阿部真央、最新アルバム『まだいけます』から放たれる強いエネルギーについてひもとく

阿部真央 | 2020.01.30

 デビュー11年目に突入した阿部真央が、約2年ぶりのオリジナルアルバム『まだいけます』をリリースした。
 2019年は、2枚のシングルや初のベストアルバム『阿部真央ベスト』のリリース、5年ぶりの日本武道館公演、関西初のアリーナワンマン公演、東・阪での野音ライブ、全箇所ソールドアウトとなった弾き語りツアーなど、濃密な1年となったが、この時間は、彼女にとって次への起点を模索する時間でもあったようだ。
 小春日和となった1月のある日。取材は、都心にある事務所の一室で行われた。午後3時半。まだ陽の光は昼の明るさを携えていた。
 「窓のブラインド、ちょっと開けてもいいですか? 今日の太陽の光は、いい感じの光だから」
 取材陣に丁寧に挨拶をし、自己紹介で笑顔を見せた後、彼女が言った言葉である。冬の午後にしては鮮烈な光が差し込む部屋で、阿部真央に話を訊いた。

EMTG:天候で、気分や行動は変わったりします?
阿部真央(以下、阿部):やっぱり晴れてる方が気分がいいですね。私、低気圧だと身体がだるくなったり頭がボーッとしたりするタイプだから。
EMTG:私もあります。低気圧頭痛。
阿部:やっぱり影響ありますよね。だから晴れてると助かるなぁと。本来の元気さが出るから。
EMTG:曲作りにも影響が出たり?
阿部:天気はそこまで無いけど、季節は関係ありますね。夏の方が曲が書けると思う。夏は解放的な気分になるから、五感も解放されて過敏になっている気がするんですよ。いろんなことをいつもより感じやすいので、曲を書くのも、筆が進むって感じなんですよね。
EMTG:今回の『まだいけます』には、夏に書いた曲はあります?
阿部:ありますね。「君の唄(キミノウタ)」と「答」って曲以外は、2019年に作った曲で。ほとんど夏から秋前に書き上げた曲ですね。
EMTG:曲を作る段階で、アルバムのテーマなどは具体的にありました?
阿部:2019年の1月にベストアルバムを出したんです。このベストアルバムの前後にリリースしたシングルが、明るい曲になったんですね。それで、明るいイメージが付いちゃってるかもしれないな、と。だから次に出すオリジナルアルバムは、そのイメージを壊すようなものにしたかった。暗いというか、影の部分の焦点をあてたものにしようというのは、何となく決まってましたね。
EMTG:“暗い”って、すごく広い意味を持つ言葉だと思うんです。私の主観になるんですけど、このアルバムを「暗いアルバムなの?」って聞かれたら「はい、そうです」とは言えないと思うんですね。
阿部:あぁ、わかります、よくわかります。
EMTG:ありがとうございます。そこで、阿部さんの思う“暗い”って何なのか、をもっと具体的に教えていただけますか?
阿部:私が“暗い”って言ってるのは、光と影がある中での影の部分。普段は光が当たらないけど、みんなが持っている一面だとも思うんですね。今回のアルバムでは怒ってたりする部分がそう。影といっても、赤黒い感じ。
EMTG:赤黒いを感情に例えると?
阿部:赤黒いって怒っているイメージ。何かに対して感じているフラストレーションに近いですね。そういう気持ちを、ついつい“暗い”って言っちゃうんですよ。
EMTG:なるほど。つまり憂鬱で暗い…ってイメージじゃないんですね。
阿部:そうなんです。堕ちていってる感じはまったく無いんですよ。で、この赤黒さって、不変的に自分の中にあると思っていて。例えば、お互いに勝手にイメージを押し付け合ったりするような世間に対する嫌悪感だったりするんですけど、それが今回はよりストレートに出て来てると思う。怪訝な感じでもなく、反吐が出るわって言っている感覚でもなく……こう……切れてるのに近い。もう、嫌悪感を抱くより前に、ただただ、切れてる(笑)。
EMTG:歌うことで、自分の中にある気持ちを発散しているのとは違う感覚?
阿部:違いますね。自分の中にあるものを、形を変えて出してるって感じ。発散って、発して散らすってことだと思うんだけど、私の中では絶対に無くならない気持ちだから。曲にしても、歌っても気持ちは散らない。
EMTG:そうか。出しても無くならない。いつも満タンで濃厚なまま。
阿部:無くならないですね。歌ってて、瞬間的な快楽みたいなのは感じることはありますけど、発散するって感覚はほとんど無いかもしれない。
EMTG:阿部さんがおっしゃった“散らない気持ち、無くならない気持ち”って、すごく強いエネルギーを持っていると思うんですよ。それが『まだいけます』の作品性につながってますね。
阿部:あぁ、嬉しいです。今回のアルバムでエネルギーを感じてもらえる理由は、2つあって。その比率は7対3くらいで。まず7の方は、レコーディングの進め方。今回のアルバムは、歌の勢いを大事にしたかったので、ドラムとベースを録る段階で、私も一緒に仮歌を歌って、歌に合わせたグルーヴにしてもらったんですね。ドラムとベースと一緒に仮歌を歌って、その後そのまますぐ歌録りもしたんです。ライブ感を出したいから、グルーヴを引き継いだまま歌いたかったんですね。そうしたことにより、今までの作品より圧倒的にノリが違うものになった。歌のグルーヴとバンドのグルーヴがすごく近いところにあるんですよ。これまでの作品に比べると、ボーカルの熱量や後ろで鳴ってる楽器のテンションが、違うんですよね。それが7対3のうちの7、かな。
EMTG:アルバム『まだいけます』のエネルギーの秘密。もうひとつは?
阿部:7対3の残りの3は、去年1年かけて、私の中にたまっていたものだと思います。2019年は、10周年イヤーで「自分のリミッターを外したい」ってよくライブとかで言ってたんですね。いい人にふるまってしまう自分とかが、どうしても表現者としての自分の邪魔をする。例えば、ライブパフォーマンスでここまでしたら、ひかれるんじゃないか、とか思っちゃってたんです。いき切ることに怖さがあった。いろんな場面ですごくコンサバになっていたと思うんですね。ここに留まっていたら、私がやりたいと思っているいき切った表現がいつまでも出来ないなと思った。だからリミッターを外すってことを、ライブとかで一生懸命に練習してて。そしたら、夏の野音のライブくらいから、ここまでやっちゃっていいんだ、こういう感覚で挑めばいいのかって、なんとなく感覚で掴めてきたんです。それが、その後の弾き語りツアーで確信に変わった。私が目指す狂気とかは、この先にある、そこに行きたいんだって思うことが出来たんです。自分は、表現者として生きていくと決めた瞬間だった。そういうモードの中で書いた曲がたくさん入っているっていうのが、アルバムの持つエネルギーの理由かなと思いますね。
EMTG:『まだいけます』の、レコーディング時の様子について、少しお聞かせください。「どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜」は、他の曲と比べると曲調がキュート。言葉が古いんですが、ルンルンしている印象。
阿部:確かに、そうなんですよね(笑)。ルンルンしてます、純粋なんです。シチュエーションはヘビーかもしれないけど、ただただ好きなだけ、みたいな感覚。無邪気なんですよ。確かに作っている時、少女感がありましたね。個人的にはすごく好きな曲で。レコーディングも楽しく踊りながら歌ってました。
EMTG:8曲目「テンション」。アカペラ始まりからの、ブギーなロカビリーロックに展開する1曲。
阿部:いやぁ、これが苦肉の策、だったんです。
EMTG:というのは?
阿部:この「テンション」って曲、最初は頭のアカペラが無かったんです。で、今回のアルバムの曲順を決めた時、「テンション」を持って来る位置が、ここしか無かった。しかも1曲前は、このアルバム唯一のバラード。
EMTG:はい。「今夜は眠るまで」ですね。しかもファルセットを綺麗に使った、美しいバラード。
阿部:そうなんです。綺麗なバラードの後に、ドンッてロカビリーが始まる。そこにすごく違和感があった。だったら、既存の曲のアカペラを付けちゃえって思ったんです。それで「この愛は救われない」(シングル「どうしますか、あなたなら」のカップリング曲)の冒頭をアカペラで歌って入れたんです。ゆったりした曲のアカペラを電話越しに歌うような音で入れたら、バラードとのつながりも出来る。それから「この愛は救われない」は<傷つけたいわけじゃない>ってフレーズから始まるけど、本当にそう?って疑問もあって。だから“本当に?”って台詞を入れてる。逆に「テンション」は、相手を傷つけても自分を貫く歌詞。逆説じゃないけど、自問自答の形になるなと思って。意味もつながるし、曲順の違和感も無くなる。それでディレクターさんにお願いして。アカペラの部分だけを録って入れたんですよね。本当に苦肉の策。
EMTG:まったくそう感じないです。苦肉の策感ゼロ。
阿部:あははははは(笑)。それなら良かったです。ほんっと、ラッキーでしたね。ひとつだけ思い付いたから良かったけど。
EMTG:一発勝負だ、まさに。
阿部:その辺が自作自演っていうか(笑)。好き勝手しても、何とか自分の力でやろうっていう。シンガーソングライターっぽいなって思いますね。
EMTG:全国ツアーも決まってますね。
阿部:アルバム『まだいけます』は、ライブで映えそうな曲がとても多いので、まずはそこが単純に楽しみですね。さっき、リミッターを外す、覚悟を決めるって話をしましたけど、そういう変化が感じられるアルバムだとも思うんですよ。ファンの皆さんの前で新曲をたくさん聴いてもらえるのも嬉しいし、阿部真央の変化を直に感じてもらえるようなライブにしたいなと思ってます。

【取材・文:伊藤亜希】

tag一覧 J-POP アルバム インタビュー 女性ボーカル 阿部真央

リリース情報

まだいけます

まだいけます

2020年01月22日

ポニーキャニオン

1.dark side
2.お前が求める私なんか全部壊してやる
3.まだいけます
4.どうしますか、あなたなら
5.pharmacy
6.どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜
7.今夜は眠るまで
8.テンション
9.答
10.君の唄(キミノウタ)
11.おもしろい彼氏

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

【阿部真央らいぶNo.9】
03/14(土) 北海道・札幌市教育文化会館 大ホール
03/20(金・祝) 大阪・オリックス劇場
03/21(土) 大阪・オリックス劇場
03/29(日) 広島・JMSアステールプラザ 大ホール
04/04(土) 静岡・静岡市民文化会館 中ホール
04/18(土) 宮城・仙台電力ホール
04/26(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホール(名古屋市民会館)
04/29(水・祝) 福岡・福岡市民会館
05/02(土) 香川・サンポートホール高松 大ホール
05/08(金) 岡山・岡山市民会館
05/09(土) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
05/15(金) 石川・金沢市文化ホール
05/17(日) 新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
05/22(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
05/23(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
05/30(土) 大分・大分iichikoグランシアタ
NON KAIWA FES vol.2
02/29(土) EX THEATER ROPPONGI

国際女性デー音楽祭|LUX×HAPPY WOMAN SHINE MUSIC FESTA 2020
03/07(土) 恩納村海浜公園ナビービーチ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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