リスナーを飽きさせない進化するマカロニえんぴつのニューミニアルバム『LiKE』が遂に完成!

マカロニえんぴつ | 2019.02.14

 これまで自身になかったタイプの楽曲の出現。「これが俺たちだ!」とのアイデンティティたっぷりのリリックや歌。聴き手を掴み離さない求心力のある楽曲…。マカロニえんぴつのニューミニアルバム『LiKE』からは、現在の彼らの調子の良さや自信が音や歌と化して溢れ出ている。昨年末の全国ツアーと並行し制作された今作は、そこで得た自信や確信、はたまた足りなかったものや更に欲した要素と現在の彼らの勢いとが同居した1枚。どんなタイプの曲が現れてもついてきてくれる聴き手に向けての雄弁が収録されたタイプの全く違うのが今作からは伺える。果たして私のこの感受は正解なのだろうか? はっとり(Vo&Gt)と、今回は作曲を始めアレンジに様々な進展的アイデアを寄与している長谷川大喜(Key)に話を訊いた。

EMTG:今回の作品はある意味、自分たちに自信がないと出せない作品だなと。「これでも聴き手はキチンとついて来てくれる」、そんな自信が漲った作品印象がありました。
はっとり:制作開始当初から振り切れてはいたんです。特にアレンジ面では。前作アルバム(『CHOSYOKU』)がメンバーの脱退を経たりして、ある意味、あの状況だったからこその作品内容だったにも関わらず、世間的に広がったのが、やはり自分たちの中では大きくて。
EMTG:あの作品を経て、色々な意味でより広がりましたもんね。
はっとり:おかげさまで、昨年1年をかけてジワジワと広がってくれました。高く評価して下さる方も多かったし。それが自信のひとつになったことは確かです。そして、そのあとに「レモンパイ」(2018年秋発売の最新シングル)をあの流れや勢いを受けて出し、そこからの更なる反響には自分たちでも驚いて。そんな流れがありつつ、そのツアー中に作ったのが今作で。そういった意味では、どんな球を投げてもキチンと受け止めてもらえる。そんな自信はありました。
EMTG:今作はタイプも様々な楽曲たちが収まっているのも特徴的ですね。
長谷川大喜(以下、長谷川): 各曲全く違うタイプの5曲ですからね。
はっとり:色々なことをやっているような印象を与えつつ、とっちらかり過ぎない。そんないいバランスで表現できたし、歌詞面で言えば今の自分たちの状況や今じゃなきゃ書けない強がりも伝えられましたから。
EMTG:今作からはどこか、「信じる」みたいなものがキーワードとして浮かんできました。
はっとり:確かに。歌詞でも何曲かで「信じる」が出てきますからね。
EMTG:それも「信じてくれ」とのお願いや懇願ではなく、どちらかといったら「信じてついて来い」「信じてついて来てくれるかな?」といった類いの「信じてくれ」かなと。
はっとり:自分的にも「信じる」「信じない」というものを敏感に感じる時期でもあったんで、それが反映されていたんでしょう。
EMTG:何かそこに至る背景があったり?
はっとり:前回のシングルのカップリング曲「OKKAKE」がまさにそれで。あれはバンドのファンの目線で書いた曲だったんです。あれを「ロックバンド自らが歌ってくれるのが嬉しい」みたいなことを言って下さる方々がおられて。「他のバンドはこんなこと歌ってくれない」=「このバンドは信じられる」と一つのシンパシーになってもらえるキッカケがそこで芽生えたんです。そこから、より“続けなくちゃ!!”とも思ったし。更に“みんなのロックバンドでいなくちゃ!!”との自覚が僭越ながら生まれたんです。
EMTG:正直、個人的には「ミスター・ブルースカイ」のあの世界観を中心としたもっと王道のロックバンド路線でくると踏んでました。
はっとり:アルバムではなくシングルだとなかなか表現し切れないバンドですからね、自分たちは。
長谷川:基本、1作の中に色々なタイプの曲を入れることで、一つの作品を成立させているバンドですから。各曲を通してはもちろん、作品全体を通しても見えるものがあるバンドというか。
はっとり:僕らはシングル向きじゃないです (笑)。似たような球ぱかりを投げてもしょうがないし。とは言え、今作にしても無理やり幅を拡げたわけではなくて。作っていくうちに気づけば変化しており、今回の5曲に至っていたというか。結果、この幅やバラエティさになっていた。そんな感覚なんです。
長谷川:誰かが弾いたフレーズに乗って、頭からメンバー全員で進めながら気づいたら完成した曲(「トリコになれ」)もあったし。
はっとり:こんなことをやっていいんだ。こんな作り方も出来るんだ。こんなふうに音楽って自由にやっていいんだ。そんな気づきやタガが外れた。そんな経験が出来た作品でもあったんです。
EMTG:ある意味、タガが外れ過ぎです(笑)。
はっとり:「トリコになれ」は自分たちのバンドのことを歌ってるし。それこそ、俺たちだけを見ろ、見てくれ、みたいな曲だしね(笑)。
EMTG:「ブルーベリー・ナイツ」をリード曲に持ってきたのも意外でした。てっきりリード曲は、マカロニえんぴつの王道曲辺りで来るだろうと予想していたもので。
はっとり:この曲が今作の中では最も最近に出来た曲だったんです。この曲もわりと自分たちでも新しいテイストが出せた感があって。歌詞やメロディの切なさに対して、今までだったらアレンジはあえてそれらとは対照的にポップにして。それを自分的には「照れ隠しのアレンジ」と呼んでるんですが(笑)。そのギャップが、「マカロニえんぴつらしくていいよね」とよく評価されてたんです。でも、この「ブルーベリー・ナイツ」では、歌詞の切なさをアレンジでも更に後押し出来た感を自分では持っていて。実はこういったテイストの曲って、これまでの自分たちには無かったなって。
EMTG:「働く女」では長谷川さんも作曲に参加されていて。
はっとり:これは大ちゃん(長谷川)が、「みんなで一緒に歌える曲を」と持ってきたんです。
長谷川:みんなで音楽を共有できるような曲が今のマカロニえんぴつでは必要だと感じ持って行きました。それもあり、頭はみんなが参加できるようにクラップから入ったり。その辺りもきっとライブツアー中に作っていたのが大きいと思います。ツアー中に感じたんですよね、“こういったタイプも今後必要だな”“ここでこういった感じの曲が欲しいな。あったら、もっと盛り上がるだろうにな…”といったことが。それが楽曲の創作に結びついていった感はあります。
はっとり:こういった風に大ちゃんがライブを想定して楽曲を作ってもってきたのは意外だったし、変わったなと、自分は感じました。元々大ちゃんはエレクトーン畑の人だから、自分一人で完結できるタイプなので。おかげさまで、自分たちの中でもこのような曲がぽっかり抜けていたことに気づかされたし、それを大ちゃんが補完してくれたことに、バンドとしては大きな意義があった気がします。
EMTG:やったことのない楽曲と言えばラストの「STAY with ME」はかなりエレクトロな楽曲で。このようなテイストの表れにも驚かされました。
はっとり:こういったタイプの楽曲こそ、これまでやってこなかった楽曲でした。でも、この曲もライブでは同期を使わない予定です。マカロニえんぴつは、ここまでどんな時でも自分たちの演奏で常にやってきたので。ポール・マッカートニーが、「俺は絶対に同期は使わない」と言っていたのを聞いて、それに感化されて。「だったら俺らも!」と (笑)。作品にしても音は重ねるけど、重ね過ぎない。それを意識してますから。ライブで自分たち以外の楽器や音を導入しないと再現できない。それがイヤなんです。
EMTG:それにしても今作はバラエティに富んでます。
はっとり:俺も飽きっぽいし。繰り返しが好きじゃないんですよ。それが歌詞や歌にも表れていて。
EMTG:歌詞もリフレインフレーズが微妙に変わっている箇所も特徴的ですもんね。
はっとり:自分が飽きたくないタイプなので、飽きない為の工夫です(笑)。あと、もちろん韻の踏んだリズム感を意識した歌詞もですが、微妙な歌詞の変化での意味や伝わり方、感じ方が変わってくる。その辺りの歌詞の書き方が最近特に面白くなってるんですよ。
EMTG:その辺り今作には、かなり顕著に表れています。あとは、「とにかく俺だけを見ろ」感とでも言うか…。
はっとり:いや、「もっともっと俺たちを見ろ!」でしょ(笑)。とは言いつつ、本音はそこまで圧倒的な自信にまで至っていないんですけどね。
EMTG:それは、意外でした。
はっとり:以前、ちょっと有頂天になっていた時期に、それがあだとなって痛い目に遭ったことがあって。その時のトラウマじゃないけど、もうそんな経験は味わいたくないところがあるんです。もちろん、その頃に比べれば、ライブも楽曲作りも真剣だし、ある意味必死だし、楽曲にしてもメンバーが能動的に曲作りやそのブラッシュアップに参加してくれている。でも、今でもどこか、あの苦い経験があるから、今の良い状況がずっとは続かないかもしれない。今だけ注目を浴びてるんだったら悲しいな、とか。好きなことやってはいるけど、これでセールスが伸びながったらどうしよう…等々が心のどこかでは常にあって。
EMTG:「トリコになれ」みたいな、「俺だけを見ろ!」みたいな歌をうたっておきながら?
はっとり:あの曲も、俺たちのライブを観たら絶対に虜になるからと、あんなにも強く訴えておきながら、最後の大サビでは「ずっと歌える時代になればいいな」ですから。「STAY with ME」もあんな曲なんで、本当に自信があったら、「ここに居てくれ」なんてタイトルにしないでしょう (笑)。それを歌ったり、現れちゃってるってことは、やはりこのような作品を出して自信はあるんだけど、どこか不安を抱えているのかも。
長谷川:その不安もだけど、僕は今回の作品でのライブの再現もちょっと心配です。
EMTG:基本、みなさん技巧派なのでプレイ的には問題ないでしょう。
長谷川:いや、今回の作品は各曲毎にむちゃくちゃ色々な音色を使ってるんです。その音変えが大丈夫かなって(笑)。いい曲だし、もっとノったり味わったりしていたんですが、たぶん最初はそこまでの余裕がないでしよう。間奏中も色々とつまみをイジったりして準備をしてたりと、かなり慌ただしくなりそうです。それらも踏まえて、今回の作品をまたライブでも楽しんでもらえたらなと(笑)。
EMTG:かなりMですね(笑)。
はっとり:同期を使わず、全て人力でやるのが俺らの良さですから。失敗しても、それはそれで、「人間っぽくていい」と思っていただいて許してもらおう(笑)。でも、それも含めてのライブじゃないですか。なので、それらも合わせて今作と、それと共に回る全国ワンマンツアーも楽しみにして欲しいですね。なんたって、「トリコになれ」なんて曲を作って歌っているバンドですから、うちらは(笑)。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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リリース情報

LiKE

LiKE

2019年02月13日

TALTO

1.ワンルームデイト
2.トリコになれ
3.ブルーベリー・ナイツ
4.働く女
5.STAY with ME

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

マカロックツアーvol.7
03/30(土)広島 BACK BEAT
03/31(日)福岡 Queblick
04/05(金)金沢 vanvanV4
04/06(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK
04/12(金)札幌 COLONY
04/14(日)仙台 enn2nd
04/20(土)名古屋 APOLLO BASE
04/21(日)大阪 MUSIC club JANUS
04/23(火)高松 TOONICE
04/25(木)渋谷WWWX
04/29(月祝)大阪Music Club JANUS

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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