レビュー

[Champagne] | 2013.12.25

連載 第6週
[Champange]
『Run Away / Oblivion』


生粋ボーイズ

 [Champagne] の川上洋平の第一印象は、「うゎ、生意気なヤツ!」だった。初対面の僕に、フェスで大きなステージに出られない口惜しさや、トリを取れない不満をいきなり語り出して、「なんてヤツだ!」と思ったものだ。

 しかし、これだけロックバンドがあふれているシーンで、 黙っていてはウダツが上がらない。上の世代には20世紀末のCDバブル時代を引きずる大御所がまだいるし、その後のハイスタを受け継ぐインディーズ出身バンドもあまた活躍している。底から這い上がるには、相当な野心が必要だ。実力はもちろん、ビッグマウス(大口たたき)と言われてもへこたれない精神力が必要なのだ。

 川上は、その気概を持っている。そして僕は、実はビッグマウスが大好きなのだ。だから[Champagne]が武道館をやると聞いて、 「よっしゃ」と小躍りしたものだ。ましてや、ニューシングルのタイトルが奮っている。「Run Away」って、一体、どこから逃げるんだ!?!?

 僕は今まで、“売れていくバンド”をたくさん観て来た。小さなライブハウスからキャリアをスタートさせるロックバンドは、事あるごとに「売れたい」と言う。だが、彼らの大半は売れることに慣れていないし、下手をすると後ろめたささえ持っている。慣れていないから、売れた後に悲劇が起こることも多くある。音楽的な不一致とカッコつけても、本音はメンバー間のヒガミや金銭トラブルがほとんどだ。また、ライブハウスにいた頃には絶対近づいて来なかったような輩が、「俺が売ってやったんだ」と言わんばかりに楽屋にどやどや押し寄せてきて、自分たちのペースを見失ってしまう。つまり、売れることは、バンドに泥臭い欲望というやっかいな怪物を呼び込むことでもあるのだ。

 [Champagne] は、一年前のシングル「starrrrrrr」から仕掛けに仕掛けて、ついに武道館をぶち上げることに成功した。川上は「Run Away」で、そうした自分たちの “今”を描いている。これから始まる悲劇か喜劇かわからないストーリーを、突き進むことを決めたバンドの本心がここにある。「売れても僕らは変わらないよ」などと、甘っちょろいことは言わない。何が起こるかわからないが、このままでいても何も変わらないと心底思ったからこその決意なのだ。それでも売れて、多くの人に出会いたいと願うのは、ミュージシャンの本能であり、それを素直に認めることは馬鹿を通り越して、“粋(イキ)”なことだと僕は思う。

 それはかつてBOΦWYが「チャート1位になったら、解散する」と、売れない頃に宣言したのと同じくらい、粋なことだ。同時に「Run Away」は、今までの環境から脱出しようとする川上の、生身を引き裂かれるようなリアルな叫びだと思う。

 だから僕は生意気な[Champagne]を、生で粋なバンドと呼びたい。そして“生粋”は、キッスイと読む。生粋のロックボーイたち、来年は期待してまっせ!!

【文・平山雄一】

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リリース情報

Run Away / Oblivion(初回限定盤)

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Run Away / Oblivion(初回限定盤)

発売日: 2013年12月25日

価格: ¥ 1,300(本体)+税

レーベル: UK.PROJECT

収録曲

1. Run Away
2. Oblivion(feat. LITHIUM HOMME)
3. Rise
4. Paint Your Socks Into Pink

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