レビュー

寺嶋由芙 | 2017.07.11

 優れたポップスは、私たちを見知らぬ世界へと連れだしてしまう。寺嶋由芙がディアステージとテイチクエンタテインメントへ移籍してリリースする2枚目のシングル「わたしを旅行につれてって」もまた、そんな作品だ。

 「わたしを旅行につれてって」は、作詞をいしわたり淳治が担当。元SUPERCARのメンバーにして、作詞家としても多数のヒット曲を手がけてきた人物だ。作曲は、新進作家の望月ヒカリ。

 「わたしを旅行につれてって」は、恋人との初めての旅行を描いた歌詞と、1980年代を彷彿とさせるメロディーによる楽曲だ。それでいながら、無理な1980年代リバイバル感や古臭さがないのは、本質的には2017年の感覚に根ざしているポップスだからだろう。ウルフルズ、氣志團、ナンバーガール、Base Ball Bear、相対性理論などを世に送りだしてきた加茂啓太郎が今回もサウンド・プロデュースを担当しているが、「わたしを旅行につれてって」の本質とは“どこか懐かしいけれどあくまで2017年のポップス”である点なのだ。 「わたしを旅行につれてって」は、私たちの知らない夏、私たちの知らない海へと聴き手を連れだす。私たち聴き手もまた一緒に「旅行」をするような昂揚感に包まれる楽曲なのだ。

 通常盤と初回限定盤Bに収録されてるカップリング曲「夏’n ON-DO」は、怒髪天の増子直純作詞、上原子友康作曲による音頭。こちらも「わたしを旅行につれてって」と同じく夏を舞台にした楽曲だが、一気に盆踊り会場にいる気分に。増子直純と成瀬瑛美(でんぱ組.inc)によるコーラスもユーモラスだ。

 そして、通常盤と初回限定盤Aに収録されているのが、早見優が1983年にリリースした「夏色のナンシー」のカヴァー。この楽曲は、ロート製薬「スキンアクア」のCMソングとして寺嶋由芙が歌っているために今回収録される運びになった。「わたしを旅行につれてって」と同じくrionosが編曲しているが、キラキラとしたテクノの中にもエッジの鋭い音があり、単なる懐メロにはとどまらないサウンドに仕上げている。TOWA TEIの最新作「EMO」にも参加しているrionosらしいサウンド・プロダクションだ。

 <ここがどこなのか どうでもいいことさ>というのは、細野晴臣の1973年の「恋は桃色」の一節だ。「わたしを旅行につれてって」の収録曲たちも、夏をテーマにしつつ、私たちをどこか知らない場所へと連れだす。それは優れたポップスのみが持つ魔法でもあるのだ。

【文:宗像明将】

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リリース情報

わたしを旅行につれてって

わたしを旅行につれてって

発売日: 2017年07月12日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: TEICHIKU ENTERTAINMENT

収録曲

1.わたしを旅行につれてって
2.夏’n ON-DO
3.夏色のナンシー
4.わたしを旅行につれてって off vocal
5.夏’n ON-DO off vocal
6.夏色のナンシー off vocal

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