PELICAN FANCLUBがメジャー1stシングル『三原色』で示す意思表示とは? 唯一無二になるために――

PELICAN FANCLUB | 2019.11.15

 PELICAN FANCLUBがメジャー1stシングル『三原色』を完成させた。表題曲は、TVアニメ『Dr.STONE』のオープニングテーマ。彼らにとって、待望のアニメのタイアップという意味でも、大きな一枚だ。色がちりばめられた鮮やかな歌詞と、シンクロするように躍動感がある演奏が印象的な表題曲をはじめとして、一枚を通して彼らの意思表示が感じられる。音楽のみならず、文化になっていきたいと志す彼らの表現を、見逃さないでほしい。エンドウアンリ(Vo/Gt)からも、いつも以上に力強い言葉を聞くことができた。

EMTG:CDのジャケット、美しいですね。
エンドウ:このジャケットを手掛けたのはGraphersRockさんといって、僕らがメジャーデビューした(昨年リリースのメジャー1stミニアルバム)『Boys just want to be culture』からお願いしているんです。そもそも今日も身につけている服や靴、カバンもGraphersRockさんデザインで。音楽が僕らの内面なら、ジャケットは僕らの外見だっていう着想から、GraphersRockさんにお願いしたいなって思ったんですよね。
EMTG:ジャケットを引き出したのは言わずもがな「三原色」というタイトルだと思うのですが、この秀逸な名前は、どうやって考えたのでしょうか?
エンドウ:僕は、このバンドをはじめてから、セットリストとかも、楽曲を色でイメージして組んでいるんですね。そして、今回はアニメのタイアップ。僕らがバンドを組んだきっかけに、アニメの『NARUTO -ナルト-』で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「遥か彼方」を(オープニングテーマで)聴いて、憧れを抱くようになったことがあったんです。当時、中学生の僕は、いずれはアニメの……しかもジャンプ系のアニメの主題歌をやりたいという話を、ベースのカミヤマ(リョウタツ)君としていて。今回の1stシングルで、それが遂に叶ったんです。だから、ここで自分たちの意思表示をしたいと。そこで、自分たちの活動の中で色は重要だったし、3ピースということもあって、「三原色」にしました。
EMTG:お話を伺うと、バンドのことや1stシングルということに重きを置いたようですが、オープニングテーマを務めたアニメ『Dr.STONE』からもインスピレーションは受けましたか?
エンドウ:そうですね。意思表示をするうえでの言葉遣いは、アニメの原作から影響を受けました。ひとつ言えば、サビに四則演算が入っているんです。《零にたして 今をかけて》《線をひいて 殻をわって》――ここは、(『Dr.STONE』が)化学アニメで、式というテーマになっているからで。また、色って「しき」じゃないですか。そことも掛けているんです。
EMTG:自分たちの意思もアニメのテーマも、きれいに落とし込めた楽曲になりましたね。
エンドウ:なりました。どの作品もそうですけど――メジャー1stシングルって一生に一度ですから、過去作を振り返って、自分たちの要素を存分に詰めましたね。今回はタイアップということで、特に思い入れも大きかったですし。メジャーデビューした1年前に、こうなりたいという想像はしていたんですけど、実際になってみると感慨深いですね。
EMTG:まさに《想像をしていた位置からみえる景色》という歌詞もありますね。1年前だけではなく、アジカンに憧れていた頃からの思いも詰められたんじゃないんですか?
エンドウ:まさに、そうですね。アジカンとは(レーベルが)同じキューンですし、キューンとアニメとの親和性はずっと感じてきて。だからこそ、メジャーデビューの時に『Boys just want to be culture』――文化になりたいという言葉を掲げたんです。
EMTG:アニメのタイアップに憧れていたというのは?
エンドウ:僕が純粋にアニメを好きだったんです。だから、今回のサウンドを作るにあたっても、思春期のエンドウ少年が、当時どういう主題歌が聴きたかったのかを想像しました。そこで、当時から好きな、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやソニック・ユースのテイストを入れたいと思って、最後のサビは存分に浮遊感があるものにして。自分が聴きたかったアニメの主題歌ができたんです。
EMTG:歌詞にも色がちりばめられていますが、その効果として、すごく躍動して聴こえてきますね。
エンドウ:それは、タイトルが「三原色」だからです。《空の色はどうして青くみえるのだろうか》も、違うタイトルなら《空》という言葉が印象的だと思うんですが、このタイトルだから《青》がフォーカスされるという。
EMTG:この楽曲を聴いて、色って生命力があると思ったんですね。だから、《生命力を三原色で広げて》という決定的な歌詞で終えてもよかったような気もしたのですが、さらに最後に三原色ではない《白》と《黒》が出てきますよね。
エンドウ:光の三原色と色の三原色ってあるじゃないですか。光の三原色は混ざり合っていくと、白く透明になっていく。色の三原色は混ざり合っていくと黒くなる。そして、この楽曲の冒頭の歌詞には赤、青、黄、緑の4色が出てくるんです。光の三原色には緑色、色の三原色には黄があるというところで分かれてくる。同じ三原色でも、混ざったら結末が違う。だからこそ、この歌詞を持ってきたんです。
EMTG:色の三原色と光の三原色、どちらも内包しようとは思っていたんですか?
エンドウ:はい。光からは希望とかが連想できると思うので《白紙の時代 過去を混ぜて/築き上げ 気付かされ》というところで表現しました。《黒くなって》は、今の時代のことを言いたかったんですよね。今は、いろんなものが混ざり合っていて、まっさらではない。でも、それを《今で消して》っていうのは、豪語すれば唯一無二というか。いつの時代も先駆者がいて、《今》で黒くなったものを消してきた。僕らの意思表示っていうのはそこで、僕らが確立して唯一無二になるためには、っていうことをこの歌詞で書きました。
EMTG:自分たちのいろいろなものを強くポップにまとめあげた「三原色」の一方で、2曲目の「Dayload_Run_Letter」の甘さや儚さも、本領発揮に感じられました。
エンドウ:今回は意思表示をしたいというところで、PELICAN FANCLUBのミドルテンポの楽曲を聴き返してみたら惹かれるものがあって、これを2曲目に持ってきました。この楽曲の、歌詞はネガティブなのにサウンドは明るい、ちぐはぐな感じも、僕らは結成した頃からたくさんやってきたんです。でも、最近少なくなっていたので、ここでもう一回出しました。サウンドと歌詞がマッチしているのかどうか、聴き手が判断できるようにしたかったんです。これを優しい歌と捉える人も、冷酷な歌と捉える人もいると思うんですけど、そこは聴き手に委ねたい。
EMTG:ちなみに、この楽曲は、どんな色のイメージなんですか?
エンドウ:現段階だと青です。青でも、この……(『三原色』のジャケットの左上を指し)水色、コーラルブルーというか。ライブをしていくと、また変わってくると思うんですけど。
EMTG:3曲目では、2016年リリースのミニアルバム『OK BALLADE』に収録されていた「記憶について」が、リレコーディングされていますよね。これは、どういう経緯から収録されたんですか?
エンドウ:当時は、この楽曲に対して、赤いイメージを持っていたんです。それから3年間、ライブで演奏してきて、イメージが変わっていったので、この作品に入れても違和感がないし、そして自分たちの中で大きな存在の楽曲なので、強い意思表示をするうえで欠かせないと思って入れました。
EMTG:「記憶について」は今、どんな色に見えているんですか?
エンドウ:透明ですね。感覚的なものですけど。光の三原色が混ざり合った行く末の透明と同じような色を感じています。
EMTG:これに限らず、楽曲に色の変化を感じることはありますか?
エンドウ:ライブをするごとに、変化はしていきますね。イメージで言うと、白いものが、経年劣化で黄ばんでいくじゃないですか。楽曲も、そういう変化をしていくんです。
EMTG:ああ、革のバッグや木の家具を使い込むと味が出ていくところと近いですか? 慣らし込んでいくと、作った自分さえも気付いていなかった変化を見せていくというか。
エンドウ:そういうことです。
EMTG:メンバーとも、楽曲の色のイメージを共有することはありますか?
エンドウ:今までの作品、全部それで作ってきました。
EMTG:じゃあ、メジャー1stシングルで「三原色」という楽曲があがってきた時、ふたりにとっては「なるほどね」っていうところはあったでしょうね。
エンドウ:そうでしょうね。
EMTG:トータルで訊いていくと、アニメのタイアップとしても、メジャー1stシングルとしても、ますます完璧な一枚に思えてきます。
エンドウ:ありがとうございます。今回、収録曲を1曲目から3曲目まで続けて読むと、メッセージが隠れているっていう仕掛けもあるんです。“三原色で彩られた記憶について”という。これは、今の僕らが3ピースで鳴らす「記憶について」――(『OK BALLADE』の時は)4ピースだったから。そういう意思表示の言葉遊びを入れています。
EMTG:さらに、東名阪の場所によってテーマカラーが違う、コンセプチャルなツアーも行われるんですよね。
エンドウ:はい。それぞれの会場にブルー(東京)、レッド(大阪)、イエロー(名古屋)と異なるテーマを設けていて。演奏する楽曲も大きく違ってきます。意思表示っていうテーマもあるので、僕らが最初に(色のイメージを)提示するんですよ。そこでライブをして(色が)変化していく様を、僕らも来る方も楽しめると思います。三か所とも色が違うので、僕らにとってもどこも初めてで、新鮮なライブになると思いますし、来る方にも初めての経験をしてほしいんです。生涯で忘れられない日を僕らが作っていきたいんですよね。

【取材・文:高橋美穂】



tag一覧 シングル 男性ボーカル PELICAN FANCLUB

リリース情報

三原色

三原色

2019年11月27日

Ki/oon Music

01.三原色
02.Dayload_Run_Letter
03.記憶について(2019)

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エンドウアンリ(Vo/Gt)
アラビア語
自分たちの言葉がアラビア語になったら、どんな文字になるんだろう?って。文字に対するイメージってあるじゃないですか。例えば「三原色」でも、アラビア語だと、右から左に文字が流れて、印象が変わるっていう……それを、ただ楽しんでいるだけです(笑)。Google翻訳もよく使うんです。おかしな翻訳になる時も面白いんですよね。



■ライブ情報

PELICAN FANCLUB
TOUR 2020 “三原色” -イエロー-

2020/01/15(水) 名古屋・ell.SIZE

PELICAN FANCLUB
TOUR 2020 “三原色” -レッド-

2020/01/16(木) 心斎橋・CONPASS

PELICAN FANCLUB
TOUR 2020 “三原色” -ブルー-

2020/01/23(木) 表参道・WALL&WALL

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mito LIGHT HOUSE 30th anniversary
FAT SHOWER ~大ナナイトvol.127~

11/17(日) 茨城・水戸LIGHT HOUSE

テスラは泣かない。
「CHOOSE A」release tour 2019-2020

12/06(金) 香川・TOONICE
12/07(土) 広島・CAVE-BE

rockin’on presents
JAPAN’S NEXT 渋谷JACK 2019 WINTER

12/08(日) 渋谷ライブハウス一帯

ネクライトーキー主催イベント
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12/12(木) 東京・代官山UNIT

街人 『白球の行方ツアー ~Tour Final~』
12/13(金) 東京・新代田FEVER

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