高校生活を終えるKarin.が今こそ歌っておきたかったこと、そのすべて。

Karin. | 2020.02.12

 昨年8月に1stアルバム『アイデンティティクライシス』でデビューした、2001年生まれのシンガーソングライター・Karin.が、2月12日に2ndアルバム『メランコリックモラトリアム』をリリースする。高校卒業を目前に控えた彼女が、学生生活の最後に生み出した楽曲たちは、前作と同じく、大人も子供も関係なく、誰しもの心に静かに住み着く孤独感にそっと寄り添ってくれる。けれど、将来への不安に押しつぶされることなく、しっかりと前を見据えて「変わりたい」と願う彼女の強さは、今作にしっかりと息づいている。そんな意欲作についてはもちろん、デビュー後の変化や現在の心境を含めて、彼女の胸の内を訊いた。

Karin.『メランコリックモラトリアム』Teaser Lyric Video
EMTG:前作『アイデンティティクライシス』でデビューして、学生生活や環境の変化はありました?
Karin.:いろんな方に知っていただいたり、ありがたいメッセージをいただいたりもして、なんだかみんなの中で違う存在みたいになってしまっていて……なんだか寂しい気もします。壁ができちゃったようで。
EMTG:うれしい反面、そういった反作用もあるんですね。2ndアルバムを作るにあたってのコンセプトなどはありました?
Karin.:前作までライブも制作もひとりでやってきたんですけど、前作『アイデンティティクライシス』の制作で、自分の楽曲たちを初めてバンドサウンドで鳴らしたんです。それがすごく楽しくて、「もうちょっとバンドっぽい曲を作れないかな?」と思って、今作はそういったところを大事にしました。だから、自分の中ではシンガーソングライターとしてだけではなく、バンドっぽいところを聴いてほしいなと思います。
EMTG:じゃあ、もうメロディが浮かぶ時にもバンドサウンドで音が鳴っている状態なんですか?
Karin.:そうですね。こういう曲調にしたいなぁとか、最初から思うようになりました。
EMTG:なるほど。タイトルについても、前作と通ずるものを感じます。
Karin.:『メランコリックモラトリアム』というタイトルに関しては、曲が出来上がってから後付けしたものなんです。前作と繋がるものがいいなとは思っていたんですけど、なかなか決まらなくて。でも、高校生最後の自分が、今歌えるものを入れたいなと思って、高校生活を振り返ったりしたんです。前作に収録されている「青春脱衣所」では「大人にならなければいけない」という気持ちを歌っていたんですけど、その大人になるまでの期間がすごく憂鬱に感じたんです。そういう思いもあって、このタイトルにしました。
Karin.「青春脱衣所」
EMTG:今作に収録された8曲は、前作を作り終えてから制作されたものですか?
Karin.:『アイデンティティクライシス』が出来上がる辺りから作っていました。でも、自分の中であんまり納得がいっていなくて、寝かせた曲を多少書き変えたものも数曲あります。特に最後の「髪を切ったら」という曲は、自分の中では満足していたんですけど、バンドでライブ活動をするようになってから「変えたほうがいいのかな?」と思ったんです。でも、弾き語りで歌っていた時の自分も残しておきたいと思って、ワンコーラス目は弾き語りで、そのあとにバンドの音が入ってくる、という構成に変えたんです。「ひとりだったけど、今はひとりじゃないよ」ということを曲に込めていて、自分としてもすごく救われた曲です。歌詞に関しても、過去の自分と今の自分の対比だったり、「自分を他人に置き換えた時に、自分はどう見えるんだろう?」と考えてみたり、自分を客観視しながら歌詞を書きました。
EMTG:今のお話のように、前作の楽曲たちはKarin.さん自身の目線で歌われたものでしたが、今作では「客観的視点」が加わったものも入っていますね。その新しい視点で曲を作るというのは大変でした?
Karin.:自分を他人として考えるのは楽しいです。前作に入っている「白色のコンバース」という曲は、自分自身ではなく、自分の心を物に例えようと思ってトライした楽曲だったんですけど、それが自分的に面白かったんです。その経験を踏まえて、「じゃあ、自分自身を何かに例えるとしたら?」と考えてみようと思ったんです。
EMTG:それで出来たのが「藍錆色の夕日」ですね。
Karin.:はい。でも、自分を何かに例えるって結構難しくて、諦めようかなと思ったこともありました。そんな時に夕日の景色を見て、なんとなく「自分みたいだな」と思ったんです。それで、この曲が出来上がりました。
EMTG:藍錆色という色も、珍しい色ですよね。初めて知りました。
Karin.:急に「藍錆色」という言葉がぱっと浮かんできたんですよ。それで、調べてみたら本当に存在する色だったのでびっくりしました。そのなんとも言えない色合いが、自分のもどかしさを表しているようで、この色をそのまま使うことにしました。
EMTG:パキっとした色味ではなく、どこか抽象的で物憂げな色味が、Karin.さんが思うご自身の性質とマッチしたんですね。今作の歌詞に関しても、前作のように具体的なシーンを想起させないというか、叙情性がより増したように思います。
Karin.:ああ、たしかに。前作では、当時起こっていたことをそのまま曲にしていたんです。でも、今作では高校生最後のアルバムを作りたいと思って、時系列関係なくいろいろな出来事を包括して曲を作ったので、そういう雰囲気になったんだと思います。いつも当たり前に見ているものについても改めて考えたりして、懐かしいなぁと思うと同時に、卒業って寂しいなぁと思いました。
EMTG:高校生活を振り返って、どうでしたか?
Karin.:高校2年生の時に初めて音楽と出会って、今の事務所と出会えて、勉強と音楽の両立で大変ではあったんですけど、何かに挑戦することの大切さに気づけました。ずっと中学校の先生になろうと思っていたんですけど、自分を変えさせてくれた音楽で生きていきたくなってきて、今はこれで良かったと思えています。
EMTG:そう思えた高校3年間、そしてデビューを経ての環境の変化を受けて、歌詞に関しても曲調のポップさについても、過去も未来も前向きに捉えているなぁという印象を受けたのですが、そういった影響はどう感じていますか?
Karin.:リスナーの方からいろんな意見や体験談を聴いたり、ライブで多くの人が観に来てくれたりして、今もこれからも自分のために歌っていくということを変えるつもりはないんですけど、少なくとも聴いてくれる人がいるということを意識して曲を書くようになりました。
EMTG:今作では「死にたい」という気持ちではなく、「教室難民」の歌詞にもあるように《私はそれでも受け入れる/生きていくよ》と、生き進んでいくことを前提とした内容が多いのも、きっとそういった心境的変化のおかげなんでしょうね。
Karin.:でも、やっぱり不安はあります。今はいろんなことを感じることが多くなってきたんですけど、今までは「10曲作ったら、これ以上曲が書けない」と思っていたほどで。作れたとしても、これが最後かもしれないと思うことが今でも多いです。今後、学校生活を終えて、東京にひとりで来て環境が変わったら、感じることがなくなって曲が出来なくなるんじゃないか?と思うと、怖いですね。曲を作らなくちゃ!と意気込むと曲が書けなくなるので、あまり考えないようにはしたいです。
EMTG:そういった不安は常に感じているんですか?
Karin.:今は学校生活を楽しく送ってはいるんですけど、ふとした瞬間に孤独を感じるんです。「シンガーソングライター」と呼ばれる時も「ああ、自分は一生ひとりなんだな」と思ったりします。でもそう思うのはきっと、音楽を始めてから自分自身と向き合う時間がすごく増えたからだと思います。だから「メランコリックモラトリアム」という言葉も出てきたし、そういう曲を書いているんだと思います。
EMTG:今までは自分の生活の大部分が「学校」であって、これからその場所を失って、今作のタイトルから言葉を借りれば「モラトリアム」とも言える期間がひとつの節目を迎えようとしているわけじゃないですか? 今、ご自身の楽曲のテーマが「モラトリアム」だとしたら、その不安定な心情を抱えて大人になりたいと思いますか? それとも、脱却したい?
Karin.:極力、抜け出したいとは思います。でも、自分はきっと一生悩み続ける人間だと思うし、悩まなければ生きていけないと思うんです。たとえば「将来、年金をもらえるのか?」とか、現実的なことも含めて考えますし。だから、この先大人になってもモラトリアム期は抜け出せないんじゃないかなと思います。でも、そのうえで自分は変わっていきたいと思っています。今までやったことのないことにも挑戦していきたいと思いますし、変わり続けることに抵抗はないです。
EMTG:どういうふうに変わっていきたいと思っていますか?
Karin.:違う視点で物事を考えられる人になりたいです。ほかのものにふれあってみたり、これまで気づけなかったことに気づけたりするようになりたいです。最近フィルムカメラを買ったんですけど、それもひとつのきっかけになりました。
EMTG:ファインダーを通して何かをみることで、気づけることって多いですもんね。
Karin.:はい。元々、携帯でも写真はほとんど撮らないんですよ。それでも最近は、自分が残しておきたい景色が増えたんです。『「バイバイ」って言わない理由』という曲の中に《でもどれも想い出が老いている気がして》という歌詞があるんですけど、今想っていることでも、いつか色褪せたり、いいように変化したりしてしまうし、それは怖いことだなと思ったんです。それで、何か明確に残せることがないかな?と思って、カメラを買ったんです。
EMTG:なるほど。この曲の中では、「バイバイ」と言えない理由について《特に無くて》と歌って、明示をしていないですが、それにも何か意図があったんですか?
Karin.:これは、この曲の続きができたら面白いなと思って、答えは書かなかったんです。自分自身、答えがわかっていないんですけど。音楽を始めるきっかけになった大好きな先生が、「さよならには続きがある」と教えてくれたんです。それで、「またね」も次があるように思えるけど、「バイバイ」だけは次がないように思えたんです。感覚的な理由だから説明できないんですけど、これから先、その答えがわかったらいいなと思って、そのまま歌詞にしました。
EMTG:「命の使い方」では「殺せなかった/殺さないで」という刺激的な言葉も使われていますが、そういった負の力が強いワードを入れようとしたのはどうしてですか? 抵抗はなかったですか?
Karin.「命の使い方」
Karin.:普段は言わないんですけどね(笑)。たとえば自分が実際にそういう言葉を使うとしたら、初対面の人には絶対に言えないんですよ。もちろん、相手のことを思うからこそ言いたくないんでしょうけど、心が許せる人に対しては、気が緩んで言えちゃうんです。心を許せる人でなければ言えないからこそ、そういう言葉たちが愛おしいなと思って使いました。「命の使い方」は、ムーミンにインスピレーションを受けて作った楽曲なんです。あの話って、かなり生々しいじゃないですか? それを読んだときに渦巻いた感情を、自分だけのものとして留めておけなかったんです。ひとりでは抱えきれずに、曲に吐き出したから使えたというのもあるかもしれないです。
EMTG:なるほど。逆に、「愛」という言葉も多く出てきたように思います。前作では「嘘の中にも、愛はあるよね?」といったアプローチで愛情を感じさせていたように思いますが、今作ではダイレクトに言葉にされています。その変化のきっかけはあったんですか?
Karin.:アルバム制作中に「愛がなんだ」という映画を観に行ったんです。それがきっかけでいろんな愛の形があることを知って、自分の周りにある様々な出来事を愛おしく思えるようになったんです。だから「愛している/愛していた」という言葉を歌詞に含ませることで、自己愛が生まれるんじゃないかと思えたんです。
EMTG:「愛」という言葉についてどう思います?
Karin.:私はクリープハイプが好きでよく聴くんですけど、「愛」という言葉が多く出てくるんです。でも、そこに出てくる「愛」は決まった意味を持っていなくて。たとえば「愛している」という自信や理由がなかったとしても、尾崎世界観さんは「愛」と呼んでいると思うんです。勝手な想像なんですけどね。でも、そうやって自由に「愛」と言えることがすごく羨ましいなと思いましたし、うれしいことだけではなく、悲しいことや寂しさもすべて「愛」という言葉で伝えられるんだなと思いました。
EMTG:最後に、自分のことは好きですか?
Karin.:うーん、今まですごい嫌いだったんです。自分の声なんか特に嫌いで、自分自身がアルバムを聴き切ることすらも耐えられないくらいの状態だったんです。でも、音楽を始めてから、自分自身からは逃げられないと思ったんです。仮にほかの人が自分のことを愛してくれたとしても、自分を嫌い続けることは、はたして自分にとっていいことなのか?と考えて、それだったら、自分が自分を愛するしかないと思いました。そして、そういう自分を変えていけるのは、やっぱり音楽だけだなと思います。

【取材・文:峯岸利恵】


Karin.「最終章おまえは泣く」

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リリース情報

メランコリックモラトリアム

メランコリックモラトリアム

2020年02月12日

ユニバーサルミュージックジャパン

01.命の使い方
02.「バイバイ」って言わない理由
03.藍錆色の夕日
04.誰もわるくないね
05.残灯、夜に消える
06.教室難民
07.最終章おまえは泣く
08.髪を切ったら

お知らせ

■マイ検索ワード

エンジェルナンバー
ふとした日常の中で、たとえば「今日はやけに“1”っていう数字を見るなあ」ってことに気づくことがあるんですけど、その数字は「エンジェルナンバー」と呼ばれていて、それぞれに意味があるんです。いつか「エンジェルナンバー」を使う日が来るのかなと思っていて、言葉にしなくても数字で例えられる日が自分の中で来たらいいなと思って、いろいろと検索していました。
好きなアーティストが、数字で「117」っていう曲を出していて、「なんだろう、これ」と思って数字を調べたときに、エンジェルナンバーっていう言葉が出てきたのがきっかけですね。ちなみに「117」の意味を調べたら、「あなたは今いい道を進んでいて、これからもその道を進んでください」っていう背中を押すような言葉だったので、意味が深いなあと思いました。
今後、私の曲のタイトルが数字だったらそれですね、なんかミーハーみたい(笑)。



■ライブ情報

Karin. 初ワンマンライブ&ツアー「最終章おまえは泣く」
6/7(日)茨城 水戸LIGHT HOUSE
6/21(日)大阪 梅田Shangri-La
6/28(日)愛知 名古屋ell.FITS ALL

■イベント出演情報

HAPPY JACK 2020 ~Show Must Go On~
3/14(土)、15(日)熊本 B.9 V1、V2、Django、ぺいあのPLUS’
※3/14(土)に出演

Talking Rock! presents「ニューロック計画!2020」
3/19(木)、20(金・祝)大阪 umeda TRAD
※3/20(金・祝)に出演

SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020 -MONSTER baSH × I♡RADIO 786
3/21(土)、22(日)香川 festhalle、オリーブホール、DIME、MONSTER、SUMUS café、瓦町駅地下広場、FM香川786ステージ
※3/21(土)に出演

FM NORTH WAVE & WESS PRESENTS IMPACT! XV
4/11(土)、12(日)北海道 札幌市内のライブハウス
※4/11(土)に出演

ARABAKI ROCK FEST.20
4/25(土)、26(日)宮城 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

NIIGATA RAINBOW ROCK 2020
5/4(月・祝)新潟 新潟市内のライブハウス

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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