レビュー

阿部真央 | 2017.02.14

 結婚、出産、離婚。この2年間に彼女自身が経験した大きな出来事――かけがえのない存在との出会い、悲しさと切なさに打ち砕かれるような別れ――が驚くほどダイレクトに反映されたニューアルバムである。

 前作『おっぱじめ』以来、約2年ぶりとなる阿部真央の7thアルバム『Babe.』がリリースされる。シングル「Don’t let me down」「女たち」を含む本作は、リアルな経験と感情を誰もが共感できる楽曲へと昇華させる、彼女のシンガーソングライターとしての才能がさらに高いレベルで発揮された作品となった。その中心にあるのは“母になった喜びと子供への愛情”、そして“離れてしまった男性に対する複雑な感情”。後者をもっとも象徴しているのはアルバムの1曲目を飾るバラードナンバー「愛みたいなもの」だろう。♪あなたには欠片すら持たせられなかった この愛よ♪♪あなたは私を強い子にする人だった♪という歌詞が印象に残るこの曲には、彼女自身の体験が裏打ちされていると同時にリスナーの状況や経験に寄り添い、“これは私の曲だ”と思わせる普遍的な魅力を備えている。つまり「愛みたいなもの」は、自分の体験をそのまま歌にしたのではなく、それを客観的に俯瞰しながら、まったく別のフィクションとして再構築することで生まれた楽曲なのだ。生々しい人間性とソングライターとしての冷徹なスタンスをバランスよく共存させていることこそが、彼女の個性であり、類まれな才能の本質なのだと思う。

 一方“母になった喜びと子供への愛情”を歌った曲では、自分自身の素直な気持ちをそのまま表現することに徹している。特に印象的なのは♪立派なあなたの母になる為に 私は出来る限りを尽くしてゆく所存です♪と歌う「母である為に」。ここから伝わってくるのは“誰に何を言われても、自分が正しいと思うことを貫く”という彼女本来の姿勢だ。言いたいことを言い、歌いたいことを歌いたいように歌う。その真っ直ぐなスタンスもまた、シンガーソングライターとしての彼女の魅力だろう。

 アグレッシブなアッパーチューン「逝きそうなヒーローと糠に釘男」、活き活きとしたバンドグルーヴが楽しめるロックンロール「バイバイ」、彼女自身がアレンジを手がけたヘビーロックナンバー「gasp」、阿部真央の原点とも言えるアコースティックギターの弾き語りナンバー「背中」などサウンド的にもカラフルな広がりを持つ『Babe.』。年齢、経験とともに深みを増していく阿部真央の“現在”をたっぷりと味わってほしいと思う。

【文:森 朋之】

リリース情報

Babe.

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Babe.

発売日: 2017年02月15日

価格: ¥ 2,778(本体)+税

レーベル: ポニーキャニオン

収録曲

「You changed my life」「Don’t let me down」「女たち」など、全13曲入り予定

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