レビュー

チリヌルヲワカ | 2017.05.09

 こいつぁ面白い。少々の勘違いからバンド名が生まれたチリヌルヲワカだが、その元になる「いろは四十七文字」は日本語の基本。日本語で詞を書き歌うからこそできる妙味を、新作『君の未来に用がある』は持っている。ユウ(Vo,G)、イワイエイキチ(B)、阿部耕作(D)の3人が目指すのは、彼らならではの日本語のロックだ。

 アルバム・タイトルは「ドルチェ」の歌詞にある一言。ちょいと変則的なビートに乗せて月を見上げて歌い出し、「熱(こい)に浮かされている」「ボクはその病(こい)をこじらせている」と遊ぶ。甘美な恋はまさにドルチェ。女の子はさまざまなスイーツを口にしながら恋に落ちていく。見詰めるのは、幸せしかない未来だ。60年代の歌謡ロックめいたコブシが回る「クリーチャー」は、その投げやりっぽい歌と裏腹にキレのいいギターがユウらしく、「怒りの筆先」では「この国は漢字一つで表せる気持ちがある」と明言し、筆先が書いた文字で歌を締める。ヘヴィに揺れるビートが怒り心頭な気分を表して、思わず拳を握りたくなるような曲だ。くじけそうになる気持ちを歌った「春は彼方」は音楽に心のよりどころを求めてゆっくりと進み、シャープなギターが印象的な「シダレザクラ」はユウが自分の名前も歌い込みながら人生と音楽を重ねて描く。平仮名片仮名混じりのタイトルが思わせぶりな「浮キつ沈ミつ」は安定感のあるリズムに乗せて相対的に変化する人の気持ちや感情を端的に歌い、最後を飾る「空想都市」は誰かと一緒に想像の街を駆け抜けていく。どの曲も、聴くほどに歌が残って歌詞が気になる7曲だ。

 オルタナティヴなサウンドと、どこか和風なメロディが絡み合う独特な作風は一段と磨きがかかっている。トリオというシンプルな編成だからこそ、それぞれの楽器がフル稼働してカラフルな音像を作っていく。昨年4人から3人体制になったチリヌルヲワカだが、ユウの前身バンドGO!GO!7188がトリオだったことを思い返せば慣れたかたちのはずなのだが、4人で5年も活動してきたので、ユウは「ライヴはギターを一生懸命弾かなきゃ」とプレッシャーを感じてもいるようだ。ほんわかした癒し系キャラながらギターを弾けばロックなユウが、ツアーではイワイ・阿部と共にかっこいいロックを聴かせてくれるのは間違いない。本作を携えてのツアーは5月27日にスタート、全国をぐるりと回って7月に新宿BLAZEでフィナーレを迎える。いい夏になりそうだ。

【文:今井智子】

tag一覧 J-POP アルバム 女性ボーカル チリヌルヲワカ

リリース情報

きみの未来に用がある

きみの未来に用がある

発売日: 2017年05月10日

価格: ¥ 2,000(本体)+税

レーベル: ヤマミチレコード

収録曲

1.ドルチェ
2.クリーチャー
3.怒りの筆先
4.春は彼方
5.シダレザクラ
6.浮キつ沈ミつ
7.空想都市

トップに戻る