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yonigeとtricot、相思相愛の両者による2マンツアーファイナルの模様をお届け!

yonige×tricot | 2019.11.15

 yonigeとtricotによる東名阪2マンツアー「yonige & tricot pre 『ツアーの名は。』」のファイナル公演が10月29日、東京・恵比寿LIQUIDROOMで行われた。このツアーは、10月23日の愛知・名古屋CLUB QUATTRO、その翌日の10月24日、大阪・梅田CLUB QUATTRO、そしてこの日の東京・恵比寿LIQUIDROOMと全3公演で開催。フロアを埋め尽くしたオーディエンスの前でyonigeとtricotは、独創的なバンドサウンド、多彩な表現力に貫かれたステージを繰り広げた。また、お互いの楽曲をカバーし合うなど、このツアーでしか観られないシーンも実現。きわめて貴重な2マンとなった。

 最初に登場したのはyonige。牛丸ありさ(Vo/Gt)のアコースティックギターの切ない響き、浮遊感のあるメロディライン、厚みとしなやかさを同時に感じさせるグルーヴによって、フロア全体がゆっくりとyonigeの色に染め上げられる。さらにギターのフィードバック・ノイズと爆音が疾走するイントロとともに、今年の夏にリリースされた「往生際」へ。“いつの間にか大切な何かを失っていた”という感情を描いた歌詞、美しいノイズをまとったバンドサウンドがひとつになったこの曲は、yonigeの音楽性がさらに深みを増していることの証左だろう。

 その後も、言葉を挟まず淡々と楽曲を連ねていく。自転車で幹線道路の脇を走っていたら、顔に虫がぶつかって死んだという情景をスピード感に溢れたメロディとともに映し出す「顔で虫が死ぬ」、鋭利に研ぎ澄まされたアンサンブル、ポエトリーリーディング的な手触りのボーカルがひとつになった「2月の水槽」。そのままドラムのビートでつなぎ、1stミニアルバム「Coming Spring」(2015年)の収録曲「バッドエンド週末」「サイケデリックイエスタデイ」へ。ムダな音を徹底的にそぎ落とした、鋭くて凛としたバンドサウンド、そして、喪失感、諦め、焦り、切なさなどをまるで映画のワンシーンのように反映された歌。yonigeの本質が真っ直ぐに伝わるステージングを目の当たりにした観客は、静かに圧倒されているように見える。全員が同じ動きをするのではなく、手を挙げたり、体を揺らしたり、微動だにせず聴き入るなど、それぞれのやり方でこの場所に浸っていく様子も印象的だ。

 2マンツアーならではのシーンが生まれたのは、yonigeによるtricotの楽曲「POOL」のカバーだった。トリッキーな変拍子と意外性に溢れた構成、起伏に富んだメロディラインが共存する楽曲をyonigeは、自らのエッセンスを注ぎながら演奏し、フロアからは大きな歓声と拍手が巻き起こった。

「むず。めっちゃしんど」とごっきん(Ba)が呟くと、今度は笑い声が。以前、tricotとyonigeが対バンした際に、tricotがyonigeの「センチメンタルシスター」をカバーしたことを紹介し、「それがめっちゃうれしかったから、今度は自分らが(tricotを)うれしくさせたくて」(ごっきん)と今回「POOL」をカバーした理由を明かした。
「でも、めっちゃむずいな。うちらの曲、変拍子とかないし」(ごっきん)
「さっきまで練習してたからな。Aメロの歌詞がなかなか覚えられなくて、みんなに協力してもらいながら練習したんだけど……間違えた」(牛丸)
「tricotのことがめっちゃ好きで。今回のツアーもマジで楽しすぎて。今日、ホンマにツアーファイナル?」(ごっきん)
「またあるでしょ、この2マンはいつだって。海外でやろう」(牛丸)
というやり取りのあとは、新曲「みたいなこと」(映画『おいしい家族』主題歌)、そして代表曲「リボルバー」でフロアの高揚感をさらに上げ、yonigeのステージは終了した。

 続いてはtricot。中嶋イッキュウ(Vo/Gt)の「tricotです。よろしくお願いします」という挨拶に続き、圧倒的なスピード感と緻密なアンサンブルを軸にした「Noradrenaline」、つい先ほどyonigeがカバーした「POOL」といきなりライブアンセムを連発し、オーディエンスの興奮度を一気に引き上げる。さらに「アナメイン」「エコー」と抽象的なイメージの楽曲を続け、独創性に満ち溢れた音楽世界を描き出す。変拍子を交えた複雑なアレンジに注目が集まりがちなtricotだが、その中心にあるのは、楽曲がもたらす刺激的にしてドリーミーな世界観。4人が生み出す音の世界に身を預け、その中に没入していく感覚こそが、このバンドのライブの醍醐味なのだ。

 中嶋のボーカルの魅力をより体感できたのは「なか」。ギターを置き、ハンドマイクで歌った彼女は、現実と妄想を行き来するような歌詞を叙情豊かに歌い上げる。憂い、切なさ、諦念、絶望が混ざり合う歌声からは、シンガーとしての彼女のセンスがしっかりと伝わってきた。さらに、中嶋、キダ モティフォ(Gt/Cho)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba/Cho)が順番にメインボーカルを取った「よそいき」も圧巻だった。超絶テクニックを駆使しながら、豊かな表情に溢れたメロディ/ハーモニーを描き出す4人。メンバーのプレイヤビリティは、ここにきてさらに向上しているようだ。

 MCで中嶋は、「ツアーが始まる前の期間がいちばん楽しみで、いざ始まったら、もう終わったようなもので。ちょっと倦怠期かなって思ったんですけど、さっきの『POOL』の演奏を見たら、惚れ直しちゃって。もうすぐゴールインするかもしれないです(笑)」とコメント。さらに「自分たちの曲をカバーしてもらえることが少ないので、すごいうれしかった。私たちも何かお返しがしたいなって」とyonigeの「2月の水槽」をカバー。リズムのアレンジ、コーラスにtricotらしいテイストが加えられていたのも印象的だった。

 その後、メジャー1stシングル「あふれる」、ライブアンセムのひとつである「potage」などを披露し、ライブ本編は終了。アンコールでは、次にtricotとyonigeの2マンツアーが行われたときの出演順を決めるために、じゃんけん大会が行われた。最後に、中嶋とyonigeのサポートギタリストである土器大洋(LILI LIMIT)が対戦し、中嶋の勝ち(いろいろと話し合い、以前tricotが「センチメンタルシスター」をカバーしたライブハウス、奈良・生駒RHEBGATEでツアーの初日を行い、yonigeが最初、tricotがトリをやることになりました)。そして、tricotは「Break」を演奏。yonigeのメンバーはステージの端で楽しそうに見ていた。両者の結びつきが実感できるシーンとともに、この貴重な2マンツアーはエンディングを迎えた。

 自らのオリジナリティを追求し続けるyonigeとtricot。今回の2マンツアーは両者にとって、大きな刺激になったことは間違いないだろう。yonige は12月に東京、大阪で「上を向いてツアー」を開催。tricotは来年「tricotの2020年ワンマンツアー(仮)」を行うことが決定している。2バンドの今後の活動、そして、いつの日か実現するであろう次回の2マンライブにも大いに期待したい。

【取材・文:森朋之】
【撮影:小杉歩(yonige)、kaochi(tricot)】

tag一覧 yonige tricot ライブ

リリース情報

[yonige]みたいなこと

[yonige]みたいなこと

2019年09月13日

ワーナーミュージック・ジャパン

1.みたいなこと

リリース情報

[tricot]あふれる

[tricot]あふれる

2019年09月25日

cutting edge / 8902RECORDS

1.あふれる
2.なか
3.あふれる(Instrumental)

セットリスト

yonige × tricot「ツアーの名は。」
2019.10.29@恵比寿LIQUIDROOM

yonige
  1. 1.しがないふたり
  2. 2.往生際
  3. 3.最終回
  4. 4.顔で虫が死ぬ
  5. 5.2月の水槽
  6. 6.バッドエンド週末
  7. 7.サイケデリックイエスタデイ
  8. 8.POOL(tricotカバー)
  9. 9.みたいなこと
  10. 10.リボルバー

tricot
  1. 1.Noradrenaline
  2. 2.POOL
  3. 3.アナメイン
  4. 4.エコー
  5. 5.なか
  6. 6.よそいき
  7. 7.2月の水槽(yonigeカバー)
  8. 8.ブームに乗って
  9. 9.大発明
  10. 10.あふれる
  11. 11.potage
  12. 【ENCORE】
  13. 1.Break

お知らせ

■ライブ情報

yonige
yonige pre 「上を向いてツアー」
2019/12/3(火)東京 キネマ倶楽部
2019/12/5(木)大阪 味園ユニバース


サンボマスター pre デカスロン 〜強敵と書いて友と呼ぶ〜
2019/11/22(金)北海道 札幌ファクトリーホール

宇都宮総取
2019/11/24(日)栃木 宇都宮大学峰キャンパス第一体育館

REDLINE ALL THE BEST 2019〜10th Anniversary〜
2019/12/1(日)千葉 幕張メッセ国際展示場9-11ホール



tricot
「tricotの2020年ワンマンツアー(仮)」
2020/2/1(土)福岡 DRUM Be-1
2020/2/2(日)広島 セカンドクラッチ
2020/2/11(火・祝)兵庫 神戸太陽と虎
2020/2/16(日)北海道 札幌SPiCE
2020/2/22(土)宮城 仙台MACANA
2020/2/24(月・祝)愛知 名古屋クラブクアトロ
2020/3/6(金)大阪 なんばHatch
2020/3/14(土)東京 Zepp DiverCity


TENDOUJI TOUR “PINEAPPLE” 2019-2020
2019/11/17(日)栃木 宇都宮HELLO DOLLY

METROCK ZERO 2019
2019/12/8(日)東京 EX THEATER ROPPONGI
w/ 雨のパレード / BBHF / SHE’S

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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