Saucy Dogが感じた自分たちの進化と自信――バンドとしてよりタフになったNew Mini Album『ブルーピリオド』インタビュー

Saucy Dog | 2019.10.03

 1年半ぶりとなるSaucy Dogのミニアルバム『ブルーピリオド』。これまでの彼らが積み重ねてきたものが大きな自信と手応えになり、その自信と手応えによって生まれた、よりタフでパワフルな新作だ。石原慎也(Vo・G)の書く歌詞も、もちろん苦しみや哀しみも歌う場面もありながら、どの曲でも最終的にしっかりポジティブな「出口」を見つけ出す。その頼もしさこそが、ライブを重ねていくことで身についたSaucy Dogならではの在り方だ。メンバー全員にこの1年半に起きた変化について語ってもらった。

EMTG:前作『サラダデイズ』を出してからここまで、どういう風に過ごしてきましたか?
石原慎也:挑戦することが多かったですね。それこそ2マンツアーで先輩達とライブをやるっていうのが控えていたのもあって、どうすればいいのか、僕たちはどうあればいいんだろうとか、そういうのを常に思っていました。そういう前向きな気持ちというか、こうやって俺らは頑張っていけばいいんだ、ありのまま自分らしく行けばいいんだっていう気持ちを歌にしていきましたね。
秋澤和貴(B):今作と前作で悩んでいることも全然違うし、今回は時間の余裕もあったし、バンドに対する考えかたも変わってきて。音作りとか演奏のノリとか、そういう意味ですごく成長できたし、結果このアルバムができたのもすごいよかったなって思って。
EMTG:バンドに対する考えかたが変わったっていうのはどういうふうに?
秋澤:メンバー間の会話が増えたんですよね。
EMTG:へえ!
秋澤:もともと個人の話が多かったんですけど、それがバンドとしてのグルーヴの話になってきて。意味のある会話というか、ライブする前に演奏の話とかが自然にできるようになりました。
石原:前はケンカとか多かったし、話が通じないことも多かったんですよ。それがだんだんと通じるようになってきて。やっぱり向いている方向は一緒なので、そこに向かって行こうっていう気持ちがより深まったのかなと思います。それによって会話ができるようになっていったのかなって。
せとゆいか(Dr・Cho):『サラダデイズ』のレコーディングが終わってから、ツアーばっかりだったんですよ。(スペースシャワー)列伝TOURがあって、初めてのワンマンツアーがあって、、、その先輩との2マンツアーがあったり……そのなかで、今までより自分たちのことをしっかり見る機会、考えないといけない時間もすごい増えたし、それこそ先輩と2マンしたりとか、いろんなバンドに自分たちのツアーに出てもらって、それをしっかり見るっていう機会もあったんで、それぞれのバンドのいいところとか、じゃあ自分たちのいいところは?とか、そういうことを勉強したり吸収したりっていうことを一番濃くできたんですよね。自分たちが吸収していったもの、今できることを全部出したいっていう感覚で常にやっていたので、それが出ているのかなって思います。
EMTG:この『ブルーピリオド』、まさにすごく前向きな作品だなと思います。いろんな時期にいろんな形で書かれた曲が入ってると思うんですけど、それを集めたときにどういう色の作品になったと思いますか?
石原:完全に7色かなと思いますね。全部違う色の曲ができたなあと思いますね。でもやっぱり、モチベーションとか、自分が表現したいものは変わらないので。様々な曲ができても人に伝えたいって気持ちは変わらないです。
秋澤:僕は作品ごとにちょっとマッチョになってきているっていうか。前の作品と聴き比べたときに、曲に厚みがあるっていうか。気持ちの面も技術の面も成長できてるなって。それは聴いている人にも伝わるんじゃないかと思います。
EMTG:レコーディングはどうでした?
せと:結構バタバタだったのですごく大変だったんですけど、前よりそれぞれ自分の楽器の音に対する興味も全然あるし、そこへのこだわりだったりとか、この音気持ちいいって思いながら演奏できたのは楽しかったですね。最初の頃はレコーディングってすごい苦手で、「いややなあ」って思ってたんですけど、最近は「早くレコーディングしたいな」って思うんです。ライブじゃないところでグルーヴを意識しながら演奏できるっていう楽しさがわかってきた感じもあって。だから、結構大変な部分もあったし楽しかった部分もありましたけど、これからまたもっと楽しいと思えるようになるかもしれんなって思えるレコーディングでした。
石原:音だけでも会話ができるようになってきたかなって思うんですよね。それこそ初年度とかは音を合わせるだけでも精一杯だったんです。ドラムにタテが合わないとか、そういうのがすごく多くて。でも去年とか一昨年ぐらいからかな、あんまり意識してなくても合うようになってきたので。みんな周りの音がちゃんと聴こえるようになったっていうか。
EMTG:あれだけライブやっていながら「タテが合わない」っていうのも不思議ですけどね。
せと:それすらわかんないって感じだったんですよね。何が悪いかわかんないみたいな。
秋澤:僕の場合は、バンドのためもあったんですけど、自分を一番よく見せたいって気持ちのほうが強かったんですよね。PAさんとかにもちゃんとパートの音を聴きなさいって言われていて。自分では聴いているつもりだったんですけど、ちゃんと理解する意識を演奏にも持ち込むっていうことを言ってたんやなって気づいて。だから最近はみんなでお客さんに伝えるためにっていうのを意識するようになれたなっていうのはあります。
石原:ちょっと変わっただけでもすごいバンドって変わるんだなって改めて思ったし、まだまだこれから変わっていけるんじゃないかなって自信にもなりましたね。
EMTG:まさにそういう自信、手応えがこのアルバムを作っていると思いますね。変な言い方をすると「バンドになった」っていうか。バンドだからこそちゃんと前に行けるっていう。
石原:そうですね。
EMTG:たとえば「届かない」みたいなラブソングは今までもありましたけど、それも今までとは違う芯の強さみたいなものを感じます。
石原:「届かない」は歌詞、すごく考えましたね。1年経って、自分に書ける歌詞はどう変わったのかなって。前よりはちゃんと喋れるようになったと思うし、すごくバカな話、「語学力」も上がったし(笑)。
EMTG:今回曲作りで悩んだりはしました?
石原:全然しましたね。なんか全然歌詞書けない、みたいな。結構悩んでるときって書けないんですよ。「悩んでた」ときのほうが書けるんです。気分が落ちたりすると、そっちばっかりに気を取られて歌詞を書く気持ちになれない。今後の目標は「進行形っぽい歌詞を書く」っていうことなんですよね。ウェディングソングとか、未来の歌詞をちゃんと書きたいなって。子どもが生まれたときのことは全然わかんないけど、うちの姉に娘ができたんで、そのときのことを自分に置き換えて書いてみようかなって思ってますね。
EMTG:未来のことも歌ってきてますよね、でも。
石原:こうであってほしいということは歌ってるんですけど、この先決まっていることとか、そういうのを書きたいなって思うんですよね。
EMTG:逆に「雀ノ欠伸」(「サントリー天然水 GREEN TEA」とのコラボ企画「徒然なるトリビュート」参加曲)みたいな、題材があるっていうか、何か知られるものがあったほうが書きやすいですか?

Saucy Dog「雀ノ欠伸」Music Video -徒然草 序段の再解釈-
石原:いや、めっちゃ難しかったですね(笑)。これは再解釈なんで、めちゃめちゃ長い文章をもう1回再解釈してってなると字がやっぱり多くなっちゃうのを、それをどんだけ少なくするかみたいな。自分はどう思うかっていうのを自分に置き換えないといけないんで。すらすら言葉が出てこなかったです。
秋澤:でも歌詞を見て、もちろん『徒然草』を解釈して書いているんですけど、すごく自分たちのバンドのことを歌っているようにも聞こえるというか。ここで自分らしい歌詞を書けたというのはすごいなって思いました。
EMTG:ほんとそうですよね。今のSaucy Dogのテーマソングにちゃんとなっている。だからこそ1曲目に置けたんだと思うし。
石原:そうですね。やっぱり『徒然草』というものを3人でちゃんと表現したかったから、今までにない構成にしたりとか。それがすごく自信にも繋がったし、すごく辻褄が合うっていうか、自分の中でしっくり来ましたね。
EMTG:わかりました。「Humming」はお父さんのことを歌っているんですか?
石原:そうです。俺、親父と行く釣りがすごく好きだったんですよ。小学校とか幼稚園のときよく行ってて。でも中学入ってくらいからすごく少なくなって。釣りしに行きたいな、みたいな話をしたなあと思って。でもそのときは行けなかったんですよね。それで拗ねちゃって「もういいわ」みたいな感じやったなって思い出しながら。この前親父に訊いてみたんですよ、「覚えてる?」って。そしたら「覚えてるよ」ってことだったので曲にしてみようと思いました。
EMTG:親父と話すのってちょっと、こっ恥ずかしいじゃないですか。
石原:そうですね。だからちょっとかわいい感じのアレンジにしてみたりしました。
EMTG:「パパ」って言ってますもんね。
石原:そうです。これも「パパ」でいいのかなって悩んだんですけど(笑)。でも母親にも曲を作っていたので、お父さんにも作れればいいなと思っていたので、いいタイミングでしたね。
EMTG:なるほど。この曲と、あと6曲目の「Tough」という曲が今作をひっぱっているように感じました。
石原:「Tough」は……今日まで歌詞に「ギター」とか「歌」とか「音楽」とかの言葉は入れたことがなくて。なんか自分に固執しちゃうっていうのがいいのか悪いのかがわからなくて書けなかったんですよ。それを初めて書いてみて。これ、歌詞とメロディが先にできてたんだっけ。
秋澤:演奏というか、曲の構成とかはできるの早かったと思う。
せと:「ゴーストバスター」「雀ノ欠伸」の配信が決まってから作ったんですけど、その他の曲のなかでは割と早くできた曲だと思います。セッションみたいな感じでがーっと作りましたね。
石原:青春パンクじゃないけど、ギターを本当にガシャガシャやる感じの曲になりました。
EMTG:バンド感ですよね。それもバンドとしての形というのがくっきりしてきたってことなのかなって思いますね。今、バンドやっているのが前より楽しかったりするんじゃないですか?
石原:楽しいっすよ。やっぱりバンドは楽しい。何回も言いますけど、やっぱりちゃんと話ができるようになったのが大きいんですよね。
せと:昔とは楽しさが変わってきた気がしますね。昔は「こんな場所でできて嬉しい」とか「こういうバンドと一緒にできて嬉しい」とか、もっと単純に「こんな人と知り合いになれて嬉しい」とかの気持ちが、どっちかというと内側に来ている感じがしていて。「いい演奏ができて嬉しい」とか、そういうほうが勝ってる感じがしています。
EMTG:より音楽的な喜びになってきているんですね。
秋澤:バンドやっていると結構大変で、いろいろ考えないといけないというか。でも今は自分が思っているより未来が広がった風景が見えている気がして。すごく真面目に向き合って楽しいなっていうのが倍増しました。可能性が広がったっていうか。
EMTG:可能性を感じながら進んでいけるというのは強いですね。
石原:逆に今、それを逃しちゃったらもうダメだなって思うんで。逃さないように必死ですね。

【取材・文:小川智宏】

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リリース情報

ブルーピリオド

ブルーピリオド

2019年10月02日

MASH A&R

01.雀ノ欠伸
02.ゴーストバスター
03.スタンド・バイ・ミー
04.Humming
05.届かない
06.Tough
07.月に住む君

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

ブルーピリオド Release tour
「いつだって今日がはじまりツアー」

10/18(金) [北海道]札幌ペニーレーン24
10/19(土) [北海道]札幌ペニーレーン24
10/25(金) [宮城]仙台Rensa
11/07(木) [福島]郡山#9
11/09(土) [新潟]NEXS NIIGATA
11/10(日) [長野]長野CLUB JUNK BOX
11/14(木) [福岡]福岡イムズホール
11/16(土) [香川]高松MONSTER
11/17(日) [広島]広島CLUB QUATTRO
11/22(金) [大阪]なんばHatch
11/23(土) [愛知]名古屋ダイアモンドホール
11/28(木) [東京]Zepp TOKYO<TOUR FINAL>

Saucy Dog 「はじめてのホールツアー」
[2020年]
03/22(日) [東京]LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
03/24(火) [大阪]オリックス劇場
03/27(金) [愛知]名古屋市公会堂
03/29(日) [東京]人見記念講堂



Halo at 四畳半 2MAN TOUR
「ARK"WANDER LIGHTS"TOUR 2019」

10/03(木) 名古屋ell.FITSALL

dustbox pre.「The Awakening TOUR」
10/05(土) 高崎club FLEEZ

FM802 30PARTY Eggs presents
MINAMI WHEEL 2019 EXTRA EDITION

10/12(土) なんばHatch

Saucy Dog Live at 獨医祭
10/13(日) 獨協医科大学 体育館アリーナ

新潟医療福祉大学「伍桃祭」
10/14(月・祝) 新潟医療福祉大学 第一体育館

南山大学学園祭 NANZAN SUPER LIVE 2019
11/02(土) 南山大学内体育館 特設ステージ

近畿大学(本学・東大阪キャンパス) 生駒祭
11/03(日) 近畿大学(本学・東大阪キャンパス) 38号館横広場

FM802 30PARTY FM802 ROCK FESTIVAL
RADIO CRAZY 2019

12/25(水)~27(金) インテックス大阪

※その他のライブ情報詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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