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WWWを無条件に熱く揺らした一夜――バンド初ワンマンの模様を徹底レポート!

ravenknee | 2019.12.19

 1stフルアルバム『the ERA』を10月にリリースしたravenkneeが、待望の初ワンマンを12月5日に渋谷WWWで行った。
待ちかねたフロアいっぱいのオーディエンスに迎えられた4人はステージに進み、落ち着いてポジションについた。一呼吸置いて松本祥(Vo/Gt)が歌い出したのは、アルバムでも1曲目にある「ubugoe」。ワンコーラスを歌ったところで「こんばんは、ravenkneeです。よろしくお願いします!」と挨拶。まさに“物語の始まりを告げる産声”だ。これをきっかけに4人が曲に合わせて体を動かし、ダンサブルなサビにフロアも揺れ始め、途切れない演奏に乗って祥が言った。
「ありがとう。もっと自由に体を動かして、あったまろう!」。「OVERDOSE」のイントロが鳴ると、さらにフロアが揺れた。昨年8月にデジタルシングルとして配信リリースされたこの曲で、彼らを知った人も多い様子。安田照嘉(Ba)は全身でビートを取り、松本一輝(Gt/Mani)がステップを踏む。東克幸(Dr)は笑顔で3人を見ながら叩いている――いや、3人の背中越しにフロアを埋めた人たちを見ていたのかもしれない。祥がギターを持つと曲は「Earth」に続き、バンドの音が引き締まってくる。起伏に富んだ演奏と感情を込めた祥の歌がひとつとなって、聴く者を引きつけた。

 穏やかに曲が終わり、拍手と歓声が送られると、祥が言った。「ありがとうございます。ravenkneeです。集まってくれて本当にありがとうございます。WWW、2回目なんですけど、めっちゃステージからお客さんの顔が全部見えるんですよ。半端ないぐらい、全員見えてます。アルバム持ってきたんですけど、その中から1曲。10代ぐらいの時に作った曲『透明な街』です。聴いてください」。不安と孤独に包まれた若い心を吐露する「透明な街」は、祥にとってスタートとも言える曲だ。それを歌い続けることがバンドを進める原動力でもある。そんな切実さをメンバーも知っているから、この曲は独特な雰囲気を持って響いてくる。そして「透明な街」を書いていた頃の自分に向けて書いたという「青の魔法」が続いた。マーチングドラムに乗せて歌う窓からの景色。ファルセットのコーラスが日差しのようにきらめく。曲は明るいライティングの中でエンディングを迎えた。
「ありがとう」の声に乗せて曲は「AJISAI」へ。ポエトリー・リーディング風にリズミカルに言葉を紡いでいくこの曲は、色を変えていく紫陽花のように移ろう感情を歌う。ゆったりしたビートに合わせ、フロアでは腕が揺れた。歌い終えた祥がシンセをバックに「僕が個人的にいちばん好きな曲やります」と始めたのは「OCEAN」。昨年11月にリリースされたデビューEP「PHASES」のリードトラックだ。歌も演奏も抑制した前半から、一気に解放される後半がドラマチックで、EDMもロックもミックスした彼らのスタイルが活きてくる。

 ここで祥は、アルバム『the ERA』について、「入っている曲は40分か50分ぐらいだけど、作っていた時間は何十時間何百時間も4人で試行錯誤して愛を込めて作った(ジャケットは祥の弟がデザインしたことも紹介された)」と振り返り、一輝に話を振った。ギターのチューニングをしていた一輝は慌てて受けて、「ワンマンは初めてで、僕らのことを知ってる人がほとんどというところでやれるの、うれしく思います」と頭を下げた。
ちょっと緊張が緩んだのか、ふたりは雑談モードに。レコーディングは一輝の実家に集まってやっていたそうで、「ちゃぶ台みたいなところにパソコンを置いて、普通のテレビをモニターにして作業して」と祥が暴露。フロアから笑いが起こり、リラックスした雰囲気になったところで、「廃盤になっちゃったけど」と「1st EP」から「paused」を演奏。
抑えめの4つ打ちとファルセット・ボーカルに軽やかなギターリフが重なり、じわじわと上げていく感じは、彼らの原点とも言えるスタイルだ。同じく「1st EP」に入っていた「super F」では祥のファルセットが一段と張りを増した。そして細かなギターとドラムが複雑に絡み合う「paint」では、祥が張りのあるボーカルでravenkneeのダークサイドを見せつける。一輝のフリーキーなギターが曲を終わらせると、ピアノとメトロノームの音が聞こえ、『the ERA』収録の「秒針の鼓動」へ。安田のアイディアから生まれたというこの曲は、ゆったりと響くベースと畳み掛けるようなリリックの対比が、ライブでは立体的に響く。祥はリリックに合わせた身振りでオーディエンスに歌いかけた。

「みんなは憧れてるものがありますか。僕は今日のWWWのワンマン、超憧れてました。みんなが作ってくれました。本当にありがとうございます。僕、めっちゃ夢を追いかけてるんですよ。一緒に大きな夢、追いかけませんか? ラストスパート、盛り上がっていきましょう!」
祥が呼びかけると、待ってましたとばかりに歓声が起こった。ダンサブルな「I wanna stay」はキレのいいビートに乗って祥がステップを踏みながら歌い、フロアの人たちも一緒に踊り出す。起伏に富んだ演奏に熱気が高まっていくなか、ドラムが煽るように激しく鳴った「Turn Around」で一気に何かが弾けたようだった。フロアの壁にもカラフルなライトが踊った「one of kind」は、ギターとラップトップを一樹が巧みに操りながら曲を盛り上げ、ベースが一段と響いて体を揺らした。祥は「元気ですか!」とフロアに呼びかけながら誰よりも踊っている。そして、「ありがとう! 最後の曲です!」と告げて「Pick you up」へ。祥は初めてのワンマンを噛み締めるように力強く歌い、ラストは持てるすべてを絞り出すようにシャウトした。思いはほかの3人も同じだっただろう。

 アンコールに応えて4人はステージに戻り、祥が「ありがとうございます。ハンパねえ」と改めて感謝を伝え、一樹は「今日は全曲演奏しました。今日初めての方も全曲知った」と笑った。そしてギターを弾きながら祥が歌い出したのは、アルバムでも最後を飾る「daydreaming -rearranged-」。夢を追って進んでいく彼らの力強い足取りのようなビートに、フロアは揺れ続けた。

「来年は行ったことのないところへもツアーしたい」と語った祥。最初のステップを踏み出したravenknee、夢はどこまでも膨らんでいるようだ。

【取材・文:今井智子】
【撮影:安藤みゆ】

tag一覧 男性ボーカル ライブ ravenknee

リリース情報

the ERA

the ERA

2019年10月23日

ラストラム・ミュージックエンタテインメント

01.The era of turmoil
02.ubugoe
03.Pick you up
04.Earth
05.I wanna stay
06.青の魔法
07.AJISAI
08.Turn Around
09.透明な街
10.秒針の鼓動
11.daydreaming -rearranged-

セットリスト

The era of turmoil at TOKYO shibuya WWW
2019.12.5@渋谷WWW

  1. 1. ubugoe
  2. 2. OVERDOSE
  3. 3. Earth
  4. 4. 透明な街
  5. 5. 青の魔法
  6. 6. AJISAI
  7. 7. OCEAN
  8. 8. paused
  9. 9. super F
  10. 10. paint
  11. 11. 秒針の鼓動
  12. 12. I wanna stay
  13. 13. Turn Around
  14. 14. one of kind
  15. 15. Pick you up
  16. 【ENCORE】
  17. 1. daydreaming -rearranged-

お知らせ

■ライブ情報

FORM 1
2019/12/27(金)東京 渋谷Glad
w/ (DJ) JUDGEMAN, トミー・アラカキ, age (gato), YUU UMEMOTO / (VJ) Hello1103

Strand vol.1
2020/1/27(月)東京 六本木VARIT.
w/ Hermanos

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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