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SiM、来春発売予定のフルアルバム収録曲をいち早く披露する実験的な対バンツアー「THE EXPERiMENT TOUR 2019」初日

SiM | 2019.11.15

 3曲目が終わった時点で既に会場には湯気が立ち込め、バンドと観客によるガチンコ勝負の様相に震えが止まらなかった。

 SiMは年々会場の規模を拡大させ、バンド主催の「DEAD POP FESTiVAL」は年々大盛況の一途を辿り、僕自身も大きなステージで彼らのライブを観る機会が圧倒的に増えた。それもあり、ステージとフロアの距離が近いライブハウスで観るSiMはとても新鮮だった。もっと言うなら、彼らの原点はここにあるんだなと再認識した次第である。

 SiMが来春発売予定の5thフルアルバム収録予定曲を披露する全国ツアー「THE EXPERiMENT TOUR 2019」を18都市18ヶ所で開催。各地で強力な対バン相手を迎えるこのツアー、初日にあたる今日はハルカミライを迎え、その後に満を持して主役のSiMが登場した。今回はツアー名に"EXPERiMENT"=実験という文字が刻まれている通り、観客を巻き込んで、まだ音源化されていない新曲をライブでプレイすることが一つの目玉になっている。SiMは過去に、公の場で新曲を少しだけやることはあっても、フル・バージョンで演奏することはなかったのだ。

 「SiMのファンを信頼している」とMAH(Vo)はライブ中に言い放ち、だからこそ「新曲も披露できる」と付け加えていた。これまで信頼してなかった、という意味ではないだろう。ファンにとって、逸早く新曲を聴くことができることは嬉しいし、バンドにとっても新たな刺激や発見があるに違いない。やらないというより、まずはやってみる。"実験"という名の挑戦的姿勢にSiMが新たなフェーズに突入したことを感じ取った。それはこの日に聴いた新曲もしかりだ。

 まずはいきなり1曲目から、2日前にMV公開したばかりの新曲「SAND CASTLE feat.あっこゴリラ」を披露してくれた。イントロからGODRi(Dr)の野太いドラム、SHOW-HATE(G)のカラフルな鍵盤が鳴り響き、ラップとレゲエを巧みに融合させ、またこれまでとは違うタイプの新鮮な曲調でフロアを揺さぶる。とはいえ、ヘヴィな質感も十分に備え、縦横の振幅をスケールアップさせたナンバー。そこにあっこゴリラもゲストで加わり、MAHとの華々しい掛け合いを見せ、観客もノリノリで騒いでいた。そう、歌っても騒いでも体を動かしてもいい、そんな奔放なグルーヴを提供する曲調に真新しさを感じた。この日はほかにも新曲を数曲プレイしたものの、どれも過去の何々っぽい曲、みたいな感想が浮かばない新境地的なナンバーばかりだった。キャッチーなわかりやすさは精度を高め、しかもライブ参加型の高揚感はきっちりと張り巡らされている。もちろん今日披露された楽曲はフルアルバムの一部に過ぎないけれど、早くも作品の全貌が楽しみになってきた。今日聴いた新曲だけでも、バンドがネクスト・ステージに進んだことを知らせる作風だった。ゆえにこれまでとは違う筋肉を使ったのだろうか。新曲をやり終えた後、「緊張したなぁ……」とMAHは素直な心情を吐露する場面もあった。


 その一方で、「Blah Blah Blah」、「GUNSHOTS」「KiLLiNG ME」などライブ必須のキラーチューンを矢継ぎ早に投下し、会場を根底からガンガン焚き付けていく。バンドはアドレナリン全開で飛ばし、それに観客が必死で食らいつく状態で、終始カオティックな熱気に支配されていた。後半、「久しぶりの恵比寿リキッドルーム、いいなあ」と、しみじみとした表情で語るMAH。そこにはライブハウスで育ち、今もこの場所が自分たちのホームであるという実感も込められていたに違いない。日本武道館、横浜アリーナと制覇した彼らだが、眼前でサークル・モッシュが広がり、観客の汗と熱が直に伝わってくる場所は特別なのかもしれない。今日集まった人たちも、改めてSiMの凄味に触れることができたのではないか。鋭利な牙はより鋭利に、メロディアスな旋律はよりメロディアスに届けるアプローチは冴え渡っていた。

 ラウド、メタル、パンク、スカ、レゲエ、ヒップホップなど多彩なジャンルを束ねた彼らの音楽性はとてつもなく幅広い。ヘヴィ押しだけでは一本調子に陥ってしまうし、横に広げ過ぎてしまうと、インパクトが薄くなってしまう。しかし、緻密に計算された楽曲には各ジャンルの素材を活かしたまま、うまく融合させていることがわかる。特にレゲエは彼らにとって不可欠の要素と言っていいし、他のバンドと一線を画す武器として機能している。ヘドバンやモッシュだけではなく、モンキーダンスに加え、観客が横に手を大きく振って盛り上がる景色はピースフルなヴァイブに満ち溢れている。中指を突き立てたヘヴィネスから心が温まるレゲエまで自在に操る彼らの楽曲センスは、恵比寿リキッドルームというハコを通してより一層リアルに体感することができた。

 今回のツアーはこの日対バンを務めたハルカミライを含めて、SiMとは音楽性が異なるアーティストも数多く迎えている。その意味でも今ツアーを経て、彼らは対バン相手からさらなる刺激を受け、自らの血肉に変えていくことだろう。大きな会場もいいけれど、小さな会場で観るSiMは格別だった。またライブハウスで大暴れする彼らを観てみたい。そう思っているのは僕だけではないだろう。そして、来春発売予定のフルアルバムは本当に期待していい。「凄いアルバムが出来た、ヨダレ垂らして待ってろよ!」と自信満々に発するMAH。ライブ終了後、その言葉が何度も頭の中をリフレインしていた。

【取材・文:荒金良介】
【撮影:SUZUKI KOUHEI】

tag一覧 SiM ライブ 男性ボーカル

お知らせ

■ライブ情報

SCANDAL TOUR 2019
“SCANDALの対バンツアー”

11/17(日)Zepp Osaka Bayside

THE EXPERiMENT TOUR 2019
11/18(月)大阪 BIGCAT
11/20(水)京都 MUSE
11/21(木)神戸 太陽と虎
11/26(火)郡山 HIPSHOT JAPAN
11/27(水)新潟 LOTS
11/29(金)金沢 EIGHT HALL

REDLINE ALL THE BEST 2019 〜10th Anniversary〜
12/01(日) 幕張メッセ 国際展示場9-11ホール

THE SUN ALSO RISES vol.100
12/03(火)F.A.D YOKOHAMA

「MOROHA lV」RELEASE TOUR “対”
12/10(火)広島 CLUB QUATTRO

MERRY ROCK PARADE 2019
12/21(土)ポートメッセなごや

ポルノ超特急2019
12/22(日) 京都パルスプラザ

BLARE FEST.2020
2020/02/01(土)ポートメッセなごや
2020/02/02(日)ポートメッセなごや

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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