等身大の言葉で描く全6曲のストーリー――なきごとが目指す音楽像とは?

なきごと | 2019.09.18

 信頼のブランド、murffin discsの[NOiD]レーベルが自信を持って送り出す、巨大な可能性を秘めた東京出身 2 人組女性ロックバンド、その名はなきごと。結成から1年、初の全国流通シングル「nakigao」を経て、ついに完成した1stミニアルバム『夜のつくり方』。エモ度満点、歪んで尖ったギターサウンドと、ふんわりキュートなボーカルという、魅力的なアンバランスに磨きをかけ、ラウドもポップも混ぜ込んだ、若い才気がほとばしる全6曲。若さゆえの爆発力、危うさ、儚さをたっぷりと沁み込ませた、物語性あふれる歌詞と、キャッチーなメロディセンスもただ者じゃない。平均年齢21歳、ロックシーンの末っ子が大きな一歩を歩みだす。これは新しい冒険の始まりだ。

なきごと『夜のつくり方』【トレーラー】

EMTG:記念すべき、1stミニアルバム。実感は?
岡田安未(Gt/Cho):美術の授業で、半年かけて作った卒業制作ができたような気分です。
水上えみり(Vo/Gt):今までの自分の感情や、自分の中にある背景が、結構盛り込んである6曲なので、「ザ・今までの自分」ですね。今までの自分の中の最強のものを揃えて、「いざ出陣!」という感じで。
EMTG:1年前、結成して最初に作った曲が「メトロポリタン」と「ドリー」でしたっけ。
水上:そうです。その時に録った音源を使って、ボーカルだけ歌い直しました。

なきごと「メトロポリタン」MV
岡田:ミックスですね。
水上:初心の心も忘れずに。自分たちの原点の2曲なので。
岡田:でも、歌うまくなったよね。
水上:……ありがとうございます(笑)。
岡田:最初に「メトロポリタン」と「ドリー」を録った時は、結構ピッチ修正が入ってたんですけど、今回はしてないよね。
水上:ほぼほぼ。
EMTG:うまくなった自覚はあるのかな。
水上:自覚はまったくないです。でも特に「ドリー」は、レコーディングしたのが去年の7月とかで、その時の歌を聴くと、めっちゃ下手じゃん!って思う。たしかに修正入るわ、みたいな感じで、聴きたくないぐらいでした。コーラスもそうじゃなかった?
岡田:えへへ(笑)。私はコーラスがひどいし、録り直して良かったと思います。
水上:元の音源の良さを超えた良さなので。今回の音源は、自信を持って世に送り出せます。
EMTG:曲調が幅広いなあと思います。予想以上に。
水上:たしかに。曲の振り幅が大きくて、ダークな曲から明るい曲までありますからね。
EMTG:曲を作ったえみりさんが、「こういう感じで」ってメンバーに指示を出すのかな。
水上:サポートメンバーを入れて、最初に軽く4人で合わせる時に、「ドラムはもうちょっとこういうニュアンスで」とか言ったりします。特に「深夜2時とハイボール」のドラムのニュアンスには、自分なりにこだわりがあって。簡単な言葉で言えば「重ために」なんですけど、その時ドラマーの方に伝えたのは、「ベースが夕焼けで、岡田が弾いてるギターがチャイムみたいな、上からふわーっと流れてくる音で、私のギターが自分で、ドラムは目の前を通る電車の、車輪がギーってなってる感じを思い浮かべながら叩いてください」って言ったら、「えっ?」って言われました(笑)。
EMTG:あはは。それはなかなか難解。
水上:「今はカラスが飛んでるっぽいので、車輪のイメージで!」と言ったら、「なるほど、やってみるわ」って。
EMTG:伝わったんだ。すごい。
水上:その情景をイメージしながら聴くと、また景色が広がって聞こえるんじゃないかなと思います。
EMTG:そういうことを言われて、安未さんはすぐわかるでしょ。付き合い長いから。
岡田:わかりますね。
水上:あと、もうひとり、同い年のサポートの方と一緒にスタジオに入った時に、「これだとかわいい女の子がキラキラしてる感じだから、もうちょっと不細工に叩いて」って言ったら、さすがに「はあ?」って言われました(笑)。一瞬、間を置いて「はあ?」って。
岡田:ちょっと考えてくれた(笑)。飲み込んで、考えて、「いや、わかんないんだけど」って。
水上:最終的には「気取ってない感じで」にまとまったんですけど。それを読み取るのに、一周回らないといけないっていう。
EMTG:えみりさんの頭の中には明確な曲のイメージがあって、それをなんとか伝えたい、と。
水上:そうです。いつも、音とストーリーが一緒になっているので。「深夜2時とハイボール」はワンシーン、一夜だけですけど、それ以外は1曲の中に時系列があるんです。書きながら、どんどん出てきちゃうんですよね、ストーリーが。「これはこうだから、こうなって……」「ここはこういう気持ちになるよな」とか。そういうものも組み込んで作っていきます。
EMTG:曲のテーマは、具体的に言うと?
水上:「合鍵」とか「メトロポリタン」は、恋愛が大きな位置を占めている曲です。「深夜2時とハイボール」は、自分が生きていくことと、それを救ってくれた人の、掛け合いの曲ですね。「のらりくらり」は、自分がニートの時に作った曲です(笑)。本当にのらりくらりしてた時に、ひとりでていたらくに生きてることに関して歌ってます。「ユーモラル討論会」は、いろんな人が出てくるように見えて、自分ひとりだけなんですよ。最終的に、喜怒哀楽もそうですけど、それ以外の複雑な気持ちとか、優越感、背徳感とか、そういう感情も全部含めて自分なんだということに気づいてしまう。自分のことがこんなに嫌いなのに、結局それが自分だし、他人のように見えて全部自分なんだということに気づいて、もう嫌になっちゃう。で、最終的には自殺しちゃう。

なきごと「ユーモラル討論会」MV
EMTG:えみりさんの歌って、死ぬことがよく出てくるでしょう。
水上:そうですね。この中で言えば、「のらりくらり」と「合鍵」以外は、死に関係してますね。自分が結構「消えたいな」「死にたいな」と思うことが多いからかもしれない。
EMTG:そんなこと言わないで、若いのに。安未さん、好きな曲は?
岡田:やっぱり「ドリー」ですかね。
水上:言うと思った!
岡田:「のらりくらり」もわりと好きです。あと「合鍵」も好きです。ほかは、ちょっと大変だなと思います。
EMTG:何が?ああ、演奏が。
岡田:「メトロポリタン」とか、手元と足元が忙しいし。「ユーモラル討論会」はもってのほかです(笑)。これ、ライブ中にピックアップ・セレクターを変えてるんですよ。フロントとリアと真ん中があるんですけど、小指を使って前にしたり後ろにしたり。ということもあって、いちばん好きなのが「ドリー」。
EMTG:動機が不純だ(笑)。
岡田:もちろん、楽曲としても普通に好きですよ。結構エモーショナルな曲が好きなので。「ドリー」はいいと思います。
EMTG:「ドリー」は、たぶんこの中でいちばんエモい曲で、録り直した歌もすごくいい。えみりさんのふわっとした歌い方と、安未さんの歪んだギターを中心とした荒々しいバンドサウンドと。その共存がなきごとの魅力だなあと思います。
水上:自分の中では、そんなに柔らかい声をしてるとは思ってないんですけど、いろんな表情を声で出せることが判明したので、今回のレコーディングを通して、表現の面で進歩した部分はあると思います。「ドリー」もそうですけど、「ここは強く歌う」「ここは叫ぶように歌おう」とか。「合鍵」の歌は、すごく柔らかいと思います。あと「のらりくらり」は、ダルダルな感じで歌ってますね。声色にも、楽曲への思い入れが入ってて、「こういう歌い方をしているのは、この言葉の意味を伝えたいからだよ」っていう。そのあたりも聴いていただけたらと思います。
EMTG:柔らかく歌う「合鍵」が1曲目なのが、ドラマチックでいいなあと。
水上:この曲の元々のコンセプトが、「金曜日の女」か「金曜日の夜しか会えない女」だったんですよ。仕事があったり、家庭があったりしても、金曜日の夜だったら何しても大丈夫みたいな、そういう気持ちがあると思ってて。簡単に言えば不倫なんですけど。
EMTG:ああー。なるほど。
水上:土曜日の朝になればひとりきりになってしまうことはわかってても、金曜日の夜にしか会えない人がいる――その人の恋路の話です。まあ結局、騙されてました、みたいなことですね。自分の失恋とも重ねながら物語を作ってるので、失恋してる人は「合鍵」をぜひ聴いてほしいですね。
岡田:(黙って歌詞を指さす)。
水上:そうそう、サビの《君がくれた合鍵と/君がくれた愛してるで》のところ。
EMTG:《どうやら僕は勘違いしていたみたいだ》。うーん、沁みる。
水上:個人的には、《君のいない生活に少しずつ慣れてきたなぁ》というところが好きです。ごはん作りすぎちゃうなあ、とか、洗濯ものって2日に1回でも大丈夫だったんだなあ、とか。ふたりでいると1日1回は回さなきゃいけないのに、みたいな。そういうことを思いながら聴いていただければ。
岡田:失恋したけど、なかなか涙が出ないという子がいたら、これを聴いてボロボロ泣いてほしいです。
水上:で、言葉だけじゃ表しきれない部分を、爆裂ギターソロで泣きに行かせてる。頭の中にある、言葉にならない感情や思い出が、ぐるぐるってなってる感じのギターソロを弾いてくれてるので、そこは絶対に聴いてほしいですね。そこからの《“寄り道したとしても最後には帰ってきてよ”》という歌詞――奥さんが寄り道なのか、不倫が寄り道なのか、どっちかはあえて言わないですけど。最後には自分の元に帰ってきてほしいなと思いながら、君のいない生ぬるい日々が続いていく……。
岡田:諦めきれない。
EMTG:すごい。なんか、短編小説を1冊読んだ気分。
水上:「夜のつくり方短編集」ですね。
EMTG:物語の説得力と、強靭なバンドサウンドで、聴く人の感情をぐらんぐらん揺さぶる感じですね。
水上:頭の中でずっと考えてるのは、聴く人がいないとバンドはできないし、音楽はできないということです。寄り添うって、簡単なことじゃないと思ってて、寄り添う責任も絶対にあると思うし、ただ「頑張れ」「大丈夫だよ」って言うのは無責任だと思うので。隣にいて、そのことを思い出さなくてもいいようにしてあげたり、逆に思い出させて、泣かせてあげることができるのは第三者じゃないですか。その、第三者のポジションでいたいんです。
EMTG:なるほど。
水上:ご飯を一緒に食べに行ったりして、お話してるような雰囲気で、遠回しに励ませればいいなと思います。「大丈夫だよ」と言われても、大丈夫じゃなかったらどうするの?と思うし、それよりも、一緒に弱音を吐けるような関係のほうが、一緒にいて楽だし、気を使わなくていいし。友達って、そうじゃないですか。そんな感じで、気合い入れてガチガチで聴くというよりも、肩の力をふっと抜いてから聴いてもらったほうが、スッと入って来るような曲たちなんじゃないかなと思います。これでまとまった?
岡田:うん。
EMTG:頼もしい。結成から1年が経って、バンドが成長している実感は?
水上:当初から、自分たち的にはあんまり変わってなくて、ずっとバタバタですね。とにかく目の前にあるものを頑張って乗り越えてるという感覚のほうが強いです。
EMTG:仲のいいバンドが増えたとかは?
水上:レーベルメイトはすごく仲良くなりました。osageもそうだし、この間のレーベルナイト(7月30日に開催された「murffin night 2019 in SENDAI」)で先輩たちが認めてくれた感じもしたし。一緒になって、なきごとをどうしていこう?って考えてくれたり、厳しいことを言ってくれる先輩もいるし。いいことだけを言ってくれると、温室で育っちゃって、良くないということをわかったうえで、あえて崖から突き落とすみたいな。だけど、結果を出してる先輩が多いから、説得力があるんですよね。
岡田:親戚のお兄ちゃんお姉ちゃんが、たくさんできた感じです。
水上:うん。本当に、みんないい人すぎて。
EMTG:今はまだ、バンドシーンの末っ子かもしれないけれど。
水上:末っ子になりすぎても、かわいいかわいいで終わっちゃうんで。どんどん進化していかなきゃいけないと思ってます。
岡田:『ライオン・キング』だね。一回突き落として、這い上がってこい!みたいな。
水上:「旅に出るのじゃ!」って、こうやって持ち上げられてる感じ(笑)。今、この状態だよね。
EMTG:今、目の前でポーズを取ってくれてるんだけど、文字にできない(笑)。
水上:はははは(笑)。1stミニアルバムはこの状態です。ここから頑張って冒険していきます。今はまだ、何も知らない状態だもんね。いろんな景色を見て、おそるおそる旅に出ていく感じですね。
EMTG:そして、10月からツアーが始まります。抱負をひと言。
岡田:音楽だけでは知りえなかったなきごとを、目で見て知ってほしいと思います。
水上:各地でいろんなバンドと対バンするんですけど、ファイナルがマジでヤバいです。私たちの初めての企画をやったのが去年の10月4日、新代田FEVERで、ツアー初日が10月4日でちょうど1周年。あと、今回のツアーファイナルもFEVERなので、かなり気合い入ってます。初日の10月4日とファイナルの11月24日の間で、成長する姿を見てもらえるように頑張ります。
EMTG:子ライオンが大人になって、たてがみが伸びたりして。
水上:もこもこになって。
岡田:お供の動物も増えてるかもしれない(笑)。

【取材・文:宮本英夫】

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リリース情報

夜のつくり方

夜のつくり方

2019年09月18日

[NOiD] / murffin discs

01.合鍵
02.メトロポリタン
03.ユーモラル討論会
04.のらりくらり
05.深夜2時とハイボール
06.ドリー

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

なきごと「夜のつくり方」Release Tour 2019
10/04(金) 東京 下北沢Daisy Bar
10/14(月・祝) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
10/21(月) 福岡 Queblick
10/22(火・祝) 広島 Cave-Be
10/31(木) 宮城 仙台enn 3rd
11/08(金) 大阪 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
11/10(日) 愛知 名古屋RAD SEVEN
11/24(日) 東京 新代田FEVER

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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