レビュー

sumika | 2016.05.25

連載 第122週
sumika
「アンサーパレード」


J-POPの 王道を踏まえて作品をポップに仕上げる達者な奴ら

 聴いて最初に思ったのは、「達者な奴らだな」ということだった。

 自分たちを表現する方法論をたくさん持っている。それを現実の音にする力を持っている。音楽作りを手伝ってくれる友達をたくさん持っている。そうした“持ち物”を、惜し気もなく使っているところに、僕は“sumikaの達者”を感じたのだった。

 特に2曲目の「Lovers」が面白かった。ポップスの王道のリズム“シャッフル”をうまく使って、タフな愛の告白を歌う。一生の最後まで添い遂げたいという男の心理を、やや恥ずかしそうに描くにあたって、「男は最初になりたがり、女は最後になりたがる」というユーミンも引用したオスカー・ワイルドの名言を歌詞にぶち込むあたり、ソングライター&ボーカルの片岡健太のしっかりとした基礎を感じる。

 その上で音楽的に遊ぶセンスが、このバンドの可能性の大きさを示している。シンコペーションなどの仕掛けや、女性コーラスの使い方、エンディングでは3拍子を仕込むなど、メンバーたちがこれまで聴いてきた音楽の豊かさが必要に応じて織り込まれている。古くは80年代のサザンオールスターズや、90年代の槙原敬之、00年代のaikoなど、J-POPの先輩たちが開発してきたアレンジ手法を駆使してポップに仕上げていく。その手腕は、やっぱり達者な奴らと言わざるを得ない。

 またキーボードで大活躍の小川貴之が初のリードボーカルを取る「enn」も興味深かった。ちょっとスモーキーな声が魅力の片岡に対して、小川の声はクリーンなトーンが特徴だ。「enn」は、自分をずっと見守ってくれる母への感謝の歌。よくドライブするベースとドラムに、小川の軽快な声がよく似合う。今っぽいギターサウンドなのに、どこか懐かしさが漂うのは、ボーカルが変わってもブレないsumikaというバンドの特性なのだろう。

 その他、トリッキーなロックンロールの「1.2.3..4.5.6」や、ムーディーなロッカバラード「溶けた体温、蕩けた魔法」など、sumikaは今回のミニアルバム『アンサーパレード』で一気に音楽性とボーカルのニュアンスを広げている。それはバンドとしての野心の表れであると同時に、ミュージシャンとしての冒険心の発露でもある。

 そして僕は、せっかくこれだけ達者なのだから、sumikaの“チョイ悪ソング”も聴いてみたくなったのだった。

【文:平山雄一】 

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リリース情報

アンサーパレード

アンサーパレード

発売日: 2016年05月25日

価格: ¥ 1,800(本体)+税

レーベル: [NOiD]/murffin discs

収録曲

1.sara
2.Lovers
3.明日晴れるさ
4.1.2.3..4.5.6
5.enn
6. 溶けた体温、蕩けた魔法
7.「伝言歌」-Answer Parade ver.-

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