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中田裕二、恒例の年末ワンマン”年忘れ公演 2019~日本橋~”

中田裕二 | 2020.01.14

毎年恒例となってきた「中田裕二 年忘れ公演」が”年忘れ公演 2019~日本橋~”と題して日本橋三井ホールで12月26・27日に行われた。この会場で彼がライブを行うのは27日で17回目となり、同会場での最多出演者の記録を更新中。1日目はバンド編成で2日目は弾き語りの年末2daysは、今回で5年目になる。粛々と記録を伸ばしているのが中田らしくもあり、何度も足を運んでいるファンも多いようだ。ここでは26日の、バンド編成でのライブの模様をお伝えしよう。

 バンドに続き拍手に迎えられてステージに登場した中田は、アコギのチューニングを慣れた様子で確かめると、ドラムのカウントとともに「誘惑」を歌い出した。スムースな声で歌いながら「こんばんはー」と挨拶を挟むあたり、この会場が彼にとってホームと言いたげな雰囲気だ。続いた「WOMAN」で「ようこそ日本橋へ!」と歓迎ムードを盛り上げたのは、日本橋コンシェルジュを自認する中田ならでは。そんなムードの中で、この曲のラストをア・カペラのコーラスで締めたのはピリリと効かせたスパイスのようだった。 「今年もこの日がやってまいりました。歌のお歳暮。今年もいろんなことがあったと思いますけど、嫌なことは忘れていいことだけとどめて、そんなライブにしていこうと思っていますので、よろしくお願いします」

 ジャジーなピアノに乗って始まったのは「LOST GENERATION SOUL SINGER」。1stアルバム収録の、新しい人生に向かって自分を鼓舞するような歌だ。2020年代という新しいディケードを目前に、彼は思いを新たにしたのだろうか。と思っていたら2ndアルバムの「灰の夢」から、中田自らテレキャスターを弾く椿屋四重奏時代の「ミス・アンダースタンド」とアップテンポなロック・チューンが続き、「トーキョー!」と中田が叫ぶと客席もさらにヒートアップ。この辺りの振れ幅は、なんとも小気味いい。

 今回のバンドのメンバーは、八橋義幸(Gu)、平泉光司(Gu)、隅倉弘至(Ba)、張替智広(Ds)、sugarbeans(Kb)。何度も共演している隅倉や今回バンマスを務めた平泉、初参加の八橋まで、いずれも百戦錬磨の面々。しかもバンド経験が豊かでもあり、椿屋四重奏の曲ではワイルドな魅力も発揮した。

 「久方ぶりの椿屋四重奏「ミス・アンダースタンド」でした。疲れた」と笑いながら汗を拭く中田に客席から声援が飛ぶ。これらの曲でダイナミックなギターを聴かせた八橋を紹介したあとで、日本橋コンシェルジュとして気に入っているお店と、最近できたラーメン屋さん、カレー好きの隅倉もチェックしているというインドカレー屋さん、鴨せいろが絶品のお蕎麦屋さんなどを紹介。食べ物の話に被せてドラマ「グランメゾン東京」にハマっていると言い、「音楽の世界で、三つ星は俺が取る!」とポーズを決めてみせた。
 日本橋コンシェルジュとして勝手に使命感に駆られているのは「僕はみなさんにこの街の魅力を知って欲しいんですよ」と強調。そして「この街に合うような渋い曲をやります」
 洗練されたバンド・サウンドがソウルフルなボーカルを引き立てた「Deeper」。中田の歌の持つエロスが余すところなく発揮される曲に客席が揺れる。そんなディープな歌に続いたのは、最近のライブで披露している新曲。これもゆったりとグルーヴィーな歌を聴かせる曲で、音源化されるのが待ち遠しい。

 最新の中田から一転、ノイジーなギターに乗せて14年をワープした椿屋四重奏時代の「幻惑」はメンバーとともにアグレッシブなロック・サウンドを鳴らし、間奏で八橋と向き合いギターを重ねてバンドらしいパフォーマンスも。このバンド編成を中田は楽しんでいたようだ。

 「みなさん楽しんでますか? どんどん盛り上がって行きましょう!」
歯切れのいいビートの「UNDO」が後半の先陣を切り、「日本橋のみんな、いい加減、愛に気づけよ!」と曲題を叫んだ「愛に気づけよ」は、久々の曲をやりますと言ったけれどファンにはお馴染みの曲の一つ。マイクを手にステージ一杯に動いていく中田と、曲に合わせてハンドクラップをする客席とが一つになっているようだった。そんな空気の中、イントロのタイトなシンバルの音が震わせた「ユートピア」では、熱っぽく絡みつくようなフェイク混じりのボーカルで本領発揮。赤い照明に浮かび上がる中田が印象的だった。

 手拍子が続く中、「今夜はどうもありがとう。こうして毎年日本橋で1年を締めくくれるのは嬉しく思います。では年末らしい曲で今年も締めたいと思います」と、駅員風に「出発進行!」と声をかけた「サブウェイを乗り継いで」。
 アコーディオンがレトロなメトロのようなムードを醸し出すと、中田の柔らかな歌が大きく広がった。
 地下鉄を乗り継いで東京をさまよう若き日の姿が目に浮かぶようなこの曲は、私小説めいた共感を呼ぶ。複雑な東京の地下鉄路線の要でもある日本橋で、毎年この曲を歌うのは特別な思いがあるからだろうか。スポークンワード風に日本橋、西船橋、下北沢、錦糸町、銀座に新宿、そして八重洲と一回りする中盤は芝居のワンシーンのよう。「黄色い地下鉄」をわざわざ「銀座線」と付け加えたのは、そんな流れからだったか。本編はここで終点となった。

 アンコールでは、「恒例にもなってきた、歌番組気分で歌謡曲をカバー。今年は尾崎紀世彦さん」と、「また逢う日まで」を力強く歌った。27日の弾き語りがカバー多めなのに比べると、この日はこれが唯一のカバーだけにスペシャル感が強まった。本編中でも軽く紹介してきたメンバーをここで丁寧に紹介。「今年もいろいろ支えてくれました」と隅倉を「ありがとうお母さん」と呼んだり、平泉とは「いっぱいお酒を飲みました」と言うと「それがバンマスの仕事」と返された。

 「恒例のコール&レスポンスをお願いします」と呼びかけ、即興のメロディで声を交わして盛り上げたところで、「整いました、機長の中田裕二です。これからみなさんを素敵な夜のフライトにお連れしたいと思います。準備はいいですか」と続けて「MIDNIGHT FLYER」へ。ファンキーなベースと華やかなギターが最後の高揚感を高めていく。曲に合わせて大きく左右に手が振られ、飛び立つ飛行機を見送っているよう。中田も応えるように手を振り、最後まで力一杯歌い上げた。

 「ありがとうございました!来年もよろしくお願いします!」とメンバーと並んで頭を下げた中田は、ちょっと名残惜しそうにステージを後にした。

【取材・文:今井 智子】
【撮影:Tsuneo Koga】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 中田裕二

リリース情報

Sanctuary

Sanctuary

2019年05月15日

テイチクエンタテインメント

01. フラストレーション
02. ランナー(Album Mix)
03. 誰の所為
04. 月の憂い
05. テンション
06. 幻を突き止めて(Album Mix)
07. レールのない列車
08. ONLY I KNOW
09. サンクチュアリ
10. 終わらないこの旅を

セットリスト

年忘れ公演 2019~日本橋~
2019.12.26@日本橋三井ホール

  1. 01.誘惑
  2. 02.WOMAN
  3. 03.LOST GENERATION SOUL SINGER
  4. 04.FUTEKI
  5. 05.デイジー
  6. 06.春雷
  7. 07.灰の夢
  8. 08.ミス・アンダースタンド
  9. 09.Deeper
  10. 10.*新曲
  11. 11.幻惑
  12. 12.UNDO
  13. 13.愛に気づけよ
  14. 14.ユートピア
  15. 15.サブウェイを乗り継いで
【ENCORE】
  1. 01.また逢う日まで
  2. 02.MIDNIGHT FLYER

お知らせ

■ライブ情報

音楽と人<東京ネオントリップ>presents
中田裕二ディナーショー~39、ヨコハマ~

04/17(金) ホテルニューグランド 本館2階 レインボーボールルーム



ア・ル・カ・ラ 10枚目"NEW NEW NEW"
レコ発全国ツアー「NOW NOW NOW」

02/20(木) 恵比寿LIQUIDROOM
w) アルカラ

I ROCKS 2020 stand by LACCO TOWER
04/12(日) 群馬音楽センター

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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