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JUN SKY WALKER(S)「30th Anniversary Tour FINAL ~全部このままで~」

JUN SKY WALKER(S) | 2019.06.14

 デビュー30周年を記念して全国を巡ったツアーも、いよいよファイナル公演。会場の日比谷野外大音楽堂のチケットはソールドアウト。満員の客席を見回すと家族連れもかなり多く、「久しぶり!」「元気だった?」というような声が交わされているのが時折聞こえてきた。大好きなバンドとともに年齢を重ねて、今でも大切な曲の数々をライブで体感できるというのは、音楽ファンにとって何とも言えない喜びだ。夏を先取りしたかのような晴天に恵まれた野音は、穏やかな幸福感が広がる空間となっていた。

 SEが流れて、ステージに登場した宮田和弥(Vo)、森純太(G)、寺岡呼人(B)、小林雅之(Dr)。そして、いきなりのサプライズが起こった。なんと4人はステージから客席へと降りて、ゆっくりと通路を歩き始めたのだ。客席のど真ん中にあるセンターステージに辿り着いた彼らは、全員がアコースティックギターを手にしてスタンドマイクへと向かった。届けられたのは、1988年5月21日にリリースされたメジャーデビュー作のタイトル曲「全部このままで」。4人の歌声のハーモニーとアコースティックギターの温かい音色で彩られたサウンドに、途中から観客の手拍子も合流。JUN SKY WALKER(S)の長年に亘る足跡を、メンバーと観客がともに祝福し合っているのを感じた。

 ステージ上のスクリーンに映し出された数字。2019からカウントダウンが始まり、JUN SKY WALKER(S)がメジャーデビューした年である1988に到達。タイムスリップしたかのような雰囲気の中、メインステージに戻った彼らが2曲目に披露したのは、「だけど一人じゃいられない」。躍動するシャープなビートが圧倒的に気持ちいい。続いて、演奏がスタートするや否や観客が激しく沸き立っていた「BAD MORNING」。メジャーデビュー直後の彼らの勢いが思い出されるこの2曲は、年月が経っても鮮烈なままであった。そして、「この聖地で、この一言を言わせてください。僕たちがJUN SKY WALKER(S)です!」という宮田の言葉を挟み、「その日まで」「声がなくなるまで」「ガラスの街」……瑞々しいメロディーの宝庫でもあるジュンスカの曲は、野外ライブによく似合う。夕暮れ時へと近づくにつれて少しずつ爽やかさを増していく風を感じながら、多彩なサウンドをじっくりと堪能できるのは、とても贅沢なことであった。

「悲しすぎる夜」と「メロディー」も届けられたあと、「これは未来への歌です! 一歩を踏み出す勇気をみなさんに贈ります!」という宮田の言葉を合図にスタートした「NO FUTURE」は、たくさんの熱いエネルギーを観客に届けていた。《My friend 未来を創ろうぜ》と歌う場面で宮田と森が互いを指差し合った瞬間は、ファンにとって胸に迫るものがある光景だったのではないだろうか。そして、「31周年に突入したけど、みんなと一緒に歩いていけますように、この歌を贈ります。俺たちと一緒にパレードしようぜ!」という言葉が添えられた「PARADE」も、現在のジュンスカに漲っている前向きなエネルギーを存分に体感させてくれた。

 メンバー全員が一旦ステージから姿を消したインターバル。昨年の10月に自由が丘駅前ロータリー広場で行われたホコ天フリーライブのムービーが流れたあと、宮田と森が戻ってきた。「解散したあとは仲が悪かったんだぜ(笑)。人生はいろいろあるけど、今は仲良しなんだ」。宮田の言葉を経て届けられたのは「いつも二人で」。宮田はアコースティックギター、森はエレキギターを奏でて、1本のスタンドマイクを挟んで歌声のハーモニーを仲良く響かせていた様は、ふたりの現在の関係性を自ずと示していた。その後、メジャーデビュー日の5月21日が「JUN SKY WALKER(S)の日」に認定されたことを記念して行われたイベントの模様のムービーが流れる中、寺岡と小林も再登場。メジャーデビュー前の生活が描かれている曲「アパート」が披露された。演奏している4人の様子が実に楽しそう。リラックスした表情が印象的だった。

「さらば愛しき危険たちよ」を皮切りに突入した後半戦は、エモーショナルな演奏と観客の興奮が融け合う瞬間の連続となった。「歩いていこう」「Let’s Goヒバリヒルズ」「START」……曲が披露されるごとに、果てしなく上昇していった熱気。ステージから届けられる爆音に負けないくらいの勢いで観客の大合唱が高鳴り続けていた。そして、「令和には和弥の“和”が入ってたから嬉しかったんだよね。昭和も“和”が入ってんじゃん? ちょっと平成って、居心地が悪かったんだよ(笑)。平和な日本であるように、僕たちは歌でみなさんに発信していきたいし、これからも生き続けたいと、そんな風に思ってます。今日はすてきな空と、みんなと一緒にいられる時間を分かち合いながら、この歌を歌いたいと思います」という宮田のMCを経て、「すてきな夜空」の演奏がスタート。我々の頭上にまさしく広がっていた夜空は、この曲に似合う最高の演出となっていた。

 宮田がタンバリンを叩きながら歌い、観客を激しく巻き込んだ「ロックンロール☆ミュージック」。掲げられた観客の腕が客席の全面で揺らぐ様が壮観だった「MY GENERATION」……圧倒的な一体感に包まれながら本編は終了したが、鳴り止まない拍手と歓声に応えてアンコールが行われた。まず披露されたのは「遠くへ行かないで」。ゆったりとしたシルエットの白いロングTシャツに身を包み、左手でマイクスタンドのバー、右手でマイクを握り締めながら歌っていた宮田の姿が、30年前の彼を彷彿とさせた。続いて届けられたのは、昨年リリースされたベストアルバム『ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018』に新曲として収録された「One-Way」。スクリーンに映し出された歌詞の言葉のひとつひとつは、ここからさらに歩いていこうとしている彼らの想いとして受け止めることができた。《10年先もきっと 一緒に眺めようよ 素敵な夜空を》というフレーズは、心から嬉しい言葉として観客の一人ひとり噛み締めたのではないだろうか。

 アンコールの2曲を披露し終えると、ステージをあとにしたメンバーたち。しかし、観客の歓声は高まり続けて、ダブルアンコールが行われた。最初に戻ってきたのは森。「ここまで応援してくれて感謝してます。どうもありがとう! もともと俺はギターの音が好きでギターを始めて、バンドを組んで、デビューして、気がついたら31年が経ちました」と語った彼は、ステージにメンバーたちを呼び込んだ。「僕はRCサクセションが好きで、ここ(野音)でRCを観ていて、ここでやれることに感謝してます。またライブに来てください!」(小林)。「僕は過去を振り返るのがあまり好きではないんですけど、30周年でいろんな場所でライブをやって、ジュンスカのファンのみなさんの表情を見て、たまには振り返るのもいいなと思いました。また明日から見たことのない自分探しの旅を僕らは始めます。必ず新しい自分を持って、みなさんの前に現れたいと思いますし、みなさんも明日から自分探しの旅をしてください。最高の笑顔でまた出会える日を心待ちにしてます」(寺岡)。「みんなが支えてくれて、今の僕たちがあるんだと思います。それを改めてここで感謝したいです。これからもみんなと支え合いながら……みんなは俺たちの歌を聴いて支えられてるのかもしれないけど、俺は歌わせてもらって支えられてるというか、生きられてるから。これからも今の自分に満足せず、驕らず、誇り高く歌を歌っていきたいと思います!」(宮田)――メンバー各々の想いが込められた言葉が、とても力強く迫ってきた。

「この曲は20周年の時に呼人が作ったんだけど。俺たち、これからもまだまだ青春ということで」と宮田が言って、ラストに届けられた曲は「青春」。森がアコースティックギター、寺岡がキーボード、小林がタンバリン――という編成の演奏に包まれながら、実に気持ちよさそうに歌っていた宮田の姿が眩しかった。観客が男女に分かれて響かせた歌声のハーモニーの清々しさも格別。《僕らの青春は まだ始まったばかりだ》という歌詞の一節が、今後もJUN SKY WALKER(S)を突き動かしていく言葉であることを確信させられた。

 演奏を終えると、肩を組み合った4人は、深々と一礼。何度も手を振り、笑顔を輝かせた彼らを、熱烈な拍手と歓声が讃えていた。JUN SKY WALKER(S)が憧れられるバンドであり続けてくれているという事実は、ファンにとって大きな勇気となっているはずだ。メンバーたちと観客が互いに心を全力で交わし合っているという点で、ジュンスカのライブは30年前と完全に地続きだと言えよう。これからも青春という言葉が似合う瑞々しい空間であり続けるに違いない。

【取材・文:田中 大】
【撮影:平野タカシ】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル JUN SKY WALKER(S)

リリース情報

「ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018@中野サンプラザ 」(2DVD)

「ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018@中野サンプラザ 」(2DVD)

発売日: 2019年02月20日

価格: ¥ 5,800(本体)+税

レーベル: ドリーミュージック

収録曲

1.全部このままで
2.いつもここにいるよ
3.明日が来なくても
4.さらば愛しき危険たちよ
5.砂時計
6.NO FUTURE
7.ロマンチック
8.休みの日
9.風見鶏
10.ユア・ソング
11.青春
12.メロディー
13.僕を灰に
14.エルマーの夢
15.変身
16.Let’s Go ヒバリヒルズ
17.ロックンロール☆ミュージック
18.白いクリスマス
19.愛しい人よ
20.START
21.すてきな夜空
22.歩いていこう
23.言葉につまる
En1.MY GENERATION
En2.One-Way

☆映像特典☆
中野サンプラザ 小林雅之 コーナーVTR
「コバヤちゃり旅!!」

リリース情報

「ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018@中野サンプラザ 」(2CD)

「ALL TIME BEST~全部このままで~1988-2018@中野サンプラザ 」(2CD)

発売日: 2019年02月20日

価格: ¥ 3,500(本体)+税

レーベル: ドリーミュージック

収録曲

1.全部このままで
2.いつもここにいるよ
3.明日が来なくても
4.さらば愛しき危険たちよ
5.砂時計
6.NO FUTURE
7.ロマンチック
8.休みの日
9.風見鶏
10.ユア・ソング
11.青春
12.メロディー
13.僕を灰に
14.エルマーの夢
15.変身
16.Let’s Go ヒバリヒルズ
17.ロックンロール☆ミュージック
18.白いクリスマス
19.愛しい人よ
20.START
21.すてきな夜空
22.歩いていこう
23.言葉につまる
En1.MY GENERATION
En2.One-Way

セットリスト

30th Anniversary Tour FINAL
~全部このままで~
2019.5.25@日比谷野外大音楽堂

  1. 1. 全部このままで
  2. 2. だけど一人じゃいられない
  3. 3. BAD MORNING
  4. 4. その日まで
  5. 5. 声がなくなるまで
  6. 6. ガラスの街
  7. 7. 悲しすぎる夜
  8. 8. メロディー
  9. 9. NO FUTURE
  10. 10. PARADE
  11. 11. いつも二人で
  12. 12. アパート
  13. 13. さらば愛しき危険たちよ
  14. 14. 歩いていこう
  15. 15. Let’s Go ヒバリヒルズ
  16. 16. START
  17. 17. すてきな夜空
  18. 18. ロックンロール☆ミュージック
  19. 19. MY GENERATION
  20. <ENCORE>
  21. 20. 遠くへ行かないで
  22. 21. One-Way
  23. <W ENCORE>
  24. 22. 青春

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