かりゆし58、2年4ヵ月ぶり15曲入りフルアルバム『バンドワゴン』リリース!

かりゆし58 | 2020.02.22

 かねてより休養中だったメンバー中村洋貴がパーカッションとして全面復帰という嬉しいニュースも届いた、今年結成15周年を迎える“かりゆし58”。その先鞭とも言うべくニューアルバム『バンドワゴン』が到着した。

 今作は中村のデジタルパーカッションも加わり、ライブでのサポートドラマーもレコーディングに正式参加した現行の5人体制にて作られた1枚。それらも手伝い、より楽曲の幅や種類も広がり、実にフレキシブルで自由、しかしどこか彼らの出自に改めて向き合った芯も伺える全15曲だ。
前を向きながらも自身の内側をも見つめた、これまでにない種の1枚へと行き着いた同作。挑戦や新要素、驚くことや感心する楽曲や箇所も多く感じられ、従来以上に聴く者の気を楽にし、心地良く且つ傍らにいてくれる感に満ちているのも印象深い。
そんな次のフェーズ感溢れる1枚を完成させた彼らを直撃。久々にメンバー4人全員に話が訊けた。

EMTG:今作から中村さんが作品制作に復帰していますが、やはりそれ以前と以後とでは違いますか?
前川 真悟(Vo.&B.): 違いますねぇ。数字的に4が5になっただけではなく、より5人(今作でも参加しているサポートドラマー柳原和也も含む)が5人として更に機能できるようになったというか。1×5どころかそれが何倍にもなった感じがしています。
宮平 直樹(G.): 洋貴が制作に再び参加し、今年からはライブにも参加していくんですが、それにより、バンドとして今一度足元が固まりました。自分たちとしても今年結成15周年を迎えるにあたり、そこに向けてより邁進出来る気力も更に湧いてきて。おかげさまで今は、こっから先、もっともっと先へのビジョンや進める確信に満ちています。
新屋 行裕(G.): 更に今後が楽しみになっている状況ですね。いま直樹が「土台が再び固まった」と言いましたが、それを自分もいま凄く感じていて。どことなく再出発やリスタート、色々な可能性が更に広がり、なんでも出来るしやっていける。そんな確信を今は持っています。
EMTG:当の中村さんは再びみなさんと一緒にやっていかがでしたか?
中村 洋貴(Dr.): かりゆし58が、より何でも出来るようになったし、今後、更に何でもありなグループになれる確信が湧いてます。自分は(本来のパートである)ドラムが叩けないこともあり、パーカッションとして参加しましたが、それだけでも今までとはまた違ったエッセンスを、このグループに加えられたかな…と感じていて。
前川:今だから明かすと、実は前作は洋貴が参加できず(ドラムを叩けない状況だった)、それもあり、洋貴が戻って来た際に違和感なく叩けるようにと、ドラムは打ち込みで対応していたんです。対して今回は洋貴がパーカッションとして参加し、(ライブでサポートとして参加している)和也も遠慮なくドラマーとして作品に参加できた。そんな幅の広がりもありましたから。
新屋:一緒に10数年やってきて、身体に染みついていたグルーヴが、また取り戻せた感はありますよ。和也も合わせて、“やっぱりこの5人だよね…”みたいな感覚というか。
EMTG:その辺りは今作からも大変伝わってきます。かなり自由でフレキシブルな作風になりましたもんね?
前川:自由や挑戦も感じてもらえる作品だとは自分たちでも自負しています。でも、闇雲に「今の自分たちを変えよう!!」という強い意識を持って挑んだわけではなく、むしろどれも自然と出てきたものばかりで。いわゆる今の自分たちの態勢を受け入れる為には、今の自分たちの間口も広げなくちゃならない。例えば洋貴のパーカッションをどう活かすか?や、足りない部分をどう補うか、“今の自分たちを表現するには…?”を考え抜いた先に至ったのが今回の各曲だったりします。でもそこにはしっかりと根っこもあって。
EMTG:根っこ?
前川:今作のタイトルにもつけた『バンドワゴン』の「バンド」ですね。これが自分たちの、最もミニマムな単位であることを示した結果でもありました。
EMTG:正直、自分の今作への予想は逆で。15周年でもあるので、あえてここで今一度「かりゆし58ってこういったバンドです」と、みんなが描く「かりゆし58像」でくると考えてました。
前川:(笑)。気づいたらこんな作品になってました。とは言え、けして時代のトレンドや流行りみたいなものに媚びることなく、自分に正直に音楽がやれたし出来た作品だなって。
EMTG:今作での琉球旋律や三線等、沖縄の音楽文化を上手く取り入れたり、他のジャンルと交配させているのも印象的でした。
前川:その辺りは沖縄側が自分たちにもの凄くアプローチしてくれたのも大きいです。タイアップの依頼も幾つかあったんです。「沖縄の●●についての曲を提供して欲しい」等。それがどことなく停滞していた自分たちのケツを叩いてくれた部分もあって。そういった面では、色々なことを自由にやっていながらも精神的な一貫性もある作品かな。それらの曲にしても、沖縄を思い浮かべ身を委ねているうちに浮かんできた曲ばかりだったし。そこに導かれていったというか…。だから曲調的に盤の中で、あっちこっち行ってはいますが決して迷子にはなっていないんです。
宮平:沖縄テイストが強い楽曲が増えたのも、改めて地元(沖縄)の人に受け入れられていることが実感できたのも大きく関係しています。「沖縄のバンド!!」という自信や自負をここにきて改めて持てるようになって。
EMTG:これまで取り入れていなかった打ち込みやDAWの要素も導入していますが、あれには驚かされました。
前川:いや、実はあれらは打ち込みではなく、そのような音色を洋貴がリアルタイムで叩いたものなんです。なのであれらもライブでは全て生でやりますよ。今作でも人力以外の音は全く入れてませんから。
中村:おかげさまで久しぶりのレコーディングに加え、かなりの緊張感とプレッシャーで(笑)。個人的には、長く一緒に出来てなかったぶんグルーヴ感の取り戻しに時間がかかる予想でしたが、それまで長く一緒にやってきただけあり、そのブランクをものともせず、始めたらすんなりとこれまで通りに合わせられました。それこそこのバンド特有のグルーヴみたいなものがとことん身体に染み込んでいたんでしょう。
前川:あとは今作に於いては、いま一番の明確な目標が一つあり。そこを目指した部分も大きかったです。
EMTG:その「明確な目標」とは?
前川:「ホールでのライブを成功させること」です。ここ3年ぐらい沖縄の大きなホールにてカウントダウンライブをモンゴル800やBEGIN、HYとホスト役を持ち回りでやってるんです。2020年の大晦日はいよいよ自分たちがそのイベントのホストで。それを考えた際に、振り返ると「他の同士たちと違い自分たちは今、ホールで出来ていないじゃないか」と。それもあり今年の自分たちの目標としては、洋貴が戻って来て負担のない環境にて全国ライブツアーを成功させること。プラス、ホールライブを成功させて、そのカウントダウンライブの際は沖縄のホールで大勢の人を集める。そんな目標があるんです。
新屋:そうなってくると自分たちの中では、「俺たちは本当に沖縄の人に愛されているのか?」「やった際にみなさんホールに来てくれるのか?」等の不安が芽生えてきて。自分の場合、モンゴル800のツアーのサポートギターとして幾つかのホールで参加した際に、例えホールでもお客さんがみんなモンゴル800を愛しているのが凄く伝わってきた経験があったんです。そこで、対して自分たちはどうなんだろう…と。で、是非今作ではその辺り、自分たちも大丈夫との立証をしたかったんです。
EMTG:その「ホールに向けて」が今作からは非常に伝わってきます。一体感にしてもライブハウスではなく、もっとスケールの大きな会場で作り出す一体感みたいな印象がありました。
前川:自分たちの中でも、みなさんに感じてもらいたい心地良さや揺らぎみたいなものがより明確になった感があって。とは言え、その揺らぎの中でもハッとしてもらえる要素はキチンと入れ込んでいたり。
新屋:ギターにしてもベーシックがしっかりしている中、あえて自由に泳ぎ回らせてもらいました。その「ホール映え」みたいなところは特に意識したというか。
宮平:今作に於いてももちろん当初はビジョンを持って挑んではいましたが、作っているうちに自然とここに辿り着いた感が強くあって。「自由に」「自然に」の言葉がこれまで以上にピッタリな作品だなと。
新屋:ホールでのお客さんの光景が想像しやすい曲が多い印象は自分の中にもあります。ライブというより、むしろコンサート。その客席のリアクションや一緒に歌ってくれている場面等々が浮かんでくるんです。より今回はお客さんも交え、一緒に参加しやすい隙間みたいなものを心がけていた気がします。
中村:タイプは様々ですが、全体的により幅広い人が聴きやすく、親しみやすい作品になってますから。
前川:気楽に聴けるし聴いていて気が楽になる。そんな作品にしたくて。もちろんやっている時は色々と頭もパンパンでした。だけど不思議と気持ちの方は楽で。同じ汗でも、考え込んでの冷や汗や緊張時の汗ではなく清々しい汗というか。おかげさまで色々なアプロ―チやバラエティに富んではいますが、自分たちとしてはブレの無い、今の自分たちが表せた作品になりました。「これが今のかりゆし58です!!」な自信作です。
EMTG:今回からは、よりリズムに対してもレゲエやラテンを始め様々なアプローチを感じましたが、その辺りはやはり中村さんがパーカッションとして参加した面も大きそうですね?
中村:より様々なタイプの土着性を出せるようになったことや、躍動感のある曲も増えましたが、ビートに限らず色々な音も出せるようになったのも大きかったです。例えば打ち込み風の音や8ビットの音、スティールパンの音色も今作では導入していますが、それらもシンセではなく、パーカッションにサンプリング音を割り振ってパッドで出してますから。
前川:「Endroll」なんて行裕が歌っていて、洋貴のスティールパンがメインですから。この曲の前半なんて、ほぼ2人だけで成立させてるという。
EMTG:歌詞にも変化が伺えました。これまでのキャラクター性や一般の方の物語での共感性から、不変性や永遠性、真理みたいなものに内容もシフトしているなと。あとは光景や情景が浮かびやすいものが多く、いわゆるこれまでの物語性よりかは、非常にビジョン性の高い歌詞への移行を感じました。
前川:嬉しいですね。自分の中でもこれまで以上に光景や情景みたいなものが多く浮かんだので、それらを自分なりに歌詞を通してスケッチした感覚なんです。そこに変なフィルターやエフェクト、幕みたいなものをなるべくつけたくなくて。
EMTG:今作を引っ提げて全国ツアーもありますね。ホール…かと思いきや今回もライブハウスツアーで。
前川:また各地会いに行きます。このツアーでしか味わえないものをお届けしたいですね。土日や週末ばかりなので、幅広く多くの方に来ていただきたいです。今回は万全で臨みたい気持ちもあり、ライブを毎週末にしか入れてないんです。それは洋貴の身体の心配もですが、「ツアーを通してライブを成長させていく」狙いもあって。毎土日や週末にライブを行い、そこで見えたもの感じたもの、ここをこうした方がいいんじゃないか?が出てくれば、それを試したり改良しながら次の週末のライブに挑む。明らかに今までとは違ったライブツアーになりそうです。ライブ毎に違うだろうし、最初と中盤、最後がどう変化していくのか?自分たちでも非常に楽しみで。今回はまさにツアーを通して各楽曲やライブを成長させたり育てたりしていきたい。興味のある方は、その興味を10倍返しできるツアーにする自信もあるので、是非各地遊びに来て下さい。
EMTG:いよいよ今年は結成15周年ですね。どのような一年にしていきたいですか?
前川:改めて「聴いてもらえる可能性のある方には聴いてもらおう!!」との気概で臨みます。ツアーも毎週末ですが、その間にはその土地に滞在しキャンペーン等もやっていこうと。聴いてもらえる、自分たちに親しんでもらえるチャンスを一つでも逃したくなくて。改めて今そう考えています。あとは「バンドになる」かな?
EMTG:その「バンドになる」をもう少し詳しく。
前川:音楽性や特性、これ以上自分は上に行けないんだ…等、これまでの自分たちが自身で決めつけていたリミッターを全部取っ払い、打ち破り、改めて「かりゆし58」というバンドにしていき、唯一無二の「かりゆし58」というバンドを改めて目指していく。そんな1年にしたいです。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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リリース情報

バンドワゴン

バンドワゴン

2020年02月22日

LD&K

01.声のジェット機:宇徳敬子
02.千惚り万惚り
03.GO!MangoMan
04.太陽のひと:あびこめぐみ
05.カケラ
06.ミックスナッツとロックグラス
07.バンドワゴン-5seats-
08.Endroll
09.REALITY
10.桜花謳歌
11.ノック
12.赤夢波-KAMUNAMI-
13.True
14.シャララ ティアラ
15.Unity-結仁庭-

お知らせ

■マイ検索ワード

新屋 行裕
さよならテレビ
ドキュメンタリー映画なんですが、いま自分の周りでけっこう話題なんです。興味が湧き、今度観に行こうと色々と調べました。内容的には、地方テレビ局のディレクターの方が番組を制作している中、リアルにカメラを置き、その生々しさを裏も表もキチンと伝える内容らしく。今の社会におけるマスコミの立ち位置みたいなものを、あえてエグいくらい捉えているらしいので、非常に興味がありますね。

前川 真悟
バイナルレコード
以前ここでも紹介した、好きなアナログをスピーカーの形に曲げてくれて、そこにスマホを入れると音が増幅されるものなんですが。今度これを『バンドワゴン』のオリジナルジャケットにして受注生産で発売しようか?と計画しています。作品を作り、それらをライブでやって、他にその先に何が出来るか…?を色々と考えた末、これがピッタリだなと思い至って。

宮平 直樹
怪談 ネタ
日時や場所はまだ全く決まっていませんが、今度ミュージシャン仲間と怪談のトークショーをやろうかなと。とは言え自分は怪談の体験が全くなくて。自分の怪談の趣向としては、おどろおどろしかったり怖がらせる話より、情緒があったり、“これってどういったことだろう…?”と、ちょっと感心したり、多少考えてもらうぐらいの話を是非やりたくて。それもあり、いま地方の風土や風習、都市伝説や伝統話等を探してます。

中村 洋貴
コンガ
パーカッションが今、もの凄く楽しくなってきています。今は電子パットを叩いて、そのプリセットされた音を使ってますが、可能であればライブでは生で叩きたくて。それもあり、いま色々とコンガを探してます。


■ライブ情報

『ハイサイロード2020-バンドワゴン-』
3/22(日)【沖縄】桜坂セントラル
4/4(土)【静岡】SOUNDSHOWER ark 清水
4/10(金)【茨城】水戸ライトハウス
4/11(土)【神奈川】横浜BAYSIS
5/3(日)【福島】郡山HIP Shot
5/4(月祝)【秋田】秋田Club SWINDLE
5/6(水祝)【宮城】仙台JUNKBOX
5/9(土)【石川】金沢GOLD CREEK
5/10(日)【新潟】新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
5/28(木)【兵庫】神戸チキンジョージ
5/30(土)【岐阜】岐阜CLUB-G
5/31(日)【長野】長野ライブハウスJ
6/6(土)【長崎】長崎DRUM Be-7
6/7(日)【鹿児島】鹿児島CAPARVO HALL
6/13(土)【岡山】岡山YEBISU YA PRO
6/14(日)【広島】広島 LIVE VANQUISH
6/20(土)【滋賀】滋賀U☆STONE
6/21(日)【京都】KYOTO MUSE
6/27(土)【奈良】奈良ネバーランド
6/28(日)【和歌山】和歌山 CLUB GATE
7/3(金)【愛知】名古屋ダイアモンドホール
7/4(土)【埼玉】HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
7/18(土)【福岡】福岡DRUM LOGOS
7/23(木祝)【高知】高知CARAVANSARY
7/24(金祝)【香川】高松DIME
7/26(日)【愛媛】松山サロンキティ
7/31(金)【北海道】札幌 cube garden

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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