レビュー

奥華子 | 2016.09.16

 メジャーデビュー10周年のアニバーサリーイヤー(これまで発表してきた全楽曲・150曲以上を披露するライブツアー「奥華子 10周年ありがとう!弾き語り全曲ライブ」も大成功!)を経て、11年目の新たなスタートを切った奥華子からニューシングル「思い出になれ/愛という宝物」が届けられた。ラブソングの名手と呼ばれ、切なさと温かさが共存する名曲を数多く生み出してきた彼女。今回のシングルにも、さらに深みを増した恋の物語が描かれている。

「思い出になれ」の主人公は、恋人だった女性に対して、自分から<距離を置こう>と告げた男性。時間が経つにつれて<君のことが好きだった>ことに気付き、ふたりで一緒にいた日々に思いを馳せる。本当に大切なものは、そのときにはわからず、取り返しがつかないときになってようやく見つかる――あまりにも切ない真実を奥華子は、朗らかな明るさを感じさせるメロディ、ピアノとハーモニーの響きを重視したアレンジによって、どこか軽やかな雰囲気を持ったポップナンバーに導いている。ひとつひとつの言葉を丁寧に歌いながら、決してシリアスに落ち込まないボーカルも印象的。<思い出になれ>という祈りにも似たフレーズも、彼女が歌えば決して重すぎず、むしろ前向きな気分へと誘ってくれるのだ。

「愛という宝物」は“2016 cross fm official GREEN campaign song”として福岡を中心にオンエアされているミディアム・アップ・チューン。この曲のなかで彼女は、軽快な解放感を備えたメロディに乗せて<「愛」という宝物だけが いつもこの胸にあればいい>と歌っている。人と人が完全にわかり合えることは不可能かもしれない。この曲の歌詞の通り<誰も何も傷つけず 生きてはゆけない>のも事実だろう。それでも奥華子は誰かを想うことの大切さ、ひとりだけでは体験できない愛の豊かさをまっすぐに描こうとしているのだと思う。AOR風味の爽やかなサウンドメイク、一緒に口ずさみたくなるような親しみやすい歌メロもきわめて魅力的だ。

さらにカップリング曲として、「弾き語り全曲ライブ」で大きな反響を呼んだインディーズ時代の楽曲「小さなアリ(Live ver.)」を収録。世の中に対する不安や葛藤をまっすぐに歌ったこの曲は、彼女のキャリアの原点にある楽曲のひとつ。時間を超え、すべての人の胸を打つメッセージは、シンガーソングライター・奥華子の普遍性をはっきりと示していると言えるだろう。

上海での単独ライブ(8月13日)、「サイサイフェス2016」(Silent Siren主催/9月4日)の出演など、幅広いフィールドでライブ活動を展開している奥華子。シングル「思い出になれ/愛という宝物」を生で体感できる機会も増えていくはず。身近な雰囲気とタイムレスな魅力を共存させた彼女のラブソングをぜひ、じっくりと味わってほしいと思う。

【文:森 朋之】

リリース情報

思い出になれ/愛という宝物

思い出になれ/愛という宝物

発売日: 2016年09月21日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: ポニーキャニオン

収録曲

01.思い出になれ
02.愛という宝物(2016 cross fm GREEN campaign song)
03.小さなアリ(Live ver.)

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