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Ivy to Fraudulent Game One Man Tour“One Complete”ファイナルZepp Tokyo

Ivy to Fraudulent Game | 2020.02.13

 大島知起(Gt)、カワイリョウタロウ(Ba)、福島由也(Dr)が現れたのに続いて、ゆっくりと歩きながら寺口宣明(Gt・Vo)が登場。ステージを染めていたライトが紫から青に変化して、「賀歌」がスタートした。幻想的に揺らめくサウンドに包まれながら一心に歌った寺口。ボウイング奏法(ギターの弦をバイオリンの弓で擦る奏法)も交えて構築されたバンドアンサンブルが、とても心地好かった。続いて届けられた「Utopia」を、うっとりとしながら受け止めていた観客。表現力豊かな演奏が、鮮やかに開花したオープニングであった。

 「水泡」が披露された後、「1曲目から幸せだった」と、嬉しそうな表情を浮かべた寺口。そして、「error」「trot」「無常と日」「Dear Fate,」……エネルギッシュな曲が連発された。アグレッシブさが際立つほどに、メロディが帯びている哀愁、抒情性が際立っていくのが、実にIvy to Fraudulent Gameらしい。興奮を露わにしつつ胸を震わせている観客の様子も、“穏やかな熱気”とも言うべき独特なムードを醸し出していた。「今回のツアー、なぜか1ヶ所目から今までにないお客さんのボルテージを感じて。“ライブハウス側から言われてるのかな?”ってくらい元気がよくて(笑)。バンド人生の中で一番、お客さんが空間を作ってくれた気がしていて。楽しくて、届けたいものを届けられました」――寺口が語った後に届けられた「she see sea」。この曲のメロディは何処か寂しげだが温かい。今回のツアーではあまり演奏しなかったらしいが、観客の手拍子も加わりながら爽やかに響き渡っていた。

 「Only Our Oath」「無色の声帯」「真理の火」……幻想的な空間が築き上げられたひと時を経て雪崩れ込んだ「E.G.B.A.」。《Everything’s Gonna Be Alright!!》と歌いながら人々が拳を突き上げている風景は、不穏な集会を思わせた。「今年で俺と福島は出会って10年です。16の頃からバンドを組んで、始めた頃は人生を甘く見てたけど、なんとかZepp Tokyoまで来られました。高校をやめて、バンドしかできるものがなくなって、友だちは安定した暮らしを、それなりに幸せそうにやってる。俺の人生、16歳の時からギャンブルだって、どこかでわかってましたよ。ミュージシャンになったからといって何かが安定するわけじゃない。俺たちも去年、足を止めようとしたし。でも、ここに立ってる。俺たちは、足を止めないことにした。このギャンブル、足を止めたら負けな気がするんだ。今日、この10年間を全部見せるから、よく見とけよ。お前たちの心全て、俺たちにベットしてくれ。今日も負ける気がしねえな!」――寺口の激しい言葉が観客の心を煽ってスタートした「青写真」は、あらゆる音が一丸となって高鳴る様にワクワクさせられた。そして、「blue blue blue」や「劣等」も届けられたことによって、ますます熱気で満たされていったZepp Tokyo。全力の演奏と観客の胸の鼓動が共鳴し合う様が、美しい空間を作り上げていた。

 「えーと……今日という日を迎えたくなかったんですよ」(カワイ)。「そうですか。じゃあ帰ってください!」(寺口)――何か話すように突然促されたカワイのぎこちない言葉に容赦ないツッコミが入れられて、観客は大爆笑。そんな場面を経て、寺口は胸中を語った。「2019年、とてもつらい年でした。精神的に苦しかった年でした。“バンドが活動できるのか? できないのか?”っていうところまでの話があって……。だけど、その中でも唯一希望を与えてくれるのがライブでした。音楽が好きで始めたのに、音楽に参って足を止めるなんて悔しくて。やっぱ、やめることはできなかったよ。今年、ライブをたくさんするから。前向きにやるから。みんなは、もう俺たちのことに気づいてくれてるからさ。ずっとついてきて。よろしくね!」――そして、「革命を起こそう!」という言葉と共にスタートした「革命」は、観客の大合唱を巻き起こしていた。

 「音楽って、多分、人生の栞(しおり)みたいなもので、それで思い出す匂いとか、温度とか、人とかが、絶対にあるんだと思う。音楽って人を救ってくれるようなものではないと俺は思うけど、それで振り返ることができたり、少しだけ支えてくれたり、そういうもん。その栞が俺たちだったら、何よりも俺は幸せ。ここにいる全ての人が俺の人生、俺らの人生の誇りだから。これからもよろしくね。俺もお前も強く生きれるように。もっともっと今を生きれるように」――この言葉を添えて披露された「Memento Mori」は、本編を温かく締め括っていた。そして、観客の間から自ずと湧き起こった手拍子と歓声。アンコールに応えてステージに再登場した4人は、実に嬉しそうであった。

 「嫌だなあ。やりたくない。だって終わってしまうんですもん、ツアーが。非常に名残惜しい。悲しい。どう生きていいかわからない。《教えて何故こんなに 生きるとは悲しいのか》」――先ほど演奏した「she see sea」の歌詞の一節を引用して笑いを誘いつつ、ツアーが終わってしまうことを寂しがっていた寺口。そして、「Oh, My Graph」の演奏の後、彼らの地元のライブハウスである高崎clubFLEEZで5月24日に『Ivy to Fraudulent Game presents One Man Live Only Our Oath #2 -故郷-』を行うことを発表。「故郷」も披露されて終演を迎えたように思われたのだが……。

 鳴りやまない手拍子に応えて行われたダブルアンコール。「お前らが歌うんだよ。このアンコール、お前らが歌うために俺らは来たんだ」――寺口が掻き鳴らしたギターに合わせて響き渡った《繋いでよ 此処と其処を 繋いでよ 君と僕も 笑えるように》という観客の大合唱は、ステージ上の4人に確かな手応えを与えたのではないだろうか。昨年は思い悩むことが多い日々だったようだが、今回のツアーでメンバーたちが見た様々な景色は、今後のIvy to Fraudulent Gameを支えていくに違いない。

【取材・文:田中 大】
【撮影:Yusuke Satou】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Ivy to Fraudulent Game ROCK

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リリース情報

完全が無い

完全が無い

2019年09月04日

ビクターエンタテインメント

01.Carpe Diem
02.Memento Mori (TBS系テレビ「CDTV」1月度EDテーマ)
03.blue blue blue
04.無常と日
05.真理の火
06.無色の声帯
07.Only Our Oath
08.Parallel
09.Oh, My Graph
10.模様 (日本テレビほかTVアニメ「トライナイツ」EDテーマ)
11.賀歌

セットリスト

Ivy to Fraudulent Game One Man Tour"One Complete"
2020.2.1@Zepp Tokyo

  1. 1. 賀歌
  2. 2. Utopia
  3. 3. 水泡
  4. 4. error
  5. 5. trot
  6. 6. 無常と日
  7. 7. Dear Fate,
  8. 8. she see sea
  9. 9. 徒労
  10. 10. Only Our Oath
  11. 11. 無色の声帯
  12. 12. 真理の火
  13. 13. E.G.B.A.
  14. 14. 青写真
  15. 15. blue blue blue
  16. 16. 劣等
  17. 17. 革命
  18. 18. Memento Mori
  19. 【ENCORE】
  20. 1. Oh,My Graph
  21. 2. 故郷
  22. 【W ENCORE】
  23. 1. trot

お知らせ

■ライブ情報

Ivy to Fraudulent Game Presents "Only Our Oath #2 -故郷-"
5月24日(日) at 高崎clubFLEEZ
” Ivy to Fraudulent Game × LAMP IN TERREN SHORT TOUR “μελαγχολiα(メランコリア)
3月8日(日) at 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd w.LAMP IN TERREN
4月3日(金) at 新潟 CLUB RIVERST w.LAMP IN TERREN
5月2日(土) at 福岡CB w.LAMP IN TERREN
5月4日(月) at 名古屋CLUB UPSET w.LAMP IN TERREN
5月5日(火) at 梅田Shangri-la w.LAMP IN TERREN
5月13日(水) at 渋谷WWW w.LAMP IN TERREN

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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