KOTORI、新体制になって初のリリースとなる「HANE」インタビュー

KOTORI | 2019.06.07

 昨年リリースされた『CLEAR』から約半年。その間にはワンマンライブもKOTORIはシーンにおける存在感をどんどん増している。そんななか、ずっとサポートメンバーとしてライブに参加していた細川千弘(ex. Shout it Out)が正式加入、新体制の4人での初のリリースとなるのが今作「HANE」だ。疾走感あふれる新曲「ファーストインパクト」とディープに振り切った「羽」、その2曲ともが、バンドとして新たなフェーズに突入しているバンドの気分をダイレクトに表している。シングルのリリースイベントとして開催されるサーキットイベント「TORI ROCK FESTIVAL 2019」のことも含めて、メンバー全員に話を訊いた。

EMTG:先日、細川くんの正式加入が発表されて。そもそも、メンバー脱退のあと、細川くんとやることになったのはどういういきさつだったんですか?
細川:上坂が――。
上坂仁志(G):友達なんすよ。
横山優也(G・Vo):それ簡単すぎるでしょ(笑)。
細川千弘(Dr):シャウトのレコーディングでcinema staffの三島さんと上坂に弾いてもらったことがあって。そのときに、好きな音楽もかぶってたりして仲良くなって。そしたら7月とかそれぐらいに突然LINEが来て。シャウト解散するというのはもう発表してたんで、それもあって「じつはKOTORIもドラムが抜けるんだけど、サポートしてくれないか」って言われて。とりあえず僕……なんて返事したんだっけな?
上坂:なんか、ちょっとイマイチな感じだった(笑)。
細川:「めちゃくちゃやりたいです」って感じじゃなかったんです。いったんシャウトのライブが全部終わってからいろいろ決めたいというのもあったし、ひとりのドラマーとしていろいろやりたいというのもあったので。結局KOTORIもサポートすることになって、最初は本当にメンバーになるとかっていうビジョンもなくて。でも、ライブ終わって打ち上げとかで横チンが毎回誘ってくるんですよ。
横山:毎回言ってた。「もう入っちゃいなよ!」って(笑)。
細川:そのときに断る理由があんまり見つからなかったっていうのと、単純に、KOTORIってすごく自然体なんですよ、普段から。その感じですげえかっこいいこともやってて、なんか羨ましいなって思ったんですよね。それで「じゃあ入ります」って。だから入ることは結構前から決まってたんです。
EMTG:3人としては、実際合わせてみてこれだって感じはあったんですか?
横山:サポートしてくれた人、全員タイプ違いましたけど、すっとできたのは千弘かなって思います。他の人、あ、クセあるなって結構わかるんですよ。でも千弘はお互いにすっと馴染んだみたいな感じがあって。
EMTG:だから執拗に「入れ」と言ってたんですね。
横山:でも、前のバンドがあるから。周りから見たときに話題性を狙って入れたんじゃないかなって思われるのがすごく嫌だったんで、最初はためらってたんですよ。でもやってくうちに関係ねえやって思って。なんか、次のステップに行くために――これからやりたいことと、千弘が持っている技術とか感性がすっと合ったというのがあったんで。千弘のドラムがあると次にいけるなって思ったんですよね。
細川:俺、KOTORIに出会ってなかったらまだサポートでいろいろやってたと思う。早い段階で出会ってしまったから、バンドに入りました。ほんと、お互いの「かっこいい」が偶然一致して、やりたいことも一緒で。偶然ですね。
EMTG:偶然ともいえるし、運命ともいえるかもしれない。
細川:そうっすね(笑)。
EMTG:実際、次のフェーズに進んでいる手応えってやっているなかで感じていると思うんですよね。
佐藤知己(B):…………あると思います!
横山:溜めたなー(笑)。やっぱ演奏力っていうところ、単純に。僕らみたいな勢いのあるバンドってライブの熱量だけでどうにかできたりするんですけど、もう1個上に抜きん出るためにはやっぱり演奏力。そこで千弘は引っ張ってくれる感じなんですよね。ドラムがめちゃくちゃ上手くなったから、そこに追いつくように僕らも演奏力上げていかないとって思うし。どうですか?
佐藤:うん、そんな感じ。いいと思います(笑)。
EMTG:上坂くん、誘った張本人としてはどうですか?
横山:お手柄でしょ。
上坂:うん、仕事した(笑)。
横山:でもここ(上坂と細川)が同い年っていうのはデカいよね。
細川:そうだね。まあ、1個なんであんまり変わらないけど。
上坂:歳はあれだけど、友達なんで。
EMTG:もともと友達だから、改まってっていう感じじゃなかったのがよかったんでしょうね。
上坂:変わらないもんね。
佐藤:よくゲームしてるしね(笑)。
EMTG:で、新体制でシングルが出るわけですが。ここから始まっていくっていう予感がビシビシ伝わってくるシングルになったと思うんですが、今作はどういうふうに作っていったんですか?
横山:これ、元々「羽」のほうがあったんですよ。結構ドープというか重めの曲だと思うんですけど、シングルならまず1個わかりやすいものがあって、カップリングで好きなことやるっていうイメージがあったので、「羽」の暗さをどうにか明るくしたいなって思って。悪くいうと売れそうなのをと思って作ったのが「ファーストインパクト」。今まで出せなかった俺の疾走感が出たかな。ほんとに勢いだけでリフができて――。
佐藤:結構ワンパターンだよね。
横山:ずっと同じリフを弾いてるじゃないですか。シンプルなことでどれだけ勢い付けられるか、そしてわかりやすくできるか。だから「羽」があったのがデカかった。
EMTG:「羽」があったからこそ、逆側に振り切ったと。
横山:そうっす。
EMTG:そうやって勢いでガッと作るっていうのはKOTORIとしてはチャレンジだったんですか?
横山:今までなかったか、あんまり。だいたい僕か上坂が、DTMで曲を作ってメンバーに送ってっていう、わりと完成形がある状態でやってたんですけど、今回は「こういうリフあるんだよね」みたいな。
上坂:結構みんなで作った感じ。
EMTG:じゃあむしろバンドっぽい感じで作っていったんですね、「ファーストインパクト」は。
横山:そうっすね。
EMTG:確かにそういう感じはします。「羽」のほうはいつごろできた曲なんですか?
上坂:ツアー中に作ってたね、スタジオ入って。
細川:これ、上坂が打ち込みで作って、みんなに送ってたんですよ。じゃあツアー中に作るかってなってたんですけど、上坂、肺気胸になっちゃって栃木帰っちゃったんで(笑)。
EMTG:結果的にシングルのタイトルは『HANE』になったわけじゃないですか。それはどうして?
横山:僕のなかでは「ファーストインパクト」がいわゆるリード曲って思ってたんですけど、「羽」を録っていくうちに「あれ?」って。メロディ入れた途端に「来た!」ってなったんだよね。
細川:プリプロで仮歌入れたときに初めてメロディを聴いて。そのときに俺と上坂、ソファで寝てたんですけど、ぱっと起きて「これめちゃくちゃいいな」みたいな。これは一歩上を行かれた感じっすね、横チンに。
横山:それで「これリードでいいんじゃね?」みたいになって。
EMTG:どちらも強い曲だから、両A面みたいなイメージだよね。
横山:ああ、そうっすね。だからほんとは『ファーストインパクト/羽』みたいなタイトルにしようとしたんですよ。でもレーベルのボスに『なんかピンとこない!』って言われて(笑)。「お前のKOTORI節出せよ」みたいな。で、僕ら日本語をアルファベットにするっていうのがあるんで、『HANE』になった。鳥つながりでKOTORIっぽくもあるし。
EMTG:「羽」のメロディを入れたときにみんな「来た」ってざわついてたのは、作った本人としてはどうだったんですか?
横山:いいメロだなとは思ってました。コード進行がちょっと変なので「これ、どうやってメロつけよう?」ってずっと思ってて。僕、ひとりで歌いながら大きい声どこまで出るかなっていうのを確認しながらやるんですけど、「あ、これ出るな」ってところがちょうど気持ちよくて。それでいいなと思いました。
EMTG:じゃあ、必ずしも新しい感じがあったわけではないんだ。
横山:そうっすね。俺っぽいっちゃ俺っぽくない?
佐藤:うん、それは思った。
上坂:それがいいんだよ。
細川:「羽」は結構もうライブでやってるんですけど、「新曲やります」って言ってやったときのお客さんの呆然としてる感じが、逆に「やってやった」って感じになるんですよね。そういう曲を自信をもって4人がかっこいいと思えるのは強みだと思います。
EMTG:そういう自信と前向きさみたいなものが、「ファーストインパクト」も含めてこのシングルには出てるなと思います。KOTORIの曲ってどんな曲でもちゃんと光と陰みたいなものを両方描きますよね。でもこの2曲は最終的に光のほうが勝っていく感じがします。
横山:うん。「羽」にかんしては、雨がやんで――その「雨」っていうのが暗い部分なんですよね、不安とか。で、結果だんだん晴れていって最後茜色の夕日が見えるっていう。僕が言ってた「暗い」っていうのはそういうことなんですよ。あくまでも暗い場所に僕らはいる。でも結果明るくなればいいと思ってるっていう。
EMTG:「あくまでも暗い場所にいる」っていうのはもう少し説明するとどういう感じなんですか?
横山:生活っすかね。俺、友達のインスタのストーリーとか見て「楽しそうだな」って思うたびに超落ち込んでいくんすよね。俺、全然こういう遊びもしてないし、ただ家にいるだけだし、みたいな。
上坂:俺はでも、家好きだよ。
佐藤:そういう話?(笑)
上坂:羨ましいとは思うけど、俺は家かなみたいな(笑)。
EMTG:そうやって「俺の生活暗いな」って思ってるなかで、バンドをやる、ライブをやるっていうのはどういう意味合いがあるんですか?
横山:そこしかないっすよね。
上坂:ごほうびっす。
横山:3連チャンとか、いっぱいライブがあると「キツイな」みたいな感じになるんですけど、1週間空くと「おっしゃ、ライブだ」みたいな。それはごほうびだね。でもそれってお客さんも結構そうじゃないですか。そこと同じ目線にいるからいいのかもしれない。
EMTG:KOTORIを取り巻く状況がどんどんスケールアップするにつれ、みなさんの中でこのバンドがより大きな意味をもつものになってきているのかなと思うんですが。
細川:ああ……。
横山:これしか考えてないっすからね。なんかむちゃくちゃ嬉しいのが――僕らって結構対バンでちょっとアンダーグラウンドの人とやったりするんです。僕が大好きだから。でもあるじゃないですか、その人たちの領域、踏み入れちゃいけないところって。だけど僕らはどっちにも行きたい。潜るだけじゃなくて、オーバーの見える部分もちゃんとしたいんですよね。だからこそ気になるんです、アンダーグラウンドの人からの目線が。「お前らこっちじゃないから」って思われるのがすげえ怖いんですけど、そういうバンドと対バンして打ち上げで「お前らは希望だ」とか言ってもらえるのが嬉しい。
EMTG:そういう意味では、その道を順調に進んでいってる感じがしますよね。
横山:「TORI ROCK FESTIVAL」とかそれが顕著に出てる。
EMTG:それをすごくポジティブに捉えているから、「次に行くぞ」っていうモードがこのシングルには表れているんだと思います。
横山:うんうん。
EMTG:この2曲とも、バンドのことを歌ってるんだろうなと思うし。
横山:今いい感じで、ライブもいいですからね。たまに話すんですけど「今日無敵感なかった?」みたいな。俺ら無敵や、みたいな。その無敵感を、演奏力が盾みたいになって出せるんですよね。
細川:無敵感感じたときはみんな共通で感じてると思う。
EMTG:じゃあ「TORI ROCK FESTIVAL 2019」でもその無敵感で出てるバンド全員蹴散らすぐらいの感じでやるつもり?
横山:いや、僕は戦いたくないですね。ただもう「観たい」「一緒にやりたい」っていう(笑)。
EMTG:なるほど(笑)。そもそもなぜフェスをやろうと思ったんですか?
横山:シングルのツアーをやらずに、潔く1本デカいイベントをやって終わろうみたいな。デカくやるとなったらいっぱい呼んでサーキットだっていう(笑)。でも、僕らの世代でこのバンド呼べるのは僕らしかいないと思います。
細川:演者からの反響がすごいっすね。めちゃくちゃ連絡くるんですよ。「このバンド出るの?ヤバいね」って。
EMTG:恒例になっていくと面白いですね。
横山:そうっすね。でもこれじつは、3~4年前に「TORI ROCK FESTIVAL」ってやってたんですよ。
細川:そうなんだ?
上坂:名前としてはね。自主企画を2デイズでやってた。
EMTG:それがこれだけのサーキットイベントとして復活したってことなんですね。
横山:そうです。俺、いつか「JIDORI ROCK」っていうのやりたいんですよ。地元の宮崎で野外フェスをやりたいんです。だからそれを最終目標にして、まずはサーキットからやっていこうと思います。

【取材・文:小川智宏】

tag一覧 シングル 男性ボーカル KOTORI

リリース情報

HANE

HANE

2019年06月05日

small indies table

<CD>
01.ファーストインパクト
02.羽
<DVD>
2019.2.1 LIQUID ROOM LIVE映像
01.19歳
02.高鳴る胸に鐘を鳴らせ
03.Blue
04.ドラマ
05.life.
06.シャンプー
07.明日には世界が変わるとしても
08.SUPERCAR
09.1995
10.トーキョーナイトダイブ
11.夏が終われば
12.オリオン
13.そのすべて
14.RED
15.素晴らしい世界
16.EVERGREEN
17.ジャズマスター
18.さよなら
19.YELLOW

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

TORI ROCK FESTIVAL 2019
6/23(日) 下北沢GARDEN/下北沢DaisyBar/下北沢SHELTER/下北沢Club Que
出演:
KOTORI/tricot/bacho/With A Splash/paionia/fam/weave/And Protector/CARNIVAL/FILTER/BAN’S/ENCOUNTER/Azami/ONIONRING/Bearwear/裸体/Day tripper/Teenager Kick Ass/rem time rem time/EASTOKLAB/RIDDLE/コールスロー/Mr.Seaside/リーガルリリー/NOWEATHER/elephant/PELICAN FANCLUB/1inamillion



REDLINE TOUR 2019 -FOUR FISTS-
6/7(金) 福岡LIVE HOUSE CB
6/12(水) 仙台enn2nd
6/13(木) 恵比寿LIQUIDROOM
w)bacho/THE FOREVER YOUNG/ハルカミライ

京都大作戦2019
7/6(土) 京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ

ROCK IN JAPAN FES 2019
8/3(土) 国営ひたち海浜公園

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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