レビュー

清木場俊介 | 2017.02.09

 清木場俊介は心の中に仕舞っていた記憶の欠片を一つひとつ取り出すように唄う。

♪あの頃の僕らには 戻れない……隠していた想い 今ならば伝えられる♪

 昨年末、シングル発売より一足先に、清木場の新曲「友へ」の配信がスタート。すると、今年1月6日付の有線ランキングで1位を獲得。アイドルでもアニソンでもないガチなロックシンガーの、CMソングでもドラマ主題歌でもない丸裸のバラードの、首位は快挙と言っていい。

 ちなみに清木場は2001年にEXILEのボーカリストとしてデビュー。相棒のATSUSHIとグループを大成功へと導くも、06年に脱退。自らを“唄い屋”と名乗り、ソロへ転向。以来10年余、日本武道館からライブハウスまで、野外フェスからフリーイベントまで、ひたすらライブ中心に唄ってきた。

 その清木場がかつて同じ夢を追い、同じ傷みを分け合ったATSUSHIへの思いをしたためたのが「友へ」だ。今は別々の夢を背負い、それぞれの峠を目指すATSUSHIへの赤裸々な手紙のようでもある。この唄が誕生するまでには、運命あるいは縁(えにし)とも言うべき、清木場とATSUSHIの物語があるようだが……。そちらは「清木場俊介 ATSUSHI 友へ」で検索してもらうといいだろう。

 清木場は山口県の出身。そこが故郷。しかし、音楽活動の故郷はEXILE。そこで出会った同い年の、ボーカルという同じポジションの男がATSUSHI。ボーカル技術も作詞作曲も、それまですべてが独学だった清木場はまさに原石。一方のATSUSHIは幼い頃からクラシックを学んできたエリート。それでも彼らふたりは、時に支え合い、時に競い合い、彼らにしかわからない絆を育んだ。
 清木場の脱退と共に一旦は疎遠になったものの、30歳を越えた頃から、どちらからともなく連絡するようになったのは、ふたりの絆が切れなかった証明。そして、脱退から10年を迎えた昨年、その絆が「友へ」を書かせた。新曲作りに何ヵ月もあえいでいた清木場だったが、ATSUSHIへの思いを書こうと決めたら、立ち止ることも、迷うこともなく、一気に書き上げたという。

 SNSの時代。友達という名の見ず知らずの他人と繋がる昨今。友とは何か、友情とは何か、堅苦しく考える必要はないのかもしれない。友達の友達もみんな友達かも……。しかし、出会って15年以上が経ってから、やっと口に出すことができた「友へ」を聴くと、胸の震えが止まらないのはなぜだろう。故郷で青春時代を共にした“あいつ”の顔が浮かぶのはなぜだろう。やがて心穏やかになるのはなぜだろう。

 そして、唄いたくなる。

♪あの頃の僕らには 戻れない……隠していた想い 今ならば伝えられる♪

【文:藤井徹貫】

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リリース情報

友へ

友へ

発売日: 2017年02月08日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

1.友へ
2.六花
3.ずっとありがとう
4.友へ -instrumental-

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