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「Dousite? Tour 2017~2018」追加公演、2月10日・渋谷CLUB QUATRO

HOWL BE QUIET | 2018.02.27

 リリースに紐づくわけではない今回のツアーを開催した理由について、竹縄航太(Vo・Gt・Piano)は「“どうして?”と訊かれたら、“どうしても”と答えたい。駄々っ子みたいな気分でいろいろなところに遊びに行きたかった」と話していた。HOWL BE QUIETが12月20日から開催してきた「Dousite? Tour 2017~2018」の追加公演として開催された渋谷クラブクアトロ。いままでワンマンをやったことがない場所に行く、というテーマで各地をまわったツアーの東名阪ファイナルシリーズの最終公演だ。作品の縛りがないゆえに自由度の高いセットリストのなかに、新曲を6曲も加えたこの日のライブは、メジャー以降のライブでは定番になっていた同期によるサウンドの装飾を一切せず、4人の生演奏のみでハウルの音楽を再構築することで、初心に返る、挑戦的でストイックなステージだった。

 いつものようにSEでザ・ビッグ・ピンクの「Dominos」が流れ出すと、竹縄、黒木健志(Gt)、橋本佳紀(Ba)、岩野亨(Dr)の4人がステージに現れた。ここ最近は金髪だった竹縄が、ナチュラルな黒髪だ。「Dousite? Tour延長戦、渋谷クラブクアトロ、よろしく!」。そう言った竹縄がひとり集中力を高めるようにして、ピアノを弾き始めた「Dousite」からライブはスタートした。そこに加わるバンドサウンド。軽快なビートにのせて、時々メンバー同士が向き合いながら、良いテンションで会場を温めていく。橋本の太いベースラインがどっしりと楽曲をリードした「ファーストレディー」から、ジャジーなピアノのフレーズに揺れた「Daily Darling」へ。次々に表情を変えていく楽曲たちは、CD音源ではブラスやストリングスが華やかに踊るが、この日はステージで演奏する4人の音だけで表現していた。音の厚み、カラフルさ、迫力、構築美――そういう音源本来の賑やかな要素の代わりに、たとえば黒木がギターの速弾きで聴かせたり、岩野&橋本のグルーヴで表現してみたりするステージは、いままで以上にロックバンドとしてのタフさが求められる。ライブ後にメンバーと話したときに、今回のツアーについて、黒木は「いやー、修行でしたね(笑)」と振り返ったが、まさに目の前には、バンドとして一段回レベルアップしたハウルの姿があった。

 バンドの進化をはっきりと感じられたのは、中盤の「ラブフェチ」と「レジスタンス」だった。「オトコ代表として歌います」という竹縄の言葉にはじまり、“僕が君をどれだけ好きか”を異常なほどの執念で書き切った「ラブフェチ」では、竹縄が生々しい息遣いでその情念を歌い切っていたし、ハウルの楽曲のなかでも、とりわけ音数の多いEDMナンバー「レジスタンス」では、荒々しさすら感じる体当たりの演奏で楽曲の華やぎを作り上げていた。その「レジスタンス」で、会場がシンガロングで一体になり、アウトロもないまま楽曲を終わらせたメンバーが、とても満足気な笑顔を見せたのが印象的だった。

「新曲を持ってきました」(竹縄)。ライブが後半に差しかかったころ、新曲が立て続けに披露されるタームがあった。オレンジ色の光に包まれたステージから届けた温かいミディアムテンポ、ファンキーなベースが踊るマイナー調の楽曲から、ドラマチックな冬のバラードまで。それぞれに異なる情景を描く楽曲たちだったが、そのどれもメロディが抜群だったし、初めて聴いたにもかかわらず耳に残る歌詞がいくつもあった。

 最後のMCでは、バンド結成から8年が過ぎたことを振り返り、今回のツアーは4年前に関東近郊だけをまわった対バンツアーのことを思い出したくて企画した、と改めて伝えた竹縄。そんな真面目な話をしつつも、黒木は「HOWL BE QUIET、人間的に成長してない説がある」と言い出すと、特にライブ前に落ち着きがない竹縄の様子を暴露して、会場を温かい笑い声で包み込んだ。「見てればわかると思うけど、HOWL BE QUIETの、“BE QUIET(=静かな)”は、ここのふたり(黒木と岩野)、HOWL(=吠える)はこっちふたり(黒木と橋本)だから」という黒木の説明には、なんだか妙に納得してしまった。

 会場の空気が和んだところで、ライブはいよいよクライマックスへ。ハウルのライブには欠かせないアップナンバー「PERFECT LOSER」や「ライブオアライブ」のあと、2016年にハウル第2章の幕明けを告げたあの華やかなポップナンバー「MONSTER WORLD」も、もちろん4人の人力だけで再現された。一斉に客席側の電気がつき、フロアを明るく照らし出されるなかで巻き起こる、息の合ったハンドクラップ。ステージの4人と、フロアに集まった800人と。人と人とが全力でぶつかり合いながら作り上げた「MONSTER WORLD」は、どんなに優れた機材を持ち込んでも表現することのできない、最高に幸せな1曲になっていた。さらに竹縄が「最後に新曲をやって帰ります」と言うと、ドラムの前に3人がギュッと集まり、とても賑やかで楽しい新曲を繰り出してライブは幕を閉じた。

 この日は「サネカズラ」や「208」など、ハウルの真骨頂とも言えるバラード曲は少なめの構成だったが、アンコールの1曲目は満を持してのバラード曲「GOOD BYE」だった。2013年に、まだハウルが“ピアノロックバンド”と呼ばれていた頃の名曲を、この場所に用意していたのも、“初心にかえる”という、このツアーだからこそかもしれない。そして、最後に竹縄が「今年1年ガンガン音楽していこうと思うので、HOWL BE QUIETをよろしくね!」と言うと、本当のラストソング「にたものどうし」へとつないだ。この曲の途中では、ピアノを弾く竹縄の脇に、黒木と橋本が寄り添って演奏をしていた。まるで少年のように楽しそうにステージで演奏をするメンバーの姿を見ていると、HOWL BE QUIETは4人いてこそのHOWL BE QUIETだと心から思う。演奏を終えて、メンバーがステージから去ったあとも、会場からはWアンコールを求める声がいつまでも鳴りやまなかった。

【取材・文:秦 理絵】
【撮影:山川哲矢】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル HOWL BE QUIET

リリース情報

Mr. HOLIC

Mr. HOLIC

2017年05月24日

ポニーキャニオン

01. ラブフェチ
02. MONSTER WORLD
03. ギブアンドテイク
04. にたものどうし
05. My name is...(ALBUM Ver.)
06. サネカズラ
07. PERFECT LOSER
08. Wake We Up
09. 矛盾のおれ様
10. Higher Climber
11. 208
12. ファーストレディー

お知らせ

■ライブ情報

HIROSHIMA MUSIC STADIUM
-ハルバン’18-

03/11(日) 広島市内ライブハウス

MbS×I♡RADIO 786
「SANUKI ROCK COLOSSEUM」
~BUSTA CUP 9th round~

03/17(土)-18(日) ※出演日未定
有料会場:高松 festhalle、高松オリーブホール、高松DIME、高松MONSTER、高松SUMUS Cafe
無料会場:瓦町駅地下広場、786FM 香川ステージ

@FM pre ROCK YOU! CARNIVAL vol.2
04/01(日) 名古屋 CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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