レビュー

tricot | 2014.03.19

 tricotの1stミニアルバム『爆裂トリコさん』を久しぶりに聴き返し、オリジナル盤が当時、ライブ会場限定で2,500人の手にしか渡らなかった事実を改めてもったいないと思った。今では彼女たちのライブに於けるハイライトの一つに挙げられ、フロアから大合唱が起こる「爆裂パニエさん」。ライブでどんどん楽曲が浸透していき、次第にライブアンセムへと育ち、この曲のコピーが動画サイトに続々とアップされている様子は印象的だった。この曲をはじめ、ライブを通して成長してきた多数の初期作を含む『爆裂トリコさん』は、彼女たちにとってのかけがえのない過渡期を記した大切な1枚となっていたと言える。

 変拍子で奇天烈なんだけど、親しみやすく体感的に優れている。マニアックなのに、妙なポップさがあり、真ん中にしっかりと歌がある。そんなtricotというバンドの個性は既に2011年夏頃より確立していた。彼女たちの今に繋がる礎がしっかり刻印されているのが、この1stミニアルバム『爆裂パニエさん』に他ならない。

 そんな今作がこの度めでたくリイシュー。とは言え、今作は単なる再発とはわけが違う。9mm Parabellum BulletやTHE BAWDIESの作品も手がけ、tricotの近作のエンジニアリングも携わっている中野正之が新たなミックスを施した。 以前に比べ、より臨場感や音の力強さ、ディテールの細かさが如実に表れた今作は、逆に現在のtricotの萌芽をしっかりと確認することが出来る逸品。しかもボーナストラックでは初めてアコースティックバージョンの「Laststep」を収録。彼女たちの音楽性がよりネイキッドに伝わってきて、優れた歌があっての“あの演奏”という、その両者のバランスが垣間見られて面白い。

 先日、komaki♂の脱退がアナウンスされ、春以降はドラマーが代わる。その辺りも今後の音や曲調の変化に現れるかもしれない。そんな第一期tricotの芽吹きとも言える作品だからこそ、『爆裂トリコさん』を是非このタイミングで聴いて欲しい。

【文:池田スカオ和宏】

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リリース情報

tricot「爆裂トリコさん」

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tricot「爆裂トリコさん」

発売日: 2014年03月19日

価格: ¥ 1,400(本体)+税

レーベル: BAKURETSU RECORDS

収録曲

1. 爆裂パニエさん
2. Bitter
3. 42℃
4. アナメイン
5. slow line
6. Laststep (Acoustic)

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