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「バンド」にこだわり、「バンド」ができる喜びを体現し続ける4ピースバンドの疾走劇――その一部始終。

2 | 2019.07.24

 2のライブを観ると、「バンドっていいな」と思う。ELLEGARDENやNUMBER GIRLの復活を知った時も同じように思ったが、2の場合は「復活」のニュアンスが違う。「バンド」という運命共同形態から離れた人間が、当時たらふく味わい尽くしたであろう衝動/爆発/スリル/快感を忘れることができず、まったく新しいメンバーとともにバンドシーンの新参者として再びリングに上がる――それが4ピースバンド・2の生い立ちだ。音楽性がどうだとか人気バンドの元メンバーだとか、そんなことは一切関係なく、「こいつらとバンドで音を鳴らしてみたい」という単純かつ純真無垢な好奇心が繋ぎ実った彼らのライブを観ると、冒頭の一言に帰結する。7月11日に渋谷CLUB QUATTROにて行われた、3rdアルバム『生と詩』を引っ提げた全国ワンマンツアー「4 PIECE FOR PEACE」のファイナル公演を観ても、やっぱり心からそう思った。

 先述したとおり、今回のツアーは彼らにとって3枚目のアルバム『生と詩』のリリースに関わるツアーだったので、私自身「1曲目は『ルシファー』かな?」なんていう安直な憶測をしながら開演を待っていた。そんな妄想をしているなか、暗転とともに沸き起こった歓声が響く会場に古舘佑太郎(Vo/Gt)、加藤綾太(Gt)、赤坂真之介(Ba)、yucco(Dr)が登場! そして満を持して1発目にプレイされたのは、1stアルバム『VIRGIN』のトップを飾る「Anthem Song」だった。バンドとしての2度目の初期衝動を彷彿とさせる怒涛の勢いは、「PSYCHOLOGIST」を経て、歌詞の一部を《巨大な惑星クアトロ》と替えて届けられた「ケプラー」まで、一切の隙なくぶっ続けで放たれた。そんなエネルギッシュなセクションすべてを1stアルバム収録曲で届けた彼らは、続くセクションでパワフルポップチューン「BOY AND GIRL」やミディアムバラード「FALL FALL FALL」などの2ndアルバム『GO 2 THE NEW WORLD』収録曲縛りでたたみかけた。アルバムツアーにおいて「新旧楽曲を織り交ぜながら」というセットリストの組み方で最新曲を際立たせたり、過去のモードとは違う現在の自分たちをよりハッキリと見せたりするライブは多い。そんななか、ここまで明確に「これらの作品を経てきての今なんだ!」と表現するバンドは珍しいし、その堅実さが窺える流れから「この4人はきっと中途半端なことができない正直な人たちなのだろうなぁ」と思った。MCでは古舘が今回の構成について「なんかね、自分たちの中でこのサードってアルバムを語るうえで、ファーストとセカンドっていうのを一緒に追っていかないとやれないっていうことに気付いたんですよね」と語っていたが、4人それぞれのバンド時代を経て2の名の下で集まった彼らにとって「ストーリー性」はきっと大きな意味を持つものだと思う。当サイトで行われた今作のインタビューの中でも、古舘は「ファーストアルバムは誕生の産声で、セカンドアルバムはバンドをやることの喜びや充実感がすごく溢れていて。そこからバンドをやることの苦しみとか、乗り越えていかなきゃいけない壁とかがあったのが詰まっているのが今回かな」と各作品の性格を語っていた。もはやそれらは作品性というよりも、成長過程という言い方のほうがしっくりくるかもしれない。そして「越えるべき壁」と語られた今作『生と詩』は、苦悩や葛藤、ひとりの人間のダークな部分が他作品に比べて色濃く浮き出ている。とはいえそんなディープな思考が詰まっているにもかかわらず、アッパーチューン「DAY BAY DAY」や「ナイトウォーク」、そしてバンド初の2ビートでドラマティックかつ激情的に展開していく「ホメオパシー」では、オーディエンスを巻き込みながらガンガン熱を上げていく。それはやはり、各々の役割を全うして個人個人で悩み苦しみながら生まれた第3子なのではなく、“4人”で命を吹き込んだ愛すべき子であるがゆえに漲る生命力があるからこそなのだろう。4人の生が聴く者の生と共鳴して膨張し、イヤホン越しで伝わってくる何百倍もの巨大なエネルギーを生み出すという構図は、ライブという場で開花し、爆発する。ライブを観ながら、そんなイメージが頭に浮かんだ。そして、曲同士の繋ぎに十分な時間を設けず、限られた時間めいっぱい演奏していくバンドの姿を見て、そのがむしゃらさや必死さを美しいと思えたし、「生きていくならばこう在りたい」とさえ思った。「バンドは生き物」とはよく言うけれど、言いえて妙だなと思う。これはまさに、生き物だ。

 そして、古舘の弾き語りから激動的に突入した「ニヒリズム」をきっかけにライブのクライマックスに差しかかると、ダンスナンバー「SとF」、「友達の彼女に手を出したい! そんな俺はルシファー!」という掛け声から「ルシファー」を爆裂投下! ここまでスローテンポの楽曲はほぼ無く、それ以外はすべてアッパーチューン。それにもかかわらず、彼らのアクトは終わりに向かうに従ってますますエンジンが掛かってきているように思えたし、「ルシファー」終わりに古舘が「足攣った……ちょっと休憩」と言ったことにも「よくここまで連続加速で走り続けてきたな」と驚いたものだ。ほんの少しの時間を置いて「とりあえず俺らの疾走劇は今日で終わりなんですが、まあ本編まだ終わってないからね。最後まで楽しんでください」と、バンドアンセム「フォーピース」を届けた。そして、彼らがゴールテープの役割を果たす最後の1曲に選んだのは「東狂」。《僕の大事な場所で/夢破れるなよ》という最後の歌詞がずっしりと響くなか、《大事な場所》とは東京なのか、それともステージの上なのかを考えたが、おそらくその両方だろう。その理解のうえで、彼らが目の前で再び《大事な場所》で夢を咲かせている光景を見ながら、改めてぐっと込み上げてくるものを感じた。

アンコールで再度登場した4人は、それぞれの楽器を前にして「今日どうしてもやりたかった」という理由で「2ができる前の2の原点」と紹介された楽曲を披露。そして「フォーピース」の歌詞にある《「一生続けていよう」だなんて/誰も口にしないのは/お決まりのアンコールよりダサいからだ》というフレーズに倣って、オーディエンスの希望に委ねられた(とはいえ、続々と届くリクエストに対して古舘が「やだ」とか「それは無理」と断っていたのも面白かった)。そのなかで採用された「ロボット」をクールに熱演し、さらに求められたダブルアンコールでは、開放感と幸福感溢れる極上のポップソング「How many people did you say “GoodBye”」を届けた。 

 古舘はアンコール中に「この3部作で、ある種俺らは完結をしていて、次をどうしようかっていうのがずっと見えていなかったんですよね。でもね、今回のツアーでね、見つかっちゃったんですよね」と、さらなる飛躍のカギを掴んだことを告げていた。まだまだ終わらせないでくれよと願いながら、感情が交流する「ライブ」という場で得た彼らの構想が、またこの場所でどんな音と言葉になって響くのかを心待ちにしている。

【取材・文:峯岸利恵】
【撮影:中村里緒】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 2

リリース情報

生と詩

生と詩

2019年04月03日

1994

01.ルシファー
02.ニヒリズム
03.SとF
04.性と詩
05.ナイトウォーク
06.DAY BY DAY
07.ハナレイバナレイ
08.ホメオパシー
09.東狂
10.WHEN I WILL DIE
11.フォーピース

セットリスト

ONE MAN LONG TOUR
「4 PIECE FOR PEACE」
2019.7.11@渋谷CLUB QUATTRO

  1. 1.Anthem Song
  2. 2.PSYCHOLOGIST
  3. 3.土砂降りの雨が降った街
  4. 4.急行電車
  5. 5.Family
  6. 6.ケプラー
  7. 7.SONG FOR YOU
  8. 8.BOY AND GIRL
  9. 9.SAME AGE
  10. 10.GO 2 THE NEW WORLD
  11. 11.LUCKY BOY
  12. 12.FALL FALL FALL
  13. 13.DAY BY DAY
  14. 14.性と詩
  15. 15.ナイトウォーク
  16. 16.ホメオパシー
  17. 17.ニヒリズム
  18. 18.SとF
  19. 19.ルシファー
  20. 20.フォーピース
  21. 21.東狂
  22. [ENCORE]
  23. 1.ラヴ・ソング
  24. 2.ロボット
  25. [W.ENCORE]
  26. 1.How many people did you say “GoodBye”

お知らせ

■ライブ情報

2 presents 3ヶ月連続自主企画 2 MAN LIVE at 下北沢シェルター
Vol.1「恋とジャーナル」
10/31(木) w/ teto

Vol.2「OMOKAGE」
11/27(水) w/ ハルカミライ

Vol.3「同じ月を見るふりをして」
12/26(木) w/ ???



Nagoya Club Quattro 30th Anniversary"New Direction 2019"
THE COLLECTORS × 2
07/29(月)名古屋 CLUB QUATTRO

THE BOYS&GIRLS TOUR 2019″明転"
08/03(土)福岡 LIVE HOUSE CB
10/11(金)高松 DIME

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019
08/11(日)国営ひたち海浜公園

風知空知とたかはしほのかの不定期共同企画「知らないこと vol.1」
08/14(水)下北沢 風知空知

red cloth 16th ANNIVERSARY ヒッピハッピシェイク-イナズマ2マンSP-
08/20(火)新宿 レッドクロス

ircle 3週連続企画「HUMANisM〜東京夏の大三角形〜」
08/23(金)下北沢 SHELTER

FIND OUT presents MUST GO-GO Vol.3
08/27(火)名古屋 CLUB QUATTRO

TOKYO CALLING 2019
09/16(月・祝)渋谷 ライブハウス13会場

夏の魔物2019 in SAITAMA
09/28(土)埼玉 東武動物公園

The Wisely Brothers "Captain Sad Tour"
09/29(日)新代田 FEVER

MEGA☆ROCKS 2019
10/05(土)仙台 ライブハウス各会場

My Hair is Bad presents サバイブホームランツアー
10/09(水)盛岡 CLUB CHANGE WAVE

FM802 30PARTY MINAMI WHEEL 2019
10/12(土)、13(日)、14(月・祝)
大阪 ライブハウス20会場
10/19(土)福岡 graf
10/22(火・祝)岡山 PEPPERLAND

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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