、「自分がキングだ」っていうことでもありますからね。「敵がいない国の王者」……井の中の蛙感がヤバいけど(笑)。
EMTG:「One feat. JQ from Nulbarich」は、名曲だと思います。サウンドの壮大なスケール感が気持ちいいですよ。
KREVA:バンドの要素もふんだんに入っていますからね。この曲は、JQが去年の『908 FESTIVAL』に出てくれることになって作ったんですけど、ミーティングをした時に、「対比がハッキリした、ラップのところはハードで、サビの歌で世界がガラって変わるようなものにしよう」というのは、最初から言ってました。
EMTG:人生観も出ている曲だと感じたんですけど。
KREVA:あっ、そうですかね?
EMTG:築いたポジションに胡坐をかかないで、ちゃんといろんなことを積み重ねてきた人だからこその曲として僕は受け止めています。
KREVA:いやあ、胡坐はかけないですよ。そんな余裕は全然ないので。
EMTG:『完全1人ツアー』とかもそうでしたけど、第三者から見ると、「そんな無茶、しなくてもいいのに!」っていうことをして、さらにすごくなってきたじゃないですか。わざわざ炎の中に飛び込むというか。
KREVA:なるほど(笑)。それで、炎の中から出てくるっていう?
EMTG:はい(笑)。そういう姿とも重なる曲だなと感じたんです。人生観が出ている曲といえば、「人生」っていう曲もありますね。
KREVA:はい。でも、自然とそうなったっていう感じですね。《人生》って言葉が出てきたから、それをピックアップしただけで。「シンセサイザーのフィルターをグリグリといじったら、それだけでノリが出るなあ」っていうことを考えたら曲になった――というのが、これに関しては大きいです。
EMTG:「機材が好き」というのは、KREVAさんの創作の根本にあるところですよね? 「機材をいじって曲を作るのは、テレビゲームで遊ぶような感覚」というようなことを、数年前の取材の時におっしゃっていた記憶があるんですが。
KREVA:そうですね。俺、YouTubeで機材の解説をしている動画を観るのも好きなんです。最近、外国人が英語で機材の説明をする動画を、毎日必ず観るようにしてます。英語を聴き取る耳を鍛えることにもなるので。
EMTG:機材解説の動画は、すごく参考になりますよね。「こんなこともできるの!?」って、目と耳で瞬時に理解できるじゃないですか。
KREVA:ほんとそう。こういうのがあるから、機材のチョイスも無限になりますよね。だから、ますます選ぶ力が大切な時代になってるんだと思います。
EMTG:「的確なチョイスをして組み合わせる能力」って「コラージュ力」と言い換えることもできると思いますが、これはKREVAさんの得意分野ですよね? 「無煙狼煙」と「One feat. JQ from Nulbarich」のアートワークのコラージュも見事だったじゃないですか。
KREVA:ありがとうございます。コラージュ、好きなんですよね。与えられた物の中から選んで、時には原型がなくなっちゃうこともあるけど、そこから何かを生み出す――っていうのは、大好きです。1フレーズを選んで、それを切り刻んで違うものにするとか、A案、B案、C案があったら、それの最大公約数のD案にしたりとか。
EMTG:そういうセンスを磨きつつ、作風も着々と広げてきたわけですよね。今回のアルバムの中では、特に「S.O.S.が出る前に」が新鮮です。
KREVA:いい歌ですよね。《頑張ってると思うよ》って聞こえてきたから、こうなったんですけど。ちょっと前に、頑張れソングみたいなのがすごく多かったですけど、その頃に、あるミュージシャンが「頑張らなくていいよ」的なことを言ってて、ウチの事務所の社長も「そういう歌、作ったらいいんじゃない」って提案してきて、「たしかに、頑張れっていうよりも、頑張らなくていいよみたいなことを言ってあげたいかな」って思ったんです。そこから10年以上経って、俺から出てきたのは《頑張ってると思うよ》でした。
EMTG:応援ソングって、今までにありましたっけ?
KREVA:「アグレッシ部」くらいなのかな? あれは「応援ソングにしてください」って言われて書いたので。でも、自分自身への応援歌になってますからね。
EMTG:応援の表現が、《頑張ってると思うよ》なのが面白いです。「もしかしない」もそうですけど、「普通の言葉を使っているのに、さりげなくヒネリが利いている」というのも、KREVAさんについて語る上で欠かせないポイントだと僕は思っています。
KREVA:フックになる、引っかかりのある言葉は、好きなんですよね。「無煙狼煙」や「存在感」とかもそうですけど、「は?」ってなって聴いてみたくなる日本語っていうのは、心がけてます。
EMTG:聴いてみたくなる日本語といえば、「それとこれとは話がべつ! feat. 宇多丸, 小林賢太郎」。「どういう曲なんだろう?」と思って聴いたら、まさしく「それとこれとは話がべつ!」っていう曲(笑)。RHYMESTERの宇多丸さんと小林賢太郎さんという人選も最強じゃないですか。
KREVA:構想3、4年なんです。絶対にヤバい曲になると思ってて、タイミングを見計らってたんですよ。
EMTG:《それとこれとは話がべつ!》っていう音の響きも実にいいですね。
KREVA:《それとこれとは話がべつ!》って子供に言ったら、すごくウケたんですよ。 トラックがないのにリズムが聞こえてくるっていうのは、言葉がリズムを持ってるってことじゃないですか。それはいいことだなあって思いました。
EMTG:商品名にしたら、一発で覚えてもらえるかもしれないですよ。「新発売のお茶。それとこれとは話がべつ!」とか。
KREVA:それ、いやだなあ。「国産茶葉の内、オーガニック緑茶の割合○×% 新発売」とか言ってて、「オーガニックなのかな?」って思ったら、「それとこれとは話がべつ!」ってなったりするパターンが考え得るから(笑)。
EMTG:(笑)。今さら言うことでもないですけど、KREVAさんって言葉のセンスもいいですよね。ミュージシャンだから音のセンスが鋭いのは言うまでもないけど、言葉に関してもすごいですよ。
KREVA:引っかかる言葉が独特なのかな? 普通の言葉に意味を見出すっていうか。キャンベルの缶を芸術の域に持って行くアンディ・ウォーホルじゃないですけど。あと、「アノニマスデザイン」って言うんですかね? 作者のいないデザイン、例えば醤油差しとか。そういうのが大好きなんです。そういう感覚に近いことなのかもしれない。「存在感」っていうのも、みんな使ってる言葉だし、「人生」だって何回使ったことがあるのかわからないくらいの言葉だけど、改めて曲のタイトルになると、「えっ?」ってなるわけなので。
EMTG:一般的に「詩的」とか言われる言葉じゃないけど、使い方、組み合わせ方、切り口の鋭さによって「詩的」と感じるものを提示できているんだと思います。
KREVA:うん。組み合わせによって詩的に聞こえるようにしたりもしますし。やっぱ、そういうのが好きなんだと思います。

【取材・文:田中 大】



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リリース情報

AFTERMIXTAPE

AFTERMIXTAPE

2019年09月18日

ビクターエンタテインメント

01. MIX / TAPE
02. 敵がいない国
03. One feat. JQ from Nulbarich
04. S.O.S.が出る前に
05. アイソレーター
06. リアルドクター K
07. 人生
08. Don’t Stop Y’all, Rock Rock Y’all
09. もしかしない
10. 無煙狼煙
11. それとこれとは話がべつ! feat. 宇多丸, 小林賢太郎
12. 君の愛 Bring Me To Life

お知らせ

■マイ検索ワード

accelerate
「加速する」っていう意味の英語です。リズムに対して後ろにもたってるのをlaid-backと言うのはわかってるんだけど、その反対は、なんて言うのかなとずっと思ってて。最近のラップはlaid-back化がなくなってきていて、前にのっかっていくのが多いんですよね。10年前くらいに久保田利伸さんに「laid-backの逆の英語ってなんですかね?」って訊いたら、「なんだろう?ないんじゃないかなぁ?」っていうことになり(笑)。でも、さっきリズムに関する本を読んでたら、「曲の後半で前につんのめっていってしまうのをaccelerateと言う」と書いてありました。



■ライブ情報

908 FESTIVAL 2019
09/26(木)横浜アリーナ
出演アーティスト:KREVA / 三浦大知 / s**t kingz / DEAN FUJIOKA / BONNIE PINK
開場/開演:17:30 / 18:30


KREVA CONCERT TOUR 2019-2020
「敵がいない国」

12/13(金)宮城 チームスマイル・仙台PIT
12/16(月)愛知 ダイアモンドホール
12/17(火)大阪 なんばHatch
12/19(木)福岡 DRUM LOGOS
12/23(月)東京 豊洲PIT
and more…!!

公演の詳細はKREVAオフィシャルHP(http://www.kreva.biz/)をご確認ください。

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